「伝わる情報アーキテクチャー」を心がけよう! 社内勉強会でお話しました。

達意の文章を書き始める第一歩に貢献したい。国語が苦手でも、「伝えたい」という強い意思が、「達意の文章」を書く技術を習得する原動力である。そんな思いをソフトウェア技術者向けに伝えるために組み立てた勉強会です。
2023.08.07

ジョインブログを執筆したところで「伝わる情報アーキテクチャー」というスライドが気になった。文章を書くのが苦手なので、社内向けに勉強会を開いてほしい。

そのようなご要望にお応えして、クラスメソッド向け勉強会に臨みました。

※2023/8/28 追記:「日本語スタイルガイド 第4版」発売の速報

「伝わる情報アーキテクチャー」って、何を言っているの?

ソフトウェア屋さん向けに「文章による説明」を「情報アーキテクチャー」という切り口でお話をすると、苦手意識なんてどっかにすっと飛んでしまい、好奇心を持って、聞いていただけるのでは?という着眼です。説明文の情報アーキテクチャーというのは、シンプルな階層構造のアーキテクチャー(ロジカル・ライティング)です。様々なデータ構造を取り扱っている皆さんならなおさらです。難しくありません。

どちらかと言えば、複雑な情報をシンプルな構造に落とし込む(整理整頓する)ことがとても大切です。プログラミングも同じですね。

国語が苦手な皆さんに気軽にたくさん説明文を書いていただき、お互いに添削し、良い説明文と悪い説明文を見極める力をつけていただきたいと思っています。説明文の文章力は、各段に上がるはずです。そこからテクニカルコミュニケーション技術の習得をスタートしてみましょう。

テクニカルコミュニケーション技術とは?

テクニカルコミュニケーション技術とは、「文章による説明技術」です。物事を文章で説明するという技術は、生活するうえでとても大切な技術です。欧米では専門大学や専門学部が存在されるほどの技術分野なのだそうです。

テクニカルコミュニケーション技術は、テクニカルコミュニケーター協会が中心となって、マニュアルを執筆する技術として整備されてきました。その技術が「日本語スタイルガイド」としてまとめられています。その技術の向上と人材育成に活用するために「テクニカルコミュニケーター技術検定試験」も実施されています。

テクニカルコミュニケーション技術を習得していくと、文章による説明技術力が向上して、言葉による説明技術力も上がるので、プレゼンテーションスキルも向上する筈です。だから、マニュアル的な「ライティング」という狭いイメージより、コミュニケーションという枠組みがふさわしいと思います。

テクニカルコミュニケーション技術の普及と向上は、個人と、組織と、国のスキル向上に貢献できる技術だと思います。マイナーなんですけどね。メジャーにしましょう!

実用文とは?

社会に出て出会う文章は、案内文、報告書、提案書、手順書、説明書、レポート、論文などをまとめて、「実用文」と言われます。学校で習う文章とは違います。

実用文は、読者が決まっています。読者に期待する行動があります。誰かに何かをしてもらうための文章です。そう考えると、実用的な文章ですね。

実用文の簡単な構造は、「概要、本文、結論」のある文章です。実用文に、転は、必要ありません。

実用文は、読者が決まっています。読者があるので、読者をイメージして文章を書きます。社内なのか、取引先なのか、メディアなのか。部長なのか、課長なのか、担当なのか。実用文を書くには、マーケティング思考が求められるんです。

実用文は、概要だけ読んで理解できれば、本文や結論を読む必要はありません。本文や結論をそれができる概要に要約する技術(訓練)が必要です。

読む人全員が、全文を読まなければ、行動を起こせないような文章は、実用的ではありません。実用文は、読み手が読む内容を選択できるので、効率が良い文章です。

詳しくは、スライドをご覧ください。

2023/8/28 補足:「日本語スタイルガイド 第4版」の発売決定!

スライド.29 でご紹介している「日本語スタイルガイド」の第4版がCDシンポジウム2023にて、2023年10月発売が発表されました。2023/8/23に開かれた「CD16 日本語スタイルガイド改訂第4版のポイント解説」にて、その日程と概要が解説されています。

  • 累積発行部数:13,150部 (2023年6月 時点)
  • 第4版の発行予定日:2023年10月
  • 予定価格:3,000円(税込み)
  • 改定の背景
    • 高校の現代文が「論理国語」と「文学国語」に分割。論理国語が実用文を学ぶ選択科目。
    • 文書スタイルの変化:コンテキストライティングからパラグラフライティングへ
    • 媒体の変化:「紙」から、IT機器の「画面」やインターネットによる「配信」へ
    • 短文の普及:SNSやメールで、要点を短く書く習慣の普及。
    • 法令の更新
    • 「日本語スタイルガイド」の活用範囲の拡大:「TC」から官庁の公文書など「様々な分野」へ
  • TC技術検定試験の状況 (2000年~2023年2月の記録
    • 累計受験者数:約 18,200名
    • 累計合計者数:約  7,260名

詳しくは、「CD16 日本語スタイルガイド改訂第4版のポイント解説」で公開されている≪資料≫をご確認ください。

技術系や理系と言われる人材って

論理的に考えたり、何かを組み立てることは得意だったりするけれども、自分の考えていること、伝えたいことを文章で表現することは苦手であることが多いですね。

そのような条件下で技術者が「技術ブログを書く」ということは試練(修行、難行)であるともいえるのではないかと思います。しかし、「実用文」という考え方を知っていただいて、それを実現するスキルは、いわゆる文系的なスキルというより、理系的スキル(ロジカルシンキングなど)が重要であり、それが発揮できる分野であると思います。

本来それぞれが追及されている「技術」に、「効率よく文章で伝える技術」が加わることで、技術者としての第一歩が始まると考えています。「達意の技術ブログ」を書く努力を続けることで、日常のコミュニケーション力も、顧客とのコミュニケーション力も、向上する筈です。

もしかしたら、「てにおは」が気になるようになるかもしれないですね。それは、その時、軌道修正してもよいですし、情報アーキテクチャーがしっかりしていれば、読み手もフォローしていただけると思います。誰に、何を伝えたいのか、どういう段取りで伝えるのかを考えて、文章を作ってみてください。

ほら、コンピューターに対するプログラミングと変わらないじゃん、って思えてくると思います。そう思えてきたら、プログラミング技術とテクニカルコミュニケーション技術が融合して、ひとつレベルアップした「達意の文章を書くことは、人間に対するプログラミング」に達したのだと思います。

技術者が伝えたいことを文章で表現する場として「技術ブログ」があることを活かして、スキルアップを楽しんでいただければ、幸いです。技術ブログは、小説を書く場所ではありません。

ところで、スライドの緑は何でしょう?

「にこまる」というお米の稲です。「にこまる」は、近年、暖地向けに開発されたお米です。「にこまる」は、晩生(おくて)なので、7月下旬には青々としています。

なお、おいしいお米と言われるコシヒカリ(早生)などは、主に寒冷地域で栽培されており、5月連休ぐらいに田植えが行われ、7月下旬には稲穂が出てきます。

暖地向けのお米は、寒地向けのコシヒカリなどと比較して、味が劣ると思われていました。寒冷地向きのおいしいお米のイメージを定着させたのは、「魚沼産ゴシヒカリ」(食味ランキングで、特A)です。今でもトップの座にあると思います。静岡県西部の「にこまる」は、食味ランキングで「魚沼産コシヒカリ」と同等評価をいただいています。

地球温暖化が進むと、暑さに弱い寒冷地品種は、困難に立ち向かうことになるのかもしれません。

安心してください。

「にこまる」があります!