API Gateway と Lambda のサーバーレス構成で Express を動かしてみた

2025.12.31
製造ビジネステクノロジー部の小林です。
最近、Express を Lambda で動かす機会がありました。「どうやって Express が Lambda で動くのか？」という仕組みが気になったので、理解を深めるために、公式ドキュメンを見ながら Express を実装してみました。
 Express とは？https://expressjs.com/ja/

公式ドキュメントでは "Minimal and flexible"（最小限で柔軟） と紹介されており、具体的には以下のような機能・特徴を持っています。
軽量で柔軟 - 必要な機能だけを組み込める
ミドルウェア - リクエスト/レスポンスの処理を簡単に追加
ルーティング - URL パターンに応じた処理を定義
豊富なエコシステム - 数千のミドルウェアパッケージが利用可能
 なぜ Express を Lambda で動かすのか？サーバーレス環境である Lambda に、あえてウェブフレームワークの Express を持ち込むメリットはどこにあるのでしょうか。主な理由は以下の 4 点です。
既存の Express の知識がそのまま使える
サーバー管理が不要
トラフィックに応じた Auto Scaling が自動的に行われる
従量課金制のため、常時起動のサーバーに比べてコスト効率が良い
 実装してみるそれでは、API Gateway と Lambda のサーバーレス構成で Express を実装してみます。インフラは CDK で実装します。
 前提Node.js: v22
パッケージマネージャ: 本記事では pnpm を使用しますが、npm や yarn でも代用可能です
 必要なパッケージのインストール# Express 本体（Webフレームワーク）
pnpm install express

# Express の型定義ファイル
pnpm install -D @types/express

# AWS Lambda で Express を動かすためのアダプターライブラリ
# （API Gateway のイベントを Express の req/res に変換する役割）
pnpm install @codegenie/serverless-express
 ディレクトリ構成express-lambda-app/
├── lambda/
│   ├── app.ts           # Express アプリ本体（ルーティング定義）
│   ├── handler.ts       # Lambda エントリーポイント
│   └── services.ts      # ビジネスロジック
├── lib/
│   └── express-lambda-app-stack.ts  # CDK スタック定義
└── package.json
app.ts: Express のロジック（ルーティング、ミドルウェア）
handler.ts: Lambda との接続（インフラ層）
services.ts: ビジネスロジック（Express 非依存）
 app.ts - Express アプリ本体Express のルーティングとミドルウェアを定義します。ポートのリッスンは Lambda 環境では不要なため、app.listen() は呼びません。
import express, { Application, Request, Response } from "express";
import { getUsers, createUser } from "./services";

const app: Application = express();

app.use(express.json());

/**
 * ユーザー一覧を取得エンドポイント
 */
app.get("/api/users", (req, res) => {
  const users = getUsers();
  res.json({ users });
});

/**
 * ユーザー作成エンドポイント
 */
app.post("/api/users", (req, res) => {
  const { name } = req.body;
  const user = createUser(name);
  res.json({ message: "User created", user });
});

export { app };
 なぜ app.listen() が不要なのか？通常、Express の公式ドキュメントやチュートリアルでは、以下のように app.listen() を使ってサーバーを起動します。

https://expressjs.com/ja/starter/hello-world.html
const express = require("express");
const app = express();
const port = 3000;

app.get("/", (req, res) => {
  res.send("Hello World!");
});

// HTTPサーバーを起動
app.listen(port, () => {
  console.log(`Example app listening on port ${port}`);
});
しかし、Lambda 上で動かす場合、この記述は不要（書いても機能しない）です。なぜなら、アーキテクチャそのものが異なるからです。
 サーバーと Lambda の違い通常の Express アプリは、サーバー上で常駐プロセスとして起動し、指定されたポート（例: 3000 番）でリクエストが来るのをじっと待ち構えます（Listen）。
一方で Lambda はイベント駆動です。 Lambda 自体がリクエストを待ち受けるのではなく、「API Gateway がリクエストを受け取り、Lambda を関数として呼び出す」という流れになります。
つまり、「Listen」は API Gateway に任せているため、Express 側で待機する（app.listen）必要がない、というわけです。
 handler.ts - Lambda エントリーポイントimport serverlessExpress from "@codegenie/serverless-express";
import { app } from "./app";

/**
 * Express アプリを Lambda 用にラップ
 *
 * 重要：handler の外で初期化する
 * Lambda のウォームスタート時にキャッシュを再利用できる
 */
const handler = serverlessExpress({ app });

export { handler };
handler.ts は 「Lambda から見た入口」です。Express は HTTP サーバー（req/res）前提で動きますが、API Gateway が渡してくるのは HTTP そのものではなく、イベント(JSON) です。
そこで @codegenie/serverless-express が “変換役（アダプター）” になり、次の 2 つを肩代わりします。
API Gateway のイベントを Express の req 相当に変換

API Gateway → Lambda に来るイベントは例えばこんな形です。
httpMethod（GET/POST など）
path（/api/users など）
headers
body
serverless-express はこれを受け取って、Express が期待する形に寄せます。
req.method
req.url / req.path
req.headers
req.body（必要なら JSON パースもここまでで整える）
結果として app.get(...) や app.post(...) が動くようになります。
Express のレスポンスを Lambda の戻り値に変換

Express 側は、
res.status(200).json(...)
res.set(...)
のようにレスポンスを書きます。serverless-express はそれを受け取って、Lambda が API Gateway に返すべき形式である、
statusCode
headers
body（JSON 文字列など）
に変換して返します。
 services.ts - ビジネスロジック層ここでは、Web フレームワーク（Express）やインフラ（Lambda）に依存しない、純粋なアプリケーションのロジックを記述します。
export interface User {
  id: number;
  name: string;
}

/**
 * ユーザー一覧を取得
 */
export const getUsers = (): User[] => {
  // 実際はここで DynamoDB や RDS にアクセスする
  return [
    { id: 1, name: "山田" },
    { id: 2, name: "田中" },
  ];
};

/**
 * ユーザーを作成
 */
export const createUser = (name: string): User => {
  if (!name) {
    throw new Error("name is required");
  }

  // 実際はここで DB に保存
  return {
    id: 3,
    name,
  };
};
 Express のミドルウェアを理解するhttps://expressjs.com/ja/guide/using-middleware.html
ミドルウェア関数は、リクエストオブジェクト (req)、レスポンスオブジェクト (res)、そして次のミドルウェア関数 (next) にアクセスできる関数です。
ミドルウェアは以下のことができます。
任意のコードを実行
req と res オブジェクトを変更
リクエスト/レスポンスサイクルを終了
次のミドルウェアを呼び出す (next() を使用)
 express.json()https://expressjs.com/ja/api.html#express.json
JSON ペイロードを使用して受信要求を解析し、body-parser に基づくミドルウェアです。
app.use(express.json());
このミドルウェアは、
Content-Type: application/json のリクエストを検出
リクエストボディを JSON としてパース
パース結果を req.body に格納
express.json() がないと、req.body は undefined になります。
 その他のミドルウェア公式ドキュメントには、他にも便利なミドルウェアが紹介されています。
express.urlencoded() - HTML フォームのデータをパース
express.static() - 静的ファイル（CSS、画像など）を配信
cors() - CORS（クロスオリジン）を有効化
 ルーティングルーティングは「どの URL に対して」「どの HTTP メソッドで」リクエストが来たら、「どの処理（ハンドラー）を実行するか」を結びつける仕組みです。

https://expressjs.com/ja/guide/routing.html
Express では基本的に次の 3 点でルートが決まります。
HTTP メソッド（GET / POST / PUT / DELETE など）
パス（URL）（/api/users など）
ハンドラー関数（(req, res) => { ... }）
 同じパスでもメソッドが違えば別の処理になる同じ /api/users でも、GET と POST は用途が違うため、別のルートとして定義できます。
// GETメソッド
app.get('/api/users', (req, res) => {
  res.json({ users: [...] });
});

// POSTメソッド
app.post('/api/users', (req, res) => {
  const { name } = req.body;
  res.json({ message: 'User created', name });
});
 req と res は何？req（Request）：リクエスト情報（パス、クエリ、ヘッダー、ボディなど）
例：req.query（?page=1 など）、req.params（/users/:id など）、req.body

res（Response）：レスポンスを返すためのオブジェクト
例：res.status(200), res.json(...), res.send(...)

Express は主要な HTTP メソッドに対応しています。
app.get() - GET リクエスト
app.post() - POST リクエスト
app.put() - PUT リクエスト
app.delete() - DELETE リクエスト
 CDK によるインフラ定義CDK を使って Lambda と API Gateway を定義します。この CDK スタックは、「Express を動かす Lambda 関数」と、それを HTTP で呼び出すための API Gateway（REST API） を作成します。
import { Construct } from "constructs";
import * as cdk from "aws-cdk-lib";
import * as lambda from "aws-cdk-lib/aws-lambda";
import * as apigateway from "aws-cdk-lib/aws-apigateway";
import * as nodejs from "aws-cdk-lib/aws-lambda-nodejs";

export class ExpressLambdaAppStack extends cdk.Stack {
  constructor(scope: Construct, id: string, props?: cdk.StackProps) {
    super(scope, id, props);

    // Lambda 関数の定義
    const expressFunction = new nodejs.NodejsFunction(this, "ExpressFunction", {
      entry: "lambda/handler.ts",
      handler: "handler",
      runtime: lambda.Runtime.NODEJS_22_X,
      timeout: cdk.Duration.seconds(10),
      memorySize: 128,
    });

    // API Gateway の定義
    new apigateway.LambdaRestApi(this, "ExpressApi", {
      handler: expressFunction,
      proxy: true,
      deployOptions: { stageName: "v1" },
    });
  }
}
 ポイントentry: 'lambda/handler.ts'

Lambda のエントリーポイントファイルを指定します。ここで指定するのは Express アプリ本体（app.ts）ではなく handler.ts です。handler.ts が serverless-express を使って Express を呼び出す「Lambda の入口」になるためです。
handler: 'handler'

entry で指定したファイルの中の export されている関数名です。つまり lambda/handler.ts の export const handler = ... を指します。
handler: expressFunction

この API のバックエンドに 先ほど作った Lambda を紐づけます。
proxy: true

どのパスへのリクエストも API Gateway 側では細かく定義せず、まとめて Lambda に渡す設定です。これによりルーティングは Express 側（app.get('/api/users', ...) など）だけで完結します。
以上で実装は完了です。実際に AWS 環境へデプロイして動作を検証します。
 動作確認デプロイが完了すると、API Gateway のエンドポイント URL が作成されます。この URL が Lambda への入り口となります。
 GET リクエストの確認まずはデータを取得する GET リクエストを送信し、ルーティングが正しく機能しているか確認します。
# ユーザー一覧を取得
curl https://XXXXXXXX.execute-api.ap-northeast-1.amazonaws.com/v1/api/users
実行結果: Lambda が起動し、app.ts の app.get('/api/users', ...) が実行されます。
# レスポンス
{
  "users": [
    { "id": 1, "name": "山田" },
    { "id": 2, "name": "田中" }
  ]
}
無事に JSON データが返ってきました。これで、API Gateway から Lambda を経由して Express が応答していることが分かります。
 POST リクエストの確認次に、データを送信する POST リクエストをテストします。ここでは express.json() ミドルウェアが正しくリクエストボディをパースできているかがポイントです。
# ユーザーを作成（1行で実行）
curl -X POST https://XXXXXXXX.execute-api.ap-northeast-1.amazonaws.com/v1/api/users -H "Content-Type: application/json" -d '{"name":"佐藤"}'
実行結果:
{
  "message": "User created",
  "user": {
    "id": 3,
    "name": "佐藤"
  }
}
送信した {"name": "佐藤"} が正しくパースされ、レスポンスに含まれて返ってきました。これにより、通常の Express アプリと同様に req.body が利用できていることが確認できました。
 おわりに今回は、Express を Lambda で動かす仕組みを理解するために、公式ドキュメントを参照しながら実装してみました。

次回は services.ts を実際のデータストア（DynamoDB や RDS など）につないでデータベースの接続を試してみたいと思います。
この記事が Express を学習されている方の参考になれば幸いです。
API Gateway と Lambda のサーバーレス構成で Express を動かしてみた

Express とは？

なぜ Express を Lambda で動かすのか？

実装してみる

前提

必要なパッケージのインストール

ディレクトリ構成

app.ts - Express アプリ本体

なぜ app.listen() が不要なのか？

サーバーと Lambda の違い

handler.ts - Lambda エントリーポイント

services.ts - ビジネスロジック層

Express のミドルウェアを理解する

express.json()

その他のミドルウェア

ルーティング

同じパスでもメソッドが違えば別の処理になる

req と res は何？

CDK によるインフラ定義

ポイント

動作確認

GET リクエストの確認

POST リクエストの確認

おわりに

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