[新機能] 独自モデルのトレーニングを簡単にするAmazon Nova Forgeが発表されました #AWSreInvent

[新機能] 独自モデルのトレーニングを簡単にするAmazon Nova Forgeが発表されました #AWSreInvent

2025.12.07

こんにちは、かけい(@takaakikakei)です。

AWS re:Invent 2025のタイミングで、Amazonは独自モデル群「Amazon Nova」の拡充とともに、企業が自社仕様のモデルを構築しやすくする新サービス「Amazon Nova Forge」を発表しました。単なる微調整(ファインチューニング)ではなく、「より早い学習段階から独自の知識やコンテキストを入れること」を可能にする点が大きな特徴です。

公式発表

今回の発表に関する公式情報は、以下の通りです。

https://aws.amazon.com/jp/about-aws/whats-new/2025/12/amazon-nova-forge-frontier-models-nova/

https://aws.amazon.com/jp/blogs/aws/introducing-amazon-nova-forge-build-your-own-frontier-models-using-nova/

何が嬉しいのか

生成AIの企業導入が進む中、モデルからの応答を自社の業務・専門領域に深く最適化したいというニーズが高まっています。これまでのアプローチとしては、以下が挙げられます。

  • RAG(Retrieval-Augmented Generation)で社内データを参照させる
  • 後段のSFT(教師あり微調整)を行う

基本的には、RAGが主流です。RAGとは、外部知識ベースから情報を取得し、その情報を質問とともにコンテキストとしてモデルに渡すことで実現する手法です。

一方、SFTは、既存の大規模言語モデルに対して、入力と望ましい出力のペアを用いて学習させ、特定タスクや指示追従、文体などの振る舞いを目的に合わせて調整する教師ありの微調整手法です。現状はコストや運用難易度の面でハードルがあり、RAGほど広く一般化しているとはまだ言いにくい状況ですが、より高い応答品質や速度を求める場合の最終手段として利用されているケースがあります。

しかしこれらのやり方だと、モデル自体の基盤能力と、独自データの融合に限界が出ることがあります。そこでAWSは、学習のもっと早い段階に企業がドメイン知識を組み込めるようにする方向性として、「Amazon Nova Forge」を発表したと考えられます。

Nova Forge

特徴

Nova Forgeの最大の特徴は、事前学習・中間学習・事後学習に相当するチェックポイントから開始できる点です。これにより、企業は独自のデータを最適なタイミングで注入し、既存のカスタマイズ手法の限界に柔軟に対応します。さらに、AmazonがNova向けにキュレーション(収集・選別)した学習データと自社データをブレンドする仕組みが提供されるため、過学習・壊滅的な忘却・データ準備の負担が軽減されます。「巨大投資が必要になるゼロからの基盤モデル開発」と「後段のSFT中心のカスタマイズ」の間を埋める選択肢として位置づけることができそうです。

下図は、Amazon SageMaker AIやBedrockを利用した微調整と比較した際の、Nova Forgeの位置付けを示しています。Nova Forgeは機能として最も充実していることがわかります。手軽に始めるというよりも、より高度なカスタマイズを求める企業向けのサービスと言えそうです。

image.png

https://aws.amazon.com/jp/nova/forge/

利用開始方法

Nova Forgeは、バージニア北部リージョン(us-east-1)で利用可能です。今後数ヶ月以内に他のリージョンにも展開される予定です。Novaという名称が付いていますが、Bedrockではなく、SageMaker AIのサービス画面から確認できます。

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Nova Forgeはサブスクリプション制です。サブスクリプションの申請には、以下のタグと権限を持つIAMロールが必要です。

  • タグ
    • Key: forge-subscription
    • Value: true
  • ポリシー(いずれか一つ)
    • AdministratorAccess
    • AmazonSageMakerFullAccess
  • API権限
    • ListAttachedRolePolicyを呼び出せること
    • ListRoleTagsを呼び出せること

https://docs.aws.amazon.com/sagemaker/latest/dg/nova-forge.html

https://docs.aws.amazon.com/sagemaker/latest/dg/nova-forge-access.html

サブスクリプション後の利用方法については、ワークショップが公開されているので、こちらを参照いただけると良いかと思います。

https://catalog.us-east-1.prod.workshops.aws/workshops/dcac6f7a-3c61-4978-8344-7535526bf743/en-US

コスト

料金ページを確認すると、Nova Forge console(AWSマネジメントコンソールのサービス画面)にURLリンクが設定されています。

CleanShot 2025-12-07 at 13.58.34@2x.png

https://aws.amazon.com/jp/nova/pricing/

URL先の画面では、下図のように、Nova Forgeの料金が記載されています。Nova Forgeのサブスクリプション料金は、$100,000/year per payer accountとなっています。こちらに加えてインフラコストが発生します。

CleanShot 2025-12-07 at 14.00.14@2x.png

同画面内の表示によると、Nova Forgeのサブスクリプションには、以下が含まれます。

  • Nova 2 LiteおよびNova 1モデルの複数のチェックポイント
  • 事前学習、中間学習、事後学習、および蒸留のためのトレーニングレシピ
  • 独自データとAmazonがキュレーションしたデータセットを各段階で組み合わせる機能
  • 強化学習によるファインチューニングのために、独自環境のリモート報酬関数に接続する機能
  • カスタマイズ可能な責任あるAIツールキット(アライメントデータ、評価データ、ランタイム制御を含む)
  • 新しいNovaモデルへの早期アクセス(一般公開前に利用可能、Nova 2 Proから開始)

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さいごに

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

昨今はRAGが主流ですが、小型モデルの微調整も注目されてきており、広い意味で微調整の活用は今後1~2年でさらに進むと考えています。その中で、Nova Forgeは、より高度なカスタマイズを求める企業にとって、有力な選択肢の一つになるのではないでしょうか。私自身もいよいよ微調整に挑戦し始めようと思っているので、得られた知見はブログ等で発信できればと思います。

本記事が皆様のお役に立てれば幸いです。それではまた!

関連情報

https://docs.aws.amazon.com/sagemaker/latest/dg/nova-forge.html

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