サービスカタログを作成しよう #サービスマネジメント

システムオペレーションからサービスマネジメントへ。実例を織り交ぜながらサブスク / DX 時代に求められる「Ops」のあり方について考えます。
2022.12.06

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prismatix事業部 の菊地です。

みなさま、日々の運用、お疲れさまです。

前回は「ITIL 4」の第三弾として、主に「Ops」に関連する管理プラクティスのうち、インシデントや問題、継続的な改善など、各種課題の解決に必要となる管理プラクティスについてご紹介しました。

ベストプラクティスを知ろう (3) #サービスマネジメント

今回は「サービスマネジメント」の実現に向けて、「サービスマネジメントシステム」を構築する上で必要となる、「サービスカタログ」を作成する方法について具体的に見ていきたいと思います。

サービスカタログとは

サービスカタログについては、前々回 ベストプラクティスを知ろう (2) #サービスマネジメント の中で、サービスカタログ管理 プラクティスの説明において

サービスプロバイダがユーザに提供するサービスについて明文化した情報

であるとご説明しました。

少し漠然とした説明であったかもしれませんが、もう少し具体的かつわかりやすく言い換えると
みなさんが日々の運用において提供している価値そのものを、社内外の利害関係者にわかりやすく説明出来るように、文章として書き起こしたもの
と言い表すことが出来るかと思います。

とは言え、サービスカタログが無くてもこれまで日々の運用が出来ているじゃないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かにそうかもしれませんが、それでは次にサービスカタログを作成するメリットについて、具体的に見ていきたいと思います。

サービスカタログを作成するメリット

サービスカタログを作成するメリットとしては主に以下の3点が挙げられます。

  • どんな価値を提供しているのか明確になる
  • 期待値を適切に管理する(過大な期待を与えない)
  • 提供する価値の定型化や標準化に繋がる

それでは1つずつ具体的に見ていきたいと思います。

どんな価値を提供しているのか明確になる

みなさんは日々の運用において、見える/見えないに関わらず様々な業務を淡々とかつ確実に実施され、それによって価値が継続的に提供出来ているものと思います。

しかしながら、もしサービスカタログが存在しない場合には、関係者に対してその具体的な価値を提示することが難しくなります。

一方でサービスカタログが存在する場合には、関係者に対してその価値を具体的に提示することが可能となり、そこではじめてその価値を正当に評価することが可能となります。またそれによって見えていなかった部分も可視化され、その結果として他社サービスとの差別化を図ることも可能になるかもしれません。

期待値を適切に管理する(過大な期待を与えない)

他方で、もしサービスカタログが存在しない場合には、例えば Aをやっているのだから当然Bもやってくれるだろう と言った、関係者に対して過度な期待を与えてしまう危険性がつきまといます。

一方でサービスカタログが存在する場合には、みなさんが提供出来る価値が具体的に提示されていますので、そういった危険性をあらかじめ排除することが可能となります。

なお具体的な期待値については、ITIL サービスレベル管理プラクティスとも連携しながら SLA (Service Level Agreement、サービスレベル合意) や SLO (Service Level Objective、サービスレベル目標) といった数値目標を設定した上で、日々の運用業務の中でその遵守状況を測定することが望ましいとされています(具体的な方法については次回以降でご説明したいと思います)。

提供する価値の定型化や標準化に繋がる

初回 「Ops」をアップデートしよう #サービスマネジメント でもお話ししましたが、サービスライクに「Ops」を提供するために「Ops」をアップデートしていく中で、定型化標準化 というのが重要なキーワードとなります。

また前々回でも ベストプラクティスを知ろう (2) #サービスマネジメント - 標準化により生じる好循環 と題して、標準化 がもたらす好ましい効果の連鎖についてご紹介させていただきました。

日々の運用における様々な業務の中から、共通でかつ繰り返し実施される業務をリストアップし、その内容をサービスカタログとして整備することは、定型化や標準化が出来る、もしくは定型化や標準化を行った方が良い業務をリストアップしているに等しいとも言えます。

そう言った意味あいにおいてもサービスカタログを作成するというプロセスは、「Ops」をアップデートする中で避けては通ることの出来ないものだとも考えます。

なお具体的な定型化や標準化については、ITIL ナレッジ管理プラクティスとも連携しながら標準作業手順書(Standard Operation Procedure)のようなドキュメントを整備することが望ましいと考えます。さらに定型化や標準化を実現することで、その延長線上にコード化した上で自動化を実現することも視野に入ってくると思います(いずれも具体的な方法については次回以降でご説明したいと思います)。

サービスカタログを作成しよう

それでは日々の運用における様々な業務の中から、定型化や標準化が出来る業務をリストアップして、サービスカタログを作成してみましょう。

とは言え、サービスカタログの具体的なイメージが湧きづらいかと思いますので、一例として弊社で作成して管理しているサービスカタログをご紹介したいと思います。サービスカタログの内容はサービス毎にそれぞれ異なるはずですし、それぞれ個別に作成する必要がありますが、一方でみなさまにイメージをお伝えする目的において弊社の事例が参考になれば幸いです。

サービスカタログのサンプル

弊社では EC / CRM 向け API プラットフォーム「prismatix」をご提供しておりますが、サービス自体のみならず、あわせてサービスに必要となる様々な付加サービスもご提供しています。主に運用フェーズで必要となるそれらの付加サービスについて、弊社ではサービスカタログを作成した上でメニューとして管理を行っています。

サービスカタログ(イメージ)

メニューの名称 メニューの説明 インプット情報 内部 SLO
新規環境 構築依頼 本番 or 開発環境を新規に構築する 情報1
情報2
受付:X時間
完了:X営業日
既存環境 破棄依頼 不要となった既存環境を破棄する 情報1
情報2
スペック変更作業 要望にあわせてスペックを変更する 情報1
情報2
認証サービス 〇〇作業 認証サービスに〇〇作業を実施する 情報1
情報2
認証サービス 〇〇セットアップ 認証サービスに〇〇をセットアップする 情報1
情報2
問題・不具合調査 カスタマーより問題・不具合調査を受け付ける 情報1
情報2
受付:X時間
回答:X営業日
その他のお問い合わせ カスタマーよりお問い合わせを受け付ける 情報1
情報2

またメニュー毎にインプット情報を定めると共に、内部指標として SLO を定めています。さらに並行してメニュー毎に標準作業手順書の整備も進めています。

その上で、上記サービスカタログの内容を「サービスマネジメントシステム」に組み込むことで、社内外の利害関係者にポータルサイト上でメニューとして提示すると共に、メニューを選択すると必要となるインプット情報の入力フォームが展開されます。

さらに「サービスマネジメントシステム」の機能により、社内担当者に標準作業手順書の示した上で対応のアサインを行い、また対応状況について SLO 測定/レポーティングなどを行いながら、ベストプラクティス ITIL に準拠した形で適切かつ網羅的にサービス管理を行うことを目指しています。

サービスカタログをアップデートする

先ほど日々の運用における様々な業務の中から、定型化や標準化が出来る業務をリストアップしてサービスカタログを作成する、というお話をしました。一方で現時点では定型化や標準化が出来ると判断されなかったものの、時間が経過する中で要件が固まり、時を経て定型化や標準化が検討出来る段階に至ることも多いと思います。

また現代においてサービスは日々アップデートされる必要があり、新たにサービスカタログのメニューを追加する必要性に迫られることもあるかもしれません。

そう言った意味あいにおいても、サービスカタログは一度作れば良いと言うものではなく、サービスが継続し続ける限り、サービスカタログも絶えずアップデートし続ける必要があると考えます。よって定期/不定期を問わず、サービスカタログのメンテナンスするように心がけてください。

次回の予告

このブログでは、実例を織り交ぜながらサブスク / DX 時代に求められる「Ops」のあり方について、複数回にわたって考えていきたいと思います。

今回は「サービスマネジメント」の実現に向けて、「サービスマネジメントシステム」を構築する上で必要となる、「サービスカタログ」を作成する方法についてご紹介しました。

次回は「サービスマネジメントシステム」を構築する方法について、より具体的に見ていきたいと思います。

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