
【レポート】セッション「Tips from Motorola on Streamlining Supply Chain Processes(モトローラに学ぶサプライチェーン業務効率化のヒント)」– Alteryx Inspire 2025 #AlteryxInspire
こんにちは、まつおかです。
2025年5月12日(月)~5月15日(木)まで、アメリカ・ラスベガスで開催されたAlteryxの年次カンファレンスイベント「Inspire 2025」に現地参加してきました。
当エントリではイベント4日目に行われたセッション「Tips from Motorola on Streamlining Supply Chain Processes(モトローラに学ぶサプライチェーン業務効率化のヒント)」のレポートをお届けします。
セッション概要
当セッションの概要は以下のとおりです。
概要
In this session you'll learn how the supply chain team at Motorola is saving time and streamlining operations with automation. You'll leave with practical tips you can apply to your own challenging data environments.
Talk about 2 use cases -
- Warehouse Replenishments
- Aged Work Orders Report
このセッションでは、モトローラのサプライチェーンチームが、自動化によってどのように時間を節約し、業務を効率化しているかをご紹介します。セッション終了後には、ご自身の複雑なデータ環境でも活用できる実践的なヒントを得ることができるでしょう。
取り上げる2つのユースケース:
- 倉庫補充(Warehouse Replenishments)
- 長期未処理作業指示レポート(Aged Work Orders Report)
登壇者
-
Aabhas Bhargava 氏
- Director IT - Supply Chain Operations at Motorola Solutions Inc
- 18年以上のIT業界経験を持つサプライチェーン分野のエキスパート
- ERPのアップグレード、M&A、施設移転など多くのIT戦略プロジェクトを主導
- 2017年にモトローラ・ソリューションズに入社し、現在はグローバル製造・流通・修理センターのIT運用を担当
- 2023年からAlteryxの活用を開始、新しいツールを試すのが好きで、習得にはユースケースを見つけて実際に使ってみることだと感じている
Motorola Solutionsについて
モトローラ・ソリューションズは、携帯電話のモトローラとは異なり、安全を基盤とした公共安全・企業向けのソリューションを提供しています。製品群には、警察や消防が使用する無線機、911通報時の指令センターソフトウェア、ボディカメラや監視カメラ、アクセス制御システムなどが含まれます。
セッションレポート
アジェンダ
倉庫の補充と出荷の照合という2つのユースケースについてお話しします。
また、ビジネスの成果や重要なポイントについてお話しして、最後にQ&Aの時間を設けます。
ユースケース1:倉庫補充プロセスの自動化
モトローラのエルジン工場では、製品製造に必要な部品を保管する倉庫があり、部品の「リプレニッシュメント(補充)」が毎日行われています。
このプロセスには次のような大きな課題がありました。
- Oracle ERP、MES(製造実行システム)、Googleスプレッドシートなど、複数のシステムからデータを手動で抽出
- 20年以上使われているマクロ付きExcel シートに入力し実行
- 複数シートに出力されたExcelを印刷し作業員に手渡し
- Excelシートの操作方法を知っている特定の人が毎回45分かけて処理
解決策
Alteryxを用いて以下のワークフローを構築
- 複数システムからのデータ抽出を自動化
- 在庫が特定のレベルを下回った際に補充指示を出力
- Serverでワークフロー管理し、自動実行設定
- Googleドライブ上にスプレッドシートとして出力し、誰でもアクセス可能に
→ これにより、担当者への依存とボトルネックが解消
ワークフローの構造と出力
ワークフローは3つのセクションに別れています。
- 複数のデータソース(Oracle ERP、MES、Googleスプレッドシート)からデータ抽出
- ビジネスロジックをマッピングし結合
- 出力ファイルの生成(タイムスタンプ付加、データクレンジング)
出力ファイルには品目、場所、在庫数、最小最大レベル、補充元が記載されており、作業員はこれを見て補充作業を行います。
ユースケース2:出荷照合
工場内で製造され箱に詰められた無線機は「仮置き場」に保管され、その後「出荷エリア」に移動します。この間倉庫管理システム(WMS)を使用し、箱の所在を追跡しているのですが、ここで次のような課題が発生していました。
- エリア移動時に箱をスキャンする必要があるが、スキャンを忘れるケースが頻発
- ERPが出荷エリアにあると認識できず、出荷可能と判断されない
- 出荷遅延が発生し、顧客からクレームが寄せられる
解決策
Alteryxを用いて以下のワークフローを構築
- 出荷チームの勤務終了時刻前の午後6時45分にワークフローを自動実行
- ERPデータをスキャンして「仮置き場」に残っている箱があるかを確認
- データ上で箱が残っていると判断された場合、出荷監督者に詳細なメールを送信
- 箱が残っていない場合は「データなし」と通知
このAlteryxのワークフローは「リーン製造」(無駄を排除したスマートな生産方式)の「ポカヨケ」(作業ミスを物理的に防止する仕組みや装置のこと)の役割を果たしました。
ワークフローの構造と出力
- ワークフローは9個のツールで構成
- Oracle ERPからデータを取得、データの有無を確認
- データがあればメールと出力ファイルを生成
- データが無ければ「データなし」と通知
以上の非常にシンプルな構成で、出力ファイルには注文番号、箱番号、寸法などが記載されており、作業員がすぐに確認できるようになっています。
ビジネス上の成果とインパクト
- 倉庫補充ワークフロー
- Excelシート操作担当者の作業時間を年間350時間以上削減
- 印刷したリストを手渡ししていたところ、作業員が直接Googleドライブのファイルにアクセスできるようになったことで、業務開始が迅速化
- 属人化の解消と業務の標準化
- 出荷照合ワークフロー
- 導入初日:10箱のスキャン漏れを検出
- その後2日目・3日目は5箱、4日目にはゼロに
- スキャン漏れによる出荷ミスが約80%削減
- 監督者・現場スタッフともに仕事の質が向上
Alteryxは大量のデータを扱ったり分析に使用すること以外にも、日々の単純作業を自動化することにも活用できます。
今回紹介した2つのワークフローがモトローラ・ソリューションズで最初に開発したものでしたが、効果を目の当たりにしてからはAlteryxに対する信頼を得ることができ、今では50以上のワークフローが稼働しており、業務上不可欠な存在となっています。
セッション最後のQ&A
- Oracleのデータは、レポートを実行してファイルとして取り込んでいるのですか?それとも直接接続していますか?
- Oracleのデータベースに直接接続しています
- 本番環境に負荷をかけないよう、Oracle ERPのADG(Active Data Guard)という本番データのレプリカデータベースを使用しています
- ADGは5分ごとに同期されており、Tableauチームや他の分析チームも同じように利用しています
- 倉庫以外の資材調達などにもAlteryxは使われていますか?
- 資材調達や購買はERP(クラウドの計画システムやE2 Suiteなど)で管理されています
- Alteryxはレポート作成用のデータ準備に使われています
- サプライヤーからの未納品確認
- 不足している重要部品
- 未処理の発注書
- 在庫管理においてFIFO(先入先出)の管理は行っていますか?
- いいえ、私たちのケースではロット管理やシリアル管理が必要なアイテムがありません
- 倉庫内の仮置き場から出荷エリアへ移動させるためのもので、FIFOの必要はありません
- 50以上のワークフローを構築されたとのことですが、どのくらい複雑なものですか?
- それほど複雑なワークフローはありません
- 今回初めてInsapireに参加し、他のセッションで見たワークフローレベルには驚きました
- ただ、シンプルなワークフローでも問題解決できることが重要で、データを統合し意思決定に使える状態で提供することに重点を置いています
- ワークフローの自動実行はどのようにしていますか?「Cloud Execution for Desktop」などの機能を使っていますか?
- Alteryx Serverを使用しスケジューラーで実行時間を設定しています
- ワークフローの殆どはスケジューラー実行しており、手動で実行することはありません
- 今後Alteryxを使用し取り組みたいプロジェクトは何ですか?
- 製造環境の拡大に伴うプロジェクトです
- 最近完全に自動化されたロボット製造ラインを導入し、MESやOracle ERPだけでなく、サードパーティシステムでも稼働しています
- ビジネスからの要望は「15分あるいは1時間ごとにリアルタイムの生産実績ダッシュボードの作成」です
- Oracle EBSとAlteryxの組み合わせで稼働しているシステムからデータを取得し統合します
私は約13年間Oracleに携わってきました。Alteryxを使い始め、複数のシステムを繋げてひとつのデータセットとして扱えることに感動しました。これは従来のERPではできなかったことであり、私にとって大きな成果でした。
さいごに
今回のセッションで特に印象的だったのは以下の2点です。
- Alteryxは大量のデータを扱ったり分析に使用するだけでなく日々の単純作業を自動化することにも活用できること
- 複雑なワークフローでなくても、課題を認識し、スマートに解決できることが重要であるということ
どの現場でも多くの課題があると思います。
それらを洗い出しどう改善していくかを考えることが業務を効率化するにあたりとても重要だと改めて感じました。
そして、普段Alteryxはデータ加工や分析ツールとして使うことを考えがちですが、業務改善や作業の自動化など、もっと幅広く活用できる場面があると実感できる良い機会となりました。