【レポート】ものづくり企業タニタの挑戦 〜モノからプラットフォームへ〜 ALBLOクラウドによる新たなアルコール検査 #AWSSummit

DA事業本部の春田です。

AWS Summit Online絶賛開催中!ということで、本記事では「CUS-61:ものづくり企業タニタの挑戦 〜モノからプラットフォームへ〜 ALBLOクラウドによる新たなアルコール検査」の内容についてまとめていきます。

セッション情報

  • 株式会社タニタ 生産戦略本部 量産設計センター 技術 5 課 課長 博士(工学) 望月 計 氏
  • アクティア株式会社 代表取締役 北野 幸雄 氏

タニタが提供するアルコール検知器「ALBLO」シリーズは業界トップクラスの性能。 昨今話題の航空運送事業者のアルコール検査に対応するべく、国が定めた検査基準を満たす新サービスの実現に挑戦。 ALBLO の既存製品とクラウドを組み合わせ、短期間で航空業界より求められていた「立ち合い人不要のアルコール検査体制」の実現に成功。 本セッションでは、自社の「モノ」を最先端のデジタル技術と組み合わせ、「プラットフォームサービス」へ変革したタニタの挑戦について、その背景から AWS を活用したポイントまでお伝えします。

※セッション動画は以下リンク

アジェンダ

  1. 会社概要
  2. アルコール検査ビジネスについて
  3. ALBLOクラウドサービスのご紹介
  4. 新規サービスにおけるAWSの活用について
  5. 最後に

会社概要

  • (株)タニタとアクティア(株)は、タニタ製のアルコール検知器であるALBLOシリーズを活用
  • アルコール検査システムであるALBLOクラウドサービスの事業計画からプロトタイプ開発および本開発、運営までを推進

  • VISION
    • 私たちは、世界の人々が健康習慣によって自らの可能性を広げ、幸せを感じられる社会を目指します。
  • MISSION
    • 私たちは、健康習慣づくりのための健康基準を提唱・検証し続けます。
  • SLOGAN
    • Healthy Habits for Happiness
  • あらゆる世代の健康づくりをサポート
  • 健康を「はかる」企業 → 健康を「つくる」企業へ

アルコール検査ビジネスについて

  • 1999年
    • タニタで初めてのアルコール検知器(ドクターバッカス)
  • 2012年
    • 燃料電池式センサを搭載したアルコール検知器を開発・販売(FC-1000)
  • ALBLOクラウドサービスでは、FC-1000を活用している

  • アルコール検知協議会(J-BAC)について

    • タニタはJ-BAC創立メンバーであり、J-BACの会長はタニタの代表取締役、谷田氏が担当

アルコール検知器協議会(J-BAC)は、アルコール検知期の技術や品質の向上と、その普及啓発による業界の地位向上を目的に、国内唯一の業界団体として、2015年4月に発足。現在、加盟企業は21社。 この間、技術委員会と業務委員会で検定制度の策定、適切な使用の啓発など、さまざまな活動に取り組んできた。 「航空従事者の飲酒基準に関する検討会」にアルコール検知器の専門団体として招聘されて説明をしたほか、自動車事故対策の専門機関「自動車事故対策機構」や、自動車メーカーの業界団体「日本自動車工業界」など、関係団体からヒアリングを受ける機会も増えており、業界における存在感はますます大きくなっている。 2015年設立当初から、タニタ社長である谷田千里がJ-BACの会長を担っており、タニタは幹事企業も拝命している。また、初代技術委員会(アルコール検知器の精度向上、検定策定)もタニタが担当し、お客様に安全安心を提供できる取り組みに邁進している。

飲酒検査に対する国の流れ

  • 1999年〜: 飲酒事故の多発
    • 1999年東名高速での飲酒事故、2006年福岡海の中道大橋飲酒運転事故など、幼い子供が巻き込まれる重大事故が多発
    • 事業用自動車での飲酒運転事故も多発していた
  • 2011年: アルコール検査義務化(国交省自動車局)
    • 事業用自動車の運転者の飲酒運転を根絶するため、2011年より点呼時にアルコール検知器を使用した酒気帯びの確認が義務化される
  • 2018年: 航空機の操縦士が基準値を超える飲酒
    • 2018年ロンドン・ヒースロー空港で、乗務前に基準を超えるアルコール値が検知され、副操縦士が逮捕された
    • その後も飲酒検知が多発したことから、国としても乗務時酒気帯び確認の義務化が加速した
  • 2019年: アルコール検査義務化(国交省航空局・鉄道局・海事局)
    • 定期航空協会 = 国内で運航する航空各社が加盟する業界団体
    • 同協会で、国が定めた航空運送事業者におけるアルコール検査の義務基準を、業界共通のシステム構築基準として具体化
    • 検査のすり抜けやなりすましを防ぎ、確実なアルコール検査体制を整えると発表
  • 現在
    • 不正防止可能なクラウドサービスの実現が必要
    • 定期航空協会の発表により、以下を満たすクラウドサービスの必要性が非常に高まっている
      • すり抜け防止
      • 不正なりすまし防止

タニタの燃料電池式アルコール検知器のラインナップ

  • FC-900
    • スタンドアローン型
  • FC-1000
    • スマホ連動型
    • クラウド型でも使用
  • FC-1200
    • シリアル通信型
# 燃料電池式(ストロー式) 半導体式(吹きかけ式)
測定原理 検知極でアルコールが酸化され水素イオンが生成。これが電解質内部を移動し、対極側で酸素の還元が生じる。水素イオンが移動する際、外部回路に電子が流れる反応を検出する。 半導体表面に吸着している酸素にアルコールガスが反応してセンサー抵抗値が変化する特性を利用。ガス濃度が高くなると抵抗値が下がることでガス濃度を測定する。ヒータで加温しているため、燃えるガスは反応する。
検知精度
再現性
選択性
コスト
メンテナンス性
メリット ・精度が非常に高い
・アルコール以外のガスが反応しにくい
・消費電力がゼロ(回路動作時を除く)
・低濃度での感度が高い
・価格が安い
・応答性が早い
デメリット ・価格が高い
・定期的に校正が必要となり、メンテナンスコストが高い
・測定時間が長い
・アフターフォローに満足できない
・アルコール以外のガスにも反応する
・環境の影響を受けやすい

燃料電池式センサの検出原理

  • 一般的に使われている燃料電池(FC社・エネファーム)
    • 検知極側に水素、基準極側に酸素を流して電流を得ている
    • 呼気に含まれるアルコールを酸化して電流を取り出し、センシングしている
  • 反応イメージ
    • エタノールの酸化反応
    • 酸素の感電反応

タニタ製のアルコール検知器の実績

  • 燃料電池センサーの研究開発を日々行い、ノウハウを蓄積
  • 信頼性の高い燃料電池センサーを採用
  • プロ仕様として安心の高精度
  • 徹底したトレーサビリティ管理による品質保証
  • 2013年度を基準とした場合、2018年度でタニタアルコール検知器全体の売上高が3.5倍以上成長
  • 家庭用から業務用(燃料電池式)まで250万台以上のアルコール検知器を販売
  • 2012年から展開している業務用のアルコール検知器は、航空事業者25社を含め、5000以上の法人で導入されている
  • FC-1000は初期出荷から8年が経過しているが、現在でも主力商品として販売

→ ハードウェアは変えず、ソフトウェアをアップグレードすることにより、今回の新サービスを展開

導入事例

  • 大手ハイヤー会社
    • 先方の基幹システムに組み込み、遠方にいる各ドライバーの勤怠、点呼管理の一環として導入を進められた
    • スマホを利用した遠隔でのアルコール測定を実施しており、弊社機器のシステム連携の容易さが採用につながった
  • 国土交通省航空局/自衛隊/東京消防庁
    • 航空会社に義務化したことに伴い、自らも律すため導入を進められた
    • タニタはJ-BACの代表として航空行政のアルコール義務化について当初より参画
    • 色々意見を聞かれる中で、センサに関する実績、信頼を鑑みて採用いただいた
  • 全国の精神科/アルコール依存症外来
    • アルコール健康障害対策基本法立ち上げに尽力された、かすみがうらクリニック猪野医師とともに、アルコール依存症の治療のための検知器導入を進めた
    • タニタアルコール検知器を導入することで、医療時間の短縮、本人が飲酒を認めるようになり、大きな改善があったと報告されている

ALBLOクラウドサービスのご紹介

  • AQTIAとは
    • 新規事業の創出から実現までトータルでサポートするビジネスインキュベーションファーム
  • PLANNING(新規事業企画支援)
    • 先端テクノロジーを活用したイノベーション・新規事業の企画およびデジタル変革を支援
      • 新規事業の創出および計画策定
      • 新規事業における体験設計
      • プロトタイプ開発
  • INCUBATION(新規事業実行支援)
    • 新規事業の実行ケイパビリティの提供を通じた事業の確率
      • 新規事業マネジメントサービス
      • 新規事業実行サービス
      • 新規事業プラットフォーム運用サービス
  • ACCELERATION(新規事業運営支援)
    • アクティアが新規事業の運営支援を実施することで、新規事業のスピーディーな確立と市場優位ポジションの獲得
      • Joint Venture組成と事業計画策定
      • アライアンス
      • パートナリングの実現
      • 事業を実現するプラットフォーム構築
      • 運用

ALBLOクラウドの特徴

  • 背景
    • 航空事業者の飲酒に関する不適切な事案が相次いで発生したことを受け、2019年に乗務員に加え、整備従事者、運航管理者のアルコール検査も義務付けられた
    • 検査が適切に実施されているかを確認するために、同職種の第三者の立ち合いか、同等な仕組みが必要となる
    • 現状、航空会社では立ち合いに必要な人員を配置し、検査を行っている
    • 人件費の増加や、就業開始時などの検査が集中する際の待機時間が課題となっている
  • ALBLOクラウドサービスの特徴
    • 顔認証と画像による行動記録の組み合わせで、なりすましを防止し、公正性を担保
    • 導入先の基幹システムと連携し、検査未実施に運航準備を一時停止するなどが可能

  • 高精度なアルコール検査の実施
    • タニタ製の精度の高いアルコール検知器を使用
    • 誤検知が減ることで、検査対象者の心理的な負担を下げ、管理者の作業負荷も減らせる
    • ALBLO FC-1000とiPadを接続することで、検査状況を可視化し、クラウドへのスムーズな検査結果連携が行われる
  • 顔認証によるなりすまし(替え玉)防止
    • 定期航空協会が定める業界共通のアルコール検査システム構築基準に準拠するレベルで顔認証を実現
    • 立ち合い者不在でも検査可能
  • 視認性の高い管理者ダッシュボード
    • 管理者がアルコール検査状況を常に可視化できるようになっている
    • 通知アラートを管理ページ上部に実装
    • 職種に応じて最適な配置
  • 柔軟なシステム連携
    • 顧客の基幹システムと連携が可能
  1. 検査の流れ
    1. 左の検査対象者(運航乗務員・地上職員)が、iPadとFC-1000が接続された機器を使用して、顔認証とアルコール検査を行う
    2. 検査結果はALBLOクラウド上に集約される
    3. 管理者(部門管理者・部署管理者)は、ALBLOクラウドから検査状況をリアルタイムで確認する

※iOSに対応

新規サービスにおけるAWSの活用について

プロジェクト実行ステップ

  1. 事業計画策定
    1. ALBLOクラウドサービスを事業化するにあたり、5年程度の収益をシミュレーション
    2. 以降のSTEPと並行してブラッシュアップ
    3. AWSでは事業のスケールに合わせてシステムもスケールできるため、コスト面でも事業計画が建てやすい
  2. プロトタイプ開発
    1. 元々FC-1000はAndroidsのみの対応だったが、航空事業者からiPadに繋ぎたいとの要望があり、ALBLOとiPadの接続を実現
    2. 定期航空協会のアルコール検査システム構築基準に準拠するために、顔認証を含む検査フローの技術検証を実装
    3. クラウド側の管理機能を想定し、短期で開発
  3. 本開発
    1. プロトタイプの経験を元に、航空会社の方から実業務を伺いながらUI/UXをブラッシュアップ
    2. 現場の業務にシステムを組み込ませることで、シンプルな流れでアルコール検査が実現
    3. アジャイル開発により本システムを開発
  4. 顔認証精度検証
    1. 定期航空協会の求める顔認証精度を満たすために、実際の写真を用いた精度検証を実施

暗い場所での顔認証の精度検証

  1. 運航乗務員の利用シーンを考える
    1. 乗務前・便間・乗務後に検査があり、便間と乗務後はコックピットの中で検査することがほとんど
    2. 暗いシーンでも顔認証が行えるかどうかが業務上重要になってくる
    3. Retina Flashをアプリに組み込んで解決

顔認証の評価観点を検証する

  • FARとFRRのトレードオフ
    • 類似度の値を高する(≒認証条件を厳しくする)とFARは下がり、FRRの値は増加する
    • 逆に、類似度の値を低くする(≒認証条件を緩くする)とFARが増加し、FRRが減少する
    • FARとFRRが同じになるように閾値を決定した時、それをERR(Equal error rate: 等価エラー率)と呼ぶ
  • FAR (False Acceptance Rate, FAR): 他人受入率
    • 別人同士を本人だと間違えてしまう失敗
  • FRR (False Rejection Rate, FRR): 本人拒否率
    • 本人同士を他人だと間違えてしまう失敗

  • 検証実施方法
    • 目標とする判定基準
      • 「FAR(他人受入率)が〇.〇%の時、FRR(本人拒否率)が〇.〇%以下であること」を満たせる類似度の範囲
    • 検証アプローチ

  • 測定方法
    • FRR/FARごとに計2種類のテストを行う
      • 比較元本人と実際に本人が写っている写真を比較
        • 本人と本人写真の比較は、結果として本人として判定されるのが正しいが、それが他人と判定されてしまうケースがどのくらいの割合で存在するかを算出する
        • FRR: 本人拒否率
      • 比較元本人写真と他人が写っている写真の比較
        • 本人と他人写真の比較は、結果として他人として判定されるのが正しいが、それを本人と判定されてしまうケースがどのくらいの割合で存在するかを算出する
        • FAR: 他人受入率
    • テスト結果
      • Amazon Rekognitionの顔認証サービスが出力する類似度(0-100)の1点ごとにFRRとFARを算出
      • 各点数において割合がどのように変遷するかグラフに表す
      • FRRとFARがともに基準値を満たす類似度の範囲を特定し、利用可能な判定基準値を導出

  • 40万回のテストを実施
    • 比較元: 対象者20名
    • 比較先: 顔データ10,243枚
    • 有効総テスト数: 20 * 10,243 = 204,860回
      • 2回実施したため、実質40万回のテストを実施
  • FAR 他人受入率の算出
  • FRR 本人拒否率の算出

最後に

  • ものづくり企業タニタの挑戦 〜モノからプラットフォームへ〜
    • いまある商材を見直す
      • 当初は対応できないと考えていたが、タニタとアクティア新製品を開発するのではなく既存製品を活用
      • 新しいサービスを創り出すというアプローチをとり、短期間でのサービス立ち上げに実現した
    • アイデアを短期間でカタチに
      • 当初はALBLOをiPadに接続して使うという要件だけだったが、その後様々な要件が追加になりプラットフォームサービスのプロトタイプを開発
      • プロトタイプがあったため、商談の成功や本格的なプラットフォーム開発にスムーズに移行できた
    • AWSの各サービスをフル活用
      • AWSは即時に各サービスが使え、例えば顔認証が必要になった際も即座に利用できた
      • プロトタイプ開発が即座にでき、本格的なサービス展開の際も強固なプラットフォームの基盤として活用可能
      • AWSは明確なプライスが提示されており、事業のスケールに合わせてプラットフォームをスケールすることが可能なため、事業計画が立てやすい