ランディングゾーンとOU単位(CT.MULTISERVICE.PV.1)のリージョン拒否設定を組み合わせて柔軟なリージョン制御を実現してみる

ランディングゾーンとOU単位(CT.MULTISERVICE.PV.1)のリージョン拒否設定を組み合わせて柔軟なリージョン制御を実現してみる

2025.12.02

この記事はアノテーション株式会社 AWS Technical Support Advent Calendar 2025 | Advent Calendar 2025 - Qiita 2 日目の記事です。

はじめに

かつまたです。
Control Tower環境において、組織統制やセキュリティ観点から、利用可能なリージョンを制限することは一般的な運用です。 Control Towerではランディングゾーン設定でのリージョン拒否と、OUレベルでのコントロール適用によるリージョン制限の2つの層で制御が可能です。

今回は、ランディングゾーン全体では「東京・バージニア北部・大阪リージョン」を許可しつつ、特定のOUに対してのみコントロールCT.MULTISERVICE.PV.1 を使用して「東京・バージニア北部リージョン」のみを許可する、より詳細な制御構成を試してみました。

リージョン拒否設定について

Control Tower 環境におけるリージョン制御には、大きく分けて以下の2つのレイヤーがあります。

  1. ランディングゾーン設定のリージョン拒否
  • 組織全体(Management Accountを含む)に適用されるベースラインの設定です。
  • ここで「管理対象外(拒否済み)」となったリージョンは、配下のいかなる OU やアカウントでも原則利用できません。

https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/controltower/latest/userguide/region-deny.html

  1. OU 単位のコントロール (CT.MULTISERVICE.PV.1)
  • コントロール名: [CT.MULTISERVICE.PV.1] Deny access to AWS based on the requested AWS Region for an organizational unit
  • 特定のOUに対して、SCPを用いて追加のリージョン制限をかけます。
  • ランディングゾーン設定で許可されていても、このコントロールで指定されていないリージョンへのアクセスはSCPによって拒否されます。

https://dev.classmethod.jp/articles/202506-enabling-ct-multiservice-pv1/

やってみる

前提

  • Control Tower環境実装済み(OU2つ、OU配下にそれぞれアカウント作成済み)
  • リージョン拒否コントロールを東京・大阪・バージニア北部リージョンに設定済み
    スクリーンショット 2025-12-01 13.54.39

OU単位のコントロール実装と確認

  1. OU へのコントロール適用と設定
    まず、対象のOU(Members ControlTowerOU) に対して、コントロール CT.MULTISERVICE.PV.1 を有効化します。
    Control Towerの「Contol Catalog」から「[CT.MULTISERVICE.PV.1] Deny access to AWS based on the requested AWS Region for an organizational unit」を検索し、「コントロールを有効にする」を選択します。

スクリーンショット 2025-11-28 16.20.01.png

コントロールの設定画面(リージョンアクセスを指定)にて、許可するリージョンを選択します。 ここでは、「米国東部(バージニア北部)」 と 「アジアパシフィック(東京)」 のみにチェックを入れます。 ランディングゾーン設定では許可されている 「アジアパシフィック(大阪)」 にはチェックを入れず、管理対象外とします。

スクリーンショット 2025-11-28 16.26.16.png

これにより、この OU 配下では大阪リージョンへのアクセスがSCPによってブロックされるはずです。

  1. 大阪リージョンでの作成拒否を確認(制限対象OU)
    設定が完了した後、制限対象である MembersControlTowerOU 配下のアカウントにログインし、大阪リージョン(ap-northeast-3)でS3バケットの作成を試みます。

バケット作成を実行すると、以下の通りエラーが発生しました。

スクリーンショット 2025-11-28 16.43.48.png

User: ... is not authorized to perform: s3:CreateBucket ... with an explicit deny in a service control policy

SCPによる明示的な拒否により、バケット作成がブロックされたことが確認できました。ランディングゾーンレベルでは大阪が許可されていても、OUレベルのコントロールが優先して効いていることがわかります。

  1. 大阪リージョンでの作成成功を確認(制限対象外OU)
    次に、比較対象として MembersControlTowerOU配下ではない(今回のコントロールが適用されていない)アカウントで同様の操作を行います。 このアカウントも同じランディングゾーン配下にあるため、ランディングゾーン設定で許可されている大阪リージョンが使えるはずです。

スクリーンショット 2025-11-28 17.01.07

こちらは問題なく作成に成功しました。 S3コンソールの一覧でも、大阪リージョン (ap-northeast-3)にバケットが存在していることが確認できます。

おわりに

Control Towerのランディングゾーン設定と、OU単位のリージョン制限コントロールの挙動の違いについて確認しました。

  • ランディングゾーン設定: 組織全体での許可範囲を定義
  • OU単位のリージョン制限コントロール (CT.MULTISERVICE.PV.1): 特定の部署や環境(本番環境など)に対して、さらに厳しいリージョン制限を適用

これらを組み合わせることで、「DR(災害復旧)用アカウントだけは大阪を使えるようにし、それ以外の開発・本番アカウントは東京のみに限定する」といった、柔軟かつ堅牢なガバナンスを効かせることが可能です。
ご覧いただきありがとうございました。

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