Oracle Enterprise Manager Cloud ControlでRDSを管理する:OMS構築編
こんにちは、菊池です。
RDBのマネージドサービスであるAmazon RDSは、構築・運用の負荷を大きく軽減してくれるサービスですが、SQLのチューニングやそのための適切なモニタリングは依然として必要な運用タスクです。Oracle Databaseを運用管理する上で強力なツールであるEnterprise Manager (EM) ですが、先日のアップデートによりEnterprise Manager Cloud Controlを使ってRDSを管理することが可能になりました。
Enterprise Manager Cloud Controlを使ったRDSの管理を複数回に分けて紹介します。今回はEMの管理サーバであるOracle Management Service (OMS) の構築です。
Enterprise Manager (EM)とは
Enterprise Manager (EM) は、Oracle Databaseを含むOracle社製品を管理するWEBベースのツールです。いくつかの種類・バージョンがあり、提供される機能が異なります。
データベース単体の管理ツールとしては、11g/12cそれぞれのバージョンに対して以下が提供されます。
- Oracle Enterprise Manager 11g Database Control
- Oracle Enterprise Manager Database Express 12c
複数のデータベースの他、WebLogic Servernなどのミドルウェア製品を統合管理可能なツールとして
- Oracle Enterprise Manager Grid Control(11g以前)
- Oracle Enterprise Manager Cloud Control(12c以降)
があります。
スタンドアロンのEnterprise Manager 11g Database Control / Enterprise Manager Database Express 12cについては以前からRDSでの利用がサポートされていましたが、今回、Enterprise Manager Cloud Control 12cによる管理が追加サポートされました。
それぞれのツールによる対応機能の一部抜粋です。詳細は公式のドキュメントを参照ください。
Oracle Enterprise Manager : 各ライセンスの主な機能と使用するツール
ライセンス | 機能 | GC/CC | DC | DE |
基本機能(追加ライセンス不要) | DBの起動/停止 | ○ | ○ | |
可用性監視 | ○ | ○ | ○ | |
初期化パラメータ管理 | ○ | ○ | ○ | |
スキーマ管理 | ○ | ○ | ||
記憶域管理 | ○ | ○ | ○ | |
ユーザ/ロール/プロファイルの管理 | ○ | ○ | ○ | |
ジョブ | ○ | ○ | ||
バックアップ/リカバリ | ○ | ○ | ||
パッチ推奨 | ○ | ○ | ||
複数DBの管理 | ○ | |||
Diagnostics Pack | AWR管理/レポート実行 | ○ | ○ | |
アクティブセッション履歴 | ○ | ○ | ○ | |
期間比較ADDM | ○ | |||
リアルタイムADD< | ○ | ○ | ||
稼働状況のレポート | ○ | ○ | ||
メトリック作成 | ○ | ○ | ||
通知(メール/SNMPなど) | ○ | ○ | ||
Tuning Pack | SQLチューニングアドバイザ | ○ | ○ | ○ |
SQLアクセスアドバイザ | ○ | ○ | ||
SQLチューニングセット | ○ | ○ | ||
Lifecycle Management Pack | 構成情報の参照・履歴参照・比較 | ○ | ○ | |
パッチ適用状況の確認 | ○ | ○ | ||
構成変更のリアルタイム検出 | ○ | |||
オブジェクトの定義の保存・バージョニング | ○ | ○ | ||
データベース・RAC・OSのプロビジョニング | ○ | ○ | ||
データベースインスタンスの新規作成 | ○ | |||
データベースインスタンスのクローニング | ○ | ○ | ||
パッチ適用計画の作成・適用 | ○ | ○ | ||
Oracle Cloud Management Pack | ○ | |||
Oracle Data Masking and Subsetting Pack | ○ | |||
Oracle Real Application Testing | ○ |
※ GC:Oracle Enterprise Manager Grid Control 11g ※ CC:Oracle Enterprise Manager Cloud Control 12c ※ DC:Oracle Enterprise Manager 11g Database Control ※ DE:Oracle Enterprise Manager Database Express 12c
上記からも分かる通り、スタンドアロンの12cで利用可能な Database Express 12cでは大幅に機能が削減されております。今回、Cloud Control 12cが利用可能になったことで、RDSで12cを利用している場合にEMで管理可能な項目が大きく増えたといえます。
構成
今回構築する構成です。
Enterprise Manager Cloud Control 12c では、Agentを導入した管理Target(今回はRDS)から管理サーバであるOracle Management Service (OMS) が情報を収集します。また、収集した情報を保管するためにRepository DBが必要です。Repository DBはOMSと同居させることは可能ですが、Oracle Database Enterprise Editionであること、SYSユーザでの接続が必要です。つまり、SYSユーザがロックされたRDSでは要件を満たせないため、EC2にインストールする必要があります。
今回Repository DBは、先日紹介したクイックスタートのテンプレートを利用してサクッと構築することにします。
AWSクイックスタート:Oracle DB 12c on AWS を試してみた
OMSをインストールするEC2には、GUIを使えた方が簡単なためWindows Server 2012 R2をOSに使いました。インスタンスタイプですが、試したところ構築時にそれなりの負荷がかかることがわかり、t2タイプではかなりの時間がかかりましたので、下記のようにしています。
用途 | インスタンスタイプ |
Repository | m3.xlarge |
OMS | m3.large |
また、上の図で記載しているポートへの通信ができるようにSecurityGroupを設定しておきましょう。
Enterprise Managerのインストール
Repository DB、EC2の準備ができたらEnterprise ManagerのメディアをOTNからダウンロードします。
- em12105_winx64_disk1.zip
- em12105_winx64_disk2.zip
- em12105_winx64_disk3.zip
3つのzipを解凍したら、中身を1つのフォルダにまとめて配置します。
setup.exeからインストーラを起動します。
今回は検証なのでMy Oracle Supportは利用しませんので、チェックを外して次に進みます。
更新の検索もスキップして進めます。
前提条件は問題ないはずです。もしリソースが不足していれば追加しましょう。
今回はEnterprise Managerシステムの新規作成 -> 簡易 で進めます。
インストール先を指定します。ホスト名の欄はIPアドレスは不可で、名前解決が可能である必要がります。必要に応じて、c:¥windows¥system32¥drivers¥etc¥hosts
を編集しましょう。(Linuxの場合は/etc/hosts
)
設定する管理者パスワードとRepository DBへの接続情報を入力します。
Repository DBへの接続確認が行われます。以下のようなエラーが出た場合はRepository DBへ接続しdb_securefile
をpermitted
に変更します。
$ sqlplus sys/***@orcl as sysdba SQL*Plus: Release 12.1.0.2.0 Production on Thu Oct 27 22:18:24 2016 Copyright (c) 1982, 2014, Oracle. All rights reserved. Connected to: Oracle Database 12c Enterprise Edition Release 12.1.0.2.0 - 64bit Production With the Partitioning, Automatic Storage Management, OLAP, Advanced Analytics and Real Application Testing options SQL> alter system set db_securefile = 'permitted'; System altered. SQL>
問題なければ最終確認がありますので、インストールを開始します。
インストールが開始されます。
インストール完了までおよそ2時間程度かかりました。
ブラウザを起動して、https://(ホスト名またはIP):7799/em/
に接続します。サーバ証明書の警告が出ますが、問題ありませんので続行しましょう。
Enterprise Manager Cloud Control 12c のログイン画面に接続できました。
続きます
以上で Enterprise Manager Cloud Control 12c を利用するための準備ができました。次回はRDSを管理対象のTargetに追加してみます。