スクラムフェスニセコとは何だったか
こんにちは、かみとです。
Regional Scrum Gathering Tokyo & Scrum Fest Advent Calendar 2024の5日目です。
私が運営として参加していたスクラムフェスニセコについて書きます。
Scrum Fest Nisekoは、北海道内外のソフトウェア開発に携わる人々と未来を語り合う場です。
不確実な時代の中で、私たちが向き合うソフトウェア開発は変化に柔軟に適応することが求められています。
そのために私たちは、ソフトウェアの技術的なプラクティスやチームのあり方、組織との関わり方など、様々な視点を必要としています。
Scrum Fest Nisekoでは、日常から離れ新しい仲間や新しい視点と出会うことで、明日からの新しい一歩を踏み出すきっかけを作ります。
今年も無事、スクラムフェスニセコを終えることができました。
改めて参加者の皆さま、スポンサー様、運営メンバーのみんなに感謝です!
おかげさまで、2回目の今年も改めていいイベントになったなーと思ってるわけですが、どうやってこれを言語化したらいいのか解らずにモヤモヤしていたら、アジャイル札幌メンバーの中野さんがしれっとこんなナイスなブログを書いてくれてました。
なるほど!その手があったか!というのと同時に、言いたいこととか言語化してもらいたいことがほぼほぼ整理されていて、もうこれ見てください!でこのブログも終わっちゃっていいかなと思ってしまったわけですが、私なりに感じたことや、良かったこと、今思ったことをつれづれに書いてみたいと思います。スクラムフェスニセコってあれ何だったんだろう、というポエムです。
シーズンオフのニセコで行うスクラムフェス
スクラムフェスニセコから早1ヶ月が経ち、ニセコも雪景色に変わり、本格的なウインターシーズンを迎えようとしています。スキー場もぼちぼちオープンし初めてるみたいです。11月から12月に向かうこの季節は、あの静かだったニセコから人が溢れるニセコに大きく様変わりする季節でもあります。
スクラムフェスニセコは、11月最初の週の2日間。ニセコの閑散期に開催しました。この時期のニセコは遊べるアクティビティは何もないし、紅葉もぎりぎり終わり頃、観光できるところも限られてきます。
また閑散期ということで比較的低料金で利用できるのも魅力です。運営する上で限られた予算で、かつ参加者の負担を考えると、なるべくコストを抑えたい。なので必然的にこのシーズンが狙い目になるわけですが、余計なものがない分、じっくりとイベントに没頭することができるのがこの季節で開催する大きなメリットです。
余計な雑音が発生しないという点でいうと、会場となるニセコヒルトンは、位置的にとても静かな「ニセコビレッジスキー場」エリアにあります。外に出ても繁華街などはなく、静かな自然に囲まれたエリアなので、俗世から隔たれた感があります。
この、「選択肢がない」ところがスクラムフェスニセコの良いところの一つかなと感じています。あれもやらなきゃこれもやらなきゃ、ってならない。一つのことに集中できる環境って、なかなか贅沢なことだと思いませんか。
アクセスの悪さ
スクラムフェスニセコ会場へのアクセス手段はだいたい以下の3つです。
- 車で来る
- 札幌からJR+ニセコヒルトンシャトルバス
- 札幌or小樽から高速バス+ニセコヒルトンシャトルバス
公共の交通機関で来られる場合、札幌から倶知安までは3時間ほどかかります。また少なくともニセコヒルトンシャトルバスの発車時間に合わせて11:00前後には倶知安駅まで来る必要があります。
必然的に北海道外から来られる場合は札幌あたりに前泊する必要があります。だいたい羽田→新千歳空港までも飛行機で1時間半くらいなので、そこから更に3時間、かなりの長旅ですね。
そんな不便さを乗り越えて来ていただけるのは、ほんとにありがたいです。「遠いところ、ほんとによく来たね!」と両手を握りしめながら全力で言いたいです。
そんなチケット購入者には事前にDiscordへの招待をするのですが、そこで参加者同士で車の相乗り情報交換がなされていたりします。「ああ、自然発生的に参加者が協力しあってる、すごいなぁ」と、運営として参加者に頼りきってしまってることに若干の申し訳なさを感じながら、既にこの時点でスクラムフェスニセコが始まってるんだなと、そういうところに得も言われぬ感動を覚えていました。
ホテルカンファレンス的な良さ
そういえば、2022年の12月にラスベガスでAWSのグローバルカンファレンスre:Inventに会社のメンバーとして参加してきて、あそこで感じたホテルカンファレンスの雰囲気がなにげに影響してるのかもしれないと思いました。あ、ちょうど今もre:Inventの真っ最中ですね。みんな楽しんでるかな。
re:Inventとスクラムフェスニセコでは比較するのも憚られるくらい規模は全く違いますが、ホテルから会場へのアクセスの良さと、イベントに没頭できる環境づくりさえできればそれだけで面白いものになりそう、スクラムフェス参加者にそういう場が作れたらそれだけで成功じゃん、というイメージがなんとなくあった気がします。
2022年はちょうどスクラムフェス札幌が発のハイブリッド開催をして、オンライン/オフライン合わせて200名以上の方々に参加していただきました。
2023年、スクラムフェス札幌の開催を検討し始めた頃に、ちょうど会場として予定していた施設が改修工事のため使えないということ、また、スクラムフェス札幌の運営は規模に対して運営メンバーの負荷もそれなりに高く、持続可能なやり方を考える必要性を感じていたところでもありました。
小規模でもいいから自分たちがもっと楽しめるイベントにしよう、ということで検討に上がったのがニセコでした。
そんな感じで検討が始まったスクラムフェスニセコですが、運営として特に気を付けていたことがあります。
- とにかくリラックスして楽しめるイベントにしたい
- 休みたい人は休めるし、参加したい人は参加する、くらいなノリで
- 参加者と、とにかくたくさん話したい
- 参加者にも、とにかくたくさん話してほしい
- 終わった後に疲れて帰るんじゃなく、元気になって帰りたい。
参加者の人員構成としてもどういう属性の方たちが来るのかがわからない中で、参加者の主体性にゆだねるようなイベント形式にすることはチャレンジではありましたが、そこは逆に自由度を上げたことで参加者が自分のスタイルで楽しむことができていた気がします。
疲れたら部屋に戻って休むこともできるし、温泉にも入れて、会場と部屋のアクセスも楽ちん。
五感が満たされて、雑音がない。余白はある。
この状態が作れたのがスクラムフェスニセコの最も大きな成果だった気がします。
基調講演〜OST〜懇親会の流れ
セッションも公募形式をやめて、基調講演のみに絞りました。
また、セッションは配信はなしのオフライン限定としました。
昨年のスクラムフェスニセコ2023基調講演はAkiさん。
今年は基調講演に永瀬美穂さん、招待講演として神崎善司さん。
基調講演は昨年のAkiさんも今年の永瀬美穂さんも、示唆に富んでいて、かつイベントの軸となるようなメッセージと、その後のOSTに繋がるような問いかけを含む、ほんとに素晴らしいセッションでした。
招待講演の神崎さんは要件定義モデリング手法であるRDRAのお話を中心とした実践的でテクニカルなセッションで、アンケート等でも「早速つかってみたい」などポジティブな意見が多数見られました。
これらのお話しを聞いてからのOST(Open Space Technology)という、この流れはとても良い流れだと特に感じています。
たしかに、たくさんのセッションを選ぶことができて多くのものを学べるイベントも、とても価値があると思っています。
ただ、スクラムフェスニセコで目指したのは、情報過多になりすぎないこと。オフライン限定で配信もないその場限りのイベントなので、インプットできる量は限られています。詰め込みすぎず、一つのセッションを聞いたら、みんなで考える。話す。咀嚼する。という場をつくりたかったんです。
その話を聞いて、自分と置き換えてみてどうか、とか、こっちのパターンだとどうだろう、とか、そういう議論がいろんなところで広がっていけばいい。それには参加者が自分たちでアジェンダを作るOSTがやっぱりベストマッチだと思いました。
また、その後全員で懇親会に流れられるというのも、ホテルカンファレンスの良いところだと思います。
通常のイベント会場だと、イベント終了から懇親会参加は任意で、会場によってはバラバラに分かれるのがよくある風景かと思います。個人的には、勉強会やコミュニティイベントに参加して、懇親会に参加しないのは非常にもったいないと思っていて、ここで得られるノンオフィシャルな知見や人脈は、その後のエンジニア人生に少なからず影響を与える可能性を持っていると思っています。
全員が同じ時間を共有できるホテルカンファレンスのような場は、そういう関係性づくりがとてもしやすい空間でした。
いろんなことを捨てた結果、残った体験
ここまで振り返ってみると、スクラムフェスニセコの体験というのは、いろんなものを捨てた結果得られた体験なんじゃないかと感じています。
オンラインをやらないと決めた
オフラインならではの良さにフォーカスして、その場でできる体験価値をみんなで作る意識が自然と作られていた気がします。頭にINPUTしよう、というより、全身で体験しよう、という感覚にスイッチが切り替わっていたのかもしれません。
プロポーザルをやめた
いろんなセッションをたくさん聞ける選択肢を捨てたことで、基調講演とそれを踏まえた議論が発展したり、自分たちが持ち寄った課題感の共有が参加者同士のコミュニケーションを促進させ、(RSGTのナイトセッションのような)新たなプロジェクトに結びついたりといったセレンディピティを促せたのかなと。こういう流れは、とてもうれしいです。
自分たちで全部決めるのをやめた
参加者が自主的に協調しながらフェスを作っていて、それ自体がフェスを通した体験になっていると感じました。あれこれ運営が干渉して参加者の行動を決めるのは、中野っちのブログの言葉を借りると「過剰なファシリテーション」というやつですね。それぞれ工夫しながら参加してくれているという体験には、ひと味ちがった価値がある気がしました。
会場設営はホテルにおまかせ
運営はイベントの骨格をつくることに集中できたというのも、会場まわりをホテルスタッフの方たちに安心してお任せできたからだと思っています。このブログをホテルの方が見ることはないと思いますが、この場を借りて感謝を。
ごはんも美味しいし、温泉も最高だし、部屋もきれいで広くて快適。延泊したい気になります。
次回開催時には延泊チケットも検討したいです。
おぼろげながら見えてきたもの
こんな風にいろんなものを諦めたり手放していった結果、いろいろわかったことがありました。
一つは、本当に大事なものはどうしたって残るということ。贅肉を減らして本当に価値のあるものを、というのはそれこそスクラムの原点ですよね。何がやりたかったんだっけ?というのをたまに向きなおるのは大事なことだなと思いました。
二つ目は、やることを減らしても、体験価値が減るわけではないということ。むしろ体験価値の濃度が上がることで、思っていなかった新しい価値が生まれることもある、ということなのかもしれません。
最後に三つ目、楽しむには余白が必要ということ。余白があるから柔軟に動けるしチャレンジもできる。明日から頑張ろうと思えるためにはそういう時間とか場所とかが必要なのかもしれません。
もちろん全てに対してそれが必ずしも当てはまるわけではないですし、RSGTや、各地で行われているスクラムフェスにそれぞれの良いところがあるというのは前提です。あらゆるコミュニティイベントがそうであるように、人が集っては学び合い、語り合える場があるというのは、つくづく尊いことだなと改めて思いました。
いろいろだらだらと書いてしまいましたが、ニセコからは以上です。
スクラムフェスニセコという場が参加者の皆さんにとって少しでも特別な体験となっていれば、これほど嬉しいことはありません。
いやぁコミュニティカンファレンスって、本当に素晴らしいものですね、それではまた次のスクフェスでお会いしましょう。
明日はPiro.Takaharaさんですね!スクフェス神奈川のお話しも楽しみです!