
初心者向けゲーム開発、Claude Codeが活用できるゲームエンジンの選び方
こんにちは。ゲームソリューション部の出村です。
今回は、Claude Codeという生成AIツールを使用して、実際にゲーム開発を行った検証結果をお伝えします。JavaScriptとフレームワークで作るようなモノでは無く、実際のゲーム開発現場で使用される本格的なゲームエンジンを用いて、どの程度効率的にゲーム制作ができるのかを検証しました。コードを一切手動で書かないという制約のもと、GODOT、Unityのエンジンでテトリスを開発し、それぞれの相性や開発効率を比較分析しています。
この記事は、ゲーム開発に興味があるがプログラミング経験が少ない方や、AI支援ツールを活用した効率的な開発手法を検討している方に特に役立つ内容となっています。
全体の開発フローと検証項目
今回の検証では、以下のゲームエンジンを使用してテトリスを開発しました。
- GODOT 4.4:オープンソースの軽量ゲームエンジン
- Unity 6.0:業界標準の統合開発環境
検証の流れとしては、まず各エンジンの特徴とClaude Code との相性について概要を説明し、その後実際の開発過程を詳しく解説していきます。最終的に、どのエンジンが最も効率的に開発できるかの結論をお伝えします。
Claude Codeを使ったゲーム開発のメリット
Claude Codeは、Anthropic社が開発した生成AIツールで、プログラミングコードの自動生成に特化しています。このツールを利用することで、以下のようなメリットが得られます。
まず、Claude Codeを利用することで、ゲーム開発に必要なプログラムコードを一切手動で書くことなくゲームを作成できます。これにより、プログラミング初心者でも本格的なゲーム開発に挑戦することが可能になります。
次に、コードを書く時間を大幅に短縮できるため、自分の作りたいゲームのアイデアを素早く形にすることができます。これは特にゲーム企画の初期段階において非常に有効です。
また試行錯誤が容易にできます。手動でコードを修正する必要がないため、ゲームの仕様変更や調整を比較的簡単に行うことができます。この特徴により、理想のゲームに近づけるための反復開発が効率的に進められます。
爆速で理想のゲームが作れる環境が整ったってことですね。
ゲームエンジンを利用するメリット
現代のゲーム開発では、何らかのゲームエンジンを利用するのが一般的になっています。どのようなメリットがあるのか、みていきましょう。
マルチプラットフォーム対応
ゲームエンジンを利用することで、Web、PC、モバイルなど様々なプラットフォームに対して同一のゲームを提供しやすくなります。JavaScriptと各種フレームワークで作成したゲームはブラウザ限定になってしまいますが、ゲームエンジンを使用することで様々なプラットフォームへの移植が容易になります。
開発効率の向上
ゲームエンジンには、ゲーム開発に必要な基本機能が予め実装されているため、開発者はゲーム固有のロジックに集中することができます。これにより、開発期間の短縮と品質の向上が期待できます。
AI技術の進歩に関する注意点
AI技術の進歩は非常に速いため、この記事の内容は執筆時点(2025/07/07)での検証結果であることをご理解ください。今後のゲームエンジンの進化や生成AIの性能向上により、これらの相性や効率性は変化する可能性があります。そのため、この情報は現時点での参考情報として活用していただければと思います。
テトリスを題材に選んだ理由
今回の検証では、題材としてテトリスを選択しました。テトリスは非常にシンプルなゲームでありながら、ゲーム開発の基本要素(ユーザー入力、オブジェクト制御、当たり判定、スコア管理など)を含んでいます。
実際にゲーム開発を始める際も、このような基本的な内容から着手していくのが一般的であり、学習教材としても適しています。また、完成形が明確で検証結果を比較しやすいという利点もあります。
開発環境準備
GODOT、Unityの両方で冒頭で共通して行った基本的な開発環境の準備について説明します。以下の順序で準備しました。
- 各ゲームエンジンで空のプロジェクトを作成しました。これは各エンジンの標準的な手順に従って行います。
- プロジェクト作成後、Claude Codeを起動し、
/init
コマンドを実行してclaude.mdファイルを作成しました。 - claude.mdファイルのプロジェクト概要に「2Dで動作するテトリスを開発します。」という情報を追記しました。この情報により、Claude Codeは開発目標を明確に理解できるようになります。
Claude Codeへの最初のプロンプトとして「claude.mdにも書きましたが、2Dモードで動作するテトリスを作成してください」と送信しました。
GODOTでの開発結果
GODOTを使用した開発では、良好な結果を得ることができました。
開発過程の詳細
プロンプトを数回送信するだけで、実際に動作するテトリスを完成させることができました。この間、コードは一切手動で書いていません。
1回目の実行結果
初回実行でビルドエラーが発生しました。エラー内容を確認し、「ビルドエラーの箇所を指摘して修正して」というプロンプトを送信しました。
2回目の実行結果
ビルドは成功しましたが、表示に問題がありました。具体的には、2つのテトリスブロックが同時に操作によって動いてしまう現象が発生しました。この問題に対して「2つのアイテムが動かないようにして」というプロンプトを送信しました。
3回目の実行結果
正常に動作するテトリスが完成しました。プレイ可能な状態まで到達し、基本的なテトリスの機能(ブロックの落下、回転、ライン消去など)がすべて実装されていました。
GODOTの優位性
GODOTがClaude Codeと相性が良い理由として、以下の点が考えられます
- すべての機能をスクリプトで記述できるため、Claude Codeが生成したコードをそのまま使用できます
- 複雑な設定や手動での作業が少なく、自動化しやすい構造になっています
- コードとリソースの管理が一元化されており、AI支援開発に適しています
Unityでの開発結果
Unityを使用した開発では、GODOTほど簡単には完成しませんでした。
開発過程の詳細
最初のプロンプトを送信した後の開発において、Unityの特性上、ヒエラルキーやコンポーネントに対してスクリプトをアタッチするなどの手動作業が必要でした。これらの作業手順はClaude Codeから手順を教えてもらえるので、何をすべきかは明確になっています。
ただし、これはUnityに慣れている人であれば理解できる内容ですが、初めてUnityを触る人にとってはいろいろ調べながら進めることになるでしょう。
1回目の実行結果
実行時エラーにより動作しませんでした。エラー発生箇所を指定して修正を依頼しました。
2回目の実行結果
テトリスブロックは落下するものの、着地した瞬間に消えてしまうなど、完全ではない動作となりました。それらしく動いているものの、ゲームとしては不完全な状態でした。
開発の課題
挙動以外に、見た目にも問題がありました。本来、ブロックは色付であるはずが、ライトの設定により、モノクロ表示されていました。こちらは、Unityの各種設定を手動で調整してみましたが、時間の制約により完成には至りませんでした。
それらの結果、Unityでの開発を成功させるためには、以下の要素が重要であることが分かりました。
- Unityの基本知識が必要でコンポーネントシステムやプレハブの概念理解が必要である
- Claude Codeが生成できない部分の手動対応が必要
- エラーの原因特定と解決方法の理解が必要
開発してみての分析と考察
今回の開発を通じて、各ゲームエンジンとClaude Codeの相性について明確な違いが見えてきました。ここでは、その結果を詳しく分析していきます。
成功要因の分析
GODOTが最も相性が良かった理由
GODOTでの開発が成功した主な要因は、以下の点にあります。
- GODOTはスクリプトファイルでゲームロジックを完結できるため、Claude Codeが生成したコードをそのまま活用できます
- 複雑な設定ファイルや手動での作業が最小限に抑えられています
- リソース管理とコード管理が一元化されており、AI支援開発に適した構造になっています
Unityで課題が発生した理由
Unityでの開発で完全な成功に至らなかった要因は以下の通りです。
- スクリプトをGameObjectにアタッチするといった手動の操作が必要
- ライティング、カメラ、レンダリング設定など、手動調整が必要な項目が多数存在
- プロジェクト構造がGODOTと比較して複雑であり、アセット管理やシーン管理など、理解が必要な概念が多い
Claude Codeを利用した開発の評価
Claude Codeを利用した開発が前提の場合、次に書いたような違いがありました。
初心者にとっての使いやすさ
GODOT
- プログラミング初心者でも比較的簡単に始められる
- 無料で利用できるため、学習コストが低い
- Claude Codeとの組み合わせで、短時間でゲームを完成できる
Unity
- ある程度のUnity知識が前提となる
- 豊富な学習リソースが存在するため、学習環境は整っている
- Claude Codeを活用する場合でも、基本的な操作方法の習得が必要
開発効率の比較
開発にかかった時間と手間を比較すると、次のような結果となりました。ちなみに、私のゲームエンジン利用経験としては、Unity >> GODOT Engine という感じです。
GODOT:約30分で完成(プロンプト3回)
Unity:2時間以上かけても未完成
この結果から、Claude Codeを活用したゲーム開発においてはGODOTが効率的であることが分かります。
今後の展望と改善点
AI技術の進歩による変化
現在のClaude Codeの性能は日々向上しており、今回の検証結果も時間の経過とともに変化する可能性があります。特に以下の点で改善が期待されます。
- エンジン固有機能の理解が向上し、各ゲームエンジンの特殊な機能や設定への対応が改善される
- エラー解決能力の向上し、より複雑なエラーの自動解決能力の向上する
効果的な活用方法
Claude Codeを効果的に活用するためのポイントをまとめると以下のようになります:
プロンプトの工夫
- 具体的で明確な指示を心がける
- エラーが発生した場合は、エラーメッセージを正確に伝える
- 段階的に機能を追加していく
プロジェクト設計
- claude.mdファイルに重要な情報を記載する
- シンプルな構造から始めて、徐々に複雑にしていく
- 各エンジンの特性を理解した上で選択する
まとめ
今回の検証を通じて、以下の結論に達しました。
推奨する組み合わせ
初めてゲーム開発に挑戦する場合
GODOTとClaude Codeの組み合わせが最も適しています。無料で始められ、短時間で成果を実感できるため、学習モチベーションの維持にも効果的です。
Unity経験者の場合
Unityの基本操作に慣れている方であれば、Claude Codeを活用してある程度の開発は可能です。ただし、手動での設定作業や調整が必要になることを理解しておく必要があります(Unityでの開発経験がある方であれば、当たり前だと思いますが)。
段階的なスキルアップ
GODOTで基本的なゲーム開発の流れを理解した後、より高機能なUnityやUnrealEngineに移行するのが良いかと思います。
今後の期待
AI技術の急速な進歩により、今回の検証結果は将来的に大きく変化する可能性があります。より複雑なゲームエンジンとの連携が改善されることで、ゲーム開発の敷居はさらに低くなることが期待されます。