「国際標準の最新動向」に関するセミナーに参加してきました

2020.08.06

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はじめに

事業開発部でQAエンジニアをしている長友です。

今日は、国際標準の最新動向に関するセミナーに参加してきましたという投稿です。

参加したセミナーはこちらです。
セミナー: 国際標準: 知識体系SWEBOK、品質規格SQuaRE、ビジネス分析知識体系BABOK

どんな感じの内容だったかの報告です。

ソフトウェアエンジニアリング知識体系SWEBOK最新動向

様々な国際標準がありますが、ソフトウェアエンジニアリング、品質規格、ビジネス分析という、とても大事な分野の国際標準について、まとめて聞けるとてもいいセミナーでした。

まず最初の登壇は熱のこもったお話をされた鷲崎先生のSWEBOKのお話です。

出だしは日経の記事からで、国際規格の主導権を握るために各国がしのぎを削る形になりつつあり、国際標準への貢献が国際競争力の確保につながっていくというお話からでした。

SWEBOKがある意味としては、ソフトウェアエンジニアリングが正当なエンジニアリングかどうかはこうした知識体系があることも大事であるということです。

正当なエンジニアリングとは価値を形作り、科学基盤に基づいて、コミュニティがあることということで、そういう意味でSWEBOKはそうしたものがあります。

そして、ソフトウェア、システム、ビジネス、組織に対して、いくつかのBOKと言われる知識体系があることを示されていました。 いろいろなBOKはありますが、構造はほぼ同じような構造になっていることも示されていました。

SWEBOKガイドがある目的としては、一貫性のあることによる普及の促進と、知識体系へのアクセスすることを促す。そして、教育などの基盤とできるとのことでした。

また、対象は実務経験を積んだ方ということです。

SWEBOK自体は2004に最初のものが発行後、2014にV3.0が発行されています。この段階で新たに加わったものや変更などがあったものを示してもらい、その歴史も理解できました。

そして、今2021年に新しいものを提案できるようにという話に繋がります。

新たに考えているビジョンはとてもワクワクする内容です。

経済的な面での価値に注目していたものを顧客への価値ということに注目を広げる。 またAIといった今まさに社会的に大切な分野との関係を加えられる。現在のエンジニアリングや基盤として大事なアーキテクチャやセキュリティも加わる。 そして、これらをうまくまとめあげて実践ししていくために、アジャイルとDevOpsがぐるっと取り囲む絵には、とてもドキドキする感じが湧き上がるのを抑えるのができませんでした。

ぜひこれらを取り込んで、より良いものしていってもらえたらと思い、応援したくなる気持ちなりました。

ISO/IEC 25000 SQuaREの概要と最新動向

次に登壇してくださった方は、システム及びソフトウェア製品の品質評価を担当するWG6のコンビーナをされている込山さんです。

私はQAエンジニアなので、25000シリーズは参考にさせてもらうことも多いので、その最新動向を聞けるのを楽しみにしていました。

お話はまずどうして品質評価の標準が必要なのかというお話からでした。

今は品質要求がとても多様化していて、立場の違うステークホルダの様々なニーズに対応しないといけない状況。そして、様々な製品がつながる中では、標準的な品質に関する基準がとても重要だということです。

品質要求の合意をするための基盤を確立するものであり、評価の客観性や反復性を確保するためにも大事とのことでした。

これまで日本人の東先生がコンビーナシップを取ってこられた後を受けて、込山さんや日本人のセクレタリお二人で引っ張っているというのはとても心強く感じます。

その後は、SQuaREの内容についてご説明いただきました。

その次には、鷲崎先生と一緒になって行われたWSQB17についてもお話がありました。

WSQB17は、SQuaREが国際規格なので抽象的で扱いにくかった課題の解決を狙い、品質評価の枠組みを確立するものです。

SQuaREでは品質特性を示すだけでなく、その品質を測定することが規定されていますが、どう測定するかはなかなか自分たちのサービスや製品では難しいものです。 だから、こうしたものがあるととても扱いやすくなると思います。 この活動は現在も継続中で、今後も期待されます。

最後にSQuaREの現状をお話いただきました。

品質モデルの見直し、品質評価のところの改正、そして、新規に追加されるものあるとのことでした。

新規に加わるところでは、時代を反映するようで、AIとクラウドに関するものでした。

私の所属する部署で開発している prismatix でもクラウドは使われいるので、どんな内容なのか今から楽しみです。

SQuaREシリーズの将来⽅向 スタディグループ報告と国際標準化加速プロジェクトの紹介

続いて登壇してくださったのは、芝浦工業大学の中島先生です。

さきほどの込山さんのお話の続きで、SQuaREに関するお話です。

WG6グループのリーダをされていて、SQuaREがもっと有効に利用できるようにしていくお話です。

SQuaREを使っているユーザーからフィードバックを集めて、問題点を調べて、改善につなげる内容です。

調査はいくつかの国でされていて、各国により違いあるのがおもしろかったです。 日本は製品品質モデルを要求でレビューやテスト結果の評価に使われている例が多いそうです。

そうした結果から、シリーズ全体を利用するためのガイド作りや、用語と定義を維持・発展していく仕組み作りが必要とのことでした。
その詳細の中では、品質要求定義プロセスでは、様々なタイプのシステムなどに対応するため、クラウドなどのガイド作りということで、プロセスの適用ガイドとしてアジャイルやDevOpsがあがっていたのが印象に残りました。

引き続き中島先生からは経産省の戦略的国際標準化加速事業についてもお話がありました。 こちらも国際標準の普及を目指した取り組みが含まれています。

標準化フォーラムの開催、ヒアリング活動、そして品質要求記述手法に関するワークショップを行われているそうです。

ヒアリング活動では、今も9126の方が普及していてSQuaREは認知されているのが低いことが示されていました。ただ、活用例の中では、面白い使われ方をされていることも報告されていて、活用の幅は広いのかなと感じました。

また品質特性別の要求記述パターンのお話は今後参考になるものだと感じました。

ビジネスアナリシス知識体系BABOK解説・最新動向

最後の登壇は、IIBAの清水さんです。

今回価値ということを鷲崎先生がお話されて、それを受けてBABOK、ビジネスアナリシス知識体系のお話でした。

BABOK、私は本でパラパラとながめたくらいで詳しくはしりませんでした。

BABOKもどんどん進化をしているそうで、プロジェクトの成功がビジネスの成功とは限らないということで変革をしてきているそうです。

ビジネスアナリシスのコアコンセプトモデルでは、ニーズ、ステークホルダー、価値、ソリューション、チェンジ、価値の6つが示されている中で、ニーズ、そしてチェンジが大事というお話でした。

知識エリアの中の関係も図を用いいてわかりやすく説明してくださいました。

BABOKでもやはりアジャイルに関する拡張が加わっているそうで、今ではV2になっているそうです。

やはり時代にあわせて知識体系もどんどん進化しているのだなと思いました。

おわりに

今回ご登壇いただいた皆さまの発表の中で多くでていたのがAIと価値といった言葉です。

やはりこうした最新のものにも国際標準は対応していかないといけないということだと思った。またそうした対応をされていく中に日本人の方々が加わっているのはとても心強く感じます。

うまく使用していけるように自分も勉強していこうと思いました。

AIという言葉で思い出したが、ちょうど今月に入って、QA4AI コンソーシアムというところで、「AI プロダクト品質保証ガイドライン 2020.08版」が公開されたばかりです。このコンソーシアムには鷲崎先生もお名前を連ねていて、頭が下がります。 今後こうしたものも国際標準と関連づけられていくのかもしれませんので、いろいろと最新動向を追っていって、エンジニアリングの力を日本国内だけでなく、世界に向けて発信されていくといいのだろうなと思いました。