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[IND395][Code talk] Generative AI と LLM エージェントによるゲームデザインレビューの加速 #AWSreInvent
製造ビジネステクノロジー部スマートファクトリーチームの田中孝明です。
[IND395] Generative AI と LLM エージェントによるゲームデザインレビューの加速
従来のゲームデザインレビューでは、一貫性のない評価方法と主観的なフィードバックが開発の遅延の原因となっていました。このセッションでは、Amazon Bedrock AgentCore を使用して AI エージェントを構築する方法を学びます。これにより、反復サイクルが短縮され、アナリストは戦略的なゲームデザインに集中できるようになります。ライブデモとコード例を通して、プロンプトエンジニアリング、RAG、MCP サーバー、AgentCore を組み合わせて、デザインドキュメントを分析し、物語の一貫性、ゲームプレイの整合性、プレイヤーのエンゲージメントを評価するインテリジェントシステムを構築する方法を学びます。ゲームスタジオにおけるレビュープロセスを変革し、クリエイティブな開発を加速させる、本番環境対応の AI エージェントの実装に関する実践的な知識を習得できます。
Amazon Bedrock とエージェントフレームワークで変わるゲームデザイン分析
本セッションでは、ゲーム業界におけるデータアナリストの役割をはじめ、Amazon Bedrock とオープンソースのエージェントフレームワークを用いてゲームデザイン向け AI エージェントをどのように構築し、現場のワークフローを変えれるかを紹介されていました。
モダンなゲームアナリストの役割
現代のゲームアナリストは通訳でありストーリーテラーです。
ビジネスゴールとプレイヤー体験、開発チームの意図のつなぎ合わせ、データに基づいたストーリーとして提示する役割を持ちます。
発表では、この役割を次の 4 つに分解していました。
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品質保証 (QA)
- 新しいアップデートや機能追加がバグを生まないか
- 既存システムとの整合性は取れているか
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ゲームデザイン / メカニクス検証
- 新アイテムや新しいパワーがゲームバランスを壊さないか
- プレイヤーが継続的に戻ってきたくなる構造になっているか
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プレイヤー体験 (UX / エンゲージメント)
- モチベーションを維持する導線になっているか
- 課金・非課金の体験差が過度になっていないか
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ビジネス / 戦略整合性
- タイトル全体のビジネス戦略と整合しているか
- 収益性や長期運営の方針に合致しているか
従来、この評価には膨大なドキュメント読解やデータ分析が必要で、オンボーディングや新機能レビューに多くの時間がかかっていました。
ここに AI エージェントを導入し、標準化と自動化を図るというのが本セッションのテーマです。
専門エージェント + オーケストレーターという設計
提案されたアーキテクチャは「専門エージェント」と「オーケストレーターエージェント」の組み合わせです。

- 専門エージェント
- Lore / 世界観エージェント
- QA エージェント
- ゲームプレイエージェント
- 戦略 / ビジネスエージェント
- オーケストレーター
- これら専門エージェントを呼び分ける「アナリストエージェント」
- デザイン提案を分解し、どの観点で何を検証すべきかを判断してタスクを委譲
この構造により、ゲームデザイナーが 1 本のデザインドキュメントを投げ込むと、各観点ごとに構造化されたフィードバックとリスク指摘を得ることができます。
技術スタックとデータ基盤

実装には主に次のサービスとツールが使われます。
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Amazon Bedrock
- モデルとして Claude Sonnet 4.5 を利用
- エージェント実行基盤として Amazon Bedrock Agents を利用
- Bedrock Agent Core により、プロダクションレディなエージェント実装を簡略化
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オープンソースエージェントフレームワーク
- 「エージェント用の SDK 」として設計されたフレームワーク
- MCP サーバー連携や AWS サービス統合を前提にした拡張性
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データソース
- ゲームデザインドキュメント・ビジネス戦略資料
- Amazon S3 に保存
- プレイヤーデータ・テレメトリ
- Amazon Redshift など DWH に格納
- これらを Amazon Q Business / Amazon Q のエンタープライズ検索的な基盤を通して取り込み、エージェントからは統一インターフェースで検索・参照できるようにする
- ゲームデザインドキュメント・ビジネス戦略資料
既存 API を MCP 対応ツールとして公開する Amazon Bedrock Agent Gateway、ID 管理との統合、トレースとデバッグには Amazon CloudWatch 相当のダッシュボードが活用される。
エージェントの設計と実装のポイント
エージェント実装は、以下の 3 要素で構成されます。
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モデル設定
- 使用する基盤モデル (今回は Claude Sonnet 4.5)
- 推論パラメータやタイムアウトなど
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ツール定義
- MCP サーバー経由の検索ツール
- カスタム関数 (バランス計算、 KPI 取得、クエリ実行)
- メモリツール
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システムプロンプト
- 役割、ゴール、回答スタイル
- どのツールを、どのような条件で使うか
発表では、プロンプトエンジニアリングを効率化するために 「プロンプトビルダー」を用い、モデルに最適化されたプロンプトへ自動変換している点も紹介されました。
これにより、深いプロンプト専門知識がなくても、十分な品質のシステムプロンプトを得ることができるとのことです。
メモリ活用によるパフォーマンスと体験向上
エージェントの大きな課題が「毎回すべての文脈を投げるとコストとレスポンスが悪化する」点です。
これに対し、本セッションでは「マルチレイヤーのメモリ設計」が紹介されました。

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プロジェクトメモリ (コアファクト / セマンティックメモリ)
- 各ゲームプロジェクトごとの重要事実を蓄積
- 専門エージェントはまずメモリを参照し、それでも足りない場合だけナレッジベースに問い合わせ
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セッションメモリ
- 直近の会話履歴を保持し、継続的な議論を可能にする
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ユーザープリファレンスメモリ
- 回答フォーマットの好み (箇条書き / 段落)
- 詳細度や専門用語の許容度などを記憶
これによりナレッジベースへの問い合わせ回数を削減しレスポンスを高速化、トークン消費を削減してコスト最適化、「この前の案の続きから」「以前の前提を踏まえて」といった自然な対話を実現といった効果が得られます。
実装面では、ライフサイクルフック (hooks) を使い、エージェント初期化時にメモリをロードし、応答後に新たな知見をメモリへ書き込みといった処理を挟み込むことで、既存エージェントロジックに最小限の変更でメモリ統合を行っています。
人間との協調による「客観化」
最後に強調されていたのは、AI エージェントはデザイナーを置き換えるのではなく、主観的フィードバックを客観化し、構造化するツールである」という点です。
- デザイナーは従来どおり企画書やドキュメントを書く
- エージェントが Lore・バランス・UX・ビジネスの各観点から自動レビュー
- リスクや懸念点が整理された形で返ってくるため、チーム内の議論が高速化・高度化できる
すべてのエージェントが同じナレッジベースと標準プロンプトに基づいて動くため、タイトルやプロジェクトをまたいだ「共通のものさし」も得ることができます。
まとめ

- Amazon Bedrock と Agent Core により、スケーラブルでセキュアなエージェントを迅速に構築できる
- メモリを活用することで、パフォーマンスとユーザー体験を同時に向上できる
- ゲームデザインチームは、AI を用いて主観的なフィードバックを客観的なインサイトに変換し意思決定を加速できる
コードサンプルやチュートリアルは公開リポジトリとして整備されており、ゲーム以外のドメインでも同様の「専門エージェント + オーケストレーター + メモリ」パターンはそのまま応用可能とのことでした。










