Amazon Go型レジレス店舗の業界マップを作ってみた
Amazon Goを皮切りに、徐々に各社に広がってきたレジレス店舗実現の取り組み。
クラスメソッドでもいち早く取り組んで、2019年2月には実験店「Developers.IO CAFE」をオープンし、様々な展示会にもデモ出展を重ねてきました。
おかげさまで2020年2月の展示会では、「Developers.IO CAFEに行ったことがある」、「聞いたことがある!」という声も多数聞くことができたのですが、同時に
「大宮駅や赤羽駅でやってたよね?」
「セブンイレブンがやってたっけ?」
という、他社さんの取り組みについての質問も。
そこで、レジレス店舗実現技術を開発している企業について、一度整理をしてみようかなと思います。
各社のWebサイトや、メディア記事からまとめてみた業界地図はこちら。
※ あくまでも個人でWebサイト、メディア記事に基づいて調べた範囲で作成しているため、最新情報や実際と異なる場合があります。
※ 本記事を公開後、教えていただいた企業とニュース掲載があった企業を追記しました。(追記:2月25日、2月28日、3月10日)
各社の発表や報道を見ていると、レジレス店舗に関する用語や表現は少しづつ共通言語として通じるものが現れつつあるものの、確固たる定義がされた用語はまだ存在していないようです。
このブログでは、「Amazon Go型店舗」や「ウォークスルー決済」、「Grab & Go」、「キャッシャーレス(Cashier-free)」などの特徴で報じられた、レジを通さずに店舗から商品を持ち出してキャッシュレス決済できる仕組みを持つ店舗をリストアップしてみています。
国内勢&日本進出済み
クラスメソッド - Developers.IO CAFE
秋葉原と上越妙高の2店舗で実証実験中。(2020年2月現在はメンテナンスのためお休み中)
2019年は各地の展示会でのデモを行ったり、昭和女子大内で実験店を開設したり、短期間での設営展示の機会も多かったです。
LINEからも店舗利用が可能になり、アクセシビリティはかなり高くなってます。
NTTデータ - Catch&Go™
セブンイレブンと六本木で実験店舗を開始しているそうです。一般向けには非公開とのことですが、機会があればぜひ見学してみたいです。
技術的には中国のベンチャー企業「云拿科技(CloudPick、クラウドピック)」と提携しており、クラウドピックが持つ、映像や重力センサーのデータ解析技術を活用しているようです。
サインポスト - スーパーワンダーレジ
2018年10月〜12月に赤羽駅で行われていた実証実験は、サインポストとJR東日本によるものでした。 JR東日本スタートアップと合弁会社「TOUCH TO GO」を設立しており、2020年3月からは高輪ゲートウェイ駅で無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」をオープンさせる予定とのことです。
過去のスーパーワンダーレジの体験レポートはこちら。
edison.ai
竹橋駅のRun Pitで、KDDIと共同で無人店舗の実証実験を行っています。期間限定で2019年12月18日〜2020年3月31日ということなので、まだ見に行く機会はあるかも・・・?
こちらもクラスメソッドのメンバーが体験レポートを書いてくれています。
Zippin
仕組みは天井のカメラによる画像解析と重量センサー。
2020年2月26日から、ローソンと富士通テクノロジースクエア内にレジレス店舗をオープンするようです。
富士通も生体認証技術を提供するそうで、出資を受けているNTTドコモ・ベンチャーズを通じたドコモとの連携なども今後出てくるのかなど、気になる企業の一つです。
Standard Cognition - Standard Market
天井に取り付けられたカメラのみ使用して画像解析を行う仕組みとのこと。
棚のセンサーや、RFIDは使っていないそうです。
日本の一般用医薬品などの卸大手PALTACと提携しているそうなので、日本で実証実験が行われる日も近いのではないでしょうか。
ホームページで公開されている動画に、ちょっと驚きのシーンがありました。
店員が棚から商品を取りお客様に手渡しする、なにげないシーンなのですが、これを正しく会計処理するには商品と買い物客の紐付けがものすごく複雑なことになりそうです。現時点で技術的に可能なのか、あくまでもコンセプトイメージなのか、続報待ちです。
(2月25日追記:薬王堂 仙台泉館店での実証が予定されているようです。)
云拿科技(CloudPick) - 云拿智慧商店(LePick)
NTTデータと提携しているクラウドピックですが、中国では自らレジレス店舗「云拿智慧商店(LePick)」を運営しています。
ここも画像解析とAIによって商品の特定をしているようです。
Webサイトでは上海空港店での体験動画が公開されているのですが、考えつく限りのイレギュラーな振る舞いをする買い物客役に対して、正しい会計が行われている様子に驚きます。
2月25日 追記
本記事を公開後に教えていただいた企業を追加します。 マップにも追加修正しています。
DeepBlue Technology(深蘭科技(上海)有限公司)
Take Goという無人店舗システムを開発した実績を持つ企業です。
イオンディライトとは合弁会社「イオンディライト ディープブルー テクノロジー カンパニー(永旺永楽深蘭科技(上海)有限公司)」を設立しています。
OPTiM(オプティム)
MonotaROと協業し、佐賀大学内に無人店舗を出店しています。
Eコマースとリアル店舗での購買を組み合わせたような仕組みになっており、入店・退店と購入品のスキャン、決済に専用アプリを使います。店内での買い物にはお客様自身が商品のバーコードをアプリでスキャンして登録、オンライン決済後に表示される退店用QRコードを使ってお店を出るという流れだそうです。
最近のレジレス店舗システムで主流となりつつある、購入品を自動で特定する仕掛けはないのですが、万引きを防いで店舗を無人化することを最優先に実現した仕組みと言えそうです。
NEC - NEC SMART STORE
このブログをまとめた当初は画像認識を利用したセルフレジ店舗での運営だったため、掲載対象から除外していました。
2月28日になり、レジレス店舗としてリニューアルオープンしたとのニュースが入ってきたので、追記します。
お客様の入店認証にはNECの顔認証技術を活用しており、レジレス店舗技術ではCloudPickが協力しているようです。
日本未進出? 米スタートアップ
AiFi - NanoStore
NanoStoreというコンテナ型のウォークスルー店舗を展開しています。
技術的には画像認識を使用しているようなのですが、入店にクレジットカードを使わせているのが特徴的です。
支払い方法を事前登録しておく手間が減るのは顧客にとってもメリットです。とはいえ、クレジットカードを往来で取り出すのは、少し心理的なハードルがあるかもしれません。アプリでもOKらしいので、常連になってきたらアプリへの切り替えが便利になりそうです。
退店時に出口付近のディスプレイで購入明細を確認して、承認することで支払いが済むようです。
AVA retail - AVA SmoothShop
専用アプリによる入店後、カメラによる画像解析で行動を追いかけているようです。 出店の状況については、情報が見当たりませんでした。
Trigo Vision
ホームページにある動画はスーパーのような規模の店舗で撮影されているのですが、どうやらコンセプトイメージらしいです。 こちらも実際の店舗導入については、情報が見当たりませんでした。
Accel Robotics
ソフトバンクグループが出資するアメリカの企業です。
画像解析AIによるレジレス店舗の実現を目指しているそうです。導入状況については情報が見当たりませんでした。
(20年3月10日追記:コメント欄で本企業について教えていただきました!ありがとうございました。)
【番外】
レジなし店舗の多くがAmazon GoのUXに倣って開発されている中、少し異なるアプローチで検討しているところもあるようです。
TRIAL - レジカート
福岡県を中心に20店舗近く展開しています。
カートに商品読み取り機が取り付けられており、お客様自身で商品をスキャンしつつ買い物をし、そのままカートから会計ができるというものです。
実際のところはレジがないというより可動式セルフレジですね。
車での来店客のことを考えるとすごく合理的で、レジに慣れた人にも受け入れやすい仕組みかなと思います。
ところでこのカート、まさにIDEOがデザイン思考で設計したものの再現のように思ったり…。
缤果盒子 - BINGOBOX
コンテナ型無人コンビニとして、注目を浴びた店舗です。
展示会で引き合いに出す人が多かった「中国で展開している無人コンビニ!」というと、こちらでしょうか。
過去の記事を見ると、RFIDを利用したセルフレジでした。
まとめ
レジレス店舗技術は、画像認識と機械学習を使って実現しようという企業が多数派になってきており、実導入に向けた精度や、カメラ台数などの導入・運用コスト、対応店舗面積・SKU数が問われるフェーズに入ってきたと感じます。
かつて注目されたRFIDが、タグそのもののコストや貼り付けの手間を解消できず、一部のSPAを除いて実導入に至っていない様子を見ると、精度とコストについて、システムや小売りの仕組みの中でどのようにバランスさせるのかがポイントになりそうです。
ちなみにToFセンサー&重量センサーの仕組みを採用しているDevelopers.IO CAFEは、他社さんの仕組みに比べると導入・運用コストは低めだったりするはずです。 まずはユーザーとして、カフェのメンテナンス明けを楽しみにしています。