エンジニアリングマネージャー概論 第 1 講 – ASEM における定義

2021.01.31

クラスメソッドのエンジニアリングマネージャーのお仕事、第 1 弾の記事です。がっつり調査したところ、けっこうな分量になったため、大学での授業の体をとって書いていきます。

エンジニアリングマネージャー概論

「エンジニアリングマネージャー概論」という講義の資料を公開していきます。この講義を受けることによって「エンジニアリングマネージャーとは何かがわかり、その一歩を踏み出すための知識を身につける」ことが可能となります。

現在、シラバスは次を予定しています。変更になる可能性があります。

  1. ASEM における定義
  2. ボトムアップな定義
  3. 日本における定義
  4. 各定義における職掌比較
  5. 組織の大きさと役割の変遷
  6. 完成形の分類
  7. ロードマップ

本講ではまず、 ASEM における定義を確認します。

ASEM とは

エンジニアリングマネジメントという分野におけるアメリカの団体で、 American Society for Engineering Management の頭文字をとって ASEM と呼ぶようです。大学教授が多く名を連ねていること、学生の就職斡旋をしていること、資格試験を実施していることなど、アカデミックな組織のようです。

EMBoK

ASEM では、エンジニアリングマネジメントの体系を EMBoK: A Guide to the Engineering Management Body of Knowledge という本にまとめています。 2021 年 1 月現在、第 5 版が出版されており、目次は次となっています。

  1. Introduction to Engineering Management
  2. Leadership & Organizational Management
  3. Strategic Planning and Management
  4. Financial Resource Management
  5. Project Management
  6. Quality Management System
  7. Operations & Supply Chain Management
  8. Management of Technology, Research, and Development
  9. Systems Engineering
  10. Legal Issues in Engineering Management
  11. Professional Codes of Conduct and Ethics

目次、と書きましたが、これらの各章は実際は "Domain" として記述されています。つまり、最初のひとつを除く、 10 個の専門領域の集合がエンジニアリングマネジメントだということです。アカデミックな言い方をするなら学際的な分野、ということになるでしょうか。

ちなみに EMBoK を手に入れる場合は ASEM のメンバーになることをおすすめします。 Amazon では売り切れとなっていることと、メンバーになれば PDF 版が手に入る他、 Handbook や過去のジャーナルへのアクセスが可能になるためです。 2 年間で $135 と少し高いですが、それだけの価値があります。

エンジニアリングマネジメントとは

EMBoK ではエンジニアリングマネジメントを次のように定義しています。

an art and science of planning, organizing, allocating resources, and directing and controlling activities that have a technological component

「技術的な構成要素に関する、計画、組織化、リソース確保、活動の推進とコントロール」といった感じでしょうか。計画とは、事業における目的を達成するための計画活動全般を指します。組織化は仕事を整理し、仕事を遂行しやすい組織を作ること、となっています。リソース確保は事業推進のためのリソース、つまり資金、設備、メンバーを集めることです。活動の推進はメンバーを巻き込む力、活動のコントロールは望んだアウトカムが出るように進捗や生産性の計測と改善をしていくこと、とあります。

また、 ASEM においてエンジニアリングマネジメントと言うと、ソフトウェアに限らず、ハードウェアも対象としているようです。

エンジニアリングマネージャーとは

同様に、エンジニアリングマネージャーの役割として次を挙げています。

  1. Planning, organizing, and managing the work that is consistent with the organization's goals.
  2. Being proactive in preventing problems from occurring and solving them if they occur.
  3. Directing engineering activities and demonstrating innovative capabilities.
  4. Creating policies and procedures to help employees focus on their goals. Then reviewing and appraising employee performance.
  5. Developing technical strategies that align with the organization's mission and vision.
  6. Transforming the agreed strategies of the company into tactical action plans.
  7. Managing resources and processes efficiently.
  8. Focusing on meeting the needs of the customer and providing a quality product or service.
  9. Delegating tasks, overseeing engineers and other technical people, and providing technical expertise.
  10. Reporting to senior management about the progress of operations and projects.

拙訳も載せておきます。

  1. 組織のゴールを果たすために仕事を計画、組織化、管理すること
  2. 問題を解決すると同時に事前に問題発生を防止すること
  3. エンジニアリング活動の推進と革新できることを証明すること
  4. 従業員がゴール達成に集中するためのポリシーや仕組みを作成し、従業員の生産性を入念に調査すること
  5. 組織のミッション、ビジョンと協調する技術的な戦略を開発すること
  6. 企業の合意した戦略を戦術的なアクションプランへ変換すること
  7. リソースとプロセスを効果的に管理すること
  8. 顧客のニーズを満たすことにフォーカスし、プロダクトやサービスの質を高めること
  9. タスクを移譲し、エンジニアやその他技術職を監督し、技術的な専門知識を提供すること
  10. 業務とプロジェクトの進捗を上長に報告すること

このように、求められている役割は非常に多岐に渡る上、それぞれの役割において専門亭な知識と経験が求められます。

こういった役割を果たすため、アメリカの大学ではエンジニアリングマネジメントを専門に教える課程があるようです。日本にもすでに同様のことを実施する大学があるのかもしれませんが、寡聞にして聞いたことがありません。

第 1 講のまとめ

まず、歴史的に先行し、学問として確立している定義を確認しました。これらは今後の議論のベースとなります。