【思考整理】3年やってみた「空・雨・傘」方式を平成の終わりと共にマインドマップに変えてみた。

【思考整理】3年やってみた「空・雨・傘」方式を平成の終わりと共にマインドマップに変えてみた。

Clock Icon2019.04.29

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せーのでございます。GW、いかがおすごしでしょうか。私は久々に家族旅行に来ています。
現在朝7時30分。みんな疲れが溜まっているのか全く起きてこない。時間を持て余しているのでブログでも書いてみます。

今日はお休み、ということもあり、仕事の具体的な話ではなく、少し大まかな考え方のお話を共有したいと思います。

私は普段「テクニカルエバンジェリスト」という仕事をしています。端的にいうと一つのテーマに対してプレゼンテーションの資料やデモを作り、勉強会やカンファレンスなどの場所で人にその価値を伝えて共感してもらう事をジョブとしています。
みんなに価値に伝えるためにはどうしたら良いのか。仕事の8割は「考えること」に費やされます。私にとって「自分の考えをまとめること」は今のキャリアの生命線、とも言える作業です。

私は今まで「空・雨・傘」という考え方のプラットフォームに基づいて頭を整理し、アウトプットしてきました。ですが、それを別なやり方に変えてみようと思っています。今日はその経緯と方法をご紹介します。

空・雨・傘とは

「空・雨・傘」というのは「ものを考える時の思考整理の方法」で、マッキンゼーなどのコンサル会社などでよく使われている課題解決のためのフレームワークです。
物事を「空」「雨」「傘」の3つに分けて整理することによって状況を俯瞰し、課題解決へのきっかけを見つけていきます。物事が解決されていくまでの流れを天候に例えているわけですね。

空=現状認識

「空」は「現状認識」を表します。空を見上げ、「空には黒い雲がかかっている」「雲がだんだん大きくなっている」という状況を確実に認識するように、現状の課題を考える前に、「今どうなっているのか」という状況を確実に理解します。

雨=現状分析

「雨」は「現状分析」を指します。空を見たら雲がかかっている。その状況から「雨が降りそうだ」という予測を立てます。同じように現状の課題を眺めながら「この事象は何を表すのか」「このあと何が起こるのか」を考えます。この時点では「予測」や「経験則」も含まれるため、複数の選択肢を示す場合もあります。「雨」が複数ある場合は、その次の「傘」もその分用意する形になります。

このプロットがこのフレームワークにはとても大切です。みなさんにお話しようというテーマを考え、そのテーマから直接プレゼンを書き出すと、ものすごく浅いものになったり、全然違う方向に進んでいってしまいます。ですので、必ず一旦テーマを俯瞰し、見えてきた事象から何が見えるか、掘り下げていきます。トヨタの生産方式などでよく言われる「なぜ5回」のような考えはここで使います。

傘=解決方法

最後に「傘」です。傘は「解決方法」を表します。空を見たら雲がかかっている。これは雨が降りそうだ。では「傘を持っていこう」となるわけです。

経験上この部分にはそんなに思案しない事が多いです。それは、「雨が降りそう」という現状分析さえきちんとできていれば、「傘を持っていく」という解決方法は自然に導き出される方法であるのと同様に、現状をきちんと分析できていれば、解決方法は自ずから現実的ないくつかの選択肢に限られてくるからです。

このように何か仕事上で考えて答えを導き出す場合のフレームワークとして「空」「雨」「傘」という方法は非常に合理的です。

ビジネス的には4つに分ける

このような「空」「雨」「傘」をビジネスに特化させて使う場合には、少しアレンジをして4つの項目に分けることが多いです。

  • THEME: 要約やまとめを書く。見直した時にわかりやすくするように。ゴールが決まってる場合はゴールを書いて、目的がブレないようにする。
  • FACT: 「空」と同じ。現状認識を書く
  • POINT: 「雨」と同じ。FACTを元に掘り下げて考え、要点を洗い出す。
  • ACTION: 「傘」と同じ。POINTで分析した結果を使って、やるべき事を書く。

私はこの「THEME」「FACT」「POINT」「ACTION」の4つを使って、プレゼンテーション、案件での課題解決、家の片付けの計画、今後一年のキャリアについてなど、あらゆる「考え事」をしてきました。そして、その方法として昔ながらの「ノートとボールペン」を使っています。

ノートのA4を横に使う

この改良型「雨空傘フレームワーク」はノートとボールペンを使います。ノートはA4を横にして使います。これは、プレゼンテーションのスライドサイズがちょうどA4横のため、このスペース内で考え、答えを出す癖を身につける事で人に説得力を持って話ができる、という考え方に基づいています。

私はこの3年間、何かあるとノートを開き、このフレームワークに文章や単語を書き込んで過ごしてきました。私は出張が多く、仕事をする場所はオフィスより外の方が多いくらいですが、常にカバンの中には昔から使っているJET STREAMの青ペンとセットでA4ノートが入っています。恐らく私が仕事をしている所を見たことがある方は、一度くらいA4ノートを横にして何かを考えている私を見たことがあるかと思います。

しかし、平成ももうすぐ終わる現在、このフレームワークを捨ててみようかと考えています。
なぜ止めるのか、と言えば、3年続けてみた結果、端的に「自分に合ってないんじゃないか」と思ったからです。

何が問題なのか

では、一体何が合ってないのでしょうか。それは具体的にはこのフレームワークの「ACTION」に当たる部分の生産性の低さにあります。

ACTIONに行く前に完結してしまう

上でも書いたように、フレームワークの目的は「考えを整理し、まとめ、深めて答えを導き出すこと」にあります。そして、そのコアとなる部分は「FACT」と、それを元にした「POINT」の精度にあります。
逆に言うと、POINTで散々考えて色々ノートに書き込んでいるので、自分の中で答えが出てしまっていて、それをACTIONに書く時間が無駄に感じるのです。答えが出ているので、そのまま本番となるスライドやブログに書きたくなってしまうんですね。そうすると、ACTIONに書くことがなくなってしまいます

私の持っているノートを読み返してみると、ACTIONの部分が空のページが目立ちます。こういう時は大抵そのままスライドに書き出しています。

ACTIONのスペースが足りない 

フレームワークがあるのだからこれをキチンと活用しなくては、という思いから、ACTIONに最後まで書き出し切ろうと努力した時期もありました。しかしそうすると別の課題に当たります。

ACTIONのスペースが圧倒的に足りないのです。 A4横のノートでまとめる意味は「A4横のスペース内で考えをまとめて伝えられるように」そうしているのですが、プレゼンテーションの登壇時間は平均30分-40分、そのスライドというのは平均すれば大体60枚以上になります。その内容がA4の1/3程度のスペースに収まりきるはずがないのです。

当然ながらどんなに頑張って書いても前半程度でノートは埋まってしまい、後から見直してみても「結局この後どういう流れにしたんだっけ」となるものが量産されました。

ACTIONをどのように考えるかは人それぞれだと思います。頭の中を整理し、考えをまとめるだけであればこのやり方で充分通用すると思います。
しかし私に最終的に必要なのは継続的なアウトプットです。私にとってACTIONは考えを具体的なアウトプットに落とし込むための作業の一つとなります。ここで詰まったり、二度手間になるようであれば、やはり私にとってこの方式は合っていないのでは、と考えざるを得ません。

他にも単純な物理的理由もあったりします。

ノートを持ち歩くのが面倒

私は出張が多いです。出張には着替えや身だしなみ用具の他にノートPC、充電アダプタ、機内用のヘッドホンに普段遣いのイヤホン、各種ケーブル、撮影用三脚、場合によってはデジカメ、スケジュール管理の手帳、デモをする場合はEchoやスピーカーなど、とにかく色々持ち歩きます。1gでも軽くしたい、というのが人情です。

結果何か浮かんだ時にさっとノートを取り出せるように、自宅の部屋、メインの仕事場となるオフィスにも、それぞれノートを置いておくようになりました。持ち歩く用のノートもなるべく軽くしたい、という思いから無意識に薄いノートを選んでしまい、すぐに買い換えることに。

そうすると書き込む時はいいのですが、見直す時にどのノートに書いたのかわからなくなってしまいました。
結局同じ内容を手元のノートに書き直す、というようなことも多々ありました。
一時期書いたノートをEvernoteの書類用モードで撮影しておく、みたいな事もしたのですが、そうすると編集が大変で結局やめてしまいました。

令和に向けた代替案

さて、このように色々な問題を抱えながらも3年この方式を続けてきましたが、一つの時代も終わることですし、いい機会なので新しい方法を試してみようかと考えました。他にどんなやり方があるでしょうか。

いきなり書き出してみる

一回やってみましたが、これはさすがに私には無理でした。
書いてる内容があちこちに飛んでしまい、出来たものを読み返しても何が言いたいのかわからない。起承転結をつけるために書き直す量が半端なく、手戻りが多すぎる結果となりました。

これは普段から頭の中がきっちり整理されている人向けの方法だと改めて感じました。

WHY-HOW-WHAT方式(ゴールデンサークル)

これも昔から人に何かを伝える時によく使う考え方の一つです。マーケティングコンサルタントのサイモン・シネック氏がTEDで提唱した方法で「ゴールデンサークル」といいます。

「この問題を何を使って解決するか(WHAT)」「どのように解決していくか(HOW)」を最初に伝えてしまうと、聞く側の気持ちはついてきません。
まず「どうしてこの課題を解決したいのか(WHY)」を伝え、問題意識を共有した上で方法や手段を提示することで、聞く側に納得感を与えるテクニックです。これに「この方式の主体はだれなのか(WHOM)」などが加わったりしますが、基本はWHY-HOW-WHAT、です。自分の信念や熱を共感してもらうことで、同じ考え方を持つ人(ファン)を増やし、広げていく戦略です。

似たようなテクニックとしてテンプレップ(TNPREP)の法則、というものもあります。これは主に論文や資料などのペーパーで使われる手法で、伝える順番を

  • T: THEME(主題、テーマ。一番伝えたいこと)
  • N: NUMBER(伝えることはいくつあるか)
  • P: POINT(それぞれの要点)
  • R: REASON(その要点を伝えたい理由)
  • E: EXAMPLE(具体例)
  • P: POINT(最後に要点をもう一度言う)

とすると、ロジカルに人の頭に響く、というものです。

これらを使うと起承転結は確かに綺麗にまとまります。が、ここに至るまでの自問自答を飛ばしてしまうと、とても中身の薄いものが出来上がります。自分自身が、どうしてそれを信じているのか、どうして人に伝えたいのか、を理解しきっていないからです。プレゼンテーションにはテクニック同様「熱」も非常に重要な要素です。「熱」を伝えるためには自分に深く問いかけるステップが欠かせません。この形ではそのステップが熟成されにくいのです。

マインドマップを使ってみる

マインドマップは聞いたことがある方も多いでしょう。自分の気持ちや考えをそのテーマを中心に放射線状に配置していき、そのマップを俯瞰することで、自分の考えを整理する、というツールです。

私も昔、マインドマップを使って考えをまとめていた時期がありました。ですがその時は全く考えがまとまりませんでした。一つの考えに固執する余り、一方向に枝が伸びていってしまい、マップ自体がいびつな形になってしまうのです。ノートに箇条書きすることとさほど変わらない結果しか 得られませんでした。

しかし久しぶりにマインドマップを使ってみたところ、長い間「空・雨・傘」という思考方法に慣れたこともあり、まず空、つまり現状把握を確実にできるようになっていたため、綺麗なマップを書けるようになっていました。
出来上がったマップを俯瞰で見てみたら、自分の頭の中が可視化され、大事なポイントをパズルのように整理できるようになりました。これならイケそうです。

令和はマインドマップを使ってみよう

ということで、令和からは新たにマインドマップを使って思考整理をしてみようと思います。具体的には

  • 主題: THEMEに当たる部分を中心に書く
  • 空: FACTをその周りに書いていく
  • FACTにつながるように傘: POINTをつなげていく
  • 全体を俯瞰して見渡し、POINTに共通する点や解決法をまとめる
  • FACTと逆方向に傘: ACTIONに当たる部分を書いていく
  • ACTIONを伝わりやすい順番に並び替える
  • ACTIONを伝えるための補足や理由をつなげていく
  • 作業に必要なタスクなどを加えていく

という方法です。

このブログもマインドマップに起こしてから書いています。

ゴールデンサークルとの併用

マインドマップだと放射線状に膨らんでいくため、アウトプット時に伝える順番で迷うことがあります。
そこで現在はある程度考えがまとまった時点で別途紙にゴールデンサークルやTNPREPを書き、伝える順番を整理してからACTIONを並び替えたりしています。

ツールの利用

「空・雨・傘」の時はA4ノートを使ってアナログで書いていましたが、マインドマップでは順番を入れ替えたり、タスクを追加したりするので、デジタルのツールを使うことにしました。
マインドマップツールでは「XMind」などが有名ですが、私の場合、アイデアが移動中などにふと浮かんでくることが多いため、iPhoneとPCで図が簡単に共有できる「iThoughts」を使っています。iThoughtsは通常のマインドマップの色やフォントの大きさを変えたり、図や画像などを入れやすいので重宝しています。

マインドマップの(現時点での)問題点

現状の課題としては「長くなる」ことがあげられます。
「空・雨・傘」の時のようにスペース上の制約がなくなったので、より深く考えることはできるものの、それをカットするのが惜しくなり、結果アウトプットが長くなりがちです。

ここはこれからの改善点となります。何かいい方法を知っている方がいれば、コメントお待ちしています。

まとめ

ということで、今回は「思考方法」について書いてみました。
人にものを伝える時に大切なのは「何に共感してもらいたいのか」という部分です。
エンジニアとして勉強会で発表する際にはその目的は「知識やテクニックの紹介」がメインになっていましたが、エバンジェリストとしての目的は「聞いた人がなにかしらのアクションを起こすこと」が目的となります。
人が動くためには「手法や知識」に共感してもらうより「理念や熱」に共感してもらう事が大事です。
令和の時代になっても様々な手法で「自分の信じるもの」を熱を持って伝えられるように精進していきたいと思います。

参考リンク

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