【iOS】Firebase In-App Messagingでユーザープロパティが送信対象絞り込み条件として適用されるタイミングを調べてみた
前回の記事では、Firebaseのアプリ内メッセージで特定のイベントをトリガーに表示させるところまでを行いました。
今回は、Firebase In-App Messagingではユーザープロパティの値で送信対象を絞り込むことが出来るので、そのやり方とアプリ側から送られたユーザープロパティが絞り込みの条件として適用されるタイミングについて調べてみました。
環境
- Xcode 13.3
- Firebase Apple SDK 9.1.0
はじめに
今回は【iOS】Firebase In-App Messagingでイベントをトリガーにメッセージを送ってみたの記事の続きなのでFirebaseInAppMessaging-Beta
とFirebaseAnalytics
のパッケージがすでにプロジェクトに追加されており、各機能が使用出来る前提で進めていきます。
Firebaseをプロジェクトに追加する方法や、Packageインストール方法についてはFirebaseをAppleプロジェクトに追加するをご覧にいただければと思います。
ユーザープロパティを設定する
まず対象条件を絞り込む為には、Firebaseにユーザープロパティを設定する必要があります。
設定するメソッドを使用する為には、まずはFirebaseAnalytics
をインポートします。
import FirebaseAnalytics
あとは、ユーザープロパティを設定したい箇所でAnalytics.setUserProperty
メソッドを呼びます。
class func setUserProperty(_ value: String?, forName name: String)
第一引数value
は、ユーザープロパティに設定する文字列の値で、第二引数name
はユーザープロパティの名前です。
引数設定時の注意点は、
- value
value
は、最大36文字- 値を
nil
に設定すると、ユーザープロパティが削除される - 英字で始める必要がある
- 記号はアンダースコア
_
のみ使用できる
- name
name
は最大25文字
条件に満たない場合は、正常にユーザープロパティが設定されません。
使用例
Analytics.setUserProperty("テスト中", forName: "test_device")
カスタムディメンションを設定する
ユーザープロパティをアプリ内メッセージの送信対象条件として使用する為には、アプリ側からユーザープロパティを設定するだけではなく、カスタムディメンションの登録が必要となります。
まず、FirebaseコンソールでCustom Definitionsを選択して、表示された画面のカスタムディメンションを作成をクリックします。
新しいカスタムディメンションの登録画面が出てくるので範囲をユーザーにします。これでユーザープロパティのカスタムディメンションの登録が行えます。
- ディメンション名
- レポートで表示する名前
- 説明
- カスタムディメンションまたはカスタム指標の説明(省略可)
- ユーザープロパティ
- 今後収集するパラメータまたはプロパティの名前を入力します
今回は検証用にtest_device
というユーザープロパティを設定したカスタムディメンションを作成しました。
以上で配信対象を絞るためのユーザープロパティに準備が整いました。
アプリ内メッセージ配信対象を絞る
メッセージ作成
FirebaseコンソールのエンゲージメントにあるMessagingを選択し、表示された画面の新しいキャンペーンを作成を押します。
通知とアプリ内メッセージングが選択できるのでアプリ内メッセージングを選択します。
まず最初にメッセージのスタイルと内容を確定させて、宛先を選択します。
宛先の設定
宛先の対象ユーザーの項目のアプリにはメッセージを送りたい先のアプリを設定します。その後、横にあるおよびというボタンを押すことで、メッセージを送る対象をさらに絞り込むことが出来ます。
およびを押すとさらに対象を設定するフォームが追加されます。
ユーザープロパティを選択し、対象条件として、test_device
が追加します。
さらに指定したユーザープロパティの値がどうなっているユーザーを対象にするか指定します。デフォルトでは、次を含む
になっており、今回はユーザープロパティtest_device
がテスト中
になっているユーザーをメッセージ送信対象としました。
宛先はこれで設定出来たので、スケジュールを設定します。
スケジュールの設定
今回も前回同様にtrigger_test
のイベントをトリガーにメッセージを表示させることにしました。
今回のメッセージの設定は以上になるので、確認を押下後、メッセージを公開します。
アプリ側の実装
Storyboard
今回の検証プロジェクトのStoryboard
はこのようになっています。
まず、遷移というボタンのあるViewが最初に表示されます。その遷移ボタンを押すと、TriggerViewController
に遷移します。
TriggerViewController
TriggerViewController
はこのような実装になっています。
import UIKit import FirebaseAnalytics class TriggerViewController: UIViewController { override func viewDidAppear(_ animated: Bool) { super.viewDidAppear(animated) Analytics.setUserProperty("テスト中", forName: "test_device") Analytics.logEvent("trigger_test", parameters: nil) } @IBAction private func closeButtonTapped() { dismiss(animated: true) } }
viewDidAppear
のタイミングで、Firebase ユーザープロパティの設定とイベントの記録を行なっています。
- ユーザープロパティ
test_device
の設定 - イベント
trigger_test
の記録
また、Viewの上部にある×マークを押すことで画面を閉じます。
メッセージが表示されるか確認
それでは全ての用意が整ったのでメッセージが表示されるか確認してみましょう。
フォアグラウンドのまま確認する
アプリを立ち上げて、何度か最初のViewController
とTriggerViewController
を行き来しています。
TriggerViewController
が表示されたタイミングでAnalytics.setUserProperty
とAnalytics.logEvent
の処理が行われているはずですが、メッセージが表示されませんでした。ユーザープロパティが初めて設定されてから、イベントがトリガーされるまでの間隔が短すぎて配信対象として絞れていない場合も考え、何度かTriggerViewController
を表示させてみましたが、メッセージが表示されることはありませんでした。
バックグラウンドにアプリを移動させる
上記の手順と基本は同じなのですが、メッセージが表示されないのを確認した後でアプリを一度バックグラウンドに移動して、再びフォアグラウンドに戻し使用するとメッセージが表示されました!
ユーザープロパティが配信対象条件として適用されるのはいつか?
実際に、Firebaseサポートに問い合わせしてみました。
Q.ローカルのユーザープロパティを実際にアプリ内メッセージやプッシュ通知の条件として使用できるのはいつですか?
A.ユーザープロパティの場合、これはクライアント側で評価される為、数分後に使用出来ます。ただし、オーディエンス(イベントに基づく)の場合、オーディエンスの一部として認識されていることを確認する必要がある為、最大24時間かかる場合があります。
いただいた回答では、数分後には使用出来るとのこと。
しかし、フォアグラウンドのまま確認するで行なっていたように24時間フォアグランドのままで何度かTriggerViewController
を表示させてメッセージが出るか確認したのですが、一度も表示されることはなかったです。24時間経過後に、一度アプリをバックグラウンドに移動して、フォアグラウンドに戻すとメッセージが表示されました。
結論
今回の検証で試したところ、ユーザープロパティが送信対象絞り込み条件として適用されるタイミングは、アプリ側で新しいユーザープロパティの値が設定された後、対象アプリが一度バックグラウンドに移動した後にアプリがフォアグラウンドに戻ってきた時という結果になりました。
実際に試した結果はこのようになったのですが、もし間違いや指摘等ありましたら教えていただければと思います。
おわりに
今回は調べていく中で、ユーザープロパティが配信条件として適用される時間だけなく、Firebase Analyticsにデータが表示される時間も知ることが出来ました。 iOSアプリでは、各Firebaseが導入されたアプリ毎に1時間のタイマーが動いており、1時間毎にデータが送られているとのことでした。また、アプリをバックグラウンドに移動したタイミングでもデータが送信されているようです。
Firebaseサポートに問い合わせたところ、送信されたデータがレポートに反映されるまでにパイプライン内に遅延がなければ、3~4時間で反映されるとのことでした。
Firebaseはとても便利なサービスなので今後も理解を深めていきたいですね。
参考
- ユーザープロパティを設定する
- Firebase Analytics のデータが表示されるまで、どのくらい時間がかかりますか?
- 【iOS】Firebase In-App Messagingでイベントをトリガーにメッセージを送ってみた
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