
【レポート】 Alteryx Analytics Summit 事例講演 「 株式会社三菱UFJ銀行:データ活用を加速する人材育成メソッド」 #alteryx
2025年7月9日、赤坂インターシティコンファレンスにて 『Alteryx Analytics Summit Japan 2025』 が開催されました。
本記事では、イベントのGeneral Sessionで発表された内容についてレポートいたします。
セッション概要
データ活用を加速する人材育成メソッド
急速に変化するビジネス環境の中で、金融機関における適正な金融犯罪対策の実施と、その高度化は不可欠です。その鍵となるのが、ビジネスユーザーによるデータ活用です。特定の専門家に限らず、ビジネスユーザーが自らデータを分析し、意思決定を強化できる環境が求められています。
本セッションでは、Alteryxの活用を進めるための人材育成の取り組みについてご紹介します。年間を通じたトレーニング、実践的なスキル強化、そして最終的にハッカソンを通じて業務改革の成果を共有する仕組みについて解説し、データ分析の力を全社員の手に届け、組織全体を進化させる方法をお伝えします。
スピーカー
- 株式会社三菱UFJ銀行 グローバル金融犯罪対策部 オペレーショングループ テクノロジーチーム
- 上席調査役 藤森 義朗 氏
セッション内容
スピーカー 藤森 義朗 氏 について
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グローバル金融犯罪対策部について
- アンチマネーロンダリングなど、グローバルな金融犯罪対策を担当する部署
- 金融犯罪対策に関わるデータ分析基盤の開発や分析を行っている
- 約6年ほど前からAlteryxを導入している
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藤森 義朗 氏について
- Alteryx Tokyo ユーザーグループのリーダー
- また、コミュニティ活動への貢献が認められ、Alteryx ACEにも選出されている
金融犯罪対策のデータ活用に期待されること
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金融犯罪手法は毎年高度化し、従来の対策では対応できなくなっている状況
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また、国ごとに異なる規制にも対応していかなければ、経済制裁が課されたり顧客の信頼を失ったりするリスクがある
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そのために、データを活用して 「もっと良く、もっと早く、ミスなく、説明責任を果たせる環境」 をつくることが期待されている
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もっと良く
- 金融犯罪の専門家とデータの専門家が別の人であり、知識が交わらないのが課題になっている
- そのため、業務部門のユーザーがデータ活用のスキルを少しずつでも身につける必要がある
- 色々なレベルのユーザーがAlteryxを介して自らデータを扱えるようになることで、業務と分析の距離が縮まり良いアウトプットにつながっている
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もっと早く
- 業務要件に基づいた開発をスピーディに行いたいが、従来のウォーターフォール型開発ではスピードに限界がある状況
- 業務を理解している人が分析要件に落とし込み、自律的に開発・分析を進めることが重要
- Alteryxでは、データの準備・加工・分析・機械学習までを行えるため、開発スピードが大幅に向上
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ミスなく
- ミスを減らすためには、効率的かつ網羅的なテストが不可欠
- 機密データを使うため、開発段階で本番データを使ったテストが難しいという課題があった
- Alteryxはデータの状態を途中で確認できるため、テストがしやすく、効率的な開発ができた
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説明をする
- 金融犯罪対策では、「なぜこの処理をしているのか」を説明できることが重要
- Alteryxでは、開発そのものが処理内容の説明になっているため、より説明性の高いワークフロー設計が可能
データ活用に必要な人材像
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データ活用には複数の専門領域が関与していて、各プロセス間に「分断」があるため、部門間の連携が課題となる
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部門間でのコミュニケーションロスが発生するリスクを避けるには、共通言語での会話が必要
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それには「業務理解」と「データ活用スキル」の両方を持つ人が理想だが、現実には非常に少ない
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部門間で知識の垣根を超えるために、業務ユーザーにスキル習得を頼んでも時間が取れないことがほとんど
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そのため、「業務としてデータ活用・スキル習得」を進めることが最も実行可能な方法
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まずは業務部門がIT部門の領域に踏み込み、基礎的な分析スキルを身につけると、最低限の理解があればデータサイエンティストとの連携がスムーズになる
Alteryxを活用した人材育成
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社内向けのAlteryx研修プログラムを実施して3年目になる
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Alteryxを通じて、業務部門の担当者が自らデータ分析・自動化を行い業務課題を解決してもらうための実践型プログラム
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プログラムの内容
- 5月〜6月 準備期間:Alteryxのインストール、基本操作の習得
- 7月〜9月 研修:Alteryx基礎〜応用編の研修を実施し、「Alteryx Core認定」の取得を目指す。また、イノベーションデーを開催し、実際に業務で困っている課題を抽出
- 10月〜1月 実践:各自が抽出した業務課題に対して、Alteryxでソリューションを開発・実装。その間、質問会等も実施
- 2月 成果発表会:部長クラスの前でプレゼンを行い、効果や成果を報告
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ビジネスユースケース
- イノベーションデーで抽出した実際のビジネス課題は、機械学習や高度な分析に限らず、日常業務の改善が中心
- イノベーションデーで抽出した実際のビジネス課題は、機械学習や高度な分析に限らず、日常業務の改善が中心
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Case1
- 新しい制裁対象者の名前を登録する際、該当の名前が既に登録されていないかを目視で事前チェックする業務
- 類似判定ロジックをマクロ化し、拡張性を持たせつつ自動化することができた
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Case2
- Excelでアクセスログの検証、資料作成を実施していた
- 複数DBからのログを照合することで、これまでデータの整合性が合わず原因特定に時間がかかっていた部分も効率的に自動化できた
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Case3
- Excelで複数ファイルの統合作業を行っていた
- Alteryxに置き換えることで、入力ファイルの参照ミスなども削減したほか、業務別に集計するなど柔軟かつ迅速な作業が可能に
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Case4
- 制裁法対応における調査において、ログデータを複数の工程に分けて分析していた
- 処理フローを段階的に分けることで、前年度との結合・クレンジング部分など、視認性の高い設計に
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Case5
- 日付や数値の表記が異なる複数のファイルを使って報告書の作成をしていた
- 日付処理と数値処理をそれぞれ独立したマクロに分離し、再利用性の高い構成のフローを作成し、ミスを削減
今後の課題
- 研修を一度受けただけでは不十分で、継続的に活用し続ける仕組み作りが必要だと認識している
- 今後は、受講者や未受講者の利用状況を可視化するなどをし、適切なフォローと支援体制の強化を検討している
さいごに
以上、「データ活用を加速する人材育成メソッド」のセッションレポートでした!
データ活用に携わっている方は、一度は社内育成やスキル習得などの課題に直面したことがあると思います。Alteryxはユーザーフレンドリーなツールですので、データに明るくない事業部のメンバーもデータ活用の第一歩として踏み出しやすいですよね。今回のセッションは、事業部門にデータ活用を根付かせたいと考える方々にとって非常に参考になるセッションだったと思います。