[レポート] TVer におけるインターネット配信の視聴体験とパフォーマンス安定化への取り組み #interbee
こんにちは、大前です。
本エントリは、2022/11/16 - 11/18 に幕張メッセ + オンラインにて開催されている、Inter BEE 2022 のセッション「TVerにおけるインターネット配信の視聴体験とパフォーマンス安定化への取り組み」についてのレポートブログです。
セッションはユーザー登録を行うことで、オンラインでも視聴可能です。
セッション概要
テレビ番組はインターネット配信が進み、どこでもいつでもどの端末でも見られ、SNSでの共有など今までにない楽しみ方ができるようになりました。それに伴い、テレビ同様、またはそれ以上の視聴体験が求められています。TVer様をゲストにお迎えし、最近の視聴方法の傾向やそれに伴うインフラ運用の変化、そして視聴体験を安定させるための工夫や対策を、具体例を交えながらお話し頂きます。
スピーカー
- 古垣 智裕 氏
- New Relic株式会社 技術統括 コンサルティング部 ソリューションコンサルタント
- 加我 貴志 氏
- 株式会社TVer サービス事業本部 技術開発部 リードエンジニア
レポート
- メディア業界におけるオブザーバビリティとは
- 動画の視聴体験とパフォーマンス全体を可視化
- TVer について
- TVer は民放のテレビ番組を配信するサービス
- 月刊動画再生回数が2億5千万回を突破
- 成長の背景について
- ライフスタイルの変化
- 余暇時間の多くを占めるテレビ
- 最近は余暇時間の奪い合い
- スマホやインターネットの普及
- ライフスタイルの変化
地上波とインターネット配信の技術的な違い
- 技術的な違い
- 放送の仕組み
- 従来は電波に乗せて各家庭のアンテナにブロードキャストする 1対多
- インターネットはサーバーとユーザーが 1対1 で接続するものが多数
- 配信設備
- 地上波では電波を配信するための設備が必要(スカイツリーなど)
- インターネット配信においては配信サーバーが必要(CDN、ロードバランサー、ストリーミングサーバー、など)
- 配信サーバーの管理
- オンプレミス ... 自分たちでサーバーを購入、運用
- パブリッククラウド ... ベンダーが構築したインフラを利用、必要な時に必要な分だけ利用が可能(TVerはこちら)
- TVer はピークを境にリクエストの増減がある
- リクエストのピークに合わせてサーバを用意するとコストが無駄に発生してしまう
- 一方で、ピークを捌くためのサーバは必要
- クラウドを利用し、動的にサーバー台数を管理し、最適化
- 配信サーバーの管理
- 視聴体験
- 地上波ではテレビという視聴専用機があるため、体験としてはほぼ固定
- 長い歴史に支えられた信頼性
- 見れないケース
- 視聴者側の問題(機器の故障)
- 放送事業者側の問題
- 自然災害・停電
- インターネット配信では多様な視聴環境が存在(PC、スマホ、タブレット、コネクテッドTV)
- 信頼性を担保する箇所も変化
- ハードウェアからソフトウェア
- 見れないケース
- 視聴者側の問題(ネット回線、端末の問題、アプリの問題)
- 事業者側の問題(ネット回線、クラウド側の障害、サーバの過負荷)
- 配信が見れない時 を検知する仕組みが必要
- 視聴者側のトラブル / 事業者側のトラブルをそれぞれ検知する仕組みが必要
- NewRelic を利用して実現している
- 信頼性を担保する箇所も変化
- 地上波ではテレビという視聴専用機があるため、体験としてはほぼ固定
- 放送の仕組み
リアルタイム配信の技術的な難しさ
- 負荷対策
- 負荷予測
- GP タイムに向けて増加、ピークを境に減少
- リクエスト数とサーバー台数を見積もる指標
- 番組へのいいね、お気に入り登録数
- 出演者情報など
- 負荷予測の難しさ
- silent というドラマ
- 見逃し配信で圧倒的な再生数
- リアルタイム配信でも前週を超えるリクエスト
- 1話時点では通常のサーバー台数で問題なし
- 2話では 1話を超えるリクエストが発生
- 3話になるとさらにリクエストが発生し、一時的に視聴しにくい状況に
- 4話は日本シリーズの延長が発生、それでも従来よりも多くのリクエストが発生
- 注目度の高い番組への対応が求められる
- 前週のリクエストを上回り続ける
- SNS でバズるとリクエスト数がはねる
- silent というドラマ
- 負荷予測への備え
- 視聴体験の可視化に New Relic を活用
- 日々のリクエスト数と負荷状況をチェック
- 日々の負荷状況を配信運用チームにも共有
- スパイクアクセスへの即時対応
- スパイクアクセス = 瞬間的に大量のアクセスが来ること
- SNS によるバズ
- スポーツ番組等からの「続きは TVer で」など(地上波から TVer への誘導)
- 視聴者が一気に TVer にアクセス
- 一気に 10倍のリクエストが来たことも
- ピークのリクエストを全て捌く必要がある
- ピークの予測
- ピークは番組によって変化
- スポーツなどでは試合展開にも影響される
- どれだけサーバーを用意すれば良いのか悩まされる
- 視聴体験への可視化に New Relic を活用
- 日々のリクエスト数と負荷状況をチェック
- クラウドであってもスケールには時間を要する
- スパイクアクセス = 瞬間的に大量のアクセスが来ること
- 予期せぬトラフィックへの備え
- 予期せぬトラフィック = 通常のパターンとは異なる大量のアクセス
- 番組が SNS でバズった
- スポーツ番組の放送枠切れ
- 人気タレントの登場
- サービス提供への影響がある可能性
- サーバーの処理能力を超えてしまう可能性
- サイトのスローダウン
- 動画の再生エラー
- 一時的なサーバーダウン
- サーバーの処理能力を超えてしまう可能性
- 予期せぬトラフィックへの心構え
- 異常に気づく
- New Relic アラート
- 特定条件でアラートが発生
- Slack への通知で異変に気づく
- 影響度によっては電話で連絡
- New Relic アラート
- 正体を確認する
- New Relic ダッシュボード
- New Relic ログ分析、アプリケーション分析
- 異常への対策を行う
- 短期的な対策
- サーバの増強など
- 中長期的な対策
- いいね、お気に入り等の属性を分析
- インプット情報として番組の SNS を把握
- 短期的な対策
- 異常に気づく
- 予期せぬトラフィック = 通常のパターンとは異なる大量のアクセス
- 負荷予測
リアルタイム配信の先にある世界
- 11/17 の基調講演にて!
参考 : IPTV Forum コネクテッドTV ー国内サービスの現状とこれからー | 映像・音響、放送・通信業界の情報発信サイト INTER BEE 2022
おわりに
国内としては最大級のインターネットテレビ番組配信サービスの TVer さんが抱える負荷対策への課題や取り組みについて聞くことができ、また、直近の事例(silent)を交えた負荷予測や対策の難しさについてもわかりやすく解説していただき、ためになりました。
明日の基調講演でも TVer さんがお話しされるということですので、楽しみにしたいと思います。
以上、AWS 事業本部の大前でした。