
【セッションレポート】 これからのデータ活用を支える、Amazon QuickSight の進化と革新 (AWS-14) #AWSSummit
はじめに
クラウド事業本部コンサルティング部の浅野です。
AWS Summit 2025 Day1で行われたセッションを聴講してきましたのでレポートとしてまとめます。
概要
- 日時: 2025/06/25(水) 12:50 ~ 13:30
- レベル: 200 (初級者向け)
- カテゴリ:
- データレイク・分析・BI
- 機械学習・生成AI
- 登壇者: 守田 凛々佳 氏 (アマゾンウェブサービスジャパン合同会社 技術本部ISV/SaaSソリューション部 ソリューションアーキテクト)
※以下セッション紹介ページから引用
膨大なデータからいかに効果的に、実用的なインサイトを得るか...多くのデータ主導型の意思決定を目指す企業が頭を悩ませておられます。生成 AI が組み込まれた Amazon Q in QuickSight を利用することで、より迅速なインサイト取得とより深いデータ理解を実現できます。本セッションでは、Amazon QuickSight の代表的なユースケースであるダッシュボード作成、ピクセルパーフェクトレポート、埋め込みに関連したアップデートと、Amazon Q in QuickSight のアップデートがビジネスアナリストやビジネスユーザーのデータドリブンな意思決定をさらに強化するユースケースをまとめてご紹介し、Amazon QuickSight がこれからのデータ分析にどのように貢献するかをご説明します。
アジェンダ
- Amazon QuickSightとは
- BIの進化: Amazon QuickSightの特徴的な機能
- BIの革新: 生成AIを活用したデータの民主化
- Data Q&A機能による、質問への回答と関連インサイトの提供
- ストーリー機能による、構造化データと非構造化データを用いた文書の作成
- シナリオ分析機能による、複雑な問題解決や深掘り分析の実施
- まとめ
内容
Amazon QuickSightとは
Amazon QuickSightは、モダンなダッシュボード、ピクセルパーフェクトレポート、埋め込み分析を提供する統合BIサービスです。
主な特徴
- 統合BIサービス: ダッシュボード、レポート、分析機能を統合的に提供
- スケーラブルパフォーマンス: あらゆる規模で一貫したパフォーマンスを実現
- コスト効率: 必要な分だけの支払いでコストを削減
- セキュリティ: ポリシーベースのガバナンスとセキュリティを提供
Sales Insightsのようなダッシュボードを通じて、複数のチャートやグラフを組み合わせた包括的な分析ビューを提供し、ビジネスの意思決定を支援します。
BIの進化: Amazon QuickSightの特徴的な機能
Amazon QuickSightはビジネスインテリジェンスの進化に合わせて、様々な活用方法を提供しています。
ビジネスインテリジェンスの活用方法
Amazon QuickSightでは以下の5つの主要な活用方法が用意されています
- コアBI機能: 基本的なビジネスインテリジェンス機能
- ピクセルパーフェクトレポート: 精密なレポート作成
- 埋め込み分析: アプリケーションへの分析機能組み込み
- 管理: ガバナンスとセキュリティ管理
- Amazon Q in QuickSight: 生成AI機能
インタラクティブなダッシュボードの構築
QuickSightでは以下の特徴を持つダッシュボードを構築できます
- 豊富なインタラクティブ機能: フィルター、ドリルダウン、スライス機能などの多様なインタラクティブ機能
- 高速なナビゲーション: スムーズなユーザーエクスペリエンス
- マルチデバイス対応: あらゆるデバイスで利用可能
- 最新データへのアクセス: リアルタイムでのデータ更新
- ワンステップでの簡易公開: 迅速なダッシュボード共有
Highchartsビジュアルで可視化を多様化
従来のビジュアルタイプに加えて、JSON形式でコードを書くことでさらに表現豊かなビジュアルを生成できます。
- 可視化表現の拡張: Highchartsの豊富なチャートタイプを活用可能
- カスタマイズ可能: 豊富なデザインオプションを詳細に設定
- 複合グラフ、依存関係グラフ、放射状糖グラフなど多様な表現が可能
ピクセルパーフェクトレポートの実現
ダッシュボードとレポーティングのユースケースを専用効果の高い方法で統合します。
- レイアウト制御可能: 印刷や配布に適したレポート作成
- 豊富なビジュアルと画像を含めた包括的なPDFレポート: 表やCSVエクスポートの予約配信
- 作成環境と利用環境の統合: ダッシュボードとレポートで共通のデータセットを利用、使い慣れたインターフェースで迅速な習得
- サーバーレスで簡単に始められた拡張が可能: エンタープライズアプリケーションの基盤として不要、使用量に応じて設計拡張
繰り返しセクションで効率的にレポートを生成
繰り返し要素の多いレポート作成を迅速に実現できます(例:顧客別表を取引先ごとに出力、医療レポートを病院ごとに出力)。
- 効率的にレポートをデザイン: 共通のテンプレートを作成し、データ別内容にセクション内のビジュアルを適用
- 重要なデータに焦点を当てる: 上位下位のフィルタリングや並べ替えを活用し、適切なビジュアルを表示
アプリケーションへのシームレスな埋め込み
QuickSightダッシュボードを既存のアプリケーションに統合し、コラボレーションを促進します。
- 共有可能なリンクの生成: 特定の状態への参照を作成し、アプリケーションページへのリンクを共有可能
- よりコラボレーションしやすいアプリケーションの構築: ユーザーが自身のダッシュボードビューを他者と共有可能
- 匿名ユーザー向けのブックマーク: 匿名ユーザー向け埋め込みの場合は、リンクをブックマークとして利用可能
埋め込みダッシュボードのビューを共有する
ユーザーが見ている特定の状態(フィルターやパラメーターの設定など)を簡単に他のユーザーと共有することで、コラボレーションが容易に実現されます。
アプリケーション上で生成AI活用機能を提供
Amazon Q in QuickSightを埋め込むことでアプリケーションの価値をより高めることができます(Data Q&A、ビジュアル作成、ストーリー、エグゼクティブサマリーで可能)。
- 容易に統合を実現: 最小限のコードで既存アプリケーションに導入
- 多様なデータに対応: 複々なデータソースやデータ形式に合わせて言語理解を最適化、推論質問によって質問の開始をサポート
- シームレスな埋め込み: 企業ブランドに合わせてサイズ、テーマ、インタラクションをカスタマイズ
セキュリティとプライベート接続
QuickSightへのプライベート接続を確立
AWS PrivateLinkでオンプレミス - VPC - QuickSight間のセキュアな接続を確立し、データ通信のプライベート化を実現します。
- QuickSightへのアクセス制限: 制限はWebページ・モバイル・埋め込みで全て適用される
- プライベート接続の確立: 接続元VPC/VPCエンドポイントの制限を利用し、指定したVPCとのプライベート接続を実現
- データ通信のプライベート化: データがパブリックインターネットを経由しない通信を実現
BIの革新: 生成AIを活用したデータの民主化
生成AIの力を活用したAmazon Q in QuickSightにより、データ分析の民主化が実現されています。
Data Q&A機能による、質問への回答と関連インサイトの提供
AIがオンデマンドでデータへの質問に答え、手軽により深いインサイトを得ることができます。
- 複数のビジュアルを用いて質問へ回答: データに関する質問に的確に回答
- 複数のビジュアルと代替案の提示: データに関する質問にワンステップで適切な回答を提供
- 非構造化データを活用してインサイトを取得: 構造化データと非構造化データを組み合わせてより深いインサイトを得る
- ビジネスに関連した回答: Data Q&Aの画面で、回答に関連するトピックやドキュメントを提示
デモシナリオの実例
- 想定ユーザー: 売上の分析を行い、2025年のマーケティング戦略を考える担当者
- 現在の課題: ダッシュボード上に必要な可視化が含まれておらず、可視化の追加を依頼すると時間がかかってしまう
- 利用データ: SaaS製品の注文データ(注文日、製品名、購入企業、産業、売上、利益などが含まれる)
実際のデモでは、「10の産業の総売上高は2,297,200.86に達しました。金融業界において最大の売上を記録し、474,150.48の売上がありました」といった具体的な回答が生成され、関連するビジュアルと共に表示されました。
ストーリー機能による、構造化データと非構造化データを用いた文書の作成
分析や質問への回答だけでなく、AIアシスタントによるデータストーリーを作成し文書ドキュメントとしてまとめてくれる機能です。
- データストーリーの共有: データを用いてチームの意思決定を促進
- AIを使用したストーリー生成: シンプルな自然言語の文章でデータを説明する文章やプレゼンテーションを生成
- 洗練されたコンテンツの作成: 生成する文章の詳細さやテキストをカスタマイズ、ビジュアルテーマを追加してコンテンツをより良くする
-エンタープライズ対応:QuickSight内の既存のデータ、ガバナンス、セキュリティモデルを再利用
実際のデモではストーリータイトルを入力し、ダッシュボード上のグラフや表をロードし、さらにローカルファイルから社内文書をアップロードするとAIがそれを読み取ってくれ、最終的に「2025 Marketing Strategy for Transportation Industry」というタイトルで、今後どの産業に注力すべきかを説明するようなドキュメントが高精度で出力されていました。
シナリオ分析機能による、複雑な問題解決や深掘り分析の実施
従来のデータ分析では以下の課題がありました
- 分析手法に専門知識が必要
- データ操作は手間がかかり、扱いにくく、エラーが発生しやすい
- ビジネスの変化のスピードがレポートの更新速度よりも早い
Amazon Q in QuickSightのシナリオ分析機能により、これらの課題を解決できます。
AIはビジネスの分析をどのように改善するか
- 計画立案を用いて複雑な問題をシンプルなステップに分解できる
- 計画したステップを実行することができる
- データ処理やインサイト抽出に役立つ計算能力を活用できる
理想のデータ分析を想像してみてください
ビジネスユーザーが本当の意味でセルフサービスのデータ分析を行うことができ、スプレッドシート上の手作業の分析から解放され、変化するビジネスニーズに対応するためにデータとロジックを簡単に適用・再利用できる環境が実現されます。
Amazon Q in QuickSightのシナリオ分析
Amazon Q in QuickSightを利用することで、ビジネスユーザーはスプレッドシートと比較して最大10倍スプレッドシートよりも速く複雑なシナリオ分析を実行できるようになります。
- エージェント型分析: 複雑な問題解決を構造化する
- BI専用に設計: ビジネスデータを直感的に分析するため
- 再利用可能で拡張可能: 変化するビジネスニーズに迅速に適応するため
デモシナリオの実例
- 想定ユーザー: APAC地域での収益を最大にするためのマーケティング戦略を考える担当者
- 現在の課題: スプレッドシート上での複雑な分析に時間がかかる
- 利用データ: 食料品の販売データ(注文日、商品名、売上、利益、キャンペーンIDなどが含まれる)
実際のデモでは「APACの収益を最大化するには、日本でどの商品により投資すべきですか?」という質問から開始し、以下のステップで分析が進行されました。
売上と利益の上位10商品をグラフで表示し、日本市場での売上分析を視覚化。野菜チップスとプロテインバーの売上データが詳細に表示されました。
「野菜チップス:最も成功している商品であり、さらなる成長の可能性が高い」といった投資戦略の提案まで自動的に生成されました。
※ 2025年6月現在、日本語のフルサポートはありません
まとめ
本セッションでは、QuickSightの特徴的な機能紹介からデモを通して生成AIを用いたQuickSightの新機能を紹介してくれました。
デモの3つの主要機能
-
Data Q&A機能
- 質問への回答と、非構造化データからの関連インサイトを得る
-
ストーリー機能
- 構造化/非構造化データを組み合わせて、説得力ある文章を生成する
-
シナリオ分析機能
- 複雑な分析や深掘りの分析をステップ・バイ・ステップで実施し、次のアクションにつながるインサイトを得る
Amazon QuickSightは、従来のBIツールの枠を超えて、生成AIの力を活用したインテリジェントな分析プラットフォームへと進化を続けています。Data Q&A、ストーリー生成、シナリオ分析といった革新的な機能により、技術的な専門知識がなくても、誰もが深いデータインサイトを得ることができるようになりました。