Developers Festa Sapporo 2015 [HTML5 関連のAPIの現状とこれから] レポート #devfesta

2015.12.14

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こんにちは、せーのです。 今日は12/01に札幌にて行われた「Developers Festa Sapporo 2015」に参加いたしました。今回はその中から[HTML5 関連のAPIの現状とこれから]というセッションをレポート致します。スピーカーは株式会社ニューフォリアの羽田野 太巳さんです。

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羽田野 太巳|Futomi Hatano
有限会社futomi 代表取締役
株式会社ニューフォリア
取締役 最高技術責任者

イベントWebサイトより)

レポート

Webは死んだのか

2013年からのニールセンの行った調査によるとモバイルにおけるネイティブアプリとWebアプリの比率は年を追うごとにネイティブアプリに傾いている現状だ。界隈では「Webは死んだ」と言われることもあるが、本当にそうだろうか。羽田野氏が関わっているWebの最先端、及びWebの標準化を進めている人々は今後Webをどこへ進めようとしているのか、このセッションではその最先端の現状が紹介された。

Web標準化の現状

2010年、HTML5、つまりWebでできることは「音楽が聞ける」「画がかける(Canvas)」「オフラインで使える(Application Cache)」のようなものが「提案」されていた。当時はまだ標準化が進んでなかったにも関わらず「Flashの代わりになる」とAppleが発言するなど大きな話題となった。今から思えば機能としては全く足りなかった。では現在ではどうなのか。

「2015年現在はほぼ全ての機能が勧告状態になり、ようやく使える状態になりました。加えて現在ではアプリに対抗するパフォーマンス対策としてパフォーマンス測定系のAPIがラインナップされています。他にもWeb GLという3D描画機能、Web RTC、Web audioという音源情報を波形として解析するAPI、Web MIDIを使ってWebブラウザからMIDIデータを送信してシンセサイザーを鳴らす事ができるようになりました。センサー系も今は充実していまして傾きや近接センサーも扱えます。かつてのApplication Cacheは”Service Workers”としてローカルにサーバーがいるかのような挙動をするようになりました。Push APIと組み合わせるとネイティブアプリのようにバックグラウンドで動き続けてPush通知を受けるようなこともできます」

他にも特にGoogleが提唱している「Physical Web」はIoT、O2Oをブラウザから行える、という画期的なもの、ということだ。O2Oとは「Online to Offline」、つまりネット上のアクションによって現実世界の行動が促される、という「オムニチャネル」と並んで今年注目される用語だ。

産業界ごとのWeb標準化

TV

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TVの世界ではデータ放送をLANで飛ばす「Hybridcast」が登場している。現在のTVブラウザはSamsungがTIZEN、LGがフィーチャーフォン向けのブラウザ、WebOSをHpより買収してTVに内蔵、SonyのBraviaにはAndroidが入り、PanasonicからはFirefox OSが搭載されたTVが出ている。

これらTVに内蔵されているブラウザでは特定のコンテンツをセカンドスクリーンに表示する「Presentation API」、TV内のアプリよりリモコンが行う操作(番組表、録画、再生等)を制御する「TV Control API Specification」がある。
他にも「Web-based Signage」というサイネージをTVより行う試みも現在行われており、先のTPACにて実際に会場に20台程の東芝Regzaを改造してサイネージとして使用した。

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乗り物

車の世界においてもWebの進出が期待されている。W3Cでは車の情報の定義として「Vehicle Data」というものを制定し車速やギヤの位置、アクセルをどれくらい踏んでいるか等の車の制御における様々な情報を取得しようとしている。

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またこれらは「Vehicle Information Access API」を通して操作される。だが現状ではSetコマンド系に関しては実際の車の操作に繋がりまだ危険なため慎重になっている。 一方Get系、つまり車載情報をWebで取得することに関しては進んでおり、「ODB-Ⅱコネクタ」という診断用のコネクタを使って実際の車からデータを受け取ることも既に可能だ。またそれはちょっとまだ怖い、という人にもシミュレータを使って擬似データの取得が可能となっている。

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ローカルサーバ方式

GotAPI

ローカルサーバ、つまりデバイスの中にサーバーをローカルで立て、そこにブラウザからアクセスし通信する、という方式に於いては「GotAPI - Generic Open Terminal API Framework Version 1.0」というAPIが標準化されている。
この方式では様々なIoTデバイスは通信プラグインをアプリとして、またGotAPIそのものも一つのアプリとしてインストールし、「デバイスコネクトWebAPI」を使用してそれぞれ通信を行う。これらの仕様は「デバイスWebAPIコンソーシアム」というコンソーシアムによって制定されており、まだ始まったばかりだ。

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Webはどこへ向かうのか

ガートナーのHype Cycleによると2015年、HTML5は「成熟した」当たり前のものとして世の中に浸透している、と判断されている。現在のHTML5はパーソナルだったものが産業向けになり、Webは今までのようにWebサイトを作るためのものとしてではなく、コアなものにWebが入り込んでくる、という現象が起こっている。

Web of Devices

Webはすべての人が扱える技術となり、あらゆるものにWebが入る時代がきている。中でも「Web of Devices」という考え方では、ユーザーが介在しない、または特定のコンテンツだけを扱うモノにWebを使う、という形にシフトして着ている現状を感じる。それはプリンタのパネルや冷蔵庫、カメラ、コピー機等のディスプレイが存在するものからラジコン、ドローン、ホームサーバー等のディスプレイが存在しないモノまで広くWebを使った実装が可能な時代が来ている、という事を指している。

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一般的に組込み機器にブラウザを載せるのはスペックやコスト的に難しい、と言われている。しかしデバイスのスペックは日々進化しており、例えばルネサスR-Carという車載オンボードカメラでは既にWebGLがガリガリ動いているのだ。

Webは今までのような「見せるもの」という概念からデバイス等のような組み込み専用機に対しても使えるものとなっていく。そのような組み込み用のWebの事を羽田野氏は「Embedded Web」と名付けている。今後デバイスのスペックが向上し、このようなEmbedded Webが実装できるようになるともはやWebプログラマはポータルサイトを作る職業ではなくなっていくのかもしれない。

まとめ

いかがでしたでしょうか。Webデベロッパーにとっては明るい未来である一方、様々な未知の世界が広がっている、という印象を受けました。JavaScriptやHTMLの可能性はどこまで広がるのでしょうか。5年後が楽しみです。