社内向け財務分析トレーニングで利用している分析手法「デュポン分析」についてまとめてみた

2023.04.09

この記事は公開されてから1年以上経過しています。情報が古い可能性がありますので、ご注意ください。

こんにちは、CX事業本部 Delivery部の若槻です。

今回は、社内で開催されている財務分析トレーニングで分析手法として利用している「デュポン分析」についてまとめてみました。

財務分析トレーニングについて

  • 社内の有志のメンバーで「財務分析トレーニング」を週次で開催している
  • 様々な業界の企業の財務諸表を比較分析している
  • メンバーが各自で分析を行い発表や意見交換を行うため、雰囲気としては講義よりも大学のゼミに近い
  • この活動により、自社や競合他社、クライアント企業の動向を自ら把握できるようになることを目的としている
  • 比較分析の手法として「デュポン分析」を利用している

デュポン分析とは

  • デュポン分析(Dupon Analytics)は、アメリカの化学企業であるデュポン社が作り出した財務分析手法
  • デュポン分析では、「ROI」または「ROE」を複数の要素に分解する「デュポン公式(デュボン分解)」を用いる
  • 「小さな投資で大きな利益を得られているか」という投資効率を計測することを目的としている

デュポン - Wikipedia

ROI - 経営判断のための指標

  • ROI(Return on Invenstment:投下資本利益率)
  • 経営者が企業をマネジメントする「管理会計」のための指標
  • ROI を収益性(利益率)、資本効率性(回転率)の2つに分解する
  • 事業部毎の収益性を評価して経営判断に利用できる
  • 売上や利益の増減を見るだけでは財務の健全性を分析するためには不十分
  • そのため、投下した資本をテコ(Leverage)にしてどれだけの収益を挙げられているか?を理解できるようにした指標である
  • ROIを要素分解することにより、成績不振の原因が、利益率の低さなのか、回転率の問題なのかを判断することができる
  • ROIを算出するために、企業は事業部制を採用(事業部組織化)し独立採算とする必要がある
  • もしくはカンパニー制を採用し、ホールディングス会社の配下に事業会社を設ける会社形態を取る

ROIのデュポン公式

経営者や事業責任者はROIを用いたデュポン分析を行うことにより、

  • ROIの良し悪しの要因が、利益率や回転率のいずれにあるのかを分析し、対策を施す
  • 黒字の事業でもROIが低ければ撤退する
  • 売上高や利益の絶対額に関わらずROIが高い事業の予算を増額する

など、限られた投下資本で最大の利益を得るための経営判断を実施することができます。

ROE - 外部報告のための指標

  • ROE(Return on Equity:自己資本利益率)
  • 経営者が社外の利害関係者(Stake Holder)に報告するための「財務会計」のための指標
  • 管理会計のためのROIが財務会計とクロスオーバーして生まれた
  • ROE を収益性(利益率)、資産効率性(回転率)、財務状態(財務レバレッジ)の3つに分解する
  • 事業部や子会社への投下資本を調達するために、企業は自己資本(Equity)のみならず借入(Debt)を利用するため、財務状態の把握も重要となる
  • そこで ROE では、ROI の2要素に加えて、財務状態を計測するために、財務レバレッジを使用する

ROEのデュポン公式

ROE および各構成要素の適正値は業界や業種によって異なります。企業の債権者や株主などの利害関係者は、ROE を用いたデュポン分析を行うことにより、対象企業との取引や出資を行うかどうかの判断基準にすることができます。

ROE と ROI により見えてくる二重の委託関係

デュポン公式を図示してみます。

経営者は、バランスシートの貸方側で借入や自己資本による資金調達を行い、借方側の各事業に投下資本として配分します。

各事業責任者は、投下資本を元手に事業を行い、その結果である売上高および利益を元にROIを算出し、経営者に報告します。ここでは経営者→事業責任者という委託関係が発生しています。

経営者は、借入および自己資本を元手に事業を行い、その結果である売上高および利益を元にROEを算出し、株主に報告します。ここでは株主→経営者という委託関係が発生しています。

このように、ROE と ROI により企業の二重の委託関係を可視化することができます。

クラスメソッドの財務情報

クラスメソッドは、上場企業と同レベルの財務ハイライトおよび決算報告書を公開しています。もし興味があればご覧ください。

ROEを含む過去5年の財務指標一覧

デュポン分析について書かれたオススメの本

私がデュポン分析を初めて知ったのは5年ほど前に読んだ次の本がきっかけでした。

この本では、「会計(Accounting)」という技術がどのように発明され、そして発達していったのかが、世界史の有名な人物や出来事との関連を背景にして綴られています。とても読みやすい本なので、会計に興味がある方はぜひ読んでみてください。

参考

以上