スターバックスが探求する、開発の「モダン化」「最適化」そして「“本格的”なアジャイル」とは #devio_showcase

Developers.IO Showcaseにて行われたスターバックス コーヒー ジャパン株式会社のセッションです。最良の顧客体験を実現するために

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このレポートは、スターバックスがクラスメソッドとともにアジャイル開発やサービス導入などプロジェクトを推進した事例について紹介した「Developers.IO Showcase」のセッションのものです。

「顧客体験」はビジネスの根本的な価値と直結するため、ITシステムにおいて妥協は許されません。先端のテクノロジーを素早く導入し、日々高まるユーザーの要求に応え続ける必要があります。スターバックス コーヒー ジャパン様は近年、テクノロジーを使った様々なサービスを短期間でリリースしています(LINE連携、マーケティングオートメーション等)。

そこには常に「モダン化」「最適化」を模索し、開発者や運用者にとってより良い形で実現できないか、常に理想を探求し続ける姿があります。サービスや基盤の成長を通じて弊社はクラスメソッドとしてどのような歩みをしてきたか、未曾有の状況の中どのようにプロジェクトを進行していったのか。「モバイルオーダーから始まるモダンテクノロジーと開発手法の探求」と題して、伊草様よりそのチャレンジについてご紹介いただきました。

同社の事例はクラスメソッドのコーポレートサイトおよびプリズマティクスのサイトでもそれぞれ事例記事を公開しています。また、このセッションの詳細や同様の技術支援に関するご相談がございましたら、クラスメソッドの担当者が承ります。下記のフォームにてご入力ください。

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発表者

スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 スターバックステクノロジー本部 カスタマーテクノロジー部 デジタルプラットフォームチーム マネージャー 伊草博之氏

スターバックス体験を支える技術

スターバックス コーヒー ジャパンは、お客様の日常にちょっとした驚きや感動、楽しさをもたらす「スターバックス体験」を日々進化させ提供することに、社員は情熱を注いでいます。この大きな要素となるのが、「商品」「パートナー」「店舗」そして「デジタルの仕組み」です。この4つ目を担うのがカスタマーテクノロジー部となっています。

2002年に公式ウェブサイト、メールニュース、スターバックス カードを立ち上げ、その後2014年にe-giftサービスをローンチ。2016年には公式モバイルアプリをリリースしました。伊草さんは「私がスターバックスにジョインしたのは公式モバイルアプリをリリースした後ですが、その後も継続して、お客様の体験を豊かにするサービスを展開しています」と語ります。

2017年にはStarbucks® Rewardsをリリース、2018年にはデータウェアハウスを刷新。2019年にはLINEと協業し、LINE上で使えるスターバックス カードサービスをローンチ。そしてその2ヶ月後には「モバイルオーダー&ペイ」をリリースしました。更に2020年はマーケティング機能の複数追加により、お客様の行動や購買に沿ったメッセージを届けられるようになっています。

短期ローンチやリリースを支えたモダン化

このようにローンチやリリースが短期間で行われるスターバックスの開発部において、どのような「モダン化」の取り組みが行われているのかについて3つの紹介がありました。

1. コンテナ化、サーバーレス化の推進

「私たちの部署で展開するサービスは、マイクロサービスアーキテクチャを元に構築されています。一つ一つのサービスが疎結合に存在していて、それが一つのサービスを全体で作り上げるという志向でやっています。いわゆる従来のアーキテクチャも存在はしていますが、今後の取り組みとしては、ECSのコンテナサービス等も利用し、よりサーバレスに、そしてマイクロサービスに適応した形にしていければと思っています」。

2. 監視

「従来の監視基盤は、何か異常値を検知するとクラウドウォッチやSNSでメールを出すようなものでした」と語る伊草さん。今期からサーバー分析と監視のソリューションを導入し、マイクロサービスごとにダッシュボードを作成する等“見える化”を実施しています。「複数のAWSアカウントを跨いだモニタリングも1つのダッシュボード上でスムーズに行うことが出来るようになりました」。

更にアプリケーションごとのレイテンシーやパフォーマンスを計測し、異常値があった場合はSNSチャネル等に投稿され、各担当がアクションしたり状況確認できるようにしています。

3. セキュリティ

従来から様々なレイヤに多くのセキュリティソリューションを導入してはいましたが、今期はwebアプリケーションレイヤとモニタリングレイヤに注力したそうです。新サービスが創出されるごとにセキュリティのリスクも高まる状況の中で、「常に万全、という状態は無い」という意識で、新たなサービスを立ち上げると共にセキュリティに関しても同時並行で考えているとのことです。

アジャイル開発導入の契機

「アジャイル開発」という開発スタイルへの取り組みについて、スターバックスのスタートは2017年頃でした。このプロジェクトで、モバイルアプリのデザインが刷新されStarbucks® Rewardsをモバイルアプリにインテグレートされましたが、お客様のアプリレビューは5つ星評価で「2」と厳しいものでした。「様々なツールを導入して、表面上はうまくいっている印象でしたが、日欧米の各拠点が『アジャイル開発はこういうものですよ』というマインドセットの元で進めることが出来ていなかった」と、お客様の評価を妥当なものとして、伊草さんは当時を振り返ります。

そして2019年、新サービス「モバイルオーダー&ペイ」のリリースをするという企画が立ち上がりましたが、当初よりかなりタイトなスケジュールを求められていたそうです。「クラメソッドさんに相談したところ、かなり強力なプッシュを頂き、“本格的”なアジャイル開発に、覚悟を持って取り組むことになりました」。

まず行ったのは「体制作り」でした。スクラムマスター、プロジェクトオーナー、開発チームなど、担当と役割を明確にしました。ツールはBacklogやGitHubを始め、Spreadsheet、Trelloなどを導入しました。

そして最も有用だったのは「徹底的な議論」です。まずプロダクトのユーザーストーリーマッピングを作りますが、複数日かけて、何時間もかけて議論が行われました。更に店舗視点での検証も、実現性を複数回に渡り徹底的に検証したそうです。

タイトなスケジュールだった為、スプリントサイクルは1週間という短い期間で回しました。「開発工程が進むにつれて、漏れている要件が色々出てきてしまいました。そこでスプリントサイクルに支障を来さないように前整理を行う『リファインメント』というミーティングも設けました」。

ここまでにご紹介したような“徹底的な”取り組みによって、大変タイトなスケジュールだったにも関わらず、「改善された」アジャイル開発を行うことが出来たと伊草さんは言います。お客様からのアプリ評価も「4.7」と、2017年からは大きく変化がありました。さらに、今年はコロナ禍で仕事の状況も変わり、フルリモートでオンラインツールを利用しての開発が求められました。ここでもアジャイル開発を同じように行い、webサイトからの「モバイルオーダー&ペイ」を無事オンタイムでリリースする実績ができました。

時代に則した開発と信頼性あるサービス

「なんでもアジャイルでやれば上手くいくのか、と言われるとわかりません。プロダクトやプロジェクト特性、エンジニアや事業の特性、体制・人数、既存・外部システムとの依存関係、内製か外注か、運用保守、等々様々な変数が絡んでくると思います。ただ、『アジャイル』が持つ、柔軟性、俊敏、変化に強い等の特性は、小売デジタル、我々のシステムには合っていたと思います」と伊草さんはアジャイル開発の成果と、実体験による見解について述べられました。

また今後のデジタルの重点的な取り組みについては「モバイルオーダー、オンラインストア等、時代にあったサービスの提供、改善、改良を重ねていきます。また、今こんな時代ですので、データのトレンドは変わっていると思います。そこでデータサイエンスの部分に注力し、データサイエンティストがより良い分析を行えるよう、環境構築をしていきたいと思っています。更に、“信頼性のある”サービスを提供していくため、SREの活動に注力していきたいと思っています」と語りました。

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