クラスメソッド社内のAIサービス利用のガイドラインを策定しました
GPT-4が公開され、GoogleがPaLMやGoogle WorkspaceへのジェネレーティブAIの統合を発表するなど、AIサービスの進化のスピードは目を見張るものがあります。
この状況のなか、社内でもAIサービスの利用について方針がほしい、という声も上がってきていました。それに応えて本日AIサービス利用のガイドラインを策定し、リリースを行いました。せっかくですので、どんな内容なのかを共有したいと思います。
全文
基本
- AIサービスを業務利用する場合は、原則として上長の許可を得ること。
- 検証目的で、業務に直接関連しない情報(テストデータなど)を入力して試すことは問題ない。
- 業務情報を利用したい場合は、この後の「業務利用する場合」のガイドラインに沿うこと。
- サービス利用前に、データの取り扱いの規約を必ず確認すること。
AIサービスを業務利用する場合
- 業務情報を用いる場合は、利用規約を確認し、機密情報の扱いに問題がないサービス・プランを利用すること
- ユーザーが入力した情報をサービス全体の学習に利用しない、入力データ自体をサービス側で保持しないなど
- 自社内だけで利用できるモデルを学習・作成することは問題ない
- 入力した情報を学習するサービスを業務利用する場合は、業務情報の入力は避けること。
- 入力した情報がサービス全体での学習に利用されないサービス・プランを利用する場合でも、重大な機密や個人情報の入力は極力避けること。
文章生成AIの利用
- 文章生成AIが生成する文章は、内容が正しくない場合があることを認識して利用すること
- 文章コンテンツの粗製乱造をしないこと。(ブログ記事を文章生成AIで乱造するなどの行為は避ける)
コード生成AIの利用
- コードの情報をサービス側に学習されない形で利用できることが望ましい
- コードの情報をサービス側に転送する利用形態の場合、以下を遵守すること。
- 利用範囲については必ずチーム内で合意のうえで利用すること。
- 汎用的な処理における利用のみ許容するなど
- 業務上機密性の高い処理で利用する場合は、適切にリスクアセスメントを実施すること。
- 利用範囲については必ずチーム内で合意のうえで利用すること。
サービスとして提供する場合
- サービスとしてAIが生成するコンテンツを提供する場合は、AIが生成したものであることを明記し、内容については参考程度にする断りを入れること。
- 利用規約において、入力データの取り扱いとその目的を明記すること(サービス向上のための学習に利用するか、など)
その他のコンテンツ生成AIの利用(画像生成AIなど)
- モラルの問われるコンテンツの生成・利用は避けること(既存の著作物に類似した画像の生成など)
解説
以下、ポイントをかいつまんで解説していきたいと思います。
検証利用について
- 検証目的で、業務に直接関連しない情報(テストデータなど)を入力して試すことは問題ない。
- 業務情報を利用したい場合は、この後の「業務利用する場合」のガイドラインに沿うこと。
検証目的であれば「試すことは問題ない」とあえて断言口調で書きました。これはDevelopesIOというブログサービスで技術情報を発信している当社では、実際に自分で手を動かして試す、ということは極めて重要と考えているためです。「問題ない」と言い切ることで、社内でどんどん試す流れを止めたくない、という思いがあります。
AIサービスを業務利用する場合について
- 業務情報を用いる場合は、利用規約を確認し、機密情報の扱いに問題がないサービス・プランを利用すること
- 入力した情報を学習するサービスを業務利用する場合は、業務情報の入力は避けること。
この2点は対になっていて、 業務情報を利用したいのであれば、学習しないことが分かっているサービスやプランを使う。 そうでない場合は直接の業務情報の入力は避ける、ということですね。
ChatGPTで言うと、現状では、学習される可能性のあるWebサービス版を利用する際は業務情報の入力は避ける。学習には利用されないChatGPT APIを利用する場合は許容する、という形となります。 (ChatGPTにおけるデータ取り扱いの規約については、私が先日ブログを書いていますのでご参考にしてください)
とはいえ、ChatGPT API経由だからといって個人情報や重大な機密の入力にはリスクが伴うため、牽制として下記の条項も入れました。
- 入力した情報がサービス全体での学習に利用されないサービス・プランを利用する場合でも、重大な機密や個人情報の入力は極力避けること。
文章生成AIの利用について
- 文章生成AIが生成する文章は、内容が正しくない場合があることを認識して利用すること
- 文章コンテンツの粗製乱造をしないこと。(ブログ記事を文章生成AIで乱造するなどの行為は避ける)
こちらは文章を生成するAIを利用する場合における注意点として書きました。 技術ブログを運営する会社として、ブログ記事を文章生成AIで粗製乱造することは避けたいという思いもあり書いています。
- コードの情報をサービス側にに学習されない形で利用できることが望ましい
- コードの情報をサービス側に転送する利用形態の場合、以下を遵守すること。
- 利用範囲については必ずチーム内で合意のうえで利用すること。
- 汎用的な処理における利用のみ許容するなど
- 業務上機密性の高い処理で利用する場合は、適切にリスクアセスメントを実施すること。
コード生成AIの利用についても、話題になることがあるためガイドラインに入れました。 利用の是非は、開発するシステムの機密性にもよると思うので、開発するチームで合意して利用すること、としています。
サービスとして提供する場合
- サービスとしてAIが生成するコンテンツを提供する場合は、AIが生成したものであることを明記し、内容については参考程度にする断りを入れること。
- 利用規約において、入力データの取り扱いとその目的を明記すること(サービス向上のための学習に利用するか、など)
こちらは、当社がAIを利用したサービスを提供する場合を想定した項目です。AIでコンテンツを提供している点、その入力データの取り扱いの明記は、ユーザーにとって重要な点と考え、守るべき点として記載しました。
おわりに
というわけで、クラスメソッドにおけるAIサービス利用のガイドラインを紹介しました。 急激なAIサービスの普及に伴い、ルール作りをどうするか考えておられる企業様も多いのではと思います。 そういった企業様の参考の一助となれば幸いです。