[レポート] 災害の早期警告システムと気候災害の軽減 #AWSreInvent #WPS103

2024.01.01

こんにちは、SHIOです。

人命救助のための災害の早期警告システムと気候災害の軽減についてのセッションに参加しました。フォーカスされているエリアはラテンアメリカで、実際にブラジルとパナマで導入されているシステムについて4名のパネリストによるディスカッション形式 (distinguished panel) のセッションでした。

セッションタイトル:
WPS103 | Lifesaving early warning systems and mitigation for climate disasters

概要

Every day, people around the world are impacted by the unexpected—from pandemics, to climate and human-wrought disasters, to economic crises. AWS is at the forefront of supporting public sector organizations as they adapt to natural disasters and seek to mitigate carbon emissions. Join this session for a discussion on topics such as developing early warning systems, monitoring carbon credit projects, identifying deforestation trends, and developing future wildfire risk. From floods in Central America to land cover change in Brazil, panelists share how the use the cloud to better prepare and respond to the impact of climate change.

 

パンデミックから気候変動や人為的災害、経済危機まで、世界中の人々は日々予期せぬ事態に見舞われています。AWSは、自然災害への適応や二酸化炭素排出量の削減を目指す公共セクターを支援する最前線にいます。本セッションでは、早期警戒システムの開発、炭素クレジットプロジェクトのモニタリング、森林減少傾向の特定、将来の山火事リスクの開発などについて議論します。中米の洪水からブラジルの土地被覆の変化まで、パネリストは気候変動の影響によりよく備え、対応するためにクラウドをどのように利用しているかを紹介します。

パネリスト

Abby Daniell
Director, Latin America, Canada, and the Carribean Amazon Web Services

Dr. Rodrigo Bellezoni
Public Policy Specialist, Centre for Territorial Intelligence, Universidade Federal de Minas Gerais, Brazil

Malitzie Oderay Rivera
Director of the Emergency Operations Center, national Civil Protection System, Panama

Camila Saad
Disaster Preparedness & Response, Latin America, Canada, and the Carribean Amazon Web Services

ディスカッションは英語とスペイン語で行われました。

レポート

セッションでのトーク内容は主に以下の2点です。

  • Climate mitigation (気候緩和)
    地球温暖化や気候変動を抑制し、その影響を軽減するための取り組みや手段

  • Climate adaptation (気候適応)
    地球温暖化による影響や気候変動に適応するための取り組みや戦略

気候適応に関してはテクノロジーを活用して備える方法となり、自然災害への対応を支援する方法でもあります。さらにテクノロジーを活用して、二酸化炭素排出を削減する方法でもあります。こちらは相互に関連しています。

ブラジルのプロジェクトについて (SeloVerde)

SeloVerde についての紹介がありました。SeloVerde は、ブラジルのパラー州のプロジェクトのひとつで AWS 上の AI、ML、オープンソースデータを活用して森林破壊を監視するツールです。

   (画像クレジット: Escada Amarela)

セッションでは、SeloVerde のアーキテクチャの紹介はなかったのですが、SeloVerde に関するAWSブログがありましたのでご紹介します。上記は該当ブログで説明されているアーキテクチャとなります。

SeloVerde uses geospatial big data and AI/ML to monitor deforestation in supply chains, powered by AWS

ディスカッションでは以下のお話がありました。(意訳)

  • サイエンスとテクノロジーがどうやって公共政策を形成できるか

  • ブラジルの各州では森林火災に対する懸念が高まっている

  • 気候変動はこのような事態を激化させ、公共政策や地域情報の強化が必要となっている

  • ブラジルで開発したもうひとつのシステムは、火災が発生しやすいブラジルのサバンナの延焼予測システム

  • このシステムは、衛生データとホットピクセルを統合して、燃料量・植生・湿度・火災発生確率を示す図を作成する

パナマの早期警告システム

パナマ災害対策機構(SINAPROC)がラテンアメリカ、カナダ、カリブ海地域 (LCC) における災害対策および対応プログラムの支援を受けて導入した洪水の早期警告システムについての紹介がありました。

以下、内容をまとめます。(意訳)

  • 河川は一年を通して洪水を繰り返すため、さまざまな影響を受ける

  • 以前の警告システムは数字と色のついた木の板を使用し、川の水位を測っていた

  • 川の水位によってどの程度危険があるかその場で分かるようにしていた

  • 河川が近くにある地域社会ではリスクが高まっていくため、そのような地域のために早期警報を提供できるような効率的なシステムが必要とされていた

  • 導入されたのが、AWSのサービスを使用しLoRaWAN通信をベースとしたIoTセンサーがリアルタイムで情報を把握し、いち早く警報を発するシステム

  • センサーを使用し、クラウドにリアルタイムデータを取得する

  • システムのコントロールパネルから該当のエリアと各種情報(温度などの)を確認でき、河川の現在の状況を把握することができる

  • 緊急時に自動でアラートを通知する

LoRaWAN:
LPWA(省電力長距離通信)の一種で、「LoRa Alliance(外部サイト)」が定めた無線ネットワーク規格の名称

パナマの洪水早期警告システムについても AWS ブログがありましたのでご紹介します。

Sistema de monitoreo y alerta temprana de inundaciones

FISC システム (Fire, Ignition, Spread and Carbon Cycling)

FISCシステムは、大規模火災を予測するシステムです。

科学に基づいたソリューションとテクノロジーを組み合わせることで、公共セクターがどのように支援されるのか?

科学に基づいたソリューションとクラウドテクノロジーの統合により、政府はデータに基づいたスケーラブルで費用対効果の高い意思決定が可能になり、迅速な対応も実現できる。  

  1. クラウドにデータをアップロードしオンラインでデータ処理が行えるため、的確な意思決定が可能
  2. クラウドテクノロジーへのアクセスとスケーラビリティによって関連する費用の大幅削減 (大規模な施設やそれに伴う投資は必要ない)
  3. クラウドテクノロジーのスケーラビリティが大規模な地域をカバーできる

多災害早期警戒システム

ラテンアメリカにて、AWS テクノロジーが洪水や SeloVerde のようなオープンソースプラットフォーム以外の領域でどのように役立っているかについてのお話がありました。

以下、まとめます。(意訳)

  • 国連防災機関は、組織に対して多災害早期警戒システムアプローチに従うことを指導している

  • 多災害早期警戒システムは、山火事・洪水・地震などの災害が単独で、同時に、または連続的かつ時間の経過とともに累積的に発生することを考慮している

  • 上記の指針に基づいて、AWS と災害予防および対応プログラムでは組織と連携し、異なる災害を統合するシステムの開発に取り組んでいる

あまり聞いたことのない単語がいくつかあるので調べたのですが、早期警戒システムは全世界に普及するよう国連が呼びかけているということを知りました。

ここまでのセッションで、洪水や山火事に関する早期警告システムの説明がありました。今回のセクションで地震についての説明もあったのですが、地震の早期警告システムは非常に高額で、システムを導入する予算を負担できない国には厳しいものだったようです。
しかしAWSのパートナー会社と協力し、振動を測定・検出するデバイス(地震計)を500ドル未満で開発することができ、問題を解決することができたとのお話がありました。

  • 政府は低コストのセンサーを高密度ネットワークで展開できるようになった

  • 費用だけでなく、検知時間も大幅に短縮された

  • 組織が市民に迅速に警告を発し、避難・避難場所を見つけることができるようになった

次は、山火事に関する検知システムの仕組みについての内容です。

  • 衛生画像では数日から数時間で山火事を検出することができる

  • 山火事のカメラは数時間で検出可能

  • 最新技術のセンサーでは山火事の超早期検出が可能

  • 大気中の温度、湿度だけでなく、異なる気体の変化も検出することができる

  • これらにより、消防士や緊急機関が即座に火災を検出・数分後に対応可能

AWS の災害予防および対応プログラムの目標は、政府機関や研究機関などと協力し、最終的にはこれらの組織がリスクにさらされているコミュニティにより良いサービスを提供できるよう、システムを統合することです。

最後に NASA とのパートナーシップを通じて行なっている取り組みについての紹介があり、災害リスク削減のため、研究者や教育機関と連携し技術とデータを提供することで研究を加速させる方法についてのお話がありました。

まとめ

従来の仕組み(人力などで行われていた部分など)がテクノロジーを使用することによって大幅に改善され、性能が上がりより良い仕組みに変わっていくことや、環境問題に対して科学とテクノロジーを統合させた場合のユースケースを聞くことに興味があり情報を得るのが好きなため、今回のセッションはとても興味深かったです。地震の早期警告システムには他のシステムと比べて高額だということも初めて知りました。
ディスカッションでは、ラテンアメリカはアジア太平洋地域に次いで世界で2番目に災害が多い地域である旨の話がありましたが、アジアに関しての情報も知りたいため機会があれば調べてみようと思います。

本セッションに興味のある方は是非動画を見てみてください!

レポートは以上となります。
ここまで読んで頂きありがとうございました。

資料

AWS re:Invent 2023 - Lifesaving early warning systems and mitigation for climate disasters (WPS103)

SeloVerde uses geospatial big data and AI/ML to monitor deforestation in supply chains, powered by AWS

Sistema de monitoreo y alerta temprana de inundaciones