Amazon Quick Suite の Quick Research 機能を使ってみた
クラウド事業本部の石川です。従来のAmazon QuickSightをAmazon Quick Suiteへと進化させることを発表しました。この進化は単なるリブランディングではなく、AIエージェント機能を統合した包括的なビジネスインテリジェンスプラットフォームへの大きな飛躍しました。
今回は、Quick Suiteの中でも特に「Quick Research」機能についての解説と実際に試してみます。執筆時点では日本語対応していませんが、皆さんにこのフィジビリティを体験して頂きたくて紹介します!
Quick Research機能とは
Quick Researchは、可視化を含めたビジネスリサーチを、数時間あるいは数分で完了できるリサーチエージェントです。なお、**言語設定を「日本語」に設定するとリサーチではなく「研究」**と表示されます。組織の内部データと外部データソースを組み合わせて、包括的で引用付きのインサイトを提供します。

1. 多様なデータソースの統合
Quick Researchは以下のような多様なデータソースにアクセス可能です。今後、FactSet(金融分析)やS&P Global(商品市場インサイト)などの専門データセットへアクセスも予定しているそうです。
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内部データ
- SharePoint、OneDrive、Google Drive、S3などのエンタープライズデータ
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構造化データ
- データベース、データレイク、CRMシステムなど
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外部データ
- 200以上の信頼できるニュースソース(Forbes、AP News、New York Times、Washington Postなど)
2. 自然言語でのリサーチプラン作成
リサーチの目的を自然言語で入力するだけで、AIエージェントが以下のプロセスを自動的に実行します。
3. インタラクティブなコラボレーション
リサーチプロセス全体を通じて、ユーザーは以下のような方法でAIエージェントと協働できます。
4. 透明性の高い引用システム
Quick Researchが提供するすべてのインサイトには、元のソースへの明確な引用が付与されます。
Quick Research機能を試してみる
ステップ0: リサーチ目的のデータを登録
リサーチ目的の組織の内部データは、Quick Suiteのスペースに登録します。今回は、注文、返品、関係者の情報を持つExcelファイルを登録します。

ファイルのアップロードを選び、Excelファイルをドラック&ドロップすると登録されます。このスペース名は「注文、返品、関係者の情報」と設定しました。なお、参考値ですが、3MB程度のExcelファイルの処理に約2分程度かかりました。

以下のように登録されます。

以降では、このスペースを用いて、リサーチを進めます。
ステップ1: リサーチ目的の定義
Quick Suiteのインターフェースから、リサーチしたい内容を自然言語でプロンプトを入力します。
例えば、
- 「各地域(Region)の売上高と利益率を分析し、最もパフォーマンスが高い地域を特定してください。また、各地域マネージャー(People)のパフォーマンスと関連付けて評価してください。」
- 「2014年から2016年までの月次売上トレンドを可視化し、季節性パターンを特定してください。特に売上が高い月と低い月を明確にし、その要因を分析してください。」
- 「顧客ID別にRecency(最終購入日)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)を計算し、上位20%の優良顧客を特定してください。また、これらの顧客の特徴を分析してください。」
ステップ2: データソースの選択
リサーチに使用するデータソースを選択します。
- Web検索
- アップロードしたファイル
- Quick Suiteに接続されたスペース
「新しい研究」を作成します。

今回は、先程登録したスペース「注文、返品、関係者の情報」を選択します。ウェブ検索は、デフォルトで有効化されていますでので、QuickSight アセットの他にウェブからも情報を収集します。
- 研究目標にプロンプトを入力
- 「各地域(Region)の売上高と利益率を分析し、最もパフォーマンスが高い地域を特定してください。また、各地域マネージャー(People)のパフォーマンスと関連付けて評価してください。」
- QuickSight アセットで「参照」をクリック
- QuickSight アセットに、先程登録したスペース「注文、返品、関係者の情報」を[Add]を押します。
- 計画の作成を押します。

ステップ3: リサーチプランの確認と実行
研究計画(リサーチプラン)を作成します。数十秒で以下の研究計画が表示されます。研究計画がその内容で良ければ「研究を始める」ボタンを押します。
AIが生成した研究計画を確認し、必要に応じて改定します。研究計画を改定したい場合は、赤枠のところに追加でプロンプトを入力します。赤枠の中には、このプロンプトを改善するための提案がいくつか表示されていますので、参考にするとよいでしょう。
今回は、改定せずに「研究を始める」を押して進めます。

ステップ4: 進捗のモニタリング
研究(リサーチ)が始まると、進行状況は完了率(3%、6%など)として表示され、リアルタイムで確認できます。

なお、研究(リサーチ)が完了すると、メールにも通知されます。

ステップ5: レポートの参照
画面中央が研究(リサーチ)の結果になります。レポートの中の数字をクリックするとその引用元が表示されます。

単に文章でレポートを作成するのではなく、ビジュアル(棒グラフ、折れ線グラフ、散布図)やクロス集計表を用いてレポートを作成します。

ステップ6: レポートの共有と活用
完成したリサーチは「Share」ボタンで簡単にチームメンバーと共有できます。デフォルトでは、エグゼクティブサマリーから始まる詳細なドキュメントが生成されます。
料金体系
Quick Suiteの料金は、ユーザーサブスクリプションとデータキャパシティベースで構成されています。
- Professional tier: $20/月/ユーザー(標準的なビジネスユーザー向け)
- Enterprise tier: $40/月/ユーザー(高度なリサーチやダッシュボード構築を行うパワーユーザー向け)
執筆時点では、既存のQuickSightユーザーは、2026年4月30日まで、プロモーション価格でQuick Suite Enterpriseの機能にアクセスできます。
最後に
Amazon Quick SuiteのQuick Research機能は、従来のビジネスインテリジェンスの枠を超えて、包括的なビジネスリサーチ機能を提供します。自然言語でリサーチ目的を入力するだけで、AIエージェントが内部データと外部情報源を統合し、グラフや表を含む包括的なレポートを自動生成します。すべてのインサイトには明確な引用が付与され、透明性と信頼性が確保されている点も大きな特徴です。
執筆時点では日本語対応していませんが、既存のQuickSightユーザーには2026年4月までのプロモーション価格が適用されます。データドリブンな意思決定がますます重要となる中、Quick Research機能は組織の競争力を大きく向上させるツールとなるでしょう。ぜひこの機会に、AIが支援する新しいビジネスインテリジェンスの世界を体験してみてください。
Quick Suiteは現在、米国東部(バージニア北部)、米国西部(オレゴン)、ヨーロッパ(ダブリン)、アジア太平洋(シドニー)で利用可能です。






