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[セッションレポート] AWS で実現する患者中心の医療サービス変革 ~デジタルトランスフォーメーションによる新たな医療の未来~(AWS-31)#AWSSummit
カスタマーサクセス部 運用支援チームのいたくらです。
本記事は 2025 年 6 月 25 - 26 日の 2 日間開催された AWS Summit Japan 2025 のセッションレポートです。
セッション情報
- セッション ID : AWS-31
- タイトル : AWS で実現する患者中心の医療サービス変革 ~デジタルトランスフォーメーションによる新たな医療の未来~
- スピーカー : 石尾 千晶(アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 技術統括本部 エンタープライズ技術本部 ソリューションアーキテクト)
- レベル : 200
- テーマ : Cloud Infrastructure
- セッション概要(引用)
医療・製薬業界における Patient Journey に焦点を当て、患者中心の医療サービスの提供において、AWS がどのように貢献できるかをご紹介します。認知・情報収集から診断・治療、そして継続的な支援に至るまでの各フェーズで、AWS の提供する様々なサービスやソリューションの活用事例をお話しします。さらに、医療・製薬分野におけるデジタルトランスフォーメーションの将来像についても展望を示します。
- 6月26日17時 - 7月11日19時 までオンデマンド配信で視聴可能です!
セッション内容
医療・製薬業界と AWS の関わり方
- AWS は、病院、クリニック、調剤薬局、介護施設、製薬・医療機器企業、保険者、研究者といった、生活者・患者を取り巻く多様なステークホルダーのインフラを支援
- 本セッションでは、「Patient Journey(患者が病気や健康問題に関する医療サービスを受ける際に経験する一連のプロセス)」の各フェーズにおける AWS の貢献が紹介されました
1. 認知・情報収集: 患者が健康状態をより深く理解するには?
- 患者が複数の医療機関・施設のデータにアクセスし、多様なデータソースから収集した大規模なデータを分析したいというニーズに対し、AWS HealthOmics、AWS HealthLake、AWS HealthImaging、AWS HealthScribe といった医療・製薬業界に特化したAWSサービスが存在
- 特に、AWS HealthLakeは、FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)形式の医療情報を保存、処理、変換、分析できるサービス
- Cigna 様は、AWS HealthLake を活用し、40 億のデータソースから FHIR データを取り込み、数百 TB の FHIR データを分析することで、システムの維持・運用コストを削減し、再利用可能な FHIR データ基盤を確立
補足:FHIR(Fast Healthcare Interoperability Resources)
- 医療情報を交換するための国際標準規格
- 正式名称は「HL7 FHIR」
2. 診察・診断: 迅速で正確な診断を実現するには?
- 遺伝子検査システムを例に、大容量の検査データを素早く解析し、システムを安定稼働させつつ運用負荷を軽減する方法を紹介
- クラウドのスケーラビリティを活用することで、手持ちのリソースでは処理待ちが発生するような大規模データも、クラウド上で一斉に処理することが可能
- AWS のマネージドサービスを活用することで、OS やミドルウェアのパッチ適用、バックアップなどの運用タスクを AWS に任せられる(=運用負荷が軽減)
- また、Infrastructure as Code (IaC) を導入することで、コードによってインフラストラクチャの管理やプロビジョニングを行い、環境の一貫性を保ちながら運用負荷を軽減
- 大塚製薬様は、血液がん遺伝子パネル検査においてゲノムデータの受け渡し・解析システムを AWS 上に構築し、大規模ゲノムデータの解析にAWSのスケーラブルな計算環境やストレージを活用、さらに AWS マネージドサービスと IaC ツールを組み合わせることでシステムの安定稼働と運用負荷軽減を実現
3. 治療: 医薬品の上市までの時間を短縮するには?
- 医薬品開発の効率化と、専門性が高く非定型な業務の見直しについて、生成AIの活用を紹介
- API を介して多様な基盤モデルにアクセスでき、インフラ管理不要で生成 AI アプリケーションを構築・拡張できる Amazon Bedrock を活用
- 複雑なタスクに取り組むために、生成AIエージェントを活用することで、臨床試験、創薬研究、市場調査など、様々な領域での支援が可能
- 塩野義製薬様は、Amazon Bedrock を用いて専門性の高いメディカルライティング業務のための規制文書生成支援アプリを構築
- 業務部門と IT 部門が密に連携し、素早いプロトタイピングを通じて生成 AI を活用
- Merck 様は、AWS HealthOmics を活用したタンパク質の共同設計プラットフォームを構築し、マウス由来の抗体をヒト化する独自の抗体言語モデルを開発
- マウス由来の抗体からヒトの抗体に翻訳する作業が必要、その作業ができる研究者の数が少ないことが問題だった
- その作業ができる研究者のノウハウを元に独自の抗体言語モデルを開発した
4. 経過観察: 患者に向き合う時間を増やすには?
- 組織全体で業務の質を高めることはもちろん、効率化することが求められる
- また、効率化を図る中でも患者の医療情報にはセキュアにアクセスする必要がある
- 組織全体にいかに生成 AI を浸透させていくか?がポイントになってくる
- 生成 AI を安全に業務活用するためのビジネスユースケース集を備えたアプリケーション実装:Generative AI Use Cases (GenU)
- 非エンジニアでも自分の業務に合わせてカスタマイズしてユースケースを組み上げることが可能
- セキュアアクセスの観点は Amazon Bedrock で対応できている
- リクエストを処理し終えたら入力データ(プロンプト含む)・出力データは一切保持しない
- データが基盤モデルの学習には一切使用されない
- ソフトウェア・サービス様は、電子カルテシステムの一部として Amazon Bedrock を活用し、退院時サマリーの作成支援機能を開発
- 医師の退院時サマリー作成時間が約半分に短縮され、心理的負担も7割減少
- やさしい手様は、6 名の非エンジニアが主導で生成 AI による介護ケアプラン作成支援を導入し、ケアプラン作成時間を 30%、月次報告書作成時間を 75% 削減
- 浮いた時間を品質改善や新たなサービス提供に充て、ユーザー満足度を向上
感想
医療・製薬業界に興味があるものの、ご支援等で関わる機会がいままで無く、AWS がどのように活用されているかを知るために聴講しました。
AWS が単なるクラウドインフラの提供にとどまらず、医療・製薬業界特有の課題に対応したサービスを展開していることがよく理解できました(紹介されていた業界特化した 4 つのサービスは東京リージョンでは未提供ですが…)。
Merck 様の事例にあった「一部の研究者しかできなかった作業を AWS HealthOmics を活用してモデル化することでノウハウを継承できるようになった」は、他社様や研究機関でも同様のお悩みを解消できそうだなと思いました。
また、非エンジニアでも活用できる Generative AI Use Cases (GenU) の提供は、医療現場での技術導入ハードルが下がると思うので、より活用が拡大しそうだと感じました。
以上、本レポートが参考になりましたら幸いです。
ご覧いただきありがとうございました。
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