理想と現実のギャップ「リアリティショック」への対応 マネージャー編

2024.01.24
こんにちわ。組織開発がミッションの人事グループ・組織開発室に所属しているてぃーびーです。
企業に所属している各従業員にはそれぞれが思い浮かべる組織・チーム・業務・役割などに求める期待があります。
この期待と現実に大きな乖離が発生した場合、大きなショックを受けます。
このショックを表す概念である「リアリティショック」とはどのようなものか、なぜ発生するのか、どのように対応するのかについて、マネージャー目線でまとめます。

リアリティショックとは?

リアリティショックとは、従業員が働く環境において思い描く期待と実際に体験した現実に大きなギャップがあったときに受ける衝撃のことです。

リアリティショックが発生する場面の例

リアリティショックの場面として以下のようなものがあります。
  • 入社時 - 入社時に抱いていた期待と入社後の現状とのギャップ
  • 人事異動時 - 人事異動前に抱いていた期待と人事異動後の現状とのギャップ
  • 役職就任時 - 役職就任前に抱いていた期待と役職就任後の現状とのギャップ
  • 役割変更時 - 役割変更前に抱いていた期待と役割変更後の現状とのギャップ
  • 昇格時 - 昇格前に抱いていた期待と昇格後の現状とのギャップ
  • 評価時 - 自己評価と最終評価とのギャップ
なお、典型的なイベントを列挙しただけで、リアリティショックが発生する場面は他にも多様に存在します。

リアリティショックはなぜ起こるか?

リアリティショックの発生理由として典型的なものとしては以下の3つがあります
  1. 期待の確認不足
  2. 期待の変化の確認不足
  3. 期待に対する認識のズレ

1 期待の確認不足

期待の確認不足」は自分がマネジメントしている各メンバーがどんなことを期待しているのかを把握できていないようなケースです。
メンバーによって働く上で何を重要視しているかは異なるため、
  • メンバーが何を大切にしているか?
  • その対象についてどのような期待を持っているか?
を確認していないと、現状がその期待を満たせているのかどうか把握できません。

2 期待の変化の確認不足

期待の変化の確認不足」は自分がマネジメントしている各メンバーの期待の変化を把握できていないようなケースです。
人の考えは変化します。例えば、選考〜入社当初は専門家としてのキャリアを志していた人が、入社後の体験を通してマネジメントを志したいという気持ちに変化するようなケースがありえます。
このような変化を把握できずにいると昔の期待を元に考えてしまい、最新の期待とのギャップを生み出してしまう可能性があります。

3 期待に対する認識のズレ

期待に対する認識のズレ」はお互いに期待を伝えているが、伝えた内容への解釈がズレているようなケースです。
例えば、メンバーは「より大きな範囲への貢献をしたい」という期待を伝えているが、その範囲はあくまで技術の専門家として想定していたとします。一方でマネージャーは「マネジメントで広く貢献したいのだな」と解釈したとします。
自分が伝えた言葉が意図通りに伝わるとは限りません。特に抽象度が高い内容ほど誤解を生みやすくなります。
相手から聞いた期待に関する内容の解釈の幅が広い場合は、具体例を引き出すなどして解釈がズレないように確認する必要があるでしょう。

リアリティショックの影響

リアリティショックが発生すると、期待と現実が大きく乖離するため、モチベーションが低下します。
そのギャップが本人にとって重大な内容の場合、離職や静かな退職に至ることも考えられます。
また、仮に単発では我慢できる範囲だったとしても、複数のリアリティショックが積み重なれば同様に離職や静かな退職に至る事が考えられます。

リアリティショックへの事後対応

リアリティショックが発生した場合、事後対応によってショックを和らげたり、誤解を解くことができる可能性があります。
必要な対応手順としては
  1. 発見
  2. 把握
  3. 対処・緩和
があります。

1 発見

メンバーがリアリティショックを受けていることを発見できないことには対処できません。
発見するための前提としてメンバーの悩み・不満を相談してもらえるような信頼関係を作っておくことが必要になります。
手段としては1on1は信頼構築の場と、リアリティショックを共有する場の両方を兼ねることになります。

2 把握

メンバーがショックを受けている事を発見することができたら、今度はその詳細の把握です。
メンバーがどのような期待を持っていて、どのような現状に苦しんでいるのかを質問を通して整理しましょう。
なお、普段からの関係でメンバーが何を大切にしているか把握している場合、期待について予測がつきやすくなります。

3 対処・緩和

リアリティショックの内訳の期待と現実のギャップが分かったら、必要な対処を行います。
そのギャップが解消可能なものであれば解消に向けた対処をします。
ギャップを完全に解消することは難しいが多少なりとも前進できる場合、緩和に向けた一手を打ちます。

リアリティショックの予防

リアリティショックが発生した場合、事後対応ではリカバーできない場合や、そもそも発生しているかどうか発見できない可能性があります。そのため、予防ができると理想です。
リアリティショックは期待と現実のギャップから起こります。
そのため、常にメンバーの期待を把握し、現状との差異を把握することが予防になります。
メンバーが持つ期待は入社前まで遡ります。
選考過程で何を求めているか確認し、それに対して会社として応えられる部分と応えられない部分を正直に伝えた上で入社してもらいます。逆に、ここで盛って伝えると入社後にリアリティショックに至ります。
また、入社以降は部門でのオンボーディングでの期待値合わせをすることで期待を把握し、それ以降は継続的な1on1を通して期待値合わせを継続します。
ありがちなのが、ジュニアなメンバーには手厚く1on1をしているが、自走できるシニアなメンバーの1on1を省略するようなパターンです。業務のサポート目線では、不要かもしれませんが、期待値の定期把握の意味では手薄のなります。結果的に、リアリティショックを見逃しやすくなります。シニアなハイパフォーマーとの定期的なコミュニケーションも大切にしましょう。
直接のコミュニケーション以外でギャップが発生しているか確認する方法としては各種従業員アンケートもあります。例えば
  • 入社後3ヶ月、6ヶ月、1年の節目に経過を確認するアンケートで個人別にギャップが発生しているか確認できるようにする
    • 特定のタイミングにおける個人のギャップを直接発見できる
  • エンゲージメントパルスサーベイで匿名の状態で部門、チーム単位のエンゲージメントを把握可能にする
    • 全体傾向としてギャップがありそうな人がいるかどうかわかる
などです。

対応できないリアリティショック

リアリティショックは期待と現実のギャップから発生しますが、仮に内容を把握できたとしても期待が過大であったり、企業の方針と大きくズレている場合は満たすことができません。
この場合は、リアリティショックの内容がわかったとしても対処することができません。
例えば、入社後にキャリア志向が変化し、社内では実現できない職種や経験への期待が強まった場合、現実とのギャップを社内で解消することはできません。

まとめ

「リアリティショック」とはどのようなものか、なぜ発生するのか、どのように対応するのかについて、マネージャー目線でまとめました。
リアリティショックの対策をすることは、裏を返すとメンバーの充実した業務体験にもつながります。仕方なく仕事をしている状態から、本人が求めるものに即して楽しく仕事をできる状態を実現したいところです。

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