
Google Cloud Next '26 Day1のOpening keynote: The agentic cloudまとめ
お疲れさまです。とーちです。
Google Cloud Next '26 Day1のキーノートを現地で視聴したので、発表されたアップデートを中心にレポートします。
キーノート概要
全体テーマ: 「Agentic 時代」に突入
キーノート全体を通して、とにかくAIエージェント推しが凄まじかったです。Thomas Kurianは「The era of the pilot is over. The era of the agent is here. (パイロット (副操縦士) の時代は終わった。エージェントの時代がきた)」と明言。
全体の流れ
- Sundar Pichai (Google CEO): 投資規模、Google社内のAI活用、Gemini Enterprise Agent Platformの初お披露目
- Thomas Kurian (CEO, Google Cloud): Agent Platformの全レイヤー解説、新モデル群、パートナー事例
- Gemini Enterprise Agent Platformのマルチエージェントデモ (家具リテーラー想定で、マーケットリサーチ/データインサイト/プロダクト戦略/開発エージェントがJira連携やVeo 3モックアップ生成まで連動)
- Shaun White (オリンピック金メダリスト) + Google Cloudエンジニアによるスポーツデモ: Google DeepMind協業で2D→3D姿勢推定+Geminiスタッツを使い、スノーボードのトリック (switch cab double flip 1440) を分析
- Amin Vahdat (SVP and Chief Technologist, AI and Infrastructure, Google): TPU v8/v8i、Axion、Virgoなどインフラ基盤アップデート
- Agentic Data Cloudの4大新機能 (Knowledge Catalog、Data Agent Kit、Lightning Engine for Apache Spark、Cross-Cloud Lakehouse) の発表
- Agentic Data Cloudのデモ: アイスクリームの新フレーバー「Midnight Swirl」を題材に、アレルゲン検出 (Knowledge Catalog)・AWS S3越しの顧客セグメント抽出 (Cross-Cloud Lakehouse)・ROI予測を5分で完了
- Francis deSouza (COO, Google Cloud and President, Security Products): Agentic SOC、Wizチームの正式統合を発表
- Wiz co-founderによるデモ: Wiz (AI Application Protection Platform / AI-APP) のred/green agentを用いた脆弱性検知→修正自動化デモ
- Google Cloud幹部によるCX (カスタマーエクスペリエンス) 向けエージェント紹介: Gemini Enterprise for customer experience、Agentic Commerce
- Google CloudプロダクトマネージャーによるYouTube TVのボイスエージェントデモ: NFL Sunday Ticket向けサポートを英語→スペイン語シームレス切替で実演、CX Agent Studioで新プロモーションエージェントを4分以内で追加
- Google Workspace幹部によるWorkspace Intelligenceの発表
- Thomas Kurianによるクロージング: Unilever事例紹介、「AIの未来はオープンであるべき」メッセージ、大手SI (Accenture/BCG/Deloitte/McKinsey) との連携拡大、Agentic Blueprint 5レイヤーの総括
投資規模とGoogle社内AI活用
Sundar Pichaiから投資規模とGoogle社内のAI活用事例が共有されました。
- 2022年の設備投資額 (CapEx): 310億ドル → 2026年見込み: 1750〜1850億ドル (4年で約6倍)
- 2026年、機械学習コンピュートの半分以上がクラウド事業向け
- コーディング: Google社内の新規コードの75%がAI生成+エンジニア承認済み (昨秋は50%)。「プランナー/オーケストレーター/コーダー」の3ロールエージェント編成で、複雑なコードマイグレーションを1年前比で6倍速
- マーケティング: キャンペーン向けクリエイティブアセットを大量生成し、ターンアラウンド70%短縮、コンバージョン20%向上
- セキュリティ: SOCエージェントが毎月数万件の非構造化脅威レポートを自動トリアージし、脅威緩和時間を90%以上削減
発表されたアップデート
AIモデル群
既に発表されているものが多いですが、以下のものが紹介されていました。
| モデル | 位置付け |
|---|---|
| Gemini 3.1 Pro (preview) | 最上位の推論モデル。複雑なワークフローオーケストレーション向け |
| Gemini 3.1 Flash Image (Nano Banana 2) | 高精細ビジュアルアセット生成 |
| Veo 3.1 Light | 高頻度ビデオアプリ向けの低コスト動画モデル |
| Lyria 3 Pro | エンタープライズ/プロ品質の音声・音楽モデル |
Anthropic Claude Opus 4.7 のサポートが追加されたことについても触れられていましたね。
Appleとのパートナーシップ
GoogleがAppleの優先クラウドプロバイダーとして、Gemini技術ベースの次世代Apple Foundation Modelsを共同開発。よりパーソナライズされたSiriなどのApple Intelligence機能に使われる予定。
Gemini Enterprise Agent Platform (目玉の新発表)
「エージェント化エンタープライズのミッションコントロール」と位置付けられた新プラットフォーム。5つのレイヤーで構成されています。
- AI Hypercomputer: エージェンティック時代向けに最適化された基盤
- Agentic Data Cloud: 信頼できるビジネスコンテキストをエージェントに提供
- Agentic Defense: AIライフサイクル全体を保護する自律防御
- Agentic Platform: エージェントのビルド/デプロイ/管理システム
- Agentic Task Force: 既成の特化型エージェント群
「エージェントを作れるか?」ではなく「何千体ものエージェントをどう管理するか?」へとフォーカスがシフトしたとのこと。
Agent Platform機能群
- Agent Studio: 自然言語でエージェントを作れるローコード環境
- Agent Registry: 組織内の全エージェント/ツールを一元インデックス
- Skills and Tools Registry: 再利用可能なスキル/ツールパッケージ。全Google CloudサービスとWorkspaceサービスがスキルとして公開
- Agent Marketplace: Atlassian、Box、Lovable、Oracle、ServiceNow、Workday他のパートナーエージェントをGemini Enterprise内から導入可能
- MCP (Model Context Protocol) ネイティブ統合: 任意のMCPサーバーと接続可能。Google Cloudサービス自体もMCPとして公開
- Agent-to-Agent Orchestration: エージェント間タスク委任。生成的/決定的両方のオーケストレーションパターンをサポート
セキュリティ・ガバナンス
- Agent Identity: 各エージェントに固有の暗号学的IDを付与、認可ポリシーも定義。全アクションが追跡・監査可能
- Agent Gateway: 組織横断のポリシー実行のためのコマンドセンター
- Model Armor: モデルと独自エンタープライズデータを機密データ漏えいなどの脅威から保護
Agent Observability
OpenTelemetry準拠のテレメトリで、エージェントの実行パス全体を可視化。トレース取得、ツール利用モニタリング、推論ループの診断などが可能。
Gemini Enterprise本体の強化
- Gemini Enterprise Projects: 高精度なワークスペース+ディープシンキングで、複雑な課題をコンテキスト汚染なしに解ける
- Microsoft 365 相互運用性: Canvasで作ったドキュメント/スライドをMicrosoft Office形式でエクスポート可能
インフラ基盤アップデート
「Agentic 時代では、コンピュートはもはやチップでは定義されず、データセンター全体がコンピュートになる」というメッセージでインフラ基盤のアップデートが発表されました。
第8世代TPU (v8 / v8i)
初めてトレーニング用とサービング用で別プラットフォームを投入。
TPU v8 (トレーニング向け)
- Native MXU quantization採用、前世代比で1ポッドあたり約3倍のコンピュート性能
- 3Dトーラス構成で最大9,600 TPUを接続、Ironwood比で2.8倍、1ポッドあたり121 exaflops (FP4)
- スーパーポッドあたり2PB の共有ダイナミックメモリ
- TPU Direct Storageでマネージドストレージからの高速データ転送に対応
TPU v8i (推論・強化学習向け)
- 専用のconnectives acceleration engineでレイテンシを5倍削減
- メモリキャッシュをシリコン上にホストし「メモリウォール」を突破
- 1ポッドに1,152 TPUを搭載、ほぼゼロレイテンシで数百万エージェントの並行実行が可能
- 11.6 FP8 exaflops、256チップIronwoodポッドと比較して9.8倍の性能向上
Google Cloud Axion (ARMベース汎用コンピュート)
Google独自設計のARM CPUを搭載した汎用インスタンス。
- 同等のx86インスタンスと比較して最大2倍のプライスパフォーマンス、80%優れたワットあたり性能
- コールドスタートやロジックギャップを排除、エージェントが常時オンで応答可能
NVIDIA bare metal NVL72
NVIDIA bare metal NVL72を最初に提供するクラウドの1つに。高インタラクティブ/長いコンテキストのワークロード向けに最適化され、10倍の性能効率を実現。
ストレージ/ネットワーク基盤
- Managed Lustre: スループット最大10 TB/秒 (業界最高水準)
- Virgo network (新発表)
- 最大134,000チップを47 petabits/秒のノンブロッキング帯域幅で接続、計1.7百万 exaflops のコンピュート
- アクセラレーターあたりのバンド幅は前世代比で最大4倍、ほぼ線形スケーリング
- NVIDIA bare metal NVL72でも利用可能 (最大960,000 GPU)
PathwaysとJAXでオーケストレートされ、「数ヶ月かかるトレーニングを数週間に短縮できる」と紹介されました。
AI Active Infrastructure
「このスケールでは人間が手でコンフィグをトラブルシュートできない。自分で走るクラウドが必要」とのメッセージで発表。
- 全Google CloudサービスをMCP経由でエージェントが直接オーケストレートできるツールとして公開
- Geminiの推論を自社テレメトリに統合し、自律的なルートコーズ分析を実施
- ユーザーが問題に気付く前に設定ミスを特定・修正
Agentic Data Cloud
「推論はコンテキストがなければただの推測」というメッセージのもと、4つの基盤機能が発表されました。
Knowledge Catalog
エンタープライズ向けユニバーサルコンテキストエンジン。
- BigQueryとネイティブ統合し、構造化データのテーブル/メタデータをビジネスロジックにマッピング
- Smart StorageによりGCS着弾と同時にPDF/画像を自動タグ付け・リッチ化 (データエンジニアリング不要)
- Geminiがファイルを読み、エンティティ抽出・関係マッピング・独自ビジネスセマンティクスを学習
- Palantir、Salesforce、SAP、ServiceNow、Workdayなどにゼロコピーで直接アクセス
- Gemini EnterpriseのDeep Research Agentに統合され、社内データ+Web横断の引用付きリサーチが可能
Data Agent Kit
Geminiパワードのデータサイエンス authoring 体験。
- VS Code、Cloud Code、Gemini CLIなどのIDE/ノートブック/ターミナルに直接統合
- 「顧客離脱を予測」と自然言語で指示するだけで、パイプライン構築〜モデルデプロイまで自律実行
- AIスキル/プラグインのライブラリと統合
Lightning Engine for Apache Spark
- 既存の市場リーダー比で最大2倍のプライスパフォーマンス
- エージェンティック時代向けに再設計、Apache Sparkワークロードを高速化
Cross-Cloud Lakehouse
データがどこにあっても (Google、AWS、Azure、SaaS) 横断で分析できる新しいレイクハウス。
- Apache Iceberg標準ベースのボーダーレス設計
- AWS/Azureに対して低レイテンシの直接接続を提供、データ移動もegressフィーも不要
- 「まるでGoogle Cloudにネイティブに存在するかのように」他クラウドのデータを扱える
Agentic Defense (セキュリティ)
「AI駆動の攻撃には人間のアナリストは追いつけない。セキュリティも機械速度で動かなければならない」というメッセージで発表。脅威の実態として以下が共有されていました。
- 脆弱性のexploit平均時間は**-7日** (パッチリリース前にexploitが発生するケースが常態化)
- 初期侵入から次の脅威グループへの引き渡しが8時間 → 22秒に短縮
Gemini-native Agentic SOC
- Triage agent: 30分かかっていた調査を60秒で解決
- Threat hunting + detection agent: 自律的に環境をスキャン、人間では不可能なスケールでリスク発見
- Mandiant、VirusTotal、ChromeなどGoogleの比類ないテレメトリを活用
- Integrated cloud threat intelligenceで外部脅威を98%の精度で識別
Wizの正式統合
買収が完了し、Wizチームが公式にGoogle Cloudへジョイン。
- Wiz (AI Application Protection Platform / AI-APP): AI時代の4大セキュリティ課題 (AIスタックの可視化/クリティカルリスクのプロアクティブ修復/AI-native IDEでのsecure by design/SecOpsの武装) に対応
- Red / Blue / Green エージェント
- Red agent: フレンドリーハッカーとしてアプリを継続スキャンし、実際の攻撃経路を検証
- Green agent: トリアージを自動化 (オーナー特定→修正提案→該当コード行特定)、Codeiumなどコーディングエージェントに修正PRを投げることも可能
- Security Graph: コード/クラウド/エージェントの動的インベントリをエージェントレスで構築
- Gemini/Claude/Llamaモデル、Gemini Enterprise Agent Platform、Dialogflow、Copilot Studio、Salesforce Agentforceなど主要AIエージェント環境を横断して保護
Gemini Enterprise for customer experience
「エージェントは単なるツールではなく、ビジネスを拡張する戦略的な存在」との位置付けで、CX (カスタマーエクスペリエンス) 領域の全面アップデートが発表されました。
- Agentic Commerce: ショッピング/フードオーダリング用のビルトインエージェント。発見から決済まで自然言語で完結
- Omnichannel Gateway: Web/モバイル/音声など全チャネル間でコンテキストを保持。テキストチャットから電話に切り替えても会話を継続。多言語の人間的音声に対応
- CX Agent Studio: ビジュアルビルダーでマルチエージェント構成を可視化・編集。サブエージェント追加や業務ロジック追加を自然言語で実施可能
- Conversational Insights: 通話パフォーマンスを同一プラットフォーム内で分析
- デモ事例: YouTube TVのサポート音声エージェントは6週間で構築・本番投入し、現在ユーザーの100%をサポート
Google Workspace (Workspace Intelligence)
「情報探索とどう使うかで半日を使う」現状を解消する、新たな基盤モデル群Workspace Intelligenceを発表。各Workspaceアプリに統一知能レイヤーを提供。
- Ask Gemini (Google Chat): チャットが「コマンドセンター」となり、優先度の高いタスクや期限をGeminiが抽出
- 過去ドキュメントのセマンティック検索 (キーワードマッチではなく会議/ファイルのコンテキスト理解)
- メール・チャット・ドキュメント・HubSpotなど外部SaaSをまたいだ情報でスライドを自動生成 (引用元をSlideに自動付与)
- Microsoft 365 → Google Workspace移行が最大5倍高速化 (新しい移行・相互運用機能)
オープン戦略
Thomas Kurianのクロージングでは、「他社はwalled garden (囲い込み) でモデル・データ・エージェントをロックインする方向だが、Google Cloudは統合スタックを提供しつつ選択の自由を確保する」という方針が強調されました。
- ワールドベストのチップとモデルを選ぶ自由
- データがある場所でAIを動かす自由
- 深いガバナンス機能で自社のdestinyをコントロールする自由
まとめ
全体を通した所感は以下です。
- Google Cloud全体が「Agentic 時代」一色にシフトしたことが明確に打ち出された
以上、とーちでした。











