[ゼロから始めるプロジェクトマネジメント] プロジェクトで決定する人、実行する人、影響する人を整理しよう

プロジェクトマネジメント未経験の方も今日から参考にできるTipsをシェア。 ゼロから始めるプロジェクトマネジメントシリーズ第三回です。 やることリストを作成して、メンテナンス体制を整えたら、次は「関係者の役割を整理」しましょう。
2024.04.06

情報システム室の進地@日比谷です。

やることリストを作成して、メンテナンス体制を整えたら、次は関係者の役割を整理しましょう。

具体的には

  • 誰が決定するのか?
  • 誰が実行するのか?
  • 誰に影響するのか?

を整理します。

決定する人、実行する人、影響する人

決定者を明確にする

要件や仕様、予算、品質(リリース判定)、障害発生時の方針など、プロジェクトでは様々な決定を行う必要があります。これらを決定できる人、決定する役割と責任を負う人を明確にしましょう。こうすることで、プロジェクト後半で突如現れた偉い人にちゃぶ台返しを喰らうといった事態の発生確率を極小化できます1

あらゆる決定事項は、誰が決めたのかを明確にしておくことをオススメします。そのメリットは次の通りです。

  1. 決定に際して責任感が生じる
  2. 決定事項に対する変更要求に対して問い合わせ先が明確になる
  3. 変更を通すために説得しなければならない人が定義される

これらのメリットはいずれも安易に決定しない、および決定を安易に覆さないという方向にプロジェクトを強化します。従って、もちろんクイックに決定、変更できなくなるというデメリットもあるのですが、プロジェクト規模が大きくなればなるほどこの要素は重要になってきます。プロジェクト規模が大きいということは関わる会社や人の規模が大きくなるということです。人間で例えると結構な巨漢の人と言えるでしょう。そんな人がクイックに方向転換しまくったらアキレス腱が切れます。 アキレス腱を切らずに無事ゴールまで歩ききるには、ある程度の硬さが必要です。

決定者が必ずしも偉い人とは限りません。必ず、その物事を実際に決めている人をリストアップしましょう。要件はA部長が決めることになっているが、実際はB主任が起案・決定しているので、会議の事前事後にB主任との調整が必要・・・みたいな時はB主任を書いてください。そうすれば、プロジェクト関係者が何かをA部長に一旦聞いた後にB主任にたらい回されて同じことを聞き直すという地球資源の無駄を減らすことができます。

これは決定者だけに限りませんが、NotionやWikiなど、プロジェクト関係者全員が確認できる場所に表組などで表現して明示しましょう。紙のプロジェクト定義書などに書くではダメです。誰もみません

実行者を明確にする

やることとそれを決める人が明確になりました。素晴らしいです。しかし、それを実際に行う人が決まっていないと何も出来上がりません。実行する人も明確にしていきましょう。こうすることによって、実行する人が誰もアサインされていなかったグレーゾーンの発生を極小化できます2

プロジェクトによって切り分け方は色々あると思います。

  • 工程で分ける(仕様化、外部設計、内部設計、PG、テスト・・・など)
  • 要件でわける(検索、予約、決済・・・など)
  • システム構成で分ける(インフラ、アプリサーバ、DBサーバ、フロントエンド、バックエンド・・・など)

どう分けてもいいので、洗い出して実行者を明確にしていきましょう。特に分けた要素同士の境界線の仕事を誰が行うのかに留意しましょう。例えば、検索した商品を予約に回す時に、そのパラメータの渡し方は検索担当と予約担当のどちらが決めるのでしょうか?

「そんなものはその時その時で関係者で協力して決めればいいよ」と思いましたか?それをすると優しくて気がきく人が最初はグレーゾーンを埋めてくれるかもしれませんが、いずれプロジェクトや会社からその人がいなくなりますよ

プロジェクトマネージャはプロジェクト運営を個人の優しさに頼ってはいけません。

とはいえ、最初から全ての境界を洗い出せるわけもないため、基本的には境界が認識される度にアップデートしていくのが良いでしょう。ですので、最初は境界事案が発生した時に調整する窓口を決めておきましょう。

影響を受ける人を明確にする

忘れられがちです。本当に。

プロジェクト、特に新規構築プロジェクトでは作ることにみんな躍起になっていますから。作った後や作ったものが及ぼす影響まで考える余裕が吹っ飛んでいます。

しかしながら、そもそもプロジェクトとは誰かや何かに対して何らかの影響を与えるために実施しているはずです3。従って、プロジェクト成果が及ぼす影響を無視して良いはずがありません。成功も失敗も計れませんし、影響を受ける人達からしたらそんなプロジェクト、迷惑極まりないです。

プロジェクトのゴールが明確であれば、影響を受ける人を導出することは簡単です。ので、こうした影響を受ける人達もリストアップして明示します。こうすることで、

  • オペトレ(運用テスト)を忘れる
  • マニュアルの整備がもれてる
  • 連絡、周知系のタスクがボランティア運営になる

といったことを防ぐことができますし、運用担当、サポート担当の皆さんも覚悟を決めてリリース日を迎えることができます

交通量を減らして、コミュニケーションの価値を高める

プロジェクトによっては、決める人、実行する人、影響を受ける人を明確にすることに抵抗があるかもしれません。特に決定者ですかね。責任を取ることがリスクにしかならない組織文化のプロジェクトだとありがちです。

そういう場合は、議事録作成に魂を込めましょう。議事録の重要な発言には必ず発言者を記名し、ToDoリストや決定事項にも担当者、決定者の名前を記名しましょう。議事録に文句をつけられたことは私の経験ではありません。

こうした議事録があるだけでもプロジェクトを守ってくれる守護神になってくれます。ので、基本、議事録はPMが書くのが良いと私は思っています。

関係者を明確にし、役割を明確にすることは全員に責任を持ってもらうということです。責任、Responsibility、つまり、レスポンスを返す人を明確にするということです。プロジェクトのコミュニケーションが混乱するのは、誰に聞いていいかわからない、誰も明確に担当していないので聞いた言葉が宙に浮く、といったことが発生するからです。レスポンスを返す人が明確ならこうしたことは少なくなりますよね。特に炎上プロジェクトでは余計なコミュニケーションをとっている余裕はありません。というより、余計なコミュニケーションの積み重ねのせいで炎上していることもままあるかと思います。

コミュニケーションパスを効率化して、交通量を減らし、価値の高いコミュニケーションをとっていけるようにしましょう。


  1. 残念ながらゼロにはできません。 
  2. 残念ながらこれもゼロにはできません。 
  3. でなければやる意味がありません。