
NVIDIA GTC Keynote 2026 〜次世代のインテリジェントシステムをどのように支えているのか〜
こんにちは。
製造ビジネステクノロジー部スマートファクトリーチームの田中孝明です。
はじめに
Watch NVIDIA Founder and CEO Jensen Huang’s GTC keynote as he unveils the latest breakthroughs in AI and accelerated computing. See how agentic AI, AI factories, and physical AI are powering the next generation of intelligent systems.
NVIDIA の創業者兼 CEO、ジェンセン・フアン氏の NVIDIA GTC 2026 キーノートまとめになります。

NVIDIA の 3 つのプラットフォーム
NVIDIA は 3 つのプラットフォームを展開している。
- CUDA X: アルゴリズムライブラリ群
- システム: コンピューティングシステム
- AI ファクトリー: 新たに発表された AI インフラストラクチャ
CUDA 20 周年とフライホイール効果
CUDA は 20 周年を迎えた。SIMT(Single Instruction, Multi-Threaded)アーキテクチャにより、スカラーコードからマルチスレッドアプリケーションへの展開が容易になった。
NVIDIA の戦略の核心は「フライホイール効果」にある。
- 大規模なインストールベースが開発者を引きつける
- 開発者が新しいアルゴリズムを作成し、ブレークスルーを達成する
- ブレークスルーが新しい市場を生み出す
- 新しい市場がエコシステムを拡大し、さらにインストールベースが増える
このサイクルにより、6 年前に出荷した Ampere の価格がクラウドで上昇するという現象も起きている。
継続的なソフトウェア最適化により、GPU の有用寿命が非常に長くなっている。
GeForce 25 周年と AI のビッグバン
GeForce は 25 年前にプログラマブルシェーダー(ピクセルシェーダー)を発明した。
世界初のプログラマブルアクセラレータである。
GeForce が CUDA を世界に広めたことで、Alex Krizhevsky、Ilya Sutskever、Geoff Hinton、Andrew Ng らが GPU でディープラーニングを加速できることを発見した。これが 10 年前の AI ビッグバンの始まりとなった。
約 8 年前には RTX を導入し、ハードウェアレイトレーシングと AI を融合させた。
DLSS 5 とニューラルレンダリング
次世代グラフィックス技術「ニューラルレンダリング」を発表した。3D グラフィックスと AI の融合である。
- 構造化データ: 制御可能で予測的な 3D グラフィックス
- 生成 AI: 確率的だが非常にリアル
この 2 つを組み合わせることで、美しく、かつ制御可能なコンテンツを生成できる。このコンセプトは、あらゆる産業で繰り返されていく。構造化データは「信頼できる AI」の基盤となる。
データ処理の革新 cuDF と cuVS

構造化データ
SQL、Spark、Pandas、Velox などのプラットフォームが処理するデータフレーム。Snowflake、Databricks、Amazon EMR、Azure Fabric、Google Cloud BigQuery などで使用されている。これはビジネスの「グラウンドトゥルース」である。
AI エージェントは人間よりはるかに高速にこれらのデータを使用するため、徹底的な加速が必要。
非構造化データ
PDF、ビデオ、音声など、毎年生成されるデータの約 90% は非構造化データ。これまでクエリや検索が困難だったが、AI のマルチモダリティ知覚により、意味を理解してベクトル化し、検索可能にできるようになった。
2 つの基盤ライブラリ
- cuDF: データフレーム(構造化データ)用
- cuVS: ベクトルストア(非構造化データ、セマンティックデータ)用
クラウドパートナーシップ
IBM

SQL の発明者である IBM と協業し、Watson X データを cuDF で加速。Nestle は 185 カ国のサプライチェーンデータを、5 倍高速かつ 83% 低コストで処理できるようになった。
Dell
cuDF と cuVS を統合した Dell AI データプラットフォームを発表。NTT データとの協業で大幅な高速化を実現。
Google Cloud

Vertex AI と BigQuery を加速。Snapchat のコンピューティングコストを約 80% 削減。
AWS

EMR、SageMaker、Bedrock を加速。
今年は OpenAI を AWS にもたらすことで、大きな消費拡大が見込まれる。NVIDIA の最初のクラウドパートナー。
Microsoft Azure

NVIDIA の A100 スーパーコンピュータを最初に導入したのは Azure で、これが OpenAI との成功につながった。AI Foundry、Bing 検索を加速。
機密コンピューティングにより、オペレーターでさえデータやモデルを見ることができない環境で、OpenAI や Anthropic のモデルを保護して展開可能。
Oracle

NVIDIA は Oracle の最初の AI 顧客であり、最初のサプライヤーでもあった。Cohere、Fireworks、OpenAI などを展開。
Palantir + Dell

3 社でエアギャップ環境やオンプレミスでも完全に展開可能な AI プラットフォームを構築。Palantir Ontologies との連携により、どの国でも、フィールドでも AI を展開可能に。
NVIDIA の戦略、垂直統合 × 水平オープン
NVIDIA は世界初の垂直統合かつ水平オープンな企業。
垂直統合が必要な理由
アクセラレーテッドコンピューティングの本質はアプリケーションの加速。ムーアの法則が限界を迎えた今、ドメイン固有のアクセラレーションでしか大幅な高速化とコスト削減は達成できない。
そのため、NVIDIA は以下を理解する必要がある:
- アプリケーション
- ドメイン
- アルゴリズム
- 展開シナリオ(データセンター、クラウド、オンプレミス、エッジ、ロボティクス)
水平オープン
NVIDIA のテクノロジーは、あらゆるプラットフォームに統合可能。ソフトウェアとライブラリを提供し、パートナーのテクノロジーと統合することで、世界中にアクセラレーテッドコンピューティングを届ける。
業界別展開

| 業界 | 市場規模 | NVIDIA の取り組み |
|---|---|---|
| 自動運転車 | - | 幅広いリーチと影響力 |
| 金融サービス | - | アルゴリズム取引がディープラーニング/トランスフォーマーへ移行中。GTC 最大の参加者割合 |
| ヘルスケア | - | 創薬向け AI 物理学/生物学、診断支援 AI エージェント |
| 産業 | - | AI ファクトリー、チッププラント、コンピュータプラントの建設 |
| メディア/ゲーム | - | リアルタイム AI プラットフォーム、翻訳、放送支援。Holoscan |
| 量子コンピューティング | - | 35 社と cuQuantum GPU ハイブリッドシステムを構築中 |
| 小売/CPG | 35 兆ドル | サプライチェーン、ショッピングシステム、カスタマーサポート AI エージェント |
| ロボティクス/製造 | 50 兆ドル | 10 年間取り組み、110 台のロボットを展示 |
| 通信 | 2 兆ドル | 基地局が AI インフラストラクチャプラットフォームへ進化。Aerial(AI RAN)で Nokia、T-Mobile と協業 |
NVIDIA の至宝、CUDA X ライブラリ
NVIDIA はアルゴリズム企業。
CUDA X ライブラリが会社の至宝であり、コンピューティングプラットフォームを各産業の問題解決をする。
今回の GTC では約 100 のライブラリと約 40 のモデルを発表。

主要ライブラリ
| ライブラリ | 用途 |
|---|---|
| cuDNN | ディープニューラルネットワーク(AI ビッグバンの立役者) |
| cuOpt | 意思決定最適化 |
| cuLitho | 計算リソグラフィ |
| cuDSS | 直接スパースソルバー |
| cuEquivariance | 幾何学認識ニューラルネットワーク |
| Aerial | AI RAN |
| Warp | 微分可能物理 |
| Parabricks | ゲノミクス |
AI の 3 つの変曲点

過去 2 年間で AI に 3 つの重要な変曲点が訪れた。
- ChatGPT(2022 年末〜2023 年): 生成 AI 時代の始まり。コンピューティングが「検索ベース」から「生成ベース」へ根本的に変化
- o1(推論 AI): 反省・計画・問題分解が可能に。生成 AI を信頼でき、真実に基づいたものに
- Claude Code(エージェント AI): ファイル読み込み、コード作成、コンパイル、テスト、イテレーションが可能に。NVIDIA 社員の 100% が Claude Code、Codex、Cursor のいずれかを使用
この結果、AI は「知覚する AI」→「生成する AI」→「推論する AI」→「実際に仕事をする AI」へと進化した。
推論の変曲点と需要爆発
AI が生産的な仕事をするようになり、推論の変曲点が到来した。
- 計算需要は過去 2 年間で 100 万倍に増加(10000 倍の計算量増加 × 100 倍の使用量増加)
- AI スタートアップへのベンチャー投資は 1500 億ドル(人類史上最大)
- 投資規模が数百万ドルから数十億ドルへ移行
2027 年までに 少なくとも 1 兆ドルの需要が見込まれる(昨年の 5,000 億ドルから倍増)。
トークンファクトリーの経済学
データセンターは「ファイル用のデータセンター」から「トークンを生成するファクトリー」へ変化した。
トークン経済の 2 軸
| 軸 | 意味 | ビジネスインパクト |
|---|---|---|
| スループット(縦軸) | ワットあたりのトークン生成量 | 電力制限下での生産量 |
| トークン速度(横軸) | 推論の速度 | AI の賢さ、処理できるコンテキスト量 |
価格帯の分化

| ティア | 特徴 | 価格例 |
|---|---|---|
| 無料 | 高スループット、低速度 | $0 |
| 標準 | 中スループット、中速度 | $3 / 100 万トークン |
| 高 | 低スループット、高速度 | $6 / 100 万トークン |
| プレミアム | 最低スループット、最高速度 | $45〜$150 / 100 万トークン |
今後、世界中の CEO がこのトークンファクトリーの効率を研究することになる。これが収益に直結する。
Grace Blackwell と Vera Rubin の性能

Grace Blackwell NVLink 72
- ムーアの法則なら 1.5 倍の性能向上が期待されるところ、35〜50 倍 を達成
- semi analysis の Dylan Patel 曰く「Jensen はサンドバッグした。実際には 50 倍だ」
- トークンあたりコストは世界最低で「基本的に手が届かない」
Vera Rubin プラットフォーム
- 7 つのチップ、5 つのラックスケールコンピュータ
- 3.6 エクサフロップス、260TB/秒の NVLink 帯域幅
- 10 年で 4000 万倍 のコンピュート向上
- 100% 液冷、45 度の温水で冷却
- インストール時間: 2 日 → 2 時間
収益インパクト(1GW データセンターの場合)
| プラットフォーム | Hopper 比の収益 |
|---|---|
| Hopper | 1x |
| Grace Blackwell | 5x |
| Vera Rubin | 25x(Groq 統合時は 35x) |
Groq との統合

NVIDIA は Groq チームを買収し、技術をライセンス。
2 つの極端なプロセッサを統合した。
| Vera Rubin | Groq | |
|---|---|---|
| 設計思想 | 高スループット | 低レイテンシ |
| メモリ | 288GB/チップ | 500MB/チップ(大量 SRAM) |
| 用途 | Pre-fill、Attention | Decode、トークン生成 |
Dynamo というソフトウェアで 2 つのプロセッサを統合し、推論パイプラインを最適化。高スループットと低レイテンシの両立を実現。
ロードマップ
| 世代 | GPU | CPU | LPU | スケールアップ |
|---|---|---|---|---|
| Blackwell | Blackwell | Grace | - | NVLink 72(銅) |
| Rubin | Rubin | Vera | LP 30 | NVLink 72 + 光学 → 576 |
| Rubin Ultra | Rubin Ultra | Vera | LP 35 | Kyber(NVLink 144) |
| Feynman | 次世代 | Rosa | LP 40 | Kyber + CPO |
NVIDIA Deepchex プラットフォーム
AI ファクトリーの設計・運用を最適化するデジタルツインプラットフォーム。
- DS World: Omniverse 上で AI ファクトリーをバーチャル設計
- DS Flex: グリッドとの動的電力管理
- DS MaxQ: トークンスループットの動的最大化
パートナー: PTC、Dassault Systemes、Jacobs、Siemens、Cadence、Procore など
AI ファクトリーには 2 倍の最適化余地があり、このスケールでの 2 倍は巨大。
宇宙展開

- Thor: 放射線承認済み、すでに衛星に搭載
- Vera Rubin Space-1: 宇宙データセンター用コンピュータ(開発中)
- 課題: 宇宙では伝導・対流がなく放射のみで冷却が必要
OpenClaw

Peter Steinberger が開発したオープンソースプロジェクト。
- 人類史上最も人気のあるオープンソースプロジェクト(数週間で Linux の 30 年を超えた)
- コマンド 1 つで AI エージェントをダウンロード・構築可能
- Andrej Karpathy の「リサーチ」機能: タスクを与えて寝ると、一晩で 100 の実験を自動実行
NVIDIA は OpenClaw のサポートを発表。
OpenClaw は AI エージェントのためのオペレーティングシステム。リソース管理、スケジューリング、サブエージェント呼び出し、マルチモーダル I/O を備える。
Windows がパーソナルコンピュータを可能にしたように、OpenClaw がパーソナルエージェントを可能にした。
Linux、HTTP/HTML、Kubernetes と同様、業界が必要としていたものを必要なタイミングで提供。すべての企業が「OpenClaw 戦略」を持つ必要がある。
エンタープライズ IT の変革
すべての SaaS 企業が GaaS(Agentic as a Service)企業になる。

セキュリティ課題への対応
エージェントは機密情報アクセス、コード実行、外部通信が可能なため、セキュリティが必須。

NVIDIA は NeMo Claw を開発
- OpenShell(セキュリティ統合)
- ポリシーエンジン連携
- ネットワークガードレール
- プライバシールーター
NVIDIA オープンモデル

全領域でフロンティアに立つ 6 つのモデルファミリー:
| モデル | 用途 |
|---|---|
| Nemotron | 言語、視覚、RAG、音声 |
| Cosmos | 物理 AI、ワールド生成 |
| Alpamayo | 自動運転(世界初の思考・推論型) |
| Groot | 汎用ロボット |
| BioNeMo | 生物学、分子設計 |
| Earth Two | 天気・気候予測 |
Nemotron-3 Ultra は世界最高のベースモデルとなり、各国の Sovereign AI 構築を支援。
Nemotron Coalition

Cursor、LangChain、Mistral、Perplexity、Sarvam など多数が参加し、Nemotron-4 を共同開発。
トークン予算の時代
将来、すべてのエンジニアは年間トークン予算を持つ。基本給に加え、その半額程度をトークンとして支給。シリコンバレーでは「仕事に何トークン付いてくるか」が採用条件に。
Physical AI
自動運転車の「ChatGPT モーメント」

自動運転が確実に機能することが証明された。
新パートナー: BYD、Hyundai、NISSAN、Geely(合計年間 1,800 万台)
Uber と提携し複数都市でロボタクシー展開。
Alpamayo: 世界初の思考・推論する自動運転 AI。車が自分の行動を説明可能。
ロボット開発エコシステム
| ツール | 用途 |
|---|---|
| Isaac Lab | トレーニング・評価 |
| Newton | 微分可能物理シミュレーション |
| Cosmos | ニューラルシミュレーション |
| Groot | ロボット推論・行動生成 |
Disney コラボレーション
Disney Research と共同開発。オラフロボットが登場し、Omniverse 内で歩行を学習、Newton ソルバーで物理世界に適応。
将来のディズニーランドでは、キャラクターロボットが園内を歩き回る。

まとめ
今回のキーノートは内容が盛りだくさんで、その中でも気になるキーワードをいくつかまとめます。AI は推論とエージェントの時代に入り、トークンが新しい通貨・価値になるとのこと。NVIDIA はその基盤をハード・ソフト・エコシステムすべてで提供する存在になることを強く感じました。
AI の変革点
- ChatGPT → o1 → Claude Code の進化で、AI の用途が「生成」→「推論」→「実行」へシフト
- 計算需要は過去 2 年で 100 万倍、2027 年までに 1 兆ドル の需要
- NVIDIA 社員の 100% が Claude Code / Codex / Cursor を使用
トークンファクトリー
- データセンターは「ファイル保存」から「トークン生産工場」へ
- 世界中の CEO がトークン効率を追求する時代 に
- 将来、エンジニアは年間トークン予算を持ち、採用条件になる
Vera Rubin プラットフォーム
- Hopper 比で 35〜50 倍 の性能向上(ムーアの法則なら 1.5 倍)
- 10 年で 4,000 万倍 のコンピュート向上
- Groq 統合で高スループットと低レイテンシを両立
OpenClaw 革命
- エージェント AI の OS(Linux、HTML、Kubernetes と同等のインパクト)
- 人類史上最も人気のオープンソースプロジェクト
- すべての SaaS 企業が GaaS(Agentic as a Service)企業 に
Physical AI
- 自動運転の ChatGPT モーメント 到来
- 新パートナー: BYD、Hyundai、Nissan、Geely(年間 1,800 万台)
- Disney と共同で Olaf ロボットを開発、将来のディズニーランドへ









