データビジュアライゼーションとは?デザインする際の重要なポイントを紹介!

データをデザインするためにどんな知識が必要なのか、私自身の学びをまとめました!
2024.01.09

こんにちは!アシスタントデザイナーのくぼです!

本記事では、データビジュアライゼーションとは?から、デザインする際に注意するべきポイントをご紹介します!

 

 

データビジュアライゼーションとは「データを分かりやすくする」こと

データビジュアライゼーションは、データを理解しやすいよう視覚的に表現することです。重要なのは、見る人がそのデータを正確に読み取れるようにすることです。

具体的には文字と数字で表されるデータを、グラフや図などのチャートで視覚化することを指します。この「視覚化」には、類義語に「可視化」という言葉が存在します。それぞれの意味を見比べてみましょう。

  • 可視化→見えないものを見えるようにすること
  • 視覚化→目に見えない抽象的な事などを、見てわかるような形にして示すこと

データビジュアライゼーションにおいては、見えるようにするだけでは不十分で、データの意味や内容を分かりやすく・理解しやすくすることが重要であるという意味で、よく「視覚化」という表現がされています。

単にデータをグラフにすることではなく、そのデータから重要な情報を読み取れるようにする必要があるのです。

 

 

データビジュアライゼーションの目的はコミュニケーション

データビジュアライゼーションは、データを視覚化することがゴールではなく、視覚化したデータの分析結果を受けて何らかの判断・行動を促すことにあります。そのためには、データから読み取れる事実・発見をいかに理解しやすい形で相手に伝えるかがとても重要です。

つまり、データビジュアライゼーションとはデータを通じて相手に何かしらの情報を伝えるための手段に過ぎず、あくまで目的はコミュニケーションなのです。

このコミュニケーションを成立させるためには、相手が持っているであろうコンテキスト(背景・文脈・共通認識)に配慮しながら、最も適したビジュアライゼーションがなんであるかを都度考え工夫することが求められます。

 

 

 

データビジュアライゼーションの種類

データビジュアライゼーションは大きく2つに分けることができます。

課題解決のためのデータ視覚化である「インフォメーションデザイン」と、自己表現のためのデータ視覚化である「データアート」があります。

ビジネスシーンで扱うデータビジュアライゼーションは、課題解決のためのインフォメーションデザインです。本記事で指しているビジュアライゼーションもこのインフォメーションデザインにあたります。

 

インフォメーションデザインも以下の4種類に分けることができます。

 

まだ事実として認められていない仮説を扱う「仮説検証型」「仮設探索型」

  • 仮説検証型:「〜〜は○○だろう」という仮説が事実かどうかをデータを使って裏付けるための視覚化
  • 仮設探索型:データ視覚化の行為そのものを通じて仮説(目的)を探索・立案する

 

事実を扱う「事実報告型」「事実説明型」

  • 事実報告型:→定点的に確認するべき数値を定型フォーマットなどで報告するための視覚化
    • 例:ダッシュボードなど
  • 事実説明型:一般的には、仮説検証型や仮設探索型をデータ視覚化した結果、認識できた事実や発見を読み手の理解しやすいように説明するためのデータ視覚化
    • 例:プレゼンテーションなど

 

これらをデータ視覚化の目的に沿って選択しましょう。

 

 

データの視覚化によって得られるメリット

データを視覚化することによって得られるメリットは「情報伝達の効率化」「記憶の補助」です。

それぞれ詳しく解説します。

 

情報伝達の効率化

データビジュアライゼーションでは、情報伝達の効率化が重要となります。より多くの情報を、より少ない時間で理解するためにデータの視覚化を行うのです。

例えば、複数のデータが一覧となって視覚化されるダッシュボードは、そのページを見るだけで短時間に多くの情報を得ることができますよね。

視覚化したデータが情報伝達を効率化するために役立っているのか?ただ単にデータをグラフ化しただけになっていないか?これらの視点を忘れずにデザインすることが重要になります。

 

記憶の補助

データ視覚化のメリットの一つに「記憶を助ける」という点があります。

多くの数値が並んでいる表データから、何か情報を得ようと数値を見比べても、すべての数値を記憶しながら必要な情報を読み取ることはとても困難だと思います。これを視覚化し、パッと見て情報を読み取ることができるようにするのがデータビジュアライゼーションです。

 

 

また、脳の記憶には、感覚記憶、短期記憶、長期記憶の3つがあるのをご存知でしょうか?

データビジュアライゼーションは、感覚記憶に訴えかけることが重要です。感覚記憶とは、考えなくても人間が無意識に反応するものです。

これは、視覚属性である色・形・位置など、見ただけでその違いを認識できるものへの反応を指します。

視覚属性の中の「色」をご紹介します。例えば、多くの数字が並ぶ中から9を探すのはとても面倒で時間がかかります。しかし、色をつけるだけで瞬時に9を認識することができますね。

視覚属性について、詳しくご紹介します!

 

 

視覚属性

表や図などのチャートを識別・理解するために役立てる表現を「視覚属性」と呼びます。人間が物事を知覚する際、情報理解の70%を視覚を介して行われると言われるほど、視覚が最も強力かつ効率的な知覚器官なのです。

この視覚属性を活用して、データを見る人が何に注目する必要があるのかを強調して表現します。

主な視覚属性は以下です。

  • 位置
  • 長さ
  • 向き(角度)
  • 太さ(幅)
  • 大きさ(面積)
  • 色(彩度)
  • 色(色相)

 

また、視覚属性には強弱が存在します。ここで言及する「強さ」とは、わずかな違いでも一目でわかることを指しています。

視覚属性は、組み合わせて使い分けることで有効に機能させることが可能です。ただし、視覚属性の複数使いには注意が必要です。

複数の視覚属性を使うと、認知的負荷を上げてしまうことが多いので注意しましょう。

 

ゲシュタルトの法則

他に、視覚認知にはデータの視覚化(チャートデザイン)に活用できるものとして「ゲシュタルトの法則」があります。その中の一部をご紹介します。

  • 近接の法則
    • 位置的に近接している物体同士が同じグループと見做されやすい
  • 類似性の法則
    • 色や形といった同じ視覚属性を持つ物同士が同じグループと見做されやすい
  • 囲い込みの法則
    • 線や枠で囲まれた物同士は、視覚属性が別であっても同じグループだと見做されやすい
  • 閉鎖性の法則
    • 一部が書けたように見える物体は書けた部分が補われやすい

 

 

シグナルとノイズを意識したデザインをしよう

上記で説明した視覚属性を扱うにあたって、重要な概念となるのが「シグナル」「ノイズ」です。

  • シグナル:集計値の持つ情報やその傾向を読み取るために必要不可欠な要素のこと
  • ノイズ:シグナル以外のチャートの構成要素(装飾的な要素はノイズとなる)

 

可能な限りノイズを排除し、シグナルの割合を最大化させるデザインをすることがデータ視覚化においてとても重要なのです。

ノイズを排除する際には、ユーザーのデータ分析の目的・チャートの役割を意識しましょう。ノイズを排除したことで見た目がすっきりしても、データ分析に不都合が生じてしまっては、良いデザインとは言えません。

そのためには、適切な伝え方(チャートの種類・色・文字・ノイズになるような無駄な装飾)を選ぶ必要がありますね。

 

 

データインクレシオという概念

データビジュアライゼーションの権威的存在であるエドワード・タフテ氏が提唱する「データインクレシオ」という概念をご存知でしょうか?

データインクレシオとはデータインクとノンデータインクの比率です。データインクとは、表したいデータそのものに使われるインクの量を指します。ノンデータインクとは、表したいデータ以外のグラフの枠線や軸の補助線などに使われるインクの量を指します。

余計な装飾を削ぎ落としてチャートをシンプルにするほどノイズが減り、データビジュアライゼーションとして良いデザインになるという基本的な考え方です。

ノイズ(認知負荷)を取り除くということは、視覚化したデータの何に注目してもらうか決めることともいえるでしょう。

 

色を扱う際に配慮しなければいけないポイント

データの視覚化において、必ず発生するのがチャートの色選択だと思います。その際に配慮しなければいけないポイントを2つご紹介します。

「ユニバーサルデザインを意識すること」「コンテキストに配慮すること」です。

 

ユニバーサルデザインを意識すること

皆さんは「色覚異常」をご存知でしょうか?色覚異常とは、大勢の人とは色が異なって見える・感じることです。日本にはおよそ320万人いるとされています。

この色覚異常に配慮した設計をカラーユニバーサルデザインと言います。

色覚異常の種類によって、見え方に違いがありますのでご紹介します。以下の写真は1型、2型の人にとって見えにくい配色の例です。(日本の色覚異常の方のほとんどが1型、2型です。)

なんとなくで色を設定してしまうと、意図しない見え方になってしまうことがあります。そのため、すべての人がわかりやすく判別できる配慮が重要なのです。

 

データ視覚化を行う際は、様々な人にどう見えているのか、チェックしてみてください!→色覚シミュレートができるサイト【Chromatic Vision Simulator】

配色のヒントにぜひ→伝わるデザイン

 

 

コンテキストに配慮すること

本記事の前半で、「相手が持っているであろうコンテキスト(背景・文脈・共通認識)に配慮しながら、最も適したビジュアライゼーションがなんであるかを都度考え工夫することが求められます。」と書きました。

ここでのコンテキストは具体的に、色覚異常、性別、人種、民族、宗教、文化などの表現への配慮を指します。

例えば、色は文化によって異なる意味を持っている可能性があります。日本では、男性は青、女性は赤で表現される場面が多い、かつそれに違和感を感じるケースは少ないですが、欧米では避ける傾向にあります。皮膚の色や国旗の色など、何気なく起用した色がある人にとっては重要な意味を持っているかもしれないのです。

選んだ要素が見た人にとってどのような影響を与えるか?どう感じるか?を考えましょう!

 

 

参考図書

本記事は以下の本を参考に書いています。もっと詳細を勉強したい方はぜひこちらを読んでみてください!

データ視覚化のデザイン

データビジュアライゼーションの教科書

ビジネスダッシュボード設計・実装ガイドブック

 

 

さいごに

データの視覚化は、ただ単にグラフにすればいいというものではなく、そのデータをどう活用できるのか?という視点がとても重要です、同じデータでも、目的によっては全く異なるデザインになる可能性もありますね。

デザインは、人間の認知特性や、データを見る人のコンテキストなど、配慮するべきポイントが多くあります。今回はデータビジュアライゼーションにフォーカスしましたが、これらの配慮はどのデザインにおいても重要だと感じました。

今回得た学びを、日々の業務に活かしていけるよう精進したいと強く思う今日この頃です!

参考になりましたら幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました!