レンダーファームが構築できるサービス AWS Deadline Cloudがリリースされました

4月3日にAWS上にレンダーファームを構築・運用できる新しいサービス「AWS Deadline Cloud」がリリースされました。 AWS Deadline Cloudのサービスの詳細についてや、同様のサービスであるAWS Thinkbox Deadlineとは何が異なるのかを解説します。
2024.04.03

こんにちは。ゲームソリューション部の出村です。

AWS をレンダーファームとして利用するためのサービスであるAWS Deadline Cloudが4月3日にリリースされました。このサービスがどんなサービスなのか その概要について書いていきます。

レンダーファームとは、3DCGアニメーションや映像制作において、複数のコンピューターを用いてレンダリング処理を高速化するシステムのことをさします。

AWS Deadline Cloudとは

AWS Deadline Cloudは、映画やゲーム、VFXなどのコンピューター グラフィックスやビジュアル エフェクトの制作において、クラウド上でスケーラブルなレンダーファームを簡単に構築・運用できるマネージドサービスです。

主な特徴は以下の通りです。

  • クラウド上のレンダーファームを数分で立ち上げられ、必要に応じてリソースを自動でスケーリング可能
  • オンプレミスのインフラを用意する必要がなく、AWSがインフラの管理を行う
  • 従量課金モデルで、実際に使用したリソースのみに課金
  • 予算管理機能が組み込まれており、プロジェクト単位でレンダリングコストが把握可能
  • 主要な3DCGツール(Maya、Arnold、Houdiniなど)との連携が可能
  • カスタムツールとの統合も可能で、独自のレンダリングパイプラインとの組み合わせもできる

高負荷な3Dレンダリングをクラウド上で簡単に実行でき、コスト管理も容易になるため、デジタルコンテンツ制作の生産性が大幅に向上することでしょう。

AWS Thinkbox Deadlineとの違い

同様のサービスとしては、以前よりAWS Thinkbox Deadlineが提供されていました(以降、Thinkbox Deadlineと表記)。ここではThinkbox Deadlineとの違いを解説します。

大きな違いとしては、設定・管理方法があります。Thinkbox Deadlineは Windowsなどで動作するアプリケーションとして提供されています。そのため、インストールやPC側の設定が必要ですし、オンプレミスのマシンをレンダリングで利用することもできますが、その場合にはそれらのマシンの設定が必要となります。一方、AWS Deadline Cloudはクラウド上で完結していますので、利用時の初期設定はブラウザ上から行えますし、レンダリングで利用するマシンの設定等が不要です。

他には対応しているアプリケーションの数が異なります。AWS Deadline Cloudは公開されたばかりであり、現時点では主要なDCCツールには対応しているものの、サポートしているソフトウェアの数・種類はThinkbox Deadlineより少ないです。

そのため、Thinkbox Deadlineのみサポートしているソフトウェアを利用したレンダーファームを構築する場合は、引き続きThinkbox Deadlineを利用します。当面はAWS Deadline CloudとThinkbox Deadlineのいずれも利用できますので、慌ててAWS Deadline Cloudへ移行する必要はありません。

対応しているアプリケーション

Deadline Cloudが現時点で公式サポートされているツールは以下の通りです。これらのツールと連動してレンダリングを行う場合は、これらDCCツールに対応したサブミッターと呼ばれるソフトウェアをインストールする必要があります。

  • Adobe After Effects
  • Autodesk Arnold
  • Autodesk Maya
  • Blender
  • Chaos V-Ray
  • Foundry Nuke
  • Luxion KeyShot
  • SideFX Houdini
  • Unreal Engine

これら以外のDCCツールに対応したサブミッターは開発中であり、そのソースコードはGitHubにて公開されています。

さいごに

これからAWSを使ったレンダーファームを構築する場合は、AWS Deadline Cloudを最初に検討するのがよいでしょう。もし、普段利用しているDCCツールが、まだサポートされてない場合は、AWS Thinkbox Deadlineを利用しつつ、タイミングをみてAWS Deadline Cloudへ移行するのがよいでしょう。まだ慌てなくても大丈夫ですので。