仕事のバリアフリーについて考える

仕事のバリアフリーについて考える

この記事では、仕事のバリアフリーを「言語、人種、国籍、趣味嗜好、能力、経験…あらゆる違いを認め、それぞれが最大パフォーマンスを発揮できる方法をチームで考え、実行すること」とし、その実現のためにチームで必要な活動について、私の考えをまとめています。
Clock Icon2022.02.09

この記事は公開されてから1年以上経過しています。情報が古い可能性がありますので、ご注意ください。

3 歳の娘の「 xx って何?」のおかげで、言い換え力が鍛えられているかめです。
普段、何気なく使っている言葉や既に常識として染み付いている概念を 3 歳でもわかる言葉と長さで説明するのって、プレゼンの勉強にもなりそうですね。

さて、今回は、そんな娘に「バリアフリーって何?」と言われて考えているときに、あれ、これって仕事でも同じこと言えそうだなと思ったことの共有です。

バリアフリーとは

バリアフリーは、広辞苑では以下のように説明されています。

英語の Barrier free に由来する言葉です。「(バリアは障壁・障害の意)身体障害者が社会生活を営むうえで、支障がないように施設を設計すること。また、そのように設計されたもの」

3 歳の娘に説明する際に、私は以下のように考えました。

ここから 3 歳の娘には、「いろんな人が困らないようにすることだよ」なんてふんわりした答え方をしつつ、車椅子で階段を登れるかなどの具体例をいくつか挙げて一緒にどうするとバリアフリーになるのか考えてみました。

仕事でも同じことが言えるとは?

(特性を持った人たちが)同じように過ごせるように「障壁」を取り除く

これが、私が仕事でも同じことが言えるなと思った部分です。
仕事は、チームで何か目標を達成し、成果を出すことです。
私は、この成果を出すための「障壁」を取り除くことを仕事のバリアフリーと考えています。 ちなみに、ここで言う「特性」とは、いわゆる「心身の障害」のことではなく、「さまざまな事情」と読み替えていただければと思います。

私たちは、車椅子の方のためにスロープがあってもずるいなどとは思いません。それが、当たり前で必要なものだと理解しています。
車椅子でも階段を登るべきだなどとは思わないでしょう。

では、仕事ではどうでしょうか。
例えば、自分よりうまく仕事をこなせない人、自分と違ったスタイルで仕事をする人、そんな人をみた時に「なぜ、あの人はこうしないんだろう?こうあるべきだ。」と思うことはありませんか?
まだまだ未熟なせいもあるかもしれませんが、私はこのように感じることがあります。
これは、私が相手の方を自分と同じに考えていて、相手の事情を考慮せず、私にできることなら相手もできるはずだと勝手に期待をしてしまっているせいかなと思っています。

もちろん、中には自分がやりたくないという理由で丸投げする人や、やらなくていいように理由を用意する人も 0 ではないと思います。
でも、そんな人たちも、「やりたくない」と思う背景があって、それは、例えば、わからないことへの不安だったり、失敗したくないという想いだったり、何かしらの「障壁」があって、そういう行動につながっているのかなと考えています。

車椅子の方のように、見て違いや事情がパッとわかれば、過剰な期待は起こりにくいと思います。
最近では、パッとみて事情がわからない人のためにヘルプマークというものもできましたね。
同じように、仕事では、対話などを通じて、お互いの事情を知り、過剰な期待が起きにくいようにして、その上でチームで「障壁」を取り除く活動をしていけたら理想だなと思いました。

で、仕事のバリアフリーって具体的に言うとどういうこと?

私が考えている仕事のバリアフリーとは、「言語、人種、国籍、趣味嗜好、能力、経験…あらゆる違いを認め、それぞれが最大パフォーマンスを発揮できる方法をチームで考え、実行すること」で具体例は、以下です。

  • 得意・不得意を補い合ってチームで目標達成を目指す
  • 育児、介護…など、さまざまな事情を考慮して、フォローし合う

得意・不得意を補い合うときのアンチパターン

「得意・不得意を補い合う」というのは、昔からよく言われていることだと思います。
私は、以下のようなパラメータのチームで得意・不得意を補い合おうとするときにアンチパターンがある気がしています。
(パラメータは、イメージなので、名称などは深く考えないでいただけると幸いです)

私が見てきた例では、この構成のチームでは以下のようなことが起こり、最終的にチームはバラバラになる道を辿っていました。

  • 比較的万能タイプの A さんに仕事が集中する
  • A さんに依存するメンバーが出てくる
    • A さんがやるなら間違いないとチェックなどが甘くなる
    • A さんにやってもらおうとやらなくなる など
  • A さんがフォローしすぎることで、周囲の成長の機会を奪っている
  • やがて A さんが限界を迎え、チームを去る、もしくは不満をぶつける

得意・不得意を補い合うのは、何も一番得意な人にすべてを任せなくても良いと思うのですが、仕事には期限もあるので、早く高い品質で仕事をこなせる人のところに仕事が集まりやすい気がします。
それぞれの得意・不得意がある程度バラけていたり、チーム内で共通認識の育成計画などがあれば、アンチパターンは回避できそうな気がしています。

最後の A さんの「不満をぶつける」でうまく乗り越えられれば、タックマンモデルでいうところの混乱期が抜けられるのかもしれません。

参考: タックマンモデルとは

バリアフリーを実現するチームに必要そうなこと

これは、私が考える、仕事のバリアフリーをチームで実現するために必要だと思うことです。

  1. メンバーの相互理解
  2. メンバー間の仕事量調整
  3. チームのミッションを達成するための計画
  4. 進捗管理と効果測定
  5. (必要があれば)現状の改善

この中で、 2 〜 4 については、できれば、マネージャやリーダーとなる方が中心になると合理的かと思いますが、マネージャやリーダーにその能力や経験が不足している場合、周囲で補っていくことも必要だと思います。
ここにあげていることは、誰かがリーダーシップを発揮して、取りまとめなどをするとしても、チーム全員が状況について共通理解をしていることも必要です。

メンバーの相互理解

取り除くべき「障壁」がわからなければ、バリアフリーは実現できません。
まずは、チームやメンバーがどのような状態にあるのかを知るため、コミュニケーションの場を持つことが大切と考えています。
例えば、オンラインで飲み会やランチ会をする、みんなで一緒に何かゲームなどをする、週に 1 度 30 分程度、おやつを食べながら雑談をする時間を設ける、過去の経歴を語り合う会をする…など、お互いを知る時間を設けることが第一歩です。

雑談やゲームは楽しいですが、「お互いを知って障壁を取り除くことが目的」というのは忘れないよう、個々人、またはチームでの振り返りもあると良いかもしれませんね。
ただ楽しいで終わってしまいがちな方は、対話を通じて、以下について相互理解できるよう、「この人はどういう人なんだろう」とアンテナを立てておくことも重要だと思います。

  • 抱えている事情
  • 能力・経験
  • 趣味嗜好(仕事でやりたいこと)

以下のような項目を埋めるインタビューゲームみたいなものをすると相互理解が深まるのかなぁとちょっと思いましたが、果たして、これは他の人にも楽しいと思ってもらえるんだろうか。

ここでしっかり相互理解をできていると、「なぜ、あの人はこうしないんだろう?こうあるべきだ。」と思いつつも、「でも、 xx だからこうできないのかもなぁ」という見方が増え、そこに更に、「 xx さんはできるようになりたいと思っているし、一緒にやってみよう」などの変化が生まれるかもしれません。
見方が増えたところで、嫌いなものが好きまでは変わらないと思いますが、「絶対に許せない、大嫌い」レベルのものを、「少し嫌い」くらいには変えられると思いますし、そうなることで、仕事の目的を達成するチームとしては協力しようと思えると考えています。
私は、この「仕事の目的を達成するチームとしては協力しよう」が、バリアフリーの肝だと思っています。

理想でいえば、そもそも「大嫌い、絶対に許せない」なんてことが起きず、チームでできないことがあることも受け入れた上で、それはそういうものだから、みんなで「障壁」を取り除こうとなるのが一番ではありますが。(苦笑)

メンバー間の仕事量調整

得意・不得意、それぞれの能力、仕事における趣味嗜好( xx がしたいなど)を総合的に考慮して、メンバー全員にとってできるだけ無理がないよう、全体量の調整をしないと、不幸な結末が近づいてきます。
ここでの調整は、単純に全員に同じ分量を配分するのではないという点も注意が必要です。
一見すると、めちゃくちゃ仕事量が多く見える人や少なく見える人もいると思いますが、それぞれの能力や仕事における趣味嗜好などを考慮すると、同じ期間で無理なくこなせる量なんだということをそれぞれが理解できるようにすることも大切かなと思います。

チームのミッションを達成するための計画

チームは、何かミッションを達成するために存在しています。
バリアフリーもミッションを達成して成果を出すために行います。
このミッションが何なのか、達成するためにはどんな活動が必要なのかを計画し、メンバー全員で理解することが必要です。

この計画の中には、メンバーの育成計画や採用計画なども含まれます。
このミッションを達成するためには、こういう能力が必要だ、この能力は今、チームに不足しているから、育成、もしくは新たに採用が必要だというような形で、「いつまでにどういう形で実現するのか」を計画します。
また、病気や怪我など、何らかの事情で担当が変わることなども考慮して、全体の能力底上げなども計画をしておいた方がより良いと思います。
「障壁」への対応についても、ここで計画に盛り込むことで実施していけると良いと思います。

計画は、チームリーダーがたたきを作り、メンバーにフィードバックをもらう形でも、最初からみんなで作る形でも良いと思いますが、誰か 1 人が作って、そのまま走ることがないよう、全員である程度、腹落ちすることは大切かなと思います。

進捗管理と効果測定

計画を立てるだけでは、ちゃんとミッション達成に向かっているのかがわからないので、定期的な進捗管理も大切です。
また、「障壁」への対応などは、チャレンジになることも多いと思うので、計画時に狙った結果が出ているか、効果を測定し、あまり芳しくないようなら、思い切って止めることや、別の方法を模索することも必要ですね。
常に最初から正解を出せるとは限らないと思うので、思考停止せずにやってみつつも、違うと思ったらどんどん切り替えていくことが、成功への近道かなと考えています。

(必要があれば)現状の改善

チームで活動をしていく中で、些細なことでも「こうしたらいいのに、こうあるべきだ」は、たくさん出てくると思います。
これらは、よりよくするための改善の機会なので、思うだけで終わらせず、行動に移せるといいなと思っています。
中には 1 人では実現が難しいこともあるかもしれません。そんな時、チームで相談して、改善に向かって動けたら素敵ですね。

Share this article

facebook logohatena logotwitter logo

© Classmethod, Inc. All rights reserved.