ストレッチ・コラボレーションは組織を変えられるのか?!

理不尽な要求がくる、業務遂行がうまくいかない、メンバーと認識が通じ合わない…など手詰まりを感じる状況は日常に訪れます。そんな時、これなら乗り越えられるかもと思い、ストレッチ・コラボレーションについて学びました。
2023.02.28

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従来のコラボレーション

ここでいうコラボレーションとは、今の現実が逼迫し、何かを変える必要があると言う一点に限っては合意があるような状況で、新しい打開策を見つけることを目的としています。
従来のコラボレーションの解釈は、みんな同じチームの一員となって、同じ方向を目指し、必要なことをみんなにさせるというものです。つまりコラボレーションは統制下におけるものであり、統制しなければならないという想定があります。
しかし複雑な状況で多様な人々と一緒に仕事する場合、コラボレーションはコントロールできるものではないのです。

非従来型 ストレッチ・コラボレーション

ストレッチ・コラボレーションって何?

非従来型のコラボレーションの方法、ストレッチ・コラボレーションは、コントロールという想定を捨て去るものです。調和、確実性、従順という非現実的な幻想を諦め、不協和音、試行錯誤、共創という混乱した現実を受け入れるのです。武術の稽古のようなイメージです。ストレッチ・コラボレーションなら、複雑な状況であっても、賛同できない人、好きではない人、信頼できない人と一緒に物事を成し遂げられます。

あくまでコラボレーションは選択肢の一つ

問題が複数ある状況に直面しているときは常に4つの選択肢、コラボレーション、強制、適応、離脱から選びます。あくまでコラボレーションは選択肢なのです。この際コラボレーションを選ぶべき時は、置かれている状況を変えることを望み、かつ他者と協力して変える以外に変化を実現する方法がないと考える場合です。
「強制」はトップダウンの解決策を強く求める状況です。他者との協力はなく、他者に強いる方法を利用します。 「適応」はひたすら人任せにする状況です。今の状況を変えられないからひたすら耐える行動を取ります。「離脱」は今の状況を変えられず、耐える気もない場合です。

ストレッチ・コラボレーションに向いている人

共創を進めたいと願う担当者、経営者、マネージャー向きです。また新サービス開発、新規事業、イノベーションを担う担当者、組織内外にネットワークを広げる人、組織を超えた連携を図る人、対話ファシリテーターや組織開発のファシリテーター、そして周囲の人たちと協力したいが難しいと感じる全ての方に読んでもらいたいです。

collaboration

ストレッチ・コラボレーションをどうやってやるのか?

ストレッチ・コラボレーションを実現するためには、3つの基本的な変化が必要となります。

1.対立とつながりの受容

協働者との関係について、チーム内の共有目標と調和を重視することから抜け出し、チーム内外の対立とつながりの両方を受け入れる方向に広げていかなければなりません。
本書では神学者の表現を借りたやや抽象的な表現を用いており、対立のことを力(Power)、つながりのことを愛(Love)と表現しています。ストレッチ・コラボレーションでは力と愛を両方とも使わなくてはなりません。
力は自己実現の衝動であり、主張することで、差別化(多様な形態と機能の発達)と個別化(互いに独立して働く部分)を生みます。愛は再統合の衝動であり、相手と関わることで、均質化(情報や能力の共有)と結合(結びついて一つの全体になる部分)を生みます。複雑で難しい問題であればあるほど両方を実現する必要があります。

2.進むべき道の実験

取り組みの進め方について、問題・解決策・計画などへの合意があるべきと固執することから抜け出し、様々な観点や可能性を踏まえて体系的に実験する方向に広げていかなければなりません。
チームメンバーは互いに賛同できず信頼できない関係であり、またチームの行動の結果は予測不能です。だから現状を強化するダウンローディングやディベートに偏るのではなく、時には新しい可能性を浮上させる対話やプレゼンシングを用いることも求められます。

3.ゲームに足を踏み入れること

私たち自身が果たす役割について、他者の行動を変えようとすることから抜け出し、自分も問題の一因であるという意識で状況に取り組み、自身を変えることを厭わない方向に広げていかなければなりません。他者を変えようとして自信は傍観したままではなく、自ら活動に飛び込んで自分が変わろうとすることが求められます。

この3つのストレッチはいずれも当たり前と思われることの反対の行動を要求するゆえに、ストレッチ・コラボレーションはハードルが高いです。複雑さに後退りするのではなく、複雑さに飛び込む覚悟が大切です。

敵化に気をつけながら共創しよう

敵化に気をつけよう

お互いの主張をぶつけ合うと対立する場面は避けられません。賛同できない、あるいは信頼できない相手を敵化する可能性もあります。

敵化とは
対処している相手を敵であるかのように、すなわち問題の原因であり、自分を傷つけている人だと決めつけて考え、行動してしまう症状です。 人はコミュニティ内の対立や自分の心の葛藤を処理するのを避ける手段として敵を作り出すそうです。

敵化の本当の問題は、それが私たちの注意を逸らし、アンバランスにすることです。厄介な相手は避けられない以上こうした困難は存在することを前提に、自分自身が次に何をするか決定することにだけ集中する必要があります。ストレッチコラボレーションでは、お互いが敵ではなく共創者です。そしてこの役割を担う場合に、自分のバランスが取れる範囲に限り、状況に影響を及ぼすには何をすべきか賢明な決定ができるのです。

ルートはないから共創する

ストレッチ・コラボレーションは進むべき道を共創するものです。逆に進みながらルートを見つけることしかできないのです。
複雑で意見が割れる状況で、計画が上手くいくかどうか知ることができる唯一の方法はやってみることです。考えたことが計画通りにうまくいくと想定するのは傲慢で非現実的です。
したがってストレッチコラボレーションでは取り決めを交わす以上のことが必要になります。それは進行していく早発的なプロセスで、合意よりも行動が大きな意味を持ちます。重要なのは、参加者が自由に行動できることで進む道を創造できる状況を作ることです。
コラボレーションの成功は、互いに賛同するとか信頼するということではありません。行き詰まりから脱して次の一歩を踏み出すことです。明確なビジョンや目標は必要ありません。必要なのは克服しようとしている課題の状況についての共通の問題意識だけなのです。

さいごに

実はこの書籍は1年ほど前に読了していたのですが、所属部署の体制変更などもあってまた読み返したいなと思って手に取った次第です。年齢を重ねるにつれて、柔軟に考えること、率先して行動すること、新しいやり方を選択することなどに億劫になっていることを感じます。時折読み返して喝を入れてもらおうと思います。

敵とのコラボレーション――賛同できない人、好きではない人、信頼できない人と協働する方法