
情報処理技術者試験(IPA試験)のレベル4試験に全種合格したのでキャリアと共に振り返ってみた
リテールアプリ共創部@大阪の岩田です。
先日令和7年度秋期の情報処理技術者試験(以降はIPA試験と表記します)の合格発表がありました。私はエンベデッドシステムスペシャリスト試験を受験していたのですが無事に合格していました。これでかねてから目標にしていたレベル4試験の全制覇が達成できたので、これまでの軌跡やIPA試験がキャリアに与えた影響について振り返ってみます。
※ちなみに試験の全種合格であって、資格の全種取得ではありません。情報処理安全確保支援士の試験には合格していますが、登録セキスペには登録していません。
結局IPA試験は役に立ったのか?
まず最初に書いておきます。
IPA試験は自分のエンジニアとしてのキャリア形成に大きく影響を与えました。YouTubeとiTunesのためにしかパソコンを触ったことのなかった自分ですが、なぜかIT業界に就職し右も左も分からぬ状態でエンジニア人生をスタートしました。何をどうしてスキルを磨いていけば良いのか分からぬ中で、良い目標であり続けたのがIPA試験です。IPA試験の勉強を通じて様々な知識が習得でき、それが実務と結びつきだした頃から自分のエンジニアとしてのスキルが大きく伸びたことを実感しています。
最近だと生成AIの台頭など変化の激しい業界ではありますが、IPA試験で扱う領域の多くは数十年後も通用するであろうベンダーニュートラルな基礎的な知識がほとんどです。キャリアの初期にこういった基礎知識を身に付けておくことでその後の成長スピードが加速し、どんな新しい技術が出てきても素早くキャッチアップできるようになると信じています。
第1部 前職新卒入社後
私の中でIPA試験との関わりは大きく3つのフェーズに分かれています。最初のフェーズが新卒入社~部署異動までの期間です。
私は2007年4月に前職のIT企業に新卒入社しました。大学は社会学部でITとは一切関係無かったのですが、なんやかんや色々あって前職に入社するに至りました。ここからエンジニアとしてのキャリアがスタートすることになります。最初の5年間は「システム運用」を行う部署に配置され、ロールとしては「運用担当者」でした。ひとくちに「システム運用」といっても色々な業務がありますが、私が配属された部署はあまりIT技術と関わりのないアナログな作業の多い部署で、例えば以下のような業務がありました。
- 日次処理で出力される大量の帳票類を仕分け、段ボールに詰めて出荷する
- グループ会社の引っ越し作業の手伝い
- テレアポ
- サーバーやNW機器のランプが点灯していることを定期的に監視
- バックアップ用のテープ交換
繁忙期には1日8時間 ✕ 5日間ひたすら帳票を裁断している時期もありました。
その一方で頻度は低いもののIT技術を必要とする業務もありました。例えば以下のような業務です。
-
運用業務で使うシステムの改修
- 言語はVB6,VBA
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イレギュラーな事象が発生した際にDBの状況を調査し、必要に応じてリカバリを行う
- Oracle,PostgreSQL
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運用業務で使うPCセットアップ
- Windows XP
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ファイルサーバー等の課内サーバーメンテナンス
アナログ業務が多いゆえにIT技術を習得する機会が少ない。にも関わらずIT技術を要求される場面があるというジレンマの中でどうやってIT技術を習得していけば良いのか悩みました。
モデルケースとなるような人がいなかったのも大きかったです。私はWindowsのC/S系システム担当だったのですが、C/S系業務の担当は理系出身の先輩が1人いるのみで、部署の先輩たちのほとんどは汎用機とCOBOLを使った業務が担当で、SQLの書き方を聞いても教えてくれる人はほとんどいない環境でした。この環境下でどうすればC/S系業務に必要な知識が習得できるのか、道無き道を自分で考えながら開拓していくしかありませんでした。
そんな中で自分の中で道しるべとなってくれたのがIPA試験でした。この頃はIPA試験の勉強を通じてITの基礎知識を広く浅く身に付けることができました。そして限られたチャンスの中で効率よく技術習得するための下地となってくれました。
最終的にこの期間で非論文試験のスペシャリスト系試験全てに合格するのですが、その実績もあって色んな人達から良い意味で「システム運用の突然変異種」として認知してもらえるようになりました。その結果、自部署の職責とは完全に無関係のプロジェクトに何度かねじ込んでもらえました。Linuxサーバーの構築作業、CISCOルーター/スイッチの設定作業、FT構成のハードウェアからESXiへの移行案件、ADの移行案件、開発部署の新規システム開発案件の参画...
こういうチャンスを得られたのは上司の社内調整によるところもありますが、根本的にはIPA試験に挑み続けた成果があってこそと考えています。
ここからは時系列で振り返っていきます。
2007年春 初めてのIPA試験
当時私の前職は、新入社員の研修カリキュラムとして基本情報技術者試験の試験範囲に沿った形で技術研修を行っていました。研修期間が2ヶ月あったのですが、名刺交換のようなビジネスマナー系の研修は1週間ほどで、残りは全て技術研修で私のようなIT未経験の新入社員はこの研修期間を通じて基本情報技術者試験合格相当の知識を習得するよう指導されていました。
当然のようにIPA試験も受験が推奨されていたので、私も入社2週間程度のタイミングで実施された春試験で基本情報技術者試験に挑戦しました。
結果は... 不合格
そりゃそうだ。
2007年秋 基本情報技術者試験へのリベンジ
2007年6月で2ヶ月の研修期間が終了し実際に現場に配属されました。前述の通り「システム運用」の部署に配属され、どうやってエンジニアとしてスキルアップしていけば良いのか悩む中で最初に目標にしたのが基本情報技術者試験へのリベンジでした。新入社員研修終了時も人事からは「IPA試験は重要なので挑戦し続けて欲しい」といったことを言われており、素直にその言葉に従った形です。
結果、2度目の基本情報技術者試験には合格。まずは目標を達成できて一安心しました。
当時の前職では情報処理技術者試験に合格した社員の一覧がイントラに掲載されるという運用があり、合格者一覧に自分の名前が掲載されているのがうれしかったです。他部署の同期からも「イントラ見たよ!」など声をかけてもらえたのはモチベーションアップにつながりました。
2008年春 ソフトウェア開発技術者試験
基本情報技術者試験には合格した後、次はソフトウェア開発技術者試験に挑戦することにしました。他のベンダー系資格に挑戦するとか、技術書を読み漁るとか、他にもスキルアップのための選択肢はあったと思いますが、私が選択したのはソフトウェア開発技術者試験への挑戦でした。振り返って考えるとこの選択は正解だったと思っています。何も下地の無い状態で技術書のプログラムを写経してもきっと何も身につかなかったでしょう。逆にこの時期に基礎知識の習得に努めていたからこそ、後々挑戦することになるベンダー系資格の知識習得がスムーズに進んだと考えています。
そんなこんなで受験した初めてのソフトウェア開発技術者試験、結果は...午後2の得点が少し足らず不合格でした。
試験中に「LEFT JOINって初めて見るけどいったい何者だー!!」と頭を抱えたのが今となってはいい思い出です。今の自分からするとあり得ない悩みですね。懐かしい。その1ヶ月後に実務で初めてLEFT JOINを使う機会があり、INNER JOINとLEFT JOINの違いは強烈に記憶に残りました。
2008年秋 ソフトウェア開発技術者試験へのリベンジ
惜しくも敗れたソフトウェア開発技術者試験ですが秋期試験でのリベンジを誓って学習を継続しました。この頃には実務で何本かVB6やVBAのプログラム修正を経験しており、少しづつではありますが、プログラムを読む力が身についていたように思います。これが試験にも良い影響を与えたのか2度目のソフトウェア開発技術者試験は無事に合格できました。
周りの社員を見ていると、ソフトウェア開発技術者試験合格後もIPA試験に挑戦し続ける人は体感で1割程度の割合だったと思いますが、私はIPA試験への挑戦は継続することにしました。そして、この頃から「将来的にIPAの試験全部制覇とかできたらカッコイイだろうな〜」というぼんやりした妄想?目標?のようなものも持つようになっていました。
2009年春 データベーススペシャリスト試験
2009年春期から少し試験の区分が変わり、テクニカルエンジニア(xxx)系の試験はxxxスペシャリストに変わりました。続いて挑戦したのはデータベーススペシャリスト試験です。完全に余談ですがこの試験から4回連続で試験会場が自分の出身大学でした。ランチスポットや空いているトイレなど把握できているので、試験が受けやすかったです。ありがたや。
この頃からベンダー系の試験にも手を出し初めており、当時はデータベース関連技術のスキルアップをテーマに掲げ、データベーススペシャリスト試験の勉強と並行してOracle Master Bronzeの勉強も進めていました。IPA試験を通じて得た知識という下地の上にOracleというベンダー固有の概念が乗っかってOracle Masterに必要な知識体系が構築されていくような感覚があり、この頃はすごく楽しみながら勉強できていたように思います。
試験の結果は無事に合格!!
例によって前職イントラにIPA試験合格者の一覧が掲載されたのですが、確か関西ではデータベーススペシャリスト試験の合格者は私1人だけだったと思います。それもあってか他部署の人からも「システム運用の岩田というやつが若いのにIPAの高度試験に合格しててスゴイ!」と認知されることになります。こうして名前が売れたことが将来的に他部署の仕事を手伝う機会につながります。
2009年秋 ネットワークスペシャリスト試験
続いて挑戦したのがネットワークスペシャリスト試験です。LANケーブルのカテゴリの区分はいつまで経っても覚えられません...
結果としては不合格だったのですが、この試験を通してTCP/IPやOSI参照モデルといった基本的な概念に加えて、DNSやDHCPのような実務に密接に関わるプロトコルの理解が深められました。この時得た知識は後述する部署異動後にとても役立ちましたし、サーバーサイドエンジニアとして仕事をしている今でも役に立ち続けています。
そしてこの頃には誰が言うでもなく自然と課内のネットワーク管理者として扱われるようになっていました。スイッチやルーターの設定などは隣のインフラ系の部署が担当していたのですが、自部署との窓口を務める中で専門的な知識を深めることができましたし、その機会を得るきっかけとして役に立ったのがIPA試験でした。
2010年春 情報セキュリティスペシャリスト試験
ネットワークスペシャリスト試験は2010年秋までお預けになったので、今度は情報セキュリティスペシャリスト試験に挑戦です。
試験勉強をするなかでxxインジェクションの概念を学び、「悪い人は頭が良いんだなー」と感心したものです。この頃は新しく学ぶことが何もかも新鮮でした。
試験結果は無事に合格!
この数年後に部署異動と初めてのWebシステム開発案件参画を経験するのですが、最初は周りのメンバーが不安そうに「このh()という関数がなぜ必要か理解できてる?」といったことを聞いてきました。Webシステムの開発に関わるのが初めてだったので、まあ当然といえば当然の対応だったと思います。こういった質問がある度に「XSSを防ぐために〜...」とか「SQLインジェクション対策が~...」という回答をしているうちに、異動先でもちゃんと一人前として扱ってもらえるようになった気がします。
ありがとう情報セキュリティスペシャリスト試験。
2010年秋 ネットワークスペシャリスト試験へのリベンジ
続いて2度目のネットワークスペシャリスト試験です。
確か午後2の問題で仮想サーバーのライブマイグレーション時のARPテーブルに関する問題が出たのですが、問題を解く過程でライブマイグレーションの裏側でどんな処理が動いているのか理解することができました。単なる暗記が求められるのではなく、問題を解くために考えることで技術理解が進む。そんな構造になっているIPA試験の試験問題は本当に良くできているなーと感動したのを覚えています。
そして無事リベンジ成功!
ちょうどこの試験の少し前にLPICのレベル2も合格していたのですが、IPA試験を通してOSI参照モデル理解の理解を深め、LPICやMCP試験を通じて各レイヤごとにトラブルシューティングに使える具体的なコマンドを覚えたことでトラブルシューティングの能力が大きく向上しました。うまく表現できないのですが、これぐらいの時期から今まで学んできた基礎的な知識が色々と繋がり出して、点と点が線に、そして面になっていくような感覚がありました。
この頃には部内でNW関連のトラブルがあった際の相談先として立ち位置を確立できていました。
2011年春 システム監査技術者試験の記念受験
次は順当にいけばエンベデッドシステムスペシャリスト試験なのですが...
実は前職にはIPA試験に合格すると資格奨励金がもらえる制度がありました。そして、なぜかエンベデッドシステムスペシャリスト試験だけが制度の対象外になっていました。そういった背景もありつつ、業務とあまりにかけ離れていることからエンベデッドシステムスペシャリスト試験は受けなくても良いかと思っていました。
そしてエンベデッドシステムスペシャリスト試験を除くと、午後2が非論文試験のスペシャリスト系試験は全て合格済みの状況でした。次に受ける試験は必然的に論文試験になるのですが、当時の自分はIT技術との関わりが浅い部署に所属していたこともあり、論文試験で要求されるような経験は何1つ積めていませんでした。そのため論文試験については「いつかちゃんと経験が積めてから受験しよう」と考えていました。ただし、将来的にIPAレベル4試験を全制覇するという目標は持ち続けていたので、将来の参考にするために一番難しそうなシステム監査技術者試験を記念受験することにしました。
試験1週間前から午前2試験のみ勉強を始め、午後試験に関してはぶっつけ本番で挑戦。この時点での自分の実力と論文試験の難易度にどの程度ギャップがあるのかを図ることだけを目的とした受験でした。
午後1までは解けたのですが、午後2の問題文を読んだ時点で諦めました。論文で要求される経験を何1つ積んでおらず、何も書けるイメージが沸きませんでした。結局論文は白紙のまま途中提出、論文がD評価で不合格でした。とはいえ午後1までは合格できたので、「実務経験さえ積めば合格できるはず!」という感触は掴むことができました。
そして実務経験が積めるまでIPA試験は休眠して、ベンダー系資格に注力しようと決めます。
2011年秋 ITサービスマネージャ試験
春試験後にIPA試験の休眠を決めたはずでしたが、ある日気付きます。「エンジニアとしては成長できているけど、相変わらず論文試験に要求されるような経験を積めているとは思えない。もしかしてこのままだと一生論文試験を受験できないのでは??」
そして論文試験に要求される経験の有無を自分で判断することをやめようと思いました。経験の有無は論文を読んだ人に判断してもらえば良いのです。経験を言い訳に論文試験を受験しないことをやめ、IPA試験に挑戦し続けることにしました。
システム運用の部署に所属していたこと、インフラの運用部門ともある程度仕事で関わっていたことから次の目標はITサービスマネージャ試験に設定しました。今度は記念受験ではなくしっかり論文対策の準備もして臨みます。
サーバーの過負荷やNW関連の障害など、ある程度身をもって事例を体験していたのでその経験を元に論文を書いてみたものの通じず。午後2で無念の不合格となりました。
このあとしばらく午後2の論文で不合格になり続ける期間が続きます。
第2部 前職部署異動後
2012年の4月に転機が訪れます。ずっと出し続けていた異動希望が通り、システム開発を主業務とする部署への異動が決まりました。念願の技術バリバリの職種への異動です。新しい部署では1日中プログラムを書く日もあれば、RDBのテーブル設計を考えることもあり、Linuxサーバーを構築することもありました。異動前と比べて技術に触れる時間が圧倒的に長くなり、エンジニアとしてのスキルを大きく伸ばすことができた時期です。
そしてこの時の土台になったのが、これまでに挑戦してきたIPA試験でした。データベーススペシャリスト試験で練習した経験を活かしてテーブル設計を行い、情報セキュリティスペシャリスト試験で学んだ手法をセキュアコーディングに活かし、トラブルシューティングの際はネットワークスペシャリスト試験で学んだ知識を活かして原因を切り分けました。異動後の2年目ぐらいには「インフラにも詳しい開発者」として部内でのポジションを確立していました。
部署の技術スタックは大きく2つに分かれており、Windows ✕ VB.Net ✕ OracleのC/S系開発案件とLinux ✕ PHP ✕ PostgreSQLのWeb系開発案件がありました。体感ですが案件の割合はC/S系が7~8割、Web系は2~3割程度で、メンバーのスキルセットもそれに合わせたような分布でした。Web系のスキルセットを持った人間は数が少ないことに加えC/S系のスキルセットも有していることがほとんどだったので、アサインを考える際には重宝されていました。
私はIPA試験やLPICを通じて得た知識が実を結び、どちらかというとWeb系の案件に多くアサインされることになります。Web系案件はメンバーの絶対数が少ないので、必然的にPLを務めたり、技術的選定を行ったりする機会が多くなりました。こういうチャンスに恵まれたのはIPA試験を通じた基礎固めの成果と言って良いでしょう。
他のトピックとして、この期間中に人事制度の改定があり裁量労働制の「技術専門職」というロールが新設されることになります。クラスメソッドでいうところの「エキスパート」に近いロールです。
2024年7月版 クラスメソッド 人事評価制度 | DevelopersIO
この「技術専門職」に認定されるための必須要件の1つにIPAのレベル4試験合格がありました。自分はすでにこの条件をクリアしていたこともあり、制度が新設されるとともに「技術専門職」としての認定を受けることができました。こんな感じでただ資格を持っているだけで恩恵を受けられる機会があるのは国家資格ならではという気がしますね。
それでは1つ1つ振り返っていきましょう。
2012年春 プロジェクトマネージャ試験
次は春の試験です。簡単な社内プロジェクトでPLのような立ち回りをした経験があったので、プロジェクトマネージャ試験に挑戦します。この試験を通じてリスクマネジメントの手法など体系立てて学べた点が良かったです。ただ机上の知識をいかに実務で活かすかが難しいところですね...プロジェクトは生ものなので。
こちらも午後2で不合格でした。
2012年秋 ITサービスマネージャ試験 リベンジならず
2度目のITサービスマネージャ試験でしたが、リベンジならず。再度午後2で不合格でした。
2013年春 プロジェクトマネージャ試験 リベンジならず
次は2度目のプロジェクトマネージャ試験です。こちらもリベンジならず。
「一体どうやれば論文試験に合格できるんだ...」と落ち込みます。
2013年秋 ITサービスマネージャ試験 休日出勤のため不戦敗
次こそ論文試験にリベンジ!!と意気込んで申し込んだものの、当時参画していた案件が炎上しており、全く勉強する時間が取れていませんでした。そしてそのまま試験当日も休日出勤に...
無念
なるほど。試験会場でいつも見かける空席にはこういう事情があったんですね。
2014年春 プロジェクトマネージャ試験 3度目の正直ならず
3度目のプロジェクトマネージャ試験です。再び午後2で敗退します。
どうやったらこの試験合格できるんだ...
2014年秋 ITサービスマネージャ試験~初めての論文試験合格~
4度目のITサービスマネージャ試験でついに初めて論文試験に合格します。大きな案件のリリースが無事に終わり、夜遅くに家に帰宅してから合格発表を見たのですが、この時の嬉しさは忘れることができません。念願の論文試験合格は自信につながり、「他の論文試験も全て制覇してやる!!」というモチベーションにつながりました。
2015年春 プロジェクトマネージャ試験 4度目の不合格
4度目のプロジェクトマネージャ試験です。ITサービスマネージャ試験の合格を経て、ある程度論文試験にも自信を持って臨めるようになっていたのですが、またまた午後2の結果は不合格...
難しいですね。
2015年秋 システムアーキテクト試験
次の秋試験はシステムアーキテクト試験に挑戦します。職種的にはシステム開発をやっていたので、論文試験の中では一番実務に近いであろう試験です。論文のテーマには実際に前年に担当した案件の設計に関するトピックを選びました。実務に近いこともあり、割とすんなりと論文を書き上げることができ、試験後の感触としても「多分合格しただろう」ぐらいの感覚がありました。
結果は予想通り合格!
ちょうどこの時期に部内のプリセール担当メンバーがとある大企業のRFPに対して提案書を作成していたのですが、RFP内に「IPAのレベル4試験合格者のプロジェクト参画」のような項目があり、前年のITサービスマネージャ試験と合わせて提案の土台に乗るための前提条件として資格が役に立ちました。
2016年春 プロジェクトマネージャ試験~ようやく合格~
4度目のプロジェクトマネージャ試験です。一番苦労したプロジェクトマネージャ試験ですが、ついに合格することができました。
部署異動してから数年間PLとして色々な経験を積んできたので、その効果も合ったのでしょうかね?
2016年秋 ITストラテジスト試験
次の秋はITストラテジスト試験です。
普段の業務とはあまり関係のない領域だったのですが、社内のタスクフォース的な取り組みが少しITストラテジストの領域と被る部分があったので、その取組をテーマに論文を書いてみました。
結果は合格!!
この頃になると論文試験への慣れもあり、だいたい本番3週間前ぐらいから試験勉強を始めるようなペースで安定して結果が出せるようになっていました。
2017年春 システム監査技術者試験
自分の中でエンベデッドシステムスペシャリスト試験は対象外としていたので、当時の自分にとってのラスボスはシステム監査技術者試験でした。前回の記念受験とは違い、今回は本気で合格を目指して準備します。
ちょうど数年前に九州や中部地方の各営業所の定期監査を手伝った経験があったので、その時の経験をもとに論文を書きました。
結果は合格!!
ちなみにこの時の午後1は過去最低の得点で、確か60点ちょうどだったと思います。こんなギリギリの得点は初めてだったのでビックリしました。危ない危ない。
これで論文試験も全て制覇したので自分の中では「実質全試験制覇」ということで満足しました。エンベデッドシステムスペシャリスト試験については相変わらず社内の資格奨励金対象外だったので、そのまま受験しないことにしました。
論文系の試験を振り返ってみると、非論文系試験ほど実務に役立ったという印象はありません。ただ、自身の業務経験が増えるにつれて苦労せずに試験に合格できるようになっていったことを考えると、きっと自分自身では気づかない何かの能力が研鑽されていたように思います。あと色々と論文を書いたおかげで障害報告書を書くのがうまくなった気がします。あまり書きたいものでは無いですけどね。
第3部 クラスメソッド転職後
2018年5月に前職を退職し、クラスメソッドに転職します。その後はサーバーサイドエンジニアとしてキャリアを重ねながらAWSやGoogle Cloud、Azureといったクラウドに関する資格を取り続けますが、IPA試験からはすっかり離れていました。
ところが約5年後の2023年9月に転機が訪れます。会社のIT系資格取得支援制度が拡大され、IPA試験の受験費用についても会社の経費で受験できるようになったのです。
この制度拡大を受けて社内ではIPA試験挑戦への機運が高まり、合格状況をとりまとめるスプレッドシートが作成されます。そしてすでに取得済みの資格を申告するクラスメソッド社員たち...
ふとスプシを見てみると「コンプリート」という列にFALSEが入っています。

誰だ!!こんなけしからん列を追加したのは!!!!
そして自分の行に空のセルがあるのがなんだか恥ずかしくなってきました。マズイ、このままではまた〇〇さんに煽られてしまう切磋琢磨するための激励を受けてしまう。。。
こうなったら取るしかない!!エンベデッドシステムスペシャリスト!!
2024年春 情報処理安全確保支援士試験
エンベデッドシステムスペシャリストを取得すると決めたものの、数年間IPA試験を受けていなかったので午前1免除の資格はとっくに喪失していました。そして自分が過去に合格した試験は情報セキュリティスペシャリストであって、情報処理安全確保支援士試験には合格していないことも気になりました。果たしてエンベデッドシステムスペシャリストに合格したところでレベル4試験全制覇と自称しても良いのでしょうか??そういえば昔AWSのBDSがDASに変わった頃に、まだDASを未取得だった自分を煽ってくる悪い人がいたことを思い出します。
ということで、エンベデッドシステムスペシャリストの前に情報処理安全確保支援士試験を受けてみることにしました。情報セキュリティスペシャリスト受験時とは異なり、今は実務でもセキュリティに関するトピックを扱う機会があるので、実務経験のあるエンジニアが試験を受けたらどの程度の難易度に感じるのか?ということにも興味が沸きました。
結果は合格!
情報セキュリティスペシャリスト試験から実に14年が経過していましたが、問題の傾向なども最近の状況や技術を踏まえたものに変わっており、試験問題を解くのも新鮮な感覚で楽しめました。
2024年秋 エンベデッドシステムスペシャリスト試験
無事に午前1免除の資格を手に入れたので次は本題であるエンベデッドシステムスペシャリスト試験への挑戦です。試験の約3ヶ月前、勉強始動のため本屋に参考書を買いに行ったところで、異変に気づきます。
「なぜエンベデッドシステムスペシャリスト試験に論文試験の対策本が???」
そう、2023年の秋試験からエンベデッドシステムスペシャリスト試験の午後2が論文形式に変更されていたのです。
またあの大量の手書きが必要なのか...
テンションが一気に下がったものの、すぐに気持ちを切り替えて勉強を初めます。が、なんといっても午前2が難しい。。。
これまで午前2で詰まることなど無かったのですが、参考書の解説を読んでも解説に使われている用語自体が分からず、何が何やらサッパリ分かりませんでした。ハードウェアの話になるとここまで普段の業務とギャップがあるのか...と絶望感を味わいましたが、ハードウェア関連の問題は全て捨てて、ソフトウェア関連の問題に注力しても合格点には到達することに気づき、思い切ってハードウェア関連の問題は全て捨てることにしました。結果午前2の点数は低かったですが、合格ラインには到達できていました。
肝心の午後2については、2019年~2020年ごろに担当していたIoT案件のソフトウェア〜クラウド領域のシステムアーキテクトという立場で論文を書きました。
が、合格ラインには届かず。クラスメソッド入社後初となるIT系資格試験での不合格。屈辱の敗退です。
2025年秋 エンベデッドシステムスペシャリスト試験へのリベンジ
その後1年が経ち、いよいよリベンジの時。
論文のテーマは問2の「組み込みシステム製品の流用設計について」を選択し、AWS IoTやGreengrassを絡めた内容で論文を書きました。結果は無事に合格!!
ついに念願のレベル4試験の全制覇を成し遂げました。
まとめ
これまでの経緯は以上になります。
18年前の自分が今の自分を見たら何て思うでしょうか?きっと「すごい!!」と言ってくれるでしょう。
でも、今の自分が自分を見た時にはまだ「すごい!!」と思えていません。未だに分からないことだらけですし、昔は覚えていたはずのことを忘れていることもしばしばあります。仕事では大なり小なり失敗を繰り返し続けていますし、きっとこれからも失敗を繰り返すでしょう。きっと完全無欠のスーパーエンジニアなんてものは幻想でしかないんでしょう。それでもあきらめずに努力を続ければ、少しは自分の理想に近づいていけると信じたいです。
冒頭にも書きましたが、私にとってはIPA試験はキャリア形成に大きな影響を与えた資格試験制度です。試験勉強を通じて数十年に渡って有効な基礎固めができたと考えています。資格試験の有効性については賛否両論、様々な意見があると思いますが、私はエンジニアとしてのキャリア初期にIPA試験に挑戦することがその後の成長曲線に大きく影響すると信じています。職種によりますが、少なくとも応用技術者試験、データベーススペシャリスト、ネットワークスペシャリスト、情報処理安全確保支援士試験を押さえておくのがオススメです。
もしIPA試験への挑戦を検討されている方がいれば、ぜひとも挑戦してみてください。

来月にはここにエンベデッドシステムスペシャリスト試験の合格証書が加わります。やったね。









