ECS Managed InstancesのGPU管理費値下げをPricing APIで確認してみた

ECS Managed InstancesのGPU管理費値下げをPricing APIで確認してみた

ECS Managed InstancesのGPU管理費が最大60%値下げされました。Pricing APIで新旧料金を直接取得し、EC2料金込みの合計コストへの実質的なインパクトを確認します。
2026.07.09

はじめに

2026年7月7日、ECS Managed Instances の GPU インスタンスに対する管理費(Management Fee)の値下げが発表されました。

https://aws.amazon.com/about-aws/whats-new/2026/07/amazon-ecs-managed-instances-reduces-gpu-management-fees/

値下げの概要は以下の通りです。

項目 変更内容
Gシリーズ (g4dn, g5, g6, g6e等) 管理費 35%削減
Pシリーズ (p5等) 管理費 60%削減
EC2インスタンス料金 変更なし
対象リージョン 全リージョン

管理費が35〜60%削減というのはインパクトのある数字ですが、ECS Managed Instances の実際のコストは「EC2インスタンス料金 + 管理費」の合計です。本記事では、AWS Pricing API で新旧の管理費を直接取得し、EC2料金込みの合計コストに対する実質的な削減率がどの程度になるかを明らかにします。あわせて、管理費の対価として得られる GPU メトリクスの自動収集機能も実機で確認しました。

検証内容

Pricing APIで現在の管理費を取得する

ECS Managed Instances の管理費は、AWS Pricing API のサービスコード AmazonECS で取得できます。

aws pricing get-attribute-values \
  --service-code AmazonECS \
  --attribute-name usagetype \
  --region us-east-1 \
  --query "AttributeValues[?contains(Value, 'ECS-Managed-Instances')].Value" \
  --output text | tr '\t' '\n' | grep "APN1" | head -5
APN1-ECS-Managed-Instances:g4dn.12xlarge-management-hours
APN1-ECS-Managed-Instances:g4dn.16xlarge-management-hours
APN1-ECS-Managed-Instances:g4dn.2xlarge-management-hours
APN1-ECS-Managed-Instances:g4dn.4xlarge-management-hours
APN1-ECS-Managed-Instances:g4dn.8xlarge-management-hours

東京リージョン(APN1)のGPUインスタンス管理費は APN1-ECS-Managed-Instances:<instance-type>-management-hours というUsageTypeで登録されています。

get-products で具体的な料金を取得します。

aws pricing get-products \
  --service-code AmazonECS \
  --region us-east-1 \
  --filters \
    Type=TERM_MATCH,Field=usagetype,Value="APN1-ECS-Managed-Instances:g4dn.xlarge-management-hours" \
  --query 'PriceList[0]' \
  --output text | jq '.terms.OnDemand[][].priceDimensions[][].pricePerUnit.USD'
"0.0554000000"

この方法で取得した東京リージョンの GPU 管理費(現在の料金)が以下です。

インスタンスタイプ 管理費 ($/h) effectiveDate
g4dn.xlarge 0.0554 2026-07-01
g5.xlarge 0.1138 2026-07-01
g6.xlarge 0.0910 2026-07-01
g6e.xlarge 0.2105 2026-07-01
p5.48xlarge 3.3024 2026-07-01

全て effectiveDate が 2026-07-01 で、料金の適用開始日は What's New の発表日(7/7)より前に設定されています。今回のように effectiveDate とアナウンス日がずれることがあるため、料金改定前後を突合する際はアナウンス前後の数日幅で確認するのが実用的です。

list-price-lists で旧料金を取得する

get-products は最新の料金しか返しませんが、Pricing API には過去の料金リストを取得する手段があります。list-price-lists--effective-date を指定すると、その日時点で有効だった料金リストの ARN が返ります。

aws pricing list-price-lists \
  --service-code AmazonECS \
  --currency-code USD \
  --effective-date "2026-06-30T00:00:00Z" \
  --region us-east-1 \
  --query "PriceLists[?RegionCode=='ap-northeast-1']"
[
    {
        "PriceListArn": "arn:aws:pricing:::price-list/aws/AmazonECS/USD/20260603215701/ap-northeast-1",
        "RegionCode": "ap-northeast-1",
        "CurrencyCode": "USD",
        "FileFormats": ["json", "csv"]
    }
]

2026-06-03 版の料金リストが返りました。この ARN から get-price-list-file-url でダウンロード URL を取得し、JSON を解析して旧管理費を取り出します。

aws pricing get-price-list-file-url \
  --price-list-arn "arn:aws:pricing:::price-list/aws/AmazonECS/USD/20260603215701/ap-northeast-1" \
  --file-format json \
  --region us-east-1 \
  --query 'Url' --output text

取得した JSON から対象インスタンスの管理費を抽出した結果が以下です。

新旧管理費の比較

インスタンスタイプ 旧管理費 ($/h) 新管理費 ($/h) 削減額 ($/h) 削減率
g4dn.xlarge 0.0852 0.0554 0.0298 35%
g5.xlarge 0.1751 0.1138 0.0613 35%
g6.xlarge 0.1401 0.0910 0.0491 35%
g6e.xlarge 0.3239 0.2105 0.1134 35%
p5.48xlarge 8.2560 3.3024 4.9536 60%

Gシリーズは正確に35%、Pシリーズは正確に60%の削減率で、What's New の公表値と完全に一致しました。

EC2料金込みの合計コスト比較

管理費の削減率だけでなく、EC2 オンデマンド料金を含めた合計コストでの実質的な削減率を確認します。EC2 料金も同じく Pricing API(サービスコード AmazonEC2)で取得しました。

インスタンスタイプ EC2 ($/h) 旧合計 ($/h) 新合計 ($/h) 月額削減 (730h) 実質削減率
g4dn.xlarge 0.7100 0.7952 0.7654 $21.75 3.7%
g5.xlarge 1.4590 1.6341 1.5728 $44.75 3.8%
g6.xlarge 1.1670 1.3071 1.2580 $35.84 3.8%
g6e.xlarge 2.6990 3.0229 2.9095 $82.78 3.8%
p5.48xlarge 68.8000 77.0560 72.1024 $3,616.13 6.4%

管理費が35〜60%削減されても、EC2 料金がコストの大半を占めるため、合計コストベースでの実質削減率は Gシリーズで約3.7〜3.8%、Pシリーズで約6.4%となります。

とはいえ、月額で見ると p5.48xlarge は約3,600ドル、g6e.xlarge でも約83ドルの削減です。GPU インスタンスを常時稼働させているワークロードでは、年間で無視できない金額になります。

GPUメトリクスで管理費の対価を確認する

管理費が安くなったとはいえ、EC2 を直接使う場合にはかからないコストです。その対価として何が得られるのかを実機で確認しました。

ECS Managed Instances の主な付加価値は以下の2つです。

  • Container Insights による GPU メトリクスの自動収集 — 追加エージェントなしで GPU の割当状況を CloudWatch で監視可能
  • GPU Auto Repair — GPU ハードウェア障害の自動検知と復旧(ECS 側でインスタンスを自動置換)。詳細は公式ドキュメントを参照

ここでは Container Insights の GPU メトリクス収集を実機で確認します。

検証環境

g4dn.xlarge(NVIDIA T4)上で Ollama + TinyLlama 1.1B を起動し、GPU 推論を約15分間実行しました。Container Insights (enhanced) を有効化した ECS クラスターを使用しています。

取得できた GPU メトリクス

CloudWatch の ECS/ContainerInsights 名前空間から、以下の GPU メトリクスが自動収集されていることを確認しました。

aws cloudwatch get-metric-statistics \
  --namespace ECS/ContainerInsights \
  --metric-name InstanceGPUUsageTotal \
  --dimensions Name=ClusterName,Value=gpu-metrics-test \
  --start-time "2026-07-09T03:43:00+09:00" \
  --end-time "2026-07-09T03:55:00+09:00" \
  --period 60 \
  --statistics Average Maximum \
  --region ap-northeast-1
出力結果(抜粋)
{
    "Label": "InstanceGPUUsageTotal",
    "Datapoints": [
        {
            "Timestamp": "2026-07-09T03:44:00+09:00",
            "Average": 1.0,
            "Maximum": 1.0,
            "Unit": "Count"
        },
        {
            "Timestamp": "2026-07-09T03:50:00+09:00",
            "Average": 1.0,
            "Maximum": 1.0,
            "Unit": "Count"
        },
        {
            "Timestamp": "2026-07-09T03:54:00+09:00",
            "Average": 1.0,
            "Maximum": 1.0,
            "Unit": "Count"
        }
    ]
}

InstanceGPUUsageTotal = 1.0(GPU 1基がタスクに割り当て済み)、InstanceGPULimit = 1.0 が毎分収集されています。

これらのメトリクスは以下の3つのレベルで取得可能です。

Dimension レベル 用途
ClusterName クラスター全体のGPU割当状況
ClusterName + CapacityProviderName キャパシティプロバイダー単位の集約
ClusterName + CapacityProviderName + EC2InstanceId インスタンス単位の詳細

マルチ GPU インスタンス(p5.48xlarge は GPU 8基)では、InstanceGPULimitInstanceGPUUsageTotal がタスク未割り当ての GPU 数に相当するため、アラーム化による過不足監視に活用できます。

Container Insights (enhanced) を有効化するだけで、タスク側に追加エージェントを導入せずに GPU リソースを監視できます。これが管理費の対価として得られる価値の1つです。

まとめ

ECS Managed Instances の GPU 管理費は、Gシリーズで35%、Pシリーズで60%引き下げられました。Pricing API で新旧の管理費を確認したところ、What's New の公表値と一致する削減率になっていました。

一方で、EC2 オンデマンド料金を含めた合計コストで見ると、実質的な削減率は Gシリーズで約3.7〜3.8%、Pシリーズで約6.4%でした。管理費単体の削減率は大きいものの、GPU インスタンスでは EC2 料金がコストの大半を占めるため、合計コストへのインパクトはこの程度に収まります。それでも、常時稼働する GPU ワークロードでは、p5.48xlarge で月額約3,600ドル、g6e.xlarge でも月額約83ドルの削減となり、年間では無視できない金額です。

また、Pricing API の list-price-lists を使うことで、過去の料金リストを取得し、値下げ前後の単価を実データで比較できました。料金改定の影響を確認する際に、最新単価だけでなく過去時点の料金リストも参照できる点は有用です。

管理費の対価としては、Container Insights (enhanced) による GPU 割当状況のメトリクス自動収集と、GPU Auto Repair による障害時のインスタンス自動置換があります。Container Insights (enhanced) を有効化すれば、タスク側に追加エージェントを導入せずに GPU の割当状況を CloudWatch で確認できます。EC2 を直接管理する運用とのトレードオフとして、今回の値下げにより ECS Managed Instances の GPU 利用は以前より選択しやすくなったといえます。


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