デザインのグローバリズムとリージョナリズム

デザインのグローバリズムとリージョナリズム

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1年ほど前にはなりますが、「放送大学」の「産業とデザイン」という講義の中で、「デザインのグローバリズムとリージョナリズム」というテーマでの放送がありました。

内容としては、情報、金融、経済、文化のグローバル化が進行する中で、それに対するリージョナリズムのデザインが中心の構成になっていました。
ウェブデザイン等をする上で、対象となるテーマの地理的な情報なども掘り下げることで、デザイン要素の選定などがしやすくなることもあるかと思います。(フォントや模様の選び方など)
概略的な内容になりますが、ひとつの知識としては有用だと感じたのでまとめてみました。

グローバリズムとリージョナリズム

「Coca-Cola」のロゴタイプは世界中のどこにいっても同じで、これはアメリカの豊かさというイメージと共に広がった消費と趣向のグローバリズムを象徴する現象となっています。
一方で、マクドナルドも同様にグローバルを象徴する典型であるといえますが、ヨーロッパの歴史的景観を有する都市に出店する際には、統一されたデザインを捨てて地域に調和するデザインを採用することになりました。
これは空間デザインにおけるグローバリズムがリージョナリズム(地域主義)に転換した例と言えます。

インターナショナルからグローバルへ

かつては文化の国家の垣根をこえることをインターナショナルと呼びました。
その根底には印刷、写真、通信、電話、ラジオ、テレビなどの通信放送技術と、鉄道、船舶、飛行機、自動車といった輸送技術の発達があり、それが産業革命後のモダンデザインの主潮流でもある、「機能主義」という思想が繋がりました。
機能主義とは、装飾ではなく求められる製品の機能に従って形態を決める思想です。
そしてドイツの「バウハウス」を起点に、アメリカの工業力を背景にして「インターナショナル・スタイル」という概念が確立されました。
このインターナショナルという言葉がグローバルという言葉として近年は広がっています。
これは国境のない同時性、同質性を意味する言葉で、特にITの発達により急速に進行しています。

バウハウス(Bauhaus, バオハオスとも)は、1919年、ドイツ・ヴァイマルに設立された、工芸・写真・デザインなどを含む美術と建築に関する総合的な教育を行った学校。また、その流れを汲む合理主義的・機能主義的な芸術を指すこともある。学校として存在し得たのは、ナチスにより1933年に閉校されるまでのわずか14年間であるが、表現傾向はモダニズム建築に大きな影響を与えた。(Wikipedia

グローバルなデザイン

グローバル現象はソビエトの崩壊によって社会主義経済諸国が資本主義化したことに同調していて、新自由主義的、つまり多国籍企業と金融市場主義がばっこしている経済状況と密接に結びついています。
その視点で見るとグローバリズムはアメリカイズムとも呼ばれていて、デザインの潮流にもアメリカ文化の影響が強く出ています。
コカ・コーラ、マクドナルド、スターバックスなどの店舗と商品デザインはアメリカ文化と強く結びついていて、アップルやマイクロソフトのOSが新しいアメリカ文化をつくりつつあります。
一方で、ファッションにおいてはヨーロッパ文化を背景にしたブランドがグローバルな競争力を維持しています。
こうした製品のデザインは、シンプルな機能主義的な理念とは異なる記号化、デザイン的な覇権などのデザイン傾向を包含してるように感じられます。

リージョナリズムの例

フィンランド

リージョナリズムのバックグラウンドとなる要素は多く分けると風土と伝統になります。

水と緑に恵まれた地勢という点で日本に近いところのあるフィンランドではノキアやリナックスなどのIT関連企業によって経済的な強国となりました。
さらに日本と同様に木の文化の国で、建築とインテリアデザインに独特の特徴があります。
テキスタイルのマリメッコ社、食器メーカーのアラビア社イッタラ社(ガラス器)などの鮮やかなデザインは世界的なブランドとなっています。
フィンランドは素朴な風土性や文化から、産業分野における世界的な企業を輩出しており、風土性から普遍性へと展開した文化であるといえます。

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マリメッコ社のテキスタイル

スウェーデン

スウェーデンは優秀な工業を有する豊かな国ですが、戦渦に巻き込まれることがなかったため現在でも魅力的な旧市街が繁栄街を形成しています。
ラグナル・エストベリという建築家はノーベル賞受賞者の晩さん会が行われることで知られる「ストックホルム市庁舎」を設計しました。
1934年に完成した近代建築ですが、あえて時代と逆行し、北欧の神話と伝承をにもとづく表象を盛り込んだ建築として水の都のシンボルとして比類なき美しさを誇っています。
また、スウェーデンのデザイン産業としてはイケアが有名ですが、こちらは創始者の出身地である自然環境豊かなエルムフルトの風土性に恵まれたシンプルなデザインが生かされています。

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ストックホルム市庁舎

北欧のリージョナリズム

フランスは美術やファッションの先進性において、イギリスは近代的なオーソドックスさにおいて、ドイツは工業技術において、アメリカは生産と消費のダイナミズムにおいてそれぞれにデザインシーンをリードしてきました。
それは古代ギリシャを源としてイタリア・ルネサンスに再開花した地中海文明の流れを継承しており、そのまま現代文明のメインストリームとなっています。
そういった中心文化の周辺に位置する北欧は、森と水の風土の中でリージョナリズムに育まれたデザイン力もってグローバルな産業に振興しており、産業にとっての大きな原動力となっています。

(番外)アメリカの「デモクラタイズ」と「DIY」

放送では触れられていませんが、前述のようにアメリカがIT業界でも世界をリードしている理由をアメリカ人的な考え方を中心に個人的に調べましたで、追加しておこうと思います。

デモクラタイズ

「人々のものにする」、つまり「誰もが平等に公平にあるものを利用できる機会を持てるようにする」という意味を持ちます。
これはアメリカで言うデモクラシーが「平等社会」という意味を持つことに起因しています。
再帰性をテクノロジーの本質と考えるブライアン・アーサーは、テクノロジーは要素の組み合わせであり、その要素自体がテクノロジーであるといっています。
そのような組み合わせの要請に応えるためには利用可能でいつでも手に届く状態にしておく、つまりデモクラタイズされている必要があります。
これはソースコードの再利用性などにもつながってくる部分だと思います。
デモクラタイズされた有用なものは、ウェブを通じて短期間のうちに多くのユーザーの支持を受け、次のDIYにつながっていきます。

DIY(Do It Yourself)

DIYとは自分自身でやってみるということです。
ツールを自分の手になじませる動機となるDIYというアメリカ人の生活信条は、そのまま創作活動全般に至る経路が埋め込まれています。

60年代に西海岸のサイバーカルチャーの出現に多大な影響を与えた人物にスチュアート・ブランドがいます。
彼は「東海岸の知識人は何かを書く、西海岸の知識人は何かを書くだけでなくなにかを建てる/作る」と言っています。
プログラミングの場合は書くことは即建てることなので、Write & BuildとはDIYやプログラミングの精神であるといえます。
書いたものは社会的な存在となり、フィードバックをもたらし、建てては書くというサイクルを生み出します。

デモクラタイズの考え方の上にDIYの伝統があるアメリカの場合は、人間の可能性を広げるためにツールをつくる方向に技術開発やイノベーションを動機付ける伝統があり、創造性のエコシステムを作らせる動きが働きます。

このように、アメリカ人のもつ気質が昨今のITテクノロジーの繁栄の要因になっているようにも感じられます。
このあたりを詳しく知りたい方は今回参考にさせて頂いた、「デザインするテクノロジー 情報加速社会が挑発する創造性(著 池田純一)」を一読していただけたらと思います。
本の中で創造的なエコシステムができるにあたり、これらにくわえて「ジェネラティブな」環境の必要性についても書かれています。

まとめ(感想)

今回の記事で自分が得た知識は、すぐになにかに具体的に生かすということは難しいかもしれません。
例えば何かのサービスを海外に展開するとき、ECサイトで土地柄に密接に結び付いたなんらかの商品をアピールするとき等の考え方のヒントになりそうだとは思いました。
また、アメリカの人々が土地柄として持つ生活信条もプログラムを書く人であれば、何らかのかたちかで影響を受けているとも感じました。
大きな話なのでこちらも具体性に乏しく仰々しいですが、全体と貢献における継承性、名誉の分配のバランスが保たれている要因になっている部分なので組織のリーダーなどの方には割と関わってくる部分とも感じました。