AWS が公開した AI エージェント向けベンチマーク aws-bench の仕組みを確認してみた

AWS が公開した AI エージェント向けベンチマーク aws-bench の仕組みを確認してみた

AWS が公開した AI エージェント向けオープンソースベンチマーク aws-bench を紹介します。クリーンな AWS テストアカウントでの評価環境構築、AI エージェントの実行と採点の流れ、8シナリオ、実行条件、所要時間と費用の見方を、公式資料とリポジトリをもとに確認しました。
2026.07.26

はじめに

2026年7月24日、AWS が AI エージェントの AWS 操作能力を測るオープンソースベンチマーク aws-bench をリサーチプレビューとして公開しました。実際の AWS アカウントにシナリオごとのリソースをデプロイし、AI エージェントに操作させて、回答内容や操作後のリソース状態を採点する仕組みです。

https://aws.amazon.com/about-aws/whats-new/2026/07/aws-bench/

https://github.com/aws-bench/aws-bench

本記事では公式リポジトリとドキュメントをもとに aws-bench の仕組みの確認を試みました。ベンチマークそのものの実行結果、AI エージェントやモデル間の性能比較、公開スコアの再現、独自ベンチマークの設計は扱いません。

aws-bench の実行フロー

  1. AWS Organizations の管理アカウントから、ベンチマーク用の OU とテストアカウントを準備します。テストアカウントはシナリオごとに1つ使います。
  2. シナリオに含まれる CDK 定義で、評価対象となる AWS リソースをテストアカウントへデプロイします。
  3. コンテナで構成されるサンドボックス環境内の AI エージェントに、タスクの指示文とテストアカウントの AWS 認証情報を渡し、制限時間内に AWS を操作させます。
  4. 採点はタスクの種類で分かれます。読み取り・診断系のタスクはエージェントの回答を参照回答と比較して判定し、作成・変更系のタスクは実際のリソース状態を検証します。
  5. 実行後は env verify で drift と残留リソースを確認し、env reset で同一環境を再初期化するか、リソースを撤去します。

読み取り・診断系の introspection タスクは99本あり、参照回答との同等性を LLM judge が二値で判定します。introspection では check.py のような検証コードは実行されず、回答文の判定のみです。作成・変更系の mutation タスクは35本あり、シナリオごとに用意された check.py の判定基準をすべてクリアした場合のみ合格となり、部分点はありません。

データセットとシナリオ

データセットは8シナリオ・134タスクで構成されています。

シナリオ タスク数 主な性格
ec2-multiregion 9 複数リージョンの EC2 環境を調査する quickstart
databases-and-storage 30 データベース・ストレージの調査
compute-and-data 27 コンピュート・データ基盤の作成や設定変更
serverless-apps 13 サーバーレスアプリケーションの調査
streaming-and-iot 8 ストリーミング・IoT の作成や設定変更
api-and-observability 15 API・監視基盤の診断
reference-architectures 11 参照アーキテクチャの診断
troubleshooting-multiservice 21 複数サービスにまたがる障害診断

「主な性格」は、各タスクの task.toml にある request_typeintent を静的に集計して分類したものです。

quickstart が使うのは ec2-multiregion の9タスクのみなので、最初から8シナリオすべてを実行する必要はありません。

https://github.com/aws-bench/aws-bench-datasets

実行に必要な条件

AWS 環境:

  • AWS Organizations の管理アカウント
  • 実行するシナリオ数分のテストアカウントを追加できること(1シナリオ1アカウント。空き枠、メールを受信できるドメイン、アカウント数クォータの充足が必要)
  • シナリオが使うリージョンとサービスのクォータ(env init --wait-for-quotas で自動申請されますが、即時承認されない場合があります)
  • Amazon Bedrock のモデルアクセス(LLM による判定に使用します)

ローカル環境:

  • Python 3.12 以降
  • uv
  • Docker Compose v2
  • Docker buildx

https://github.com/aws-bench/aws-bench/blob/main/docs/getting-started.md

所要時間と費用の目安

シナリオごとに設定されたタイムアウト時間と、ワーストケースの概算最大費用です。

シナリオ timeout 上限 概算最大費用 主な課金ドライバー
ec2-multiregion 4.2h 約 $0.4 t3.micro、EBS gp3、パブリック IPv4
databases-and-storage 10.0h $10 EC2、NAT Gateway、ECS、RDS
serverless-apps 6.9h $14 MSK、DocumentDB、NAT Gateway、ALB
reference-architectures 5.9h $18 RabbitMQ、Aurora Serverless v2、Transfer Family、NAT Gateway、Batch
streaming-and-iot 10.4h $21 MSK、Neptune、RDS
api-and-observability 9.3h $37 Redshift、OpenSearch、OpenSearch Serverless、NAT Gateway、Fargate
troubleshooting-multiservice 9.3h $84 EMR、Redshift、NAT Gateway、Network Firewall、Transit Gateway
compute-and-data 23.7h $142 EKS、Redshift Serverless、NAT Gateway、EC2 / EBS

timeout 上限はデプロイから撤去までのタイムアウト合算値で、概算最大費用は主要高額リソースの時間課金を積み上げたワーストケースの静的概算です。いずれも実測ではなく、実際の費用は稼働時間や従量課金の量によって変わります。

これらに加え、エージェントのモデル呼び出しと LLM judge によるトークン費用が別途かかります。

quickstart(ec2-multiregion)は、1時間あたり約 $0.1 の AWS リソース費用で試せる規模です。

ec2-multiregion の9タスクで調べること

quickstart が使う9タスクはすべて introspection(読み取り・診断系)で、タスクごとの制限時間は600秒です。いずれも読み取りのみを求めるタスクで、リソースの作成・変更は含まれません。

タスク名 エージェントに求めること
describe-cloudformation-stack-resources us-west-1 の指定スタックに含まれるリソースを説明する
describe-ec-instances-cross-region-connectivity 3リージョンの EC2 を数え、us-east-1 で同じ VPC にあるインスタンスを特定する
ec-instances-without-default-vpc 全リージョンで、デフォルト VPC を使っていないインスタンスを列挙する
find-ec-instances-in-public-subnets 3リージョンで、パブリックサブネットにあるインスタンスを見つける
list-ec-instances-all-regions-1 指定リージョンで、SSH でインターネットから到達可能なインスタンスを特定する
list-ec-instances-all-regions 対象リージョンにある EC2 インスタンス ID を列挙する
list-ec-instances-by-vpc-across-regions 全リージョンで、各インスタンスが属する VPC を対応付ける
list-ec-private-ips-all-regions 全リージョンの EC2 とプライベート IP を表形式で返す
list-unused-security-groups-all-regions 全リージョンで、未使用のセキュリティグループを列挙する

troubleshooting-multiservice の21タスクで診断すること

読み取り系で実務に近い障害診断を扱うシナリオとして、troubleshooting-multiservice の中身も確認しました。21タスクもすべて introspection で、診断結果や調査結果を文字列で回答させます。

タスク名 エージェントに求めること
asg-instance-health-check-failure Auto Scaling Group のインスタンスがヘルスチェックに失敗している原因を調査する
asg-secondary-network-interface-attach-failure Auto Scaling Group のインスタンスがセカンダリ NIC の attach に失敗している原因を診断する
diagnose-asg-instance-issues Auto Scaling Group のインスタンス障害を調査・診断する
check-vpc-flow-log-destinations 指定 VPC のフローログ送信先を確認する
diagnose-auto-scaling-group-launch-failure Auto Scaling Group でインスタンスが起動できない根本原因を特定する
diagnose-ecs-cluster-no-traffic ECS クラスターがトラフィックを受け付けていない原因を特定する
diagnose-ecs-service-no-running-tasks-1 ECS サービスに実行中タスクがない理由と修正が必要な点を特定する
diagnose-emr-cluster-performance-issues EMR クラスターで Spark ジョブが遅い原因を調査する
diagnose-redshift-cluster-health-issues Redshift クラスターのヘルス異常の原因を調査する
diagnose-step-functions-failing-executions Step Functions ステートマシンの実行が失敗している原因を調査する
ec-instance-security-vulnerability-scan EC2 インスタンスのセキュリティ脆弱性と古いパッケージを特定する
ec-secrets-manager-exit-code-error EC2 インスタンスが Secrets Manager からシークレット取得時に exit code 255 になる原因を診断する
ecs-elasticache-transit-gateway-connectivity Transit Gateway 経由の ECS→ElastiCache 接続失敗をルート・SG・NACL から診断する
ecs-service-deployment-failure-diagnosis ECS サービスのデプロイ失敗の原因と関連する問題を診断する
eventbridge-ecs-task-trigger-debugging EventBridge ルールが ECS タスクを起動しない問題とコード変更が反映されない原因をデバッグする
fix-cloudformation-update-failed-stack UPDATE_FAILED 状態の CloudFormation スタックの原因を診断し復旧手順を示す
glue-job-wrong-deployment-region Glue ジョブが意図しないリージョンにデプロイされている原因を調査する
lambda-appconfig-stale-value-troubleshoot Lambda が AppConfig の更新後も古い設定値を読み続ける原因を診断する
troubleshoot-asg-ssh-connectivity Auto Scaling Group インスタンスへの SSH 接続問題を診断し代替接続手段を特定する
troubleshoot-glue-job-table-read-failure Glue ジョブが指定テーブルの読み取りに失敗する原因を診断する
verify-ec-traffic-routes-through-network-firewall EC2 インスタンスの外向きトラフィックが Network Firewall を経由しているか確認する

まとめ

aws-bench は、AI エージェントの AWS 操作能力を、読み取り・診断系では回答内容、作成・変更系では操作後のリソース状態を用いて評価するベンチマークです。

実行には、AWS Organizations でシナリオごとにテストアカウントを用意できる環境が必要です。この点は導入時のハードルになりますが、AI エージェントに実際の AWS 環境を安全に操作させるための設計としては妥当だと感じました。

次は、AWS Organizations 環境の準備ができ次第、Kiro で比較的低コストで試せる ec2-multiregion で一連の流れを確認する予定です。
その後は公式リポジトリをフォークし、高コストになりやすいサービスや構成を除外したうえで、Step Functions、Lambda、ECS、VPC などを対象にベンチマークを試してみたいと思います。

参考リンク


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