Ubuntu 24.04 の GPU インスタンスに NVIDIA GRID ドライバーをインストールしてみた
はじめに
Ubuntu 24.04 に NVIDIA GRID ドライバーをインストールする手順を紹介します。AWS の GPU インスタンスで GRID ドライバーを導入する際のポイントと注意点を解説します。所要時間の目安としては、30 分もあれば完了します。
NVIDIA GRID ドライバーとは
NVIDIA GRID は、GPU 仮想化技術を提供するドライバーです。3D モデルや高解像度動画のレンダリングに最適なパフォーマンスを発揮します。また、複数のユーザーが 1 つの GPU を共有できる GPU の仮想化をサポートしているため、コスト効率の高い運用が可能です。
AWS では G6、G5、G4dn などの GPU インスタンスで GRID ドライバーを利用できます。対象インスタンスタイプの詳細は以下のドキュメントをご確認ください。
参考: NVIDIA drivers for your Amazon EC2 instance - Amazon Elastic Compute Cloud
ライセンスについて
NVIDIA GRID は通常、別途ライセンスの購入が必要です。AWS の GPU インスタンス(G6、G5、G4dn、G3 など)では、特定条件下でライセンスが利用可能です。
AWS 提供の GRID ドライバーは、以下の条件で利用できます。
- AWS カスタマーのみダウンロード可能
- NVIDIA GRID Cloud End User License Agreement(EULA)への同意が必要
- AWS 環境内での AMI 作成と利用に限定
- 対象ハードウェア:NVIDIA L4、L40S、A10G、Tesla T4、Tesla M60
検証環境
今回は一般的な Ubuntu Server 24.04 の AMI をベースに検証します。以下の環境で NVIDIA GRID ドライバーを導入しました。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| OS | Ubuntu Server 24.04 LTS |
| アーキテクチャ | x86_64 |
| AMI ID | ami-0aec5ae807cea9ce0 |
| AMI 名 | Ubuntu Server 24.04 LTS (HVM), SSD Volume Type |
| インスタンスタイプ | g6f.large |
| GPU | NVIDIA L4 Tensor Core GPU |
| リージョン | ap-northeast-1 |
事前準備
GRID ドライバーのインストールには以下の準備が必要です。
IAM ロールの設定
EC2 の IAM ロールに AmazonS3ReadOnlyAccess ポリシーを付与してください。GRID ドライバーのファイルは S3 に保存されているため、aws s3 コマンドでダウンロードします。
AWS CLI のインストール
GRID ドライバーのダウンロードには AWS CLI が必要になります。以下のコマンドでインストールしてください。
sudo apt install -y unzip
curl "https://awscli.amazonaws.com/awscli-exe-linux-x86_64.zip" -o "awscliv2.zip"
unzip awscliv2.zip
sudo ./aws/install
aws --version
インストール手順
以下のドキュメントを参考にインストールしました。
システムの更新と必要パッケージのインストール
まずパッケージを最新化します。
sudo apt-get update -y
次にドライバーのビルドに必要な gcc と make をインストールします。
sudo apt-get install -y gcc make
カーネルパッケージのアップグレード
最新のカーネルを取得するため linux-aws パッケージをアップグレードします。
sudo apt-get upgrade -y linux-aws
再起動
最新のカーネルを読み込むため、インスタンスを再起動します。
sudo reboot
カーネルヘッダーのインストール
再起動後、カーネルヘッダーと必要なモジュールをインストールします。
sudo apt-get install -y linux-headers-$(uname -r) linux-modules-extra-$(uname -r)
nouveau ドライバーの無効化
nouveau は NVIDIA のオープンソースドライバーです。GRID ドライバーと競合するため無効化が必要です。
ブラックリストファイルに設定を追記します。
cat << EOF | sudo tee --append /etc/modprobe.d/blacklist.conf
blacklist vga16fb
blacklist nouveau
blacklist rivafb
blacklist nvidiafb
blacklist rivatv
EOF
次に、/etc/default/grub ファイルを編集します。
sudo vi /etc/default/grub
以下の行を追加します。
GRUB_CMDLINE_LINUX="rdblacklist=nouveau"
編集後のファイルは以下のようになります。
GRUB_DEFAULT=0
GRUB_TIMEOUT_STYLE=hidden
GRUB_TIMEOUT=0
GRUB_DISTRIBUTOR=`( . /etc/os-release; echo ${NAME:-Ubuntu} ) 2>/dev/null || echo Ubuntu`
GRUB_CMDLINE_LINUX_DEFAULT="quiet splash"
+ GRUB_CMDLINE_LINUX="rdblacklist=nouveau"
設定を反映するため GRUB を再構築します。
sudo update-grub
GRID ドライバーのダウンロード
AWS が提供する S3 バケットから最新の GRID ドライバーをダウンロードします。
aws s3 cp --recursive s3://ec2-linux-nvidia-drivers/latest/ .
ドライバーのインストール
ダウンロードしたファイルに実行権限を付与します。
chmod +x NVIDIA-Linux-x86_64*.run
インストールスクリプトを実行します。
sudo /bin/sh ./NVIDIA-Linux-x86_64*.run
インストール中、確認画面が表示されます。

すべて OK を選択して進めます(計 3 回)。

インストールが完了しました。

GSP の無効化(G4dn、G5、G5g インスタンスの場合)
G4dn、G5、G5g インスタンスでは GSP(GPU System Processor)の無効化が必要です。NVIDIA vGPU ソフトウェアバージョン 14.x 以降を使用する際の必須設定です。
設定ファイルを作成します。
sudo touch /etc/modprobe.d/nvidia.conf
GSP を無効化する設定を追記します。
echo "options nvidia NVreg_EnableGpuFirmware=0" | sudo tee --append /etc/modprobe.d/nvidia.conf
再起動
設定を反映するため、インスタンスを再起動します。
sudo reboot
ドライバーの動作確認
nvidia-smi コマンドでドライバーの動作を確認します。
nvidia-smi -q | head
以下のように GPU 情報が表示されれば成功です。
$ nvidia-smi -q | head
==============NVSMI LOG==============
Timestamp : Tue Nov 18 01:17:09 2025
Driver Version : 580.105.08
CUDA Version : 13.0
Attached GPUs : 1
GPU 00000000:31:00.0
Product Name : NVIDIA L4-3Q
無事、nvidia-smi コマンドを実行して結果が返ってきました。
まとめ
Ubuntu 24.04 に NVIDIA GRID ドライバーをインストールする手順を紹介しました。
重要なポイントは以下の 2 点です。
- IAM ロールの権限設定を忘れずに行うこと
- 公式ドキュメントの手順に従えばスムーズにインストール可能
GPU インスタンスを活用する際の参考になれば幸いです。
おわりに
NVIDIA のドライバーがプリインストールされた Deep Learning AMI を普段利用しています。しかし GRID ドライバーはライセンス同意が必要なためか、プリインストール AMI は存在しないようです。以前 NVIDIA ドライバーのインストールで苦労した経験があり、今回の GRID ドライバーも上手くいくのかと疑っていたのですが何も問題なくできました。







