デザイン提案時に使えるいくつかのコツ
デザイン提案時には様々な苦労をすることがあります。
そんな中で色々と試してみて、結果的に使えると感じたいくつかのコツをご紹介したいと思います。
※この記事で扱う「提案」はデザインコンペ等のデザイン提案ではなく、受注した案件の開発フェーズにおけるデザイン提案を主に扱います。
提案は始めから複数の案を作ると効率的
- 提案は始めから複数案で
- 複数案はリスク回避と効率化につながる
- デザインコンセプトが明確に異なる複数の案を用意する
- ブラッシュアップするのは、ある程度の方向性の合意を得てからでも遅くはない
複数案の提出が求められていなくとも、複数の案を提出することのメリットは大きいです。
渾身の一案を作り上げても、方向性がずれていた場合、そこに費やした時間は無駄になってしまいます。
最小のコストで素早く合意形成に達するためには、一つの案を作りこむよりも複数の案で当たりをつけ、その中で認識のあっているものをブラッシュアップする方が軌道修正がしやすく効率的です。明確にコンセプトの異なる複数の案を用意しましょう。似たような案ではあまり意味がありません。
デザイナーが力を注ぐポイントが必ずしも顧客の評価するポイントと合致していないことはよくあります。
デザインの細部が極めて重要であるとしても、そこに注力するのはデザインの大まかの方針の合意が得られてからでも遅くはありません。
また、この考え方は修正の依頼に対処する際にも有効です。
顧客の確認コストを考慮する
- 膨大かつ説明満載のデザイン資料は必ずしもいつも求められているわけではない
- 端的に書く
- Yes / Noで答えられる形式にする
- いくつかの案から選んでもらう
- Backlog等のプロジェクト管理ツールを使う場合は細かくチケットを切る
細部を網羅した詳細な解説入りの数十ページにわたる提案資料を作ったとしても、その資料が必要とされないなら無駄です。成果物を提供する際に無意識に行う「同業者向けの内容」という視点を一旦捨てましょう。
日々の業務で多忙な顧客にとって、そういった資料はただの煙たいお荷物と見做されてしまうことすらあります。
これは、情熱を量と質に転換することが必ずしも良い結果とはならないケースの一つです。
そういった場合には説明をより簡略して端的に伝えること、Yes / Noで答えられるレベルまで情報量を落とすこと、あるいはいくつかの案から単純に選択してもらう方法が有効です。
またBacklog等のプロジェクト管理ツールを利用できる場合は、上記の方法に則りさらっと読めば可否の判断ができるレベルにチケットを細分化して、徐々に・着実に合意を得る方法が有効です。
アカデミックな理論を引き合いに出す
もしも作成中のデザインに対して自信が持てなければアカデミックな知見を添えましょう。
ここでいうアカデミックな知見とは人間工学、心理学、認知行動学、統計などを引き合いに出すことです。
知りもしないことを引き合いには出せないので、よく調べたり勉強してからデザインに落とし込むことになるので、そういったアプローチをすることは、結果的にデザインとその説得力がどちらも向上するので一石二鳥です。
先人の知恵を借り、その型に落とすことで、その脅威のパワフルさに気づくこともあります。
顧客はデザインをわかっていない、と考えるのはNG
- 顧客がデザインを見る目を見下してはいけない
- 顧客のデザインに対する「ぱっと見の判断」は理にかなっていることが多々ある
- 顧客から出た良いアイデアは賞賛・歓喜と共に採用する
- 理不尽 / 無理な要求は受け入れずに、論理的説明や数字を示すことで、双方に発生する損害を明確化する。
顧客はそのビジネスのプロです。そのビジネスの目的の達成を UI / UX を介してデザインさせていただくのがデザイナーの仕事と言っても良いでしょう。
もしも、顧客はデザインなど分かっていない、と高飛車に構えれば成功への可能性が閉ざされてしまいます。
良質のデザインは生活に溶け込み溢れているので、少しでもデザインに興味があるなら、嫌でもそれに対する目は磨かれます。
顧客からのデザインの「ぱっと見の評価」はデザイナーが考えているよりも有効です。
ぱっと見の評価を下された、と思える時であってもデザインの良し悪しをビジネス視点のロジックで考える顧客の場合は、その確度が非常に正確だと感じることはよくあることです。
また顧客が良いアイデアを出してくれることもよくあります。そういった場合はその主を賞賛しましょう。
ただし、理不尽な欲求・受け入れた場合に支障があるような依頼があった場合に、それをそのまま受け入れるのはもちろんやめましょう。
その他のTips
- 顧客と一緒に作り上げていくというスタンスで考えるとうまくいくことが多いです
- 状況を俯瞰する
- 無駄にこだわるのはやめましょう
- UI / UX についてはあくまでもビジネスを回すための一つの手段にすぎない、という一種の冷めた視点を持つことも意外と大切です
- 継続的に改善する余地を持つ
- 一度の提案で作りすぎないようにしましょう。細かく回しましょう
おわりに
デザインは定量化しづらい側面があるため、合意形成に苦労することが多いです。
そういった際にはあまり常識的なやり方にとらわれすぎたり、細かいことにこだわりすぎずに、ゴールを見据えて最短経路を選ぶようにするとうまく行くこともあります。その方がアプトプットの質も意外と良くなります。