AWS Digital Twin leveling index:AWSによるデジタルツインの活用ユースケースを定義したフレームワーク

AWS Digital Twin leveling index:AWSによるデジタルツインの活用ユースケースを定義したフレームワーク

2023/07/12 追記
Clock Icon2023.01.08 14:57

この記事は公開されてから1年以上経過しています。情報が古い可能性がありますので、ご注意ください。

こんにちは、CX事業本部 IoT事業部の若槻です。

AWSは、デジタルツインに関する下記の一連の記事から成るブログシリーズを昨年に公開しました。原文は英語で、下記は日本語訳となります。

AWSが多くの顧客からデジタルツインを実装してビジネス価値を向上させたいという要望を受ける中で、デジタルツインという用語が3Dモデル、シミュレーション、CAD、IoTダッシュボードなど従来の方法の説明に多義的に使われており顧客に混乱を招いている事態に触れ、それを解決するためにデジタルツインを利用したビジネス価値向上のユースケースをレベリングしたDigital Twin leveling indexというフレームワークを定義しました。

Digital Twin leveling indexではデジタルツインのユースケースを次の4段階で定義しています。

  • L1 Descriptive
  • L2 Informative
  • L3 Predictive
  • L4 Living

この4段階の定義分けが、デジタルツイン技術の導入をこれから行おうとしている私にとって非常に腑に落ちるものでしたので、本記事で簡単にまとめて共有したいと思います。なお本記事の画像はすべて元記事の引用となります。

Digital Twin leveling index

はじめに、そもそもデジタルツインとはどのようなものであるか示しておきます。適当な記述が記事中にありましたので引用します。

デジタルツインの 4 つの重要な要素は、物理システム、デジタル表現、物理システムとデジタル表現の間の接続、およびビジネスの成果です。最初の要素である物理システム自体は、個々の物理エンティティ、物理エンティティの集合、物理プロセス、または人でさえあり得ます。また、生物学的、化学的、生態学的、またはその他のシステムである可能性があるため、産業システムである必要はありません。2 つ目は、モデル自体であるデジタル表現です。この場合、モデルとは、物理システムの構造(または構成)を表すために必要なデータモデルなどのデータの集合または、物理システムの現在の状態を表すのに役立つ IoT データダッシュボードだけを意味するのではありません。シミュレーションなどの物理システムの動作をエミュレートするモデルを意味します。これにより、入力を与えると、モデルは応答出力を返します。これは、3 番目の要素である接続性につながります。これは “living” という言及によって強調されています。デジタルツインになるには、モデルを物理システム(センサーなど)からのデータで定期的に更新する必要があります。検証済みのモデルは、ある時点での物理システムの動作のスナップショットを提供しますが、デジタルツインは、物理システムの動作が元の時間から大幅に変化するタイムスケールにモデルを拡張します。更新の頻度は、根本的な現象が発生する速度によって決まります。一部のユースケースではほぼリアルタイムの更新が必要ですが、他のユースケースでは週次の更新で十分です。最後に、デジタルツインは、特定の結果、つまりある種の経済的またはビジネス的価値を推進する必要があります。

デジタルツインと従来の 3D モデリング(CAD)、物理ベースのシミュレーション、仮想世界(3D/AR/VR)、ストリーミングセンサーデータの IoT ダッシュボード、現実的なゲーム環境などの既存のモデリング手法との主な違いは、デジタルシステムと物理システム間の情報の流れです。よくある誤解は、より複雑で忠実度の高い仮想表現がデジタルツインを作るものであるというものです。むしろ、重要なのは定期的な更新であり、ライフサイクル全体でのデータの収集方法とデジタルツインの構築方法に直接影響します。デジタルツインは、システムの新しい観測によって、システムの現在の状態を理解し、それ自体から学び、更新する(または更新可能にする)ために、データストリームを消費する必要があります。そして、システムの現在および将来の動作を予測できるようになります。

CAD モデル、IoT ダッシュボード、3D レンダリング/没入型ウォークスルー、およびゲーム環境は、それ自体がデジタルツインではありません。これらは、デジタルツインソリューションの有用な視覚化ビルディングブロックを表しており、多くの場合、顧客のデジタルツインジャーニーの最初のステップを表しています。

デジタルツインを構成する要素は以下の4つとなります。

  • 物理システム
  • デジタル表現
    • 物理システムを表す(静的)モデル
    • 物理システムの動作をエミュレートできる(動的)モデル
  • 物理システムとデジタル表現の間の接続
  • ビジネスの成果

Digital Twin leveling indexの各レベルでは、これらのうち「デジタル表現」と「物理システムとデジタル表現の間の接続」の実装の程度が異なってきます。物理システムとビジネスの成果についてはいずれでも必須となります。

L1 Descriptive

L1 Descriptiveは、物理システムの視覚的表現による説明に焦点を当てたユースケースです。L1は物理システムを表す静的モデルから成り、これらだけではまだ完全なデジタルツインとは言えません。

L1 Descriptiveでは、ユーザー次のようなソリューションにより、エンジニアリング設計や没入型拡張現実体験での支援を受け、ビジネス成果を得ることができます。

  • 3Dアセットの管理
  • AR/VRトレーニング
  • ARワーカーアシスト
  • 没入型コラボレーション

エンジニアリング設計での3Dアセットの活用

没入型拡張現実体験による顧客への自社製品の説明

L2 Informative

L2 Informativeは、物理システムの現在や過去の状態を可視化するユースケースです。

次のように、物理システムの接続により取得した現在や過去の状態をモデルに反映させて、ユーザーがより簡単かつ正確に物理システムのリアルタイム監視をできるようになります。

AWSによるアーキテクチャ例は下記のようになります。

AWS IoT TwinMakerは、Connector to SiteWiseにより現在の状態を取得し、またCustom Connector to Timestreamにより過去の状態を時系列データとして取得してモデルに反映させます。

L3 Predictive

L3 Predictiveは、物理システムの未来のある瞬間の状態を可視化するユースケースです。

機械学習モデルの適用やwhat-if分析が行われることにより、ユーザーは物理システムのある時点での状態の予測をモデルに反映させて、予知保全などの事前対応を行うことができるようになります。

AWSによるアーキテクチャ例は下記のようになります。L2のアーキテクチャにAmazon SageMakerやAmazon Lookout for Equipmentなどの機械学習サービスによる将来予測のフローが追加されます。

L4 Living

L3の欠点は物理システム自体の時間経過による変化に対応できないことです。例えば発電機のタービンは軸ずれや摩耗などの経年劣化を起こすため、それらの変化を考慮しなければ、正確な予測を行うことはできません。

そこでAWSはaws-do-pmという将来予測モデリングを可能にするフレームワークのソースコードを提供しています。aws-do-pmをアーキテクチャに追加し、物理システムの時間経過による変化をモデルに反映させたより正確な予測を可能にします。

これはLiving Digital Twinとも表現され、まさに生きているかのような究極のデジタルツインとなります。

2023/07/12 追記

本記事に関連した内容を DevelopersIO 2023 での登壇で話させていただきました。こちらも是非ご覧ください。

おわりに

AWS Digital Twin leveling indexについての共有でした。

今回はとても簡潔にまとめてしまいましたが、元記事はとても示唆に富んでいて面白いので是非とも合わせて読んでみて下さい。この記事や元記事が読んだ方のデジタルツイン技術活用の一助となったら幸いです。

以上

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