【セッションレポート】金融 × クラウド革命:業界の常識を覆す変革の軌跡(AWS-67) #AWSSummit

【セッションレポート】金融 × クラウド革命:業界の常識を覆す変革の軌跡(AWS-67) #AWSSummit

Clock Icon2025.07.01

AWS Summit Japan 2025 の Day2 で発表された以下のセッションのレポート記事です。
金融 × クラウド革命:業界の常識を覆す変革の軌跡(AWS-67)

セッションの概要

金融業界は今、歴史的な転換点を迎えています。従来の「堅実」「保守的」というイメージを一新し、AWS を活用した大胆なイノベーションへと舵を切っています。本セッションでは、金融機関がクラウドを活用して実現した革新的な取り組みを、国内外の具体的な事例とともにご紹介します。クラウドネイティブアーキテクチャーの可能性、市場変化に即応できる新しい開発・運用モデル、そして、これらの変革を成功に導くために不可欠な組織文化の転換まで、包括的な視点でお伝えします。デジタル時代における金融ビジネスの展望、そして金融とテクノロジーの融合がもたらす新たな可能性について、皆様と共に考える機会としたいと思います。

※セッションページより引用

セッションレポート

1. 概要

日本の金融機関では、ほぼすべてのシステム領域でAWSへのマイグレーションが進行しており、現在は生成AIの活用や他業種との連携といった新たなテーマに注目が集まっている。

2. 単一金融機関内での変革

生成AIによる生産性と顧客体験の向上

  • 生成AIの導入目的 [1]

    • 主に業務効率化とコスト削減
    • 情報収集・分析の高度化
    • リスク管理や顧客サービスの向上、収益増加なども一部で見られる
  • 生産性向上の具体例

    • データ管理・分析の効率化
    • 投資アナリスト支援(チャート生成、財務指標計算など)
  • MUFGの事例

    • 法人営業の準備作業を生成AIで自動化
      • リード生成数が10倍、CVRが30%向上
      • 開発期間は3ヶ月未満
    • 大量文書からのキーワード抽出と提案書ドラフト作成を実施
      • バッチ推論も活用し、大量文書を効率的に処理
    • 実際に顧客に提示した資料をインプットとしてフィードバック
      • ドラフトの乖離が大きい場合はプロンプト調整を実施
  • マルチエージェント投資アナリスト

    • 因果マップを用いた計画立案と専門エージェントへのタスク分配
    • LangGraphやBedrockなどの技術を活用

顧客体験の向上に向けた取り組み

  • 課題

    1. コンテンツ作成・チェックの負荷が高く、セグメントごとの対応が困難
      • ブランディングや、法規制等のコンプライアンスレビューの負荷が大きい
      • 細かいセグメントを切ってもコンテンツが間に合わず、荒いセグメントでのコンテンツ作成に留まっている
    2. 電話・メール・プッシュ通知などのチャネル最適化が不十分
      • チャネルに応じて、最適なコンテンツを提供したい
  • 解決策

    1. コンテンツの作成

      • 生成AIによるコンテンツ作成を自動化
      • さらに、レビュープロセスの自動化(Human in the loop)
        効率化と精度の確保を両立させる。
    2. チャネルの最適化

      • チェネルごとの最適化されたコンテンツを、AIの力を借りて生成・レビュー
      • 機械学習によって最適なチャネルを判断
  • 事例:NatWest

    • 人の介在を前提としつつも、生成AIを活用して成果を上げている
    • コンプライアンス対応も一部AIに任せている

3. 金融機関の枠を超えた連携

  • 他業種との連携

    • 金融機関同士だけでなく、金融機関と他業種との連携が増えてきている
  • 技術的な連携

    • 利用者が許諾した範囲で、銀行とのデータ連携を行うケース
      • 読み取りAPIの利用率は90%以上[2]
      • 反面、更新APIは10%台にとどまる
  • 認可技術

    • OAuth2.0やOIDCが鍵となるが、仕様の柔軟性に課題あり
    • FAPI(金融グレードAPI仕様)の導入が進められている
  • 参考アーキテクチャ

    • 金融リファレンスアーキテクチャ(日本版)がaws-samplesに公開
      • FAPI認定サービスが紹介されている。
    • 一部バージョンアップに伴い、セッション発表時点(2025年6月26日)で、一部公開停止中の情報もある

まとめ

  • 生成AIの活用は、業務効率化から顧客体験の向上へと広がりつつある
    • 金融機関のような専門性が高い業種では、マルチエージェント利用も効果的
    • 規制等が存在する業界では、生成AIと人の協業(Human-in-the-loop)も有効
  • 他業種との連携では、APIの認可とセキュリティが重要な課題となっている
    • 実装時に参照できるリファレンスとして、金融リファレンスアーキテクチャが有効

感想

金融機関という制約が多い業界のAI活用では、「完璧に任せる」ということではなく「人が介在する前提での業務フロー構築を行う」ことで生成AI活用を推進しているという点が非常に印象的でした。これは他の業界やユースケースでも様々なシーンで重要な視点で、法規制のような厳密なルールが存在するようなシーンでも、適切な業務フローを構築できればAIを業務効率改善や企業としての成果の向上に繋げることができるというインサイトを得ることができ、非常に発見の多いセッションでした。

脚注
  1. 金融機関における生成AIの利用状況とリスク管理 - 日本銀行(https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb241021-2.pdf) ↩︎

  2. オープンAPIの動向調査について 金融情報システムセンター(https://www.fisc.or.jp/FinTech_20240228_08.pdf) ↩︎

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