【統合運用管理】クラウド時代のジョブ管理の決定版となるか?Hinemos World 2013に参加してきた
はじめに
こんにちは植木和樹です。2013年11月15日に「Hinemos World 2013」が開催されましたので、そちらに参加してきました。本日は参加レポートとなります。筆者はHinemosをバージョン 2.4、3.1 の頃、主にWindowsサーバーの監視を目的に使用していました。ジョブ管理機能については使っていなかったため、今回発表されたバージョン 4.1でどんなことができるようになったのか知りたかったのが参加動機です。
オンプレにせよAWSにせよ、業務システムを構築した後の運用では「バッチジョブの定時実行」や「定形ジョブの任意実行」が少なからず必要になります。AWSに不慣れなオペレーターでもオペミスなく操作でき、失敗時には通知またはリカバリ処理ができるようなジョブ管理システムとして、今回のHinemos 4.1に注目しています。
Hinemosとは?
Hinemosはサーバーの監視・ジョブ管理などを集中管理するための「統合運用管理ソフトウェア」です。NTTデータより2005年にリリースされ、オープンソース・ソフトウェアとして開発されつつも、様々なパートナー企業から保守サポートやハンズオンセミナーを受けられ、大規模システムでの導入実績がある点が特徴です。
Hinemos:コンピュータ、システム、ネットワークの運用管理を実現するオープンソースソフトウェア(OSS)
開発はSourceForgeで進められています。フォーラムやメーリングリストを使って質問することもできます。
Hinemos プロジェクト日本語トップページ - SourceForge.JP
Hinemosの提供する機能
- リポジトリ管理
- 監視管理
- 性能管理
- ジョブ管理(バージョン4.1で大幅に強化)
バージョン 4.1 と クラウド対応について
Hinemos バージョン4.1は2013年10月2日にリリースされています。AWSで利用する場合にはHinemos本体とは別に「クラウド管理オプション」が必要になります。クラウド管理オプションの最新版 2.0が2013年11月25日にリリース(予定)とのことです。ということで、実際にAWSでHinemos 4.1を利用するにはもうしばらくお待ちいただくことになります。
Hinemos World 2013 参加セッション
ここからはHinemos World 2013で私の参加したセッションのまとめになります。当日は自分が参加するセッションだけでなく、全てのセッションの資料が印刷されいただくことができました。ただ当日のスライドは公開されていないようです。
【C-1】HULFT運用管理もHinemosで!Hinemos 4.1ジョブ管理機能で実現する 企業データ連携の新しいカタチ
はじめに
- 【ニュース】Hinemosがファイル転送ツール「HULFT」対応オプション製品をリリース!/ニュースリリース:Hinemos
- HinemosでHULFTの設定管理ができるようになった(v4.1 2013年10月28日リリース)
- 世間での評判「地味+地味」(笑)
HULFTとは?
- HULFTは業務向けファイル転送管理システムのデファクト・スタンダード
- Host Unix Linkage File Transfer
- ファイルを介したシステム間の疎結合
- セキュリティ(ファイル暗号化、ファイルアクセス履歴管理、データ整合性検証)
- 可用性(クラスタ構成、失敗時にも自動再配信など)
- 基盤運用の効率化・自動化(文字コード変換、データ圧縮、後続ジョブの設定(成功した時だけ次のジョブを実行)など)
- トータルコストの削減(FTPでの作り込みに比べ)
Hinemos + HULFTの組み合わせのメリット
最新バージョン HULFT8
- HULFT DAY 2013(Hinemos Worldと同日 品川で開催)
- MFT(Managed File Transfer)、データ連携機能に注力
- 転送性能の向上
- セキュリティ強化
- 利便性
- グローバル対応(多言語対応、UDPを用いた転送)
- 2014年 秋、冬リリース予定
感想
ファイル転送処理にHULFTを用いているシステムは多いと思います。Hinemosと連携することでファイル転送をHinemosのジョブとして管理できるため、ノードの管理からファイル転送ジョブの設定、実行、履歴管理が一元管理できるのは良さそう。
B-2 クラウドと共に発展する、Hinemosクラウド管理オプションの最新情報
これまでの運用管理における課題
- これまでの運用管理ソフトは要件で決められ固定されたシステムを対象とするものだった
- 運用管理ソフトの制約によって十分クラウドの特徴を活かせていないのでは?
クラウド運用管理のあるべき姿
- 管理対象の変化にリアルタイムに適応
- 必要なリソースを必要なだけ簡単に利用可能
- ハイブリッドクラウド環境を簡単にコントロール可能
Hinemos クラウド管理オプション ver2.0
- NTTデータ CloudN 対応
- クラウド専用管理機能
- クラウドリソースの自動制御
- 請求料金の配賦管理
- Enterprise版(クラウド管理オプション 1.0 では Standard版のみ)
- AutoScalingで追加されたインスタンスをHinemosが自動検知、自動監視設定
- [NEW]CloudWatch対応
- [NEW]クラウドリソースの自動制御(スケジュールされたインスタンスの停止、起動)(AutoScalingみたいなもの?)
- [NEW]請求料金の配賦管理(AWSサービス毎の料金を見ることが出来る)
ロードマップ
- クラウドオプション ver 2.0 Enterprise 2013/11/26 販売開始
- Amazon Web Services、NTT Communications CloudN、dimension data MCP(Managed Cloud Platform)対応
感想
Hinemosを用いた仮想サーバーのインスタンス管理や監視機能についてのセッションでした。インスタンスの自動検知や自動監視設定は良さそうですね。請求料金の配賦管理については表形式のみでの出力(?)のため、弊社メンバーズポータルのグラフの方が見やすいかも。
【C-3】 Hinemos4.1で進化したジョブ機能の全て
Hinemosのジョブ管理機能(構築、実行、結果確認)
- ジョブの構築
- ジョブの構造(ジョブユニット、ジョブネット、ジョブ、ファイル転送ジョブ、参照ジョブ)
- ジョブネット(ジョブのグループ化)はネスト可能
- 参照ジョブ一箇所で定義したジョブを他から参照する(重複管理の排除)
- 先行ジョブの結果や時刻によって次ジョブの実行を制御可能
- ジョブの「保留」、「スキップ」(必要に応じて人が判断してジョブの実行を制御可能)
- ジョブが予定時刻に開始しない、終了しない場合、開始遅延処理、終了遅延処理が実施可能(遅延したバックアップジョブの強制終了など)
- ジョブの実行
- 即時実行
- スケジュール実行
- 監視結果によるトリガ実行
- [NEW]ファイルチェック(作成、変更、削除)
- ユーザーが任意で設定可能な業務スケジュールによる制御
- [NEW]5分ごとにジョブ実行(多重度制御)
- [NEW]スケジュール予定ビュー
- ジョブの確認
- 通知(Hinemosクライアント、メール、Syslogエスカレーション、ジョブ通知、コマンド通知)
- (※筆者注:Amazon SNS対応するとうれしいなぁ)
Hinemos 4.1ジョブ管理機能のまとめ
- 複雑なジョブ構造を容易に構築可能
- 柔軟なスケジュール設定
- ジョブ実行結果を容易に確認
感想
Hinemosのジョブ管理機能はすごい!相当柔軟にジョブの設計やスケジューリングができそうです。ジョブマップオプションを使えばジョブの前後関係や実行中・失敗したジョブは色が変わって視覚的に分かるようになっています。またジョブ失敗を考慮した作りになっているため、失敗履歴の参照やリカバリ処理の自動化など、かゆいところに手が届く作りになっている印象です。本当に大手商用製品いらなくなるかも。
休憩スペースでNTTデータの方に質問
休憩スペースでNTTデータの方にいくつか質問させていただいてました。
- クラウドオプション1.0ではHinemosクライアントからログインするのにAWSマスターアカウントが必要だったのですが、IAMユーザーには対応しませんか?
- "hinemos"という管理者ユーザーに紐付けるのはマスターアカウントでなければならない。一般ユーザーはIAMユーザーと紐付けることが可能です。
- 各AWSアカウントのEC2にはHinemosのAgentだけインストールし、単一のHinemosマネージャーをマルチテナントで使う方法もある。ユーザー毎にScopeを分ければ、ユーザーからは他のユーザーが見えない。
- 設定をGUIで行うのは簡単なのですが、同じ監視設定をバッチ的に行いたい。設定のエクスポート・インポート機能はありますか?
- UtilityオプションでExcelに出力ができる。Excelで修正後、再度インポートするという方法を検討してみてください。
- RDS for PostgreSQL 対応は?
- まだ出たばかりなのでなんとも言えませんが、検討します。
- HinemosのHAオプションでPostgreSQLごと冗長化できているならRDSでなくてもいいんでしょうけど?
- HAオプションが使えるのはオンプレに導入したHinemosのみ。AWSは非対応(ブロードキャスト、マルチキャストが使えないため)
- Hinemos Agentの64bit版はやっぱり購入必要ですか?(4.0まで無償提供は32bit版のみなのです)
- 4.1からは64bit版 Agentも無償提供します!
【A-5】すべて伝えます、Hinemosの今と今後の展望
Hinemosのいま
- Ver4.1 クラウド対応、ジョブ管理強化
- ジョブ管理
- ロールベース
- リソース削減
- 64bit版OS用インストーラー
- ライフサイクルマネージメント(業務ジョブ管理、システムモニタリング、システム需要分析、サーバー増設・バックアップ管理)
- マルチOS、マルチハイバーバーザー、マルチクラウド
- Hinemosパートナーが提供するソリューションと組み合わせことで高信頼、高機能にアップグレードできる
- Hinemosが提供する8つのオプションの中で特に注目の「見える化」3機能
- ジョブマップオプション ver1.1.0(ジョブ構成の可視化+HULFT連携機能)
- ノードマップオプション ver1.3.0(ネットワークトポロジの可視化)
- クラウド管理オプション ver2.0(クラウド管理の可視化)
- 安心のサポート
- 保守サポート、技術者
- セミナー、ハンズオン
Hinemosのこれから
- クラウド、BigData、SDx(Software Defined Anything)、ソーシャル
- ユーザーサポート、プロダクト、ユースケース公開の強化
- ポータルサイトリニューアル!(2013年12月公開)
もう少し未来のHinemos
- コンセプト1:「Cool Hinemos」より簡単、より気軽に、よりスムーズに
- コンセプト2:「Auto-Managed Infrasructure」
- 構築
- 試験環境 → 本番環境へスムーズに展開
- ドキュメント自動生成
まとめ
とにかく「ジョブ管理機能オプション」と「クラウド対応」がアツい!。クラウド管理オプションによるAutoScalingに対応したEC2インスタンスの自動検知と自動監視設定、そして複雑なジョブ構成の管理もジョブマッピングオプションを用いて視覚的に管理できる点には期待大です。ジョブの管理というとJenkinsやCapistranoをベースに自前で構築する印象がありましたが、Hinemosを使うことでより簡単に確実にジョブの実行管理ができるのではないでしょうか。
また正直いままで盛りがっているとはいえなかったコミュニティについても、Hinemos公式サイトのリニューアルをきっかけにAWS向けジョブスクリプトの共有やナレッジ共有を進めていくとのことです。クラウド環境の監視やジョブ管理にお悩みの方は、ぜひこれを機にHinemos導入を検討されてはどうでしょうか?
2013/11/19 22:10
はてなブックマークでコメントをいただいたので「まとめ」の文言を修正しました。