Amazon QuickSight のリーダー料金が変更になるので料金が高くなる場合と安くなる場合を試算してみた
いわさです。
先日 Amazon Q in QuickSight が GA となり、新しいロールが追加されました。
その兼ね合いで、今までとリーダーの料金体系が変わることがアナウンスされています。
Amazon Q in QuickSight のリーダー機能を使えることから料金が見直されていますが、GA 時には東京リージョンではまだ使うことが出来なかったので、従来どおりのリーダー機能を前提とした場合にどのように料金に影響が出るか気になると思います。
本日はリーダーの料金周りの仕様を確認し、どの利用者にどの程度の影響が出るのか、対処方法などを調べましたので紹介します。
リーダー(閲覧者)に関してアナウンスされた変更点
アップデートアナウンスとともに、以下の公式ブログが公開されています。
既存の QuickSight Enterprise Edition のお客様は、2025 年 5 月 1 日まで、現在のユーザー料金に変更はありません。2025 年 5 月 1 日から、アカウント内のすべての Reader は 1 ユーザーあたり月額 $ 3 の課金となります。2025 年 5 月 1 日より前に新しい料金体系を適用したい場合は、AWS サポートまたは AWS アカウントチームまでご連絡ください。
既存の QuickSight アカウント(サブスクリプション)は 2025 年 5 月 1 日までは現在の料金で利用可能です。
それ以降は新料金に移行されます。
新規作成する QuickSight アカウントは本日時点で既に新料金となっています。
旧料金は 1 リーダー最大 5 USD だが従量課金
QuickSight 料金ページではリーダーの料金を確認することが出来ますが、本日時点で日本語版はまだ旧料金でした。以下は旧料金ページです。
旧料金ではリーダーは月額固定ではなく 1 セッション 0.3 USD の従量課金でした。
1 セッションは 30 分間有効で、要はリーダーがダッシュボードを閲覧する時間に応じて料金が発生するのですが、ユーザーごとの最大料金 5 USD が設けられており、それ以降は料金が発生せずに好きなだけ利用できる形でした。
実際のダッシュボードアクセスに応じた料金であったため、リーダーが何百ユーザー存在していても、閲覧していなければ料金が一切発生しませんでした。
新料金は 1 リーダー固定 3 USD
新料金では従来のセッションベースの従量課金ではなく、1 ユーザー固定で月額 3 USD となります。
セッションベースではないためユーザーがどれだけダッシュボードを閲覧しても 1 ユーザあたり 3 USD 以上は発生しません。
一方で全く利用していない場合でも 1 ユーザー 3 USD かかります。
料金シミュレーションしてみる
例えば 100 人の閲覧者のいるダッシュボードだと料金は以下のようになります。 - 旧料金:0 ~ 500 USD(利用状況による) - 新料金:300 USD(固定)
旧料金は使わなければ安く収まる可能性があるのですが、料金の予測が難しいです。
一方で新料金は料金予測が簡単になりますが、あまり使っていない場合でも料金が発生してしまいます。
どちらも一長一短あり、既存環境に対する料金インパクトを調べるにはリーダーのセッション状況を把握する必要があります。
リーダー数 | 料金の発生するセッション数 | 旧料金 | 新料金 |
---|---|---|---|
100 人 | 1,500 セッション | 450 USD/月 (1500 * 0.3) | 300 USD/月 (100 * 3) |
200 人 | 1,000 セッション | 300 USD/月 (1000 * 0.3) | 600 USD/月 (200 * 3) |
1,000 人 | 500 セッション | 150 USD/月 (500 * 0.3) | 3,000 USD/月 (1000 * 3) |
まとめると、利用頻度の低いユーザーが多くいればいるほど新料金だと割高になりそうです。
これまでのリーダーは使わなければ料金が発生しないものだったため、一旦閲覧する可能性のユーザーを全員リーダーとして作成しておくケースもあったと思います。
ちなみにリーダー数は QuickSight のユーザー管理画面で確認するか、あるいは AWS API 経由でカウントすることが出来ます。
% aws quicksight list-users --aws-account-id 123456789012 --namespace default | jq '.UserList[] | select(.Role == "READER")' | jq -s 'length' 14
上記の料金の発生するセッション数は Cost Explorer の使用タイプ「QS-Reader-Usage-Paid-Session」をここでは指しています。
新料金の発生状況を確認してみる
新しく QuickSight サブスクリプションを作成すると、既に新料金となります。
せっかくなのでどのように料金が変わるのか実際に確認してみました。
旧料金の場合
ちなみに、旧料金の場合は次のようにリーダーについては「QS-Reader-Usage-Paid-Session」が発生し、リーダーのユーザー数に応じた料金は発生していないですね。
新料金の場合
新しい QuickSight サブスクリプションを作成し、3 名のリーダーを作成しました。
作成し数回ダッシュボードへアクセスしたのち、数日待って料金を見てみました。
日次で集計したところ、使っているいないに関わらずリーダーのユーザー数に応じた料金が発生していました。
セッションに関する料金が発生していないですね。
1 ユーザーが 1 ヶ月 (720 時間) で 3 USD なので 1 時間あたり 0.004 USD/時間 で、3 名で約 0.012 USD でしょうか。
良さそうです。
Cost Explorer API から細かい料金や使用量も確認してみます。
% aws ce get-cost-and-usage --cli-input-json file://hoge.json --profile hogeadmin { "GroupDefinitions": [ { "Type": "DIMENSION", "Key": "USAGE_TYPE" } ], "ResultsByTime": [ : { "TimePeriod": { "Start": "2024-05-08T15:00:00Z", "End": "2024-05-08T16:00:00Z" }, "Total": {}, "Groups": [ { "Keys": [ "APN1-Reader-Enterprise-Month" ], "Metrics": { "UnblendedCost": { "Amount": "0.012096774", "Unit": "USD" }, "UsageQuantity": { "Amount": "0.004032258", "Unit": "Users" } } }, { "Keys": [ "QS-User-Enterprise-Free-Tier" ], "Metrics": { "UnblendedCost": { "Amount": "0", "Unit": "USD" }, "UsageQuantity": { "Amount": "0.001344086", "Unit": "Users" } } } ], "Estimated": true }, : ], "DimensionValueAttributes": [] }
試算したとおりですね。
新プランではユーザー数に応じた固定料金が発生していることが確認出来ました。
リーダーセッションキャパシティを購入してみる
リーダーセッションからユーザー数に応じた料金に変わることで、環境によっては利用料金が上がることがわかりました。
この変更に対して何か出来ることはあるのでしょうか。
実は新料金になってからもリーダーセッションに応じた料金プランを選択することが出来ます。
旧料金のころから、特に埋め込みダッシュボードや匿名リーダー向けに、リーダーセッションを購入してユーザーを作成せずに利用する方法がありました。
このリーダーセッションプランですが、新料金でも使うことが出来ましてプロビジョニングしたリーダーのセッションとして使うことが出来ます。
今回リーダーセッションキャパシティを購入して挙動を観察してみたのでそちらも紹介したいと思います。
「価格を管理」機能から閲覧者の「プランを切り替える」ボタンを押します。
月間プランと年間プランがあり、年間プランの場合はコミットするセッションが多くなりますが、セッション単価が安くなります。
今回は月間プランを選択します。
旧料金が 0.3 USD/セッションでしたが、リーダーセッションキャパシティの場合は 0.5 USD/セッションからなのでセッションあたりの料金は少しお高くなっています。
プランの購入後は「価格を管理」メニューの表示が次のように変わります。
何度かリーダーでダッシュボードにアクセスし、数日後に料金を確認してみると、次のようになっていました。
リーダーセッションキャパシティ購入後から、リーダー料金が発生しなくなっていますね。
Cost Explorer API でも詳細を確認してみます。
「QS-Reader-Capacity-500-Pack」はリーダーセッションキャパシティの料金ですね。
「QS-Reader-Capacity-500-Usage」はリーダーセッションキャパシティの使用数です。
% aws ce get-cost-and-usage --cli-input-json file://hoge.json --profile hogeadmin { "GroupDefinitions": [ { "Type": "DIMENSION", "Key": "USAGE_TYPE" } ], "ResultsByTime": [ { "TimePeriod": { "Start": "2024-05-10", "End": "2024-05-11" }, "Total": {}, "Groups": [ { "Keys": [ "APN1-Reader-Enterprise-Month" ], "Metrics": { "UnblendedCost": { "Amount": "-0.000000138", "Unit": "USD" }, "UsageQuantity": { "Amount": "0.092741934", "Unit": "Users" } } }, { "Keys": [ "QS-Reader-Capacity-500-Pack" ], "Metrics": { "UnblendedCost": { "Amount": "-0.000001", "Unit": "USD" }, "UsageQuantity": { "Amount": "0.001344086", "Unit": "Months" } } }, { "Keys": [ "QS-Reader-Capacity-500-Usage" ], "Metrics": { "UnblendedCost": { "Amount": "0", "Unit": "USD" }, "UsageQuantity": { "Amount": "3", "Unit": "Sessions" } } } ], "Estimated": true }, { "TimePeriod": { "Start": "2024-05-11", "End": "2024-05-12" }, "Total": {}, "Groups": [ { "Keys": [ "QS-Reader-Capacity-500-Pack" ], "Metrics": { "UnblendedCost": { "Amount": "-0.000017", "Unit": "USD" }, "UsageQuantity": { "Amount": "0.022849462", "Unit": "Months" } } } ], "Estimated": true } ], "DimensionValueAttributes": [] }
購入した翌日から「APN1-Reader-Enterprise-Month」が発生しなくなっていることがこちらでも確認出来ますね。
先ほど使った料金シミュレーションを例にリーダーセッションキャパシティに切り替えた場合どうなるのか見てみましょう。
リーダー数 | 料金の発生するセッション数 | 旧料金 | 新料金 | リーダーセッションキャパシティ |
---|---|---|---|---|
100 人 | 1,500 セッション | 450 USD/月 | 300 USD/月 | 750 USD/月 |
200 人 | 1,000 セッション | 300 USD/月 | 600 USD/月 | 500 USD/月 |
1,000 人 | 500 セッション | 150 USD/月 | 3,000 USD/月 | 250 USD/月 |
リーダーユーザー数に応じた固定料金より安くなる場合がありますね。
旧料金よりは高くなりますが、利用頻度の低いリーダーが大量に存在する環境では検討の余地がありそうです。
ただし、上記試算は「料金の発生するセッション数」のみで行ったものです。
実際には旧環境では料金の発生しないセッションなどもあり、新環境でリーダーセッションキャパシティを導入した際には課金対象となります。
以下も参考に、発生した全体のセッション数を確認して試算を行いましょう。
必要性の低いユーザーの棚卸しに限界がある場合の選択肢として覚えておきたいです。
さいごに
本日は Amazon QuickSight のリーダー料金が変更になるので料金が高くなる場合と安くなる場合を試算してみました。
既存環境は 2025 年 5 月 1 日までに新料金を試算してどうすべきか考えておいたほうが良いですね。
ただし、今後東京リージョンでも Amazon Q in QuickSight がサポートされる可能性もあります。そうなるとリーダーの 3 USD の価値もまた変わってくるのでセッション料金が良いかまた再考が必要になるかもしれません。
まずはお使いの環境のユーザー数とセッション数を把握しておきましょう。
不要なリーダーが存在するか棚卸しもしておくと良さそうですね。