[レポート]クラウド時代のシステムの信頼性と品質管理 ~製薬/製造業等でクラウド環境における品質要求を満たすための AWS のグローバルな取り組み~ #AWSSummit
菅野です。
AWS Summit Tokyo 2016 の Advanced Tech Track のセッション
「クラウド時代のシステムの信頼性と品質管理 ~製薬/製造業等でクラウド環境における品質要求を満たすための AWS のグローバルな取り組み~」を聴講しました。本記事はそのレポートです。
セッション情報
モデレータ
- 梅谷 晃宏 氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 セキュリティ・アシュアランス本部 本部長)
パネリスト
- 篠田 敏幸 氏(協和発酵キリン株式会社 情報システム部長)
- 竹内 祥雄 氏(フィラーシステムズ株式会社 コンサルタント、特定非営利活動法人医薬品・食品品質保証支援センター 理事)
- Chad Wolf 氏(AWS Risk & Compliance, AWS Security, AWS Security Assurance Director)
- Mark Johnston 氏(AWS Healthcare & Life Sciences, AWS Global Business Development Director)
概要(資料から)
AWS 環境はセキュリティに加え、クオリティという側面からもお客様に利点をもたらすものです。ISO9001 をはじめ、製薬医療機器産業の GxP 規制、航空宇宙産業の AS 9100、自動車産業の ISO/TS 16949 等の品質基準についてクラウド上での対応を行っているお客様も増加しています。AWS の取り組みは特定の業種のお客様のみならず、幅広く全てのお客様に安全で高品質なシステムの導入をご支援する内容となっています。本セッションでは GxP という高い品質要求の規制を基に「クラウド環境におけるシステム品質保証」という AWS の最新の取り組みについて、FDA 等の米国の状況と日本の状況を鑑みディスカッションを行います。
パネルディスカッション内容
急遽参加される事になった Mark Johnston 氏のお話から始まりました。
グローバルビジネスの状況について
- 医薬品や医療機器等を扱っている会社に対して AWS を使ったシステムを提案している。
- こういった事業はグローバルに展開しているので、世界中に拠点を持つAWSはビジネスパートナーとして合っている
- また、クラウドを使って商品を迅速にマーケットに提供する流れは加速している
FDA側の反応等
- FDA・・・アメリカ食品医薬品局
- 多くの企業がAWSに移行した事でFDA側の作業も簡素化・コストダウンが進んでいる
- 医薬品や医療機器等を扱っている業界は世界中どこでもコンプライアンスに敏感である
Merck & Co. での取り組み
- Merck & Co.(メルク・アンド・カンパニー)・・・世界的な製薬会社
- データレイクを構築した
- AWSを使ったビッグデータのシステムを構築した
- ワクチンの製造やサプライチェーンも改善された
Mark 氏からのまとめ
- AWS への移行は加速している
- それは世界中で起きており、日本も例外ではない
ユーザー事例 - その1
篠田 氏から AWS を利用している事例についてお話していただきました。
- ビジネスのスピードが向上した
- テスト環境を素早く構築でき、完了したらすぐ削除するといった事が容易にできる事が一因
- 金融機関でも使われるようになり、安心感がある
- 現在でも AWS への移行中である
- 複数のシステムに分かれていて、システム単位で移行している
- 無理じゃないかと思われたシステムも移行できた
AWS を利用開始した頃の状況
- 東京リージョンが始まり、VPCやVPNが整備されたのがきっかけ
- 当初はプライベートクラウドとして活用した
- 本番環境構築に向けて、AWS のセキュリティに関する状況の調査を開始
- SAPの本番環境を構築するにあたり、社内の品質保証部門に対し安全性を説明するための折衝に時間を費やした
最近の状況
- AWS が各種第三者認証を取得している事で品質保証部門に対しても安心感を与えられている
- ハードウェアの障害が発生したとしても再起動だけでほとんどのケースが対応完了する為、対応が軽微で済む
- AWS へ支払っている利用費は年々上がり続けている
AWS を使う事のメリットについて
- AWS の支援サービスのより SAP の ベーシスサービスが安価なった
- 最適なサイズに調整できるので、最適な価格できる
- AWS の利用費が上がるのは利用範囲が広がっているからなので問題ではない
篠田 氏からのまとめ
- システムの運用管理のルールはオンプレでもクラウドでも変わらない
- バックアップが重要なのは AWS を使っている今でも全く変わらない。自分で守るという意識が重要
- コストを大きく削減できるわけではない。コツコツと削減する事が重要
アメリカではクラウドのコストについてどう思っているのか?
Mark 氏からの回答です
- コストが高い、安いではなく最適化する事が重要だと認識している
- また、クラウド を利用する事で生産性を上げる、つまり価値を生み出す事に注力できるようになっている
- それらの意識のため、コストについては高いというイメージは無い
ユーザー事例 - その2
竹内 氏から「コンピュータ化システムの品質保障」についてお話していただきました
- コンピュータ化システムの品質保障の一般的な概念
- 意図する用途に適合し、各種規制にも適合して動作する事を保障する
- システムの開発と運用を適正に管理する
- 医薬品・医療機器等の規制
- 法律:医薬品医療機器等法
- 省令:GxP
- 通知:ガイドライン・事例集
- コンピュータ化システム適正管理ガイドライン(信頼性の確保)
- 電磁的記録・電子署名利用の為の指針(書面と同水準品質の確保)
- クラウド利用時の運用管理における留意事項
- 厳正なセキュリティ管理
- 手順に沿った適正な運用
- システムサポートとメンテナンス
- 変更管理
- 文書化された管理基準・手順と記録
- 教育訓練
- 監査等について
- 行政側もクラウドに対して不安を持っている
- こちら側で AWS に関するの説明が必要
- その為にはこちら側で AWS に対して監査し、独自の文書にしておくことで対応できる
アメリカでクラウドを採用することについて
Mark 氏からお話をいただきました。
- クラウドを使った実績が不足している事が問題だが、ISO等の認定を取る事で「質」を確保した
- システムの設定等はコード(Json含む)で見れるので査察が簡単になる
- 作業の履歴が残るので透明性が担保されている
- セキュリティやコンプライアンスを担保したシステムをクイックスタートできる。それは既に検証済みのものである。
- コンフィグルールにより自動で作成できる事もクイックスタートの要因。
感想
私は「製薬/製造業」について詳しくありませんが、クラウドを採用する事の意義というものは業界に寄らないのだと感じました。
クラウドへ移行した事により見た目のコストが上がった例もあるかもしれませんが、その分減っている作業もあるはずで、その減った分の作業は何に使われているのか、使う側の私はその時間を生産的な事、利益を生み出す事に使えているのかを考え続けていかなくてはいけない事に気づかせていただきました。
また、現在使用しているシステムの内容に対してクラウド上に構築したものが適切なサイズであるのかも常に考え、多少であってもコツコツと削減していく事が重要だとも再認識できました。