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[UPDATE] Amazon OpenSearch Service がベクトルインデックスの GPU AccelerationとAuto-optimizeをリリースしました #AWSreInvent
クラウド事業本部の石川です。Amazon OpenSearch Service に待望のアップデートが発表されました。ベクトルデータベースの構築を高速化するGPU Accelerationと、インデックス設定を自動で最適化するAuto-optimizeの2つの新機能です。
従来、大規模なベクトルインデックスの構築には数日を要し、パフォーマンス最適化には専門家が数週間かけて手動チューニングを行う必要がありました。これがイノベーションの速度を低下させ、コストやパフォーマンスの最適化を諦めざるを得ないケースも少なくありませんでした。
今回のアップデートにより、10億規模のベクトルデータベースを1時間以内で構築できるようになり、インデックス設定の最適化も自動で行えるようになりました。
GPU Acceleration とは
GPU Accelerationを有効にすると、OpenSearch Service が自動的にベクトルインデックス構築のワークロードを検出し、GPU インスタンスへオフロードします。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| インデックス構築速度 | 非 GPU 環境と比較して最大10倍高速化 |
| コスト削減 | インデックス構築コストを約1/4に削減 |
| 構築規模 | 10億規模のベクトルDBを1時間以内で構築可能 |
| 運用負荷 | GPU インスタンスのプロビジョニングや管理は不要 |
| 課金体系 | 利用した分だけの従量課金(秒単位) |
Auto-optimize とは
Auto-optimize は、ベクトルインデックスの最適化を自動化するサーバーレスサービスです。検索品質(Recall)、レイテンシ、コストのバランスを、専門知識なしで最適化できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自動チューニング対象 | ef_construction、m、ef_search、量子化方式 |
| 要件指定 | 許容レイテンシ(P90)と許容 Recall を指定するだけ |
| 推奨生成時間 | 通常30〜60分で最適化推奨を生成 |
| 推奨数 | 最大3つの設定を提示 |
| 課金体系 | ジョブ単位の定額課金 |
メリット
HNSW グラフ構築のボトルネック解消
ベクトル検索で広く使用される HNSW(Hierarchical Navigable Small Worlds)アルゴリズムは、多層グラフ構造を構築して高速な近似最近傍探索を実現します。しかし、このグラフ構築には膨大な計算リソースが必要でした。
HNSW の主要パラメータと役割:
| パラメータ | 役割 | 影響 |
|---|---|---|
| ef_construction | インデックス構築時の探索範囲 | 値が大きいほど高品質だが構築時間増加 |
| m | 各ノードの接続数 | 値が大きいほど高 Recall だがメモリ消費増加 |
| ef_search | 検索時の探索範囲 | 値が大きいほど高 Recall だがレイテンシ増加 |
GPU Accelerationは、このグラフ構築処理を GPU にオフロードすることで、CPU のみでは実現困難だった高速インデックス構築を可能にしました。
ハイパーパラメータ最適化の民主化
従来、これらのパラメータ調整は「職人芸」でした。データセットの特性、ベクトルの次元数、クエリパターンによって最適値が異なり、試行錯誤に数週間を要することも珍しくありませんでした。
Auto-optimize は、ハイパーパラメータ最適化アルゴリズムを用いて、ユーザーが定義したレイテンシと Recall 要件に基づき、これらのパラメータを自動探索します。さらに量子化方式(Binary Quantization、Scalar Quantization)の選択も自動化されます。
サーバーレスによる運用負荷ゼロ
両機能ともサーバーレスで提供されます。
- GPU Acceleration: GPU インスタンスの管理不要。OpenSearch Service が自動で GPU を割り当て
- Auto-optimize: 専用インフラで実行。既存ドメイン/コレクションのリソースを消費しない
課金単位は Vector Acceleration OCU(OpenSearch Compute Unit)で、約 8 GiB の CPU メモリ、2 vCPU、6 GiB の GPU メモリで構成されます。秒単位の従量課金のため、アイドル時間のコストは発生しません。
実務的なユースケース
RAG(Retrieval-Augmented Generation)アプリケーション
Amazon Bedrock Knowledge Base のベクトルストアとして OpenSearch Service を使用するケースが増えています。Auto-optimize により、RAG アプリケーションに最適なインデックス設定を自動で見つけることができます。
推奨設定例(RAG向け)
- Latency requirements: Modest〜Aggressive(チャットボットなら Aggressive 推奨)
- Acceptable search quality: 0.9以上(回答品質重視)
セマンティック検索の大規模展開
EC サイトやナレッジベースで、数百万〜数十億のドキュメントに対するセマンティック検索を実装する際に有効です。
従来は大規模データセットのインデックス構築に数日かかっていたため、頻繁な更新が困難でした。GPU Accelerationにより、日次〜時間単位でのインデックス再構築が現実的になります。
スケーリング時の再最適化
ベクトルデータセットが数千件から数百万件に成長すると、初期設定が最適でなくなることがあります。Auto-optimize を定期的に実行することで、データ規模に応じた最適設定を維持できます。
コスト最適化
Auto-optimize は、Recall を維持しながらメモリ使用量を削減する設定を発見できます。例えば、現在の m 値(グラフ接続数)が必要以上に高い場合、より効率的な設定を推奨します。
GPU Accelerationの制約事項
対応要件
- OpenSearch 3.1 以上(マネージドドメイン)または Serverless Vector Collection
- Faiss エンジンのみ対応(Lucene、NMSLIB は非対応)
非対応設定
- Binary Quantization が有効な場合
- IVF アルゴリズム
- ネストされたベクトルフィールド
トリガー条件
一定以上のベクトル取り込みレート(デフォルト 50 MB 以上)で GPU Accelerationが発動します。768次元のフルプレシジョンベクトルの場合、約15,000件のベクトルをリフレッシュ間隔内に書き込むとトリガーされます。
ベストプラクティス
- インデックスクライアント数の増加: GPU リソースの並列活用
- approximate_threshold の調整: 推奨値 10,000(Serverless では明示的に指定必須)
- シャードサイズの最適化: 100万ドキュメント以上のシャードを推奨
Auto-optimize の制約事項
データ形式
- Parquet 形式のみ対応
- JSONL からの変換は Python スクリプトで対応可能
機能制限
- 1ベクトルフィールドのみ最適化可能
- HNSW ベースのインデックスのみ対応
- 最大3つの推奨設定を提示
- アカウント・リージョンあたり最大10ジョブまで同時実行
エンジン対応
| エンジン | Serverless | マネージドドメイン |
|---|---|---|
| Faiss | ○ | ○ |
| Lucene | × | ○ |
| NMSLIB | × | × |
リージョン制限
| 機能 | 対応リージョン |
|---|---|
| GPU Acceleration | バージニア北部、オレゴン、シドニー、アイルランド、東京 |
| Auto-optimize | オハイオ、バージニア北部、オレゴン、ムンバイ、シンガポール、シドニー、東京、フランクフルト、アイルランド |
東京リージョンは両機能に対応しているため、日本のワークロードでも問題なく利用できます。
最後に
Amazon OpenSearch Service の GPU Accelerationと Auto-optimize は、ベクトルデータベースの構築・運用における2つの大きな課題を解決する機能です。
GPU Accelerationのインパクト
- 10億規模のベクトル DB を1時間以内で構築
- インデックス構築コストを1/4に削減
- GPU インスタンス管理不要のサーバーレス提供
Auto-optimize のインパクト
- 数週間の手動チューニングを30-60分の自動処理に
- 専門知識なしで最適設定を発見
- Recall とコストのトレードオフを自動最適化
生成 AI アプリケーションの普及により、大規模ベクトルデータベースの需要は急速に拡大しています。Amazon Bedrock Knowledge Base との連携や、RAG アプリケーション、セマンティック検索、レコメンデーションエンジンなど、ベクトル検索を活用するユースケースでは、これらの新機能の恩恵を大きく受けられるでしょう。
既存の OpenSearch ドメインやコレクションでも設定変更だけで有効化できるため、まずは開発環境で GPU Accelerationの速度向上と Auto-optimize の推奨設定を試してみることをお勧めします。
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