【レポート】がんゲノム医療研究における AI/ML への期待 #AWSSummit
AWS Summit Tokyo 2018。Day1 で開催されたセッション「【東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター様ご登壇事例】がんゲノム医療研究における AI/ML への期待」についてレポートします。
スピーカー:宮野 悟 東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター 教授
セッション概要は次のとおりです。
がんゲノム研究は、研究の質とスピードを向上させるために「いつでも、どこでもゲノム解析が行える」環境が必要となり、クラウドを利用して解析を行うこと がスタンダードになりつつあります。例えば、米国 NCI は、ゲノムデータをクラウドで運用し世界中の研究者が利用できるリソースとして提供しています。当センターは、クラウド上でも Genomon を使ったゲノム解析の高速化を目指しています。そして今後、がんゲノム医療は AI/ML の活用に向かっていきます。今回は、がんゲノム医療研究におけるクラウド有用性と AI/ML の可能性をお話します。ライズ開発に向けて、2年前から取り組んできた新しいアプリケーション基盤の構築、および我々が描いているエンタープライズの未来についてご紹介します。
レポート
- ゲノム研究センター:通称「ゲーセン」
- 自己紹介
- 1954年に母のDNAと卵細胞、父のDNAから生まれた
- 九大数学科:生物医学がバックグラウンドではない
- 攻殻機動隊 Anime Japan 2017 審査員特別賞を受賞
ゲノムとは
- 人体の細胞37兆個
- 一個の細胞DNAが2m
- 全細胞を合わせると740億km (はやぶさの旅は60億km)
がんの臨床シークエンス研究体制
- プロセス
- 患者からサンプルいただく
- シーケンス
- 変異を確認
- 治療方針の収集、検討
- 患者の状態が良くなることが目的、目的は論文ではない
- 設備
- 多様なシーケンサを導入してる
- 国産のシーケンサ
- シリコンナノポアシークエンス
- Siに開けた穴にDNAを通してトンネル電流を読む
- スパコンを利用: SHIROKANE
- 日本のトップがんゲノム研究はこのスパコンから出ている
- インターネットから切り離したエリア:グリーンエリア
- 患者が安心してデータを提供できるように
なぜがんになるのか
- がんとゲノム
- DNAの変異、欠損
- ほとんど修理、補修されるが、それができなくなる
- だからがんのゲノム異常を調べる
- スパコンがなぜ必要か
- 生のデータは例えて言えば、シュレッダーされたくずのようなもの
- 21億ピースのジグソーパズルを解く
- そして変異を探し出す
- 費用感
- 素データ 600ドル程度で可能
- 1500ドル(定価) ←ただし日本ではこうはならない
- クラウド $20-30
Genomon
- Genomon
- ゲノモンGO (Pockemon-GOより早い)
- Mutationをゲット
- 成人T細胞白血病(ATL)
- スパコン京を使って解析
- 49例から3000の構造変異を検出
- PDL1 免疫チェックポイントのゲノムに異常を見つけた←タンパクのゲノム異常では発見できない
- オプシーボは、PD-1を働かなくする
- 全ゲノム解析から、がんが免疫を逃れる仕組みが見つかった
- この成果は若い研究者の超人的努力による
- 日常的にできるわけではない
- がんの論文は年間20万報:すでに人力の能力を超えている
- がんは進化する
- 再生不良性貧血→病気の進行
- 民族興亡のようにクローンが進化している
- Watson for Genomics
- AIだけで診断できるわけではない
- 人間の判断をアシスト
- 人力のみだと2週間->10分に
- 医科研は全遺伝子解析解釈結果を患者に三日と8時間で返している
- 急性骨髄性白血病
- セカンドオピニオンを医科研
- FISH
- 全ゲノム解析 三日7時間30分で、これのみであることが判断付いた
- 不安があったら医科研にかかると、研究同意のみ費用なしで診断が可能
- 米国国立がん研究所(NCI)の取り組み
- クラウドでやってる
- 法律のレギュレーションの整備が進んでいる
- 他の国でも進行中
- しかし、日本は3週遅れ
感想
がん研究とゲノム分析の最新状況について、冗談を交えた面白くわかりやすい解説でした。ゲノムシーケンサの進歩と、計算能力の向上で、全ゲノムの解析が可能になり、遺伝子診断が可能になっていることを知ることができました。ただし、現在の成果は人間の能力を超えた、若手研究者の献身的な努力に依っているとの言葉が印象的でした。一方、分析、診断の迅速化のために人間を補助するAIが大いに貢献しており、その過程で必要となる計算資源として、クラウドを使った分析や診断が、おもに国外で進んでいるそうです。日本はまだ遅れているとのことですが、クラウド活用で診断が安価になることで、一人でも多くの人病気が克服できるようになることに期待したいと思いました。