
Zendesk 2025 年 6 月アップデート解説:AI 活用・自動化・運用性向上の最新機能まとめ
対象読者
- Zendesk を運用・管理している情シス担当者・エンジニア
- 社内業務自動化・外部サービス連携に興味のあるサポート現場管理者
- Zendesk 最新機能・ワークフロー改善事例を探している方
はじめに
2025 年 6 月の Zendesk アップデート では、「AI 活用によるサポート現場の効率化」「カスタマイズ性・自動化範囲の拡張」「運用 UI・管理性向上」など、現場の課題解決を加速させる数多くの新機能・改善がリリースされました。本稿では公式リリースノートの内容をもとに、主要アップデートの技術的なポイントと、現場運用に役立つ活用例・設定のヒントを解説します。
参考記事
1. オートアシストの「声のトーン」分析
機能概要
オートアシストは従来、FAQ やテンプレートの「自動提案」機能を備えていました。今回さらに、「声のトーン」――すなわち顧客の声の雰囲気を AI が分析し、その状況に適したサジェスト(例:「柔らかめ」「謝罪ニュアンス」「フォーマルな返信」など)を返せるよう進化しました。
有効化手順
- 管理センター > AI > オートアシスト の設定へ
- [文章のトーン] オプションを ON
運用シナリオ例
- 顧客からクレームが届いた場合、「謝罪」トーンの返信例が提案されます。
- フレンドリーな要望や雑談には、「カジュアル」トーンの返信例が提案されます。
2. チームメンバー「ブランドなし」フィルター
機能概要
大規模運用現場では、エージェントとブランド(部門)割当が煩雑になりがちです。新たに「ブランドなし」のユーザーのみをフィルタリングでき、人員管理・配属漏れの早期発見が可能になりました。
活用例
- 管理センター > メンバー > チームメンバー
- フィルター > ブランドのメンバーシップ で「ブランドなし」を選択
「ブランドなし」フィルタリングによって、新規入社者や体験アカウントの配属状況を即確認し、管理ミスを減少できます。
3. ダークモード/ライトモード切り替え
機能概要
サポート担当者個人の好みに合わせ、インターフェースを「ダーク」または「ライト」に切り替えることが可能となりました。
設定方法
- 画面右上のユーザーアイコン > 表示 から個別選択
ダークモード適用時の見た目
4. AI 条件付きコンテキストワークスペー
機能概要
チケット内容・AI 解析結果に応じて、最適なワークスペース(作業画面・フロー)を自動で割り当てる新機能です。Intent(意図)・Sentiment(感情)・Language(言語)などの AI フィールドやカスタムチケットフィールドが条件分岐に利用可能です。
技術ポイント
- AI モデルがチケット内容から「意図:要望/苦情/質問」などを自動推定
- 感情値(例:怒り/困惑/喜び)や言語判別と組み合わせ、多言語・多感情の問合せも効率ルーティング
設定例
- 管理センター > ワークスペース > コンテキストワークスペース で [ワークスペースを作成]
- 詳細タブの [条件を追加する] でカテゴリに「Sentiment」などの感情値を選択
- 例:「Sentiment=Negative」AND「Language=English」なら「上級英語担当」ワークスペースを適用
注意点
- AI フィールドは随時学習されるため、運用中の再調整も推奨
- 新しい分岐条件を追加する際は、既存ワークフローとの干渉に注意
5. 検索生成上限の拡大
機能概要
AI による FAQ 検索・ナレッジサジェスト機能(月 10 万回まで)の上限を、追加契約で拡張可能になりました。月間検索ボリュームの多い大規模サポートセンターで特に有効です。
6. Premium サンドボックスの自動複製
機能概要
エージェント Copilot アドオン契約アカウントにて、本番と同一設定(ブランド、Auto assist ルール等)で Premium サンドボックス環境を一発作成できるようになりました。
- 新機能導入・ワークフロー変更の PoC(事前検証)
- 開発/テスト環境の品質均一化・移行工数削減
7. 非アクティブ会話へのリマインダー
機能概要
エンドユーザーとのメッセージ会話が非アクティブになった際、自動でリマインダーを最大 3 回送信します。
設定例
- 管理センター > チャンネル > メッセージング > [設定を管理] ボタン
- 高度 > キャパシティの解放 > キャパシティの自動解放を有効にする にチェック
- リマインダー送信間隔・メッセージ内容をカスタマイズ
活用 Tips
- 「見逃し/長期放置」防止のため運用現場で推奨
- 顧客満足度(CSAT)向上にも貢献
8. インテリジェントトリアージの目的自動割り当て
機能概要
Copilot アドオン利用時、AI がチケットの「問い合わせ意図」を自動分類し、処理フローや優先度付けに活用できます。
- 管理センターで intent モデルを有効化
- FAQ/商品注文/クレームなど問い合わせ種別に自動仕分け
9. カスタムオブジェクトレコードのイベント記録可視化
機能概要
カスタムオブジェクト(例:顧客契約情報、独自データ)に対する「追加・編集・削除」操作履歴を Support 画面から一目で確認可能となりました。
- オブジェクトごとに「誰が・いつ・どの値を」変更したかの監査が容易に
- 監査ログとの統合や外部出力も段階的対応
10. オムニチャネルルーティングの空きキャパシティ評価
機能概要
従来の「残チケット数」だけでなく「キャパシティ比率」を比較し、より公平な割当アルゴリズムが運用可能になりました。
設定例
- 管理センター > オブジェクトとルール > ルーティング設定
- 「割り当ての方法」を「空きキャパシティの割合が最大の順」へ切替
経験や担当案件数が異なる複数エージェントのチームでも、業務負荷の偏りの軽減が期待できます。
11. Zendesk QA の新しい精度メトリック
機能概要
AI(AutoQA)と人間レビュワーの評価一致度(コンシステンシー、アグリーメント)を測定します。品質改善 PDCA の「見える化」に直結する機能です。
- QA ダッシュボードで新指標を閲覧
- 評価モデル・レビュープロセスの最適化に役立つ
12. ナレッジベース記事エディタの段階的展開
機能概要
2025 年 5 月~2026 年 Q1 にかけて順次リリース。より直感的な UI・新しい記事コンポーネント・ソースコード強化などで、ナレッジ作成/編集の生産性 UP。
- 管理センターで新エディタが有効になったアカウントから利用開始
- 表挿入や画像インポートなどの機能追加
13. WFM(ワークフォースマネジメント)機能強化
- スケジュール編集イベントの監査ログ対応
- 一括ユーザー管理機能:自動トラッキング、タスクロック等の一括操作
14. OAuth リフレッシュトークン対応(開発者向け)
機能概要
OAuth 2.0 の grant_type: refresh_token をサポートします。アクセストークンの自動更新・有効期限管理がセキュアに運用可能になります。
実装例(Node.js の例)
-
管理センター > アプリおよびインテグレーション > Zendesk API の OAuth クライアントタブから、クライアントを追加します。
- クライアント名: 任意
- 一意の ID: 任意
- クライアントの種類: Confidential
- リダイレクト URL: http://localhost:3000/callback
-
下記の
refresh.js
を実行し、指定された URL にアクセスします。 [許可] ボタンを押して得られたリフレッシュトークンを使用し、新たなアクセストークンが取得されることを確認してください。require('dotenv').config(); const express = require('express'); const axios = require('axios'); const app = express(); // 認可 URL を案内 const authorizeUrl = `${process.env.ZENDESK_DOMAIN}/oauth/authorizations/new?response_type=code&redirect_uri=${encodeURIComponent(process.env.REDIRECT_URI)}&client_id=${process.env.CLIENT_ID}&scope=read%20write&state=xyz`; console.log('以下の URL をブラウザで開いて認証してください:'); console.log(authorizeUrl); // refresh_tokenを使った認証更新 async function refreshAccessToken(refreshToken) { try { const res = await axios.post( `${process.env.ZENDESK_DOMAIN}/oauth/tokens`, { grant_type: 'refresh_token', refresh_token: refreshToken, client_id: process.env.CLIENT_ID, client_secret: process.env.CLIENT_SECRET, redirect_uri: process.env.REDIRECT_URI, } ); console.log('New access token:', res.data.access_token); } catch (e) { if (e.response) { console.error('refresh_token エラー:', e.response.data); } else { console.error('refresh_token リクエストエラー:', e.message); } } } // /callback で認可コード受信 app.get('/callback', async (req, res) => { const code = req.query.code; if (!code) { res.send('code がありません。'); return; } console.log('Received code:', code); // code からトークンを取得 try { const tokenRes = await axios.post( `${process.env.ZENDESK_DOMAIN}/oauth/tokens`, { grant_type: 'authorization_code', code: code, client_id: process.env.CLIENT_ID, client_secret: process.env.CLIENT_SECRET, redirect_uri: process.env.REDIRECT_URI, } ); console.log('Access token:', tokenRes.data.access_token); console.log('Refresh token:', tokenRes.data.refresh_token); // すぐに refresh_token で新しい access_token 取得テスト await refreshAccessToken(tokenRes.data.refresh_token); res.send('リフレッシュトークンを取得し、新たなアクセストークンの取得検証も実施しました。コンソールを確認してください。'); } catch (e) { if (e.response) { console.error('Error response:', e.response.data); res.send('トークン取得エラー: ' + JSON.stringify(e.response.data)); } else { console.error('Request error:', e.message); res.send('リクエストエラー'); } } }); app.listen(3000, () => { console.log(`http://localhost:3000/callback で code 受信待ち`); });
活用シーン
- 外部アプリやシステム連携で、Zendesk APIを定期的・長期運用したい場合。定期バッチ処理や自動化スクリプトが「手動再認証なし」で安定運用可能。
- WebhookやSlackボット等、アクセストークンの有効期限切れによる障害を未然に防ぎたい場合。トークン失効時も自動的にリフレッシュし、エンドユーザーへの影響を回避。
- パートナー連携や大規模な統合基盤におけるAPIセキュリティ対策。長期運用でも、機密性を保ったまま安全にアクセストークンを管理・更新できる。
まとめ
2025 年 6 月の Zendesk アップデートでは、AI の現場活用・自動化の深化・運用性の向上など、カスタマーサポートの生産性と品質を高める多くの新機能が提供されました。特に「オートアシストの声のトーン分析」や「AI 条件付きワークスペース」「インテリジェントトリアージ」などは、日々の対応効率だけでなく、応対品質のばらつき防止や顧客満足度向上にも直結します。また「ブランドなし」フィルターやダークモード、オムニチャネルルーティングの改善など、現場運用の細かな課題解決に直結するアップデートも見逃せません。Premium サンドボックスの複製や OAuth リフレッシュトークン対応など、IT 管理者・エンジニア視点での拡張性や長期運用に不可欠な機能も追加。複数の業務システムや外部サービスとの連携・自動化のレベルアップに大きく貢献しています。
現場の課題や組織の成長段階に応じて、適切な機能を選び取り、設定・運用のチューニングを重ねていくことで、Zendesk プラットフォームをさらに有効活用できるはずです。 各種機能の詳細設定や実装方法で不明点があれば、公式ドキュメント・サポートや本記事のコメント欄等もご活用ください。
今後も、定期的なアップデートをキャッチアップし、より良いサポート運用環境の実現を目指しましょう。