Tableau On Tour 2015 Tokyo [事例セッション] 商業施設「パルコ」におけるビックデータの役割と活用 #data15
Tableau Conference On Tour 2015 の事例セッション「商業施設「パルコ」におけるビックデータの役割と活用」についてレポートです。パルコは商業施設の運営が主な事業で直近3年間で営業利益、経常利益ともに過去最高、3期更新し順調に業績を伸ばしています。ビックデータ活用がその業績に寄与していると考えられます。
なお、弊社の導入事例 Webと店舗が連動する新しい消費体験「POCKET PARCO」でも紹介しています。
株式会社パルコ WEB/マーケティング部 部長 林 直孝さんのご講演です。
パルコの事業
現在は、ショッピングセンター「PARCO」という名前で全国に19ヶ所、新業態「ZERO GATE(ゼロゲート)」をいくつかの都市で展開しています。商業施設の運営が主な事業で直近三年間で営業利益、経常利益ともに過去最高、3期更新し順調に業績を伸ばしています。ご紹介する「POCKET PARCO」アプリとビックデータがその業績の裏には寄与しています。
テクノロジーで可能にできること「拡張」
接客の「拡張」→「接客は、来店前からすでに始まっている」
オムニチャネルプラットフォーム
ステップ1
ショップブログページを基点とした、商品/接客情報拡充
いつでもどこでも =「WEB接客」が始動
ステップ2
ショップブログページを基点とした、オムニチャネル化
- WEBで取置予約 or 通販注文 ⇒ 店頭で確認・購入 or 自宅へ配送
- ショップ店頭在庫を使ったオムニチャネル化の実現
- 全国約100ショップのスタッフおススメ商品いつでもどこでも注文可能「カエルパルコ」
- ブログの成果でショップの売上が上がる → ブログに対するモチベーションアップ
「カエルパルコ」の提供価値
ショップスタッフがおすすめの商品を買えるマーケット「カエルパルコ」
- ブログ、アプリ、SNS、あらゆるWebメディアから売上獲得が可能
店舗によっては、売上の半分を占めるお店もあるそうです。
ステップ3
スマートフォンアプリ「POCKET PARCO」スタート
パルコ公式スマートフォンアプリ「POCKET PARCO」公開アプリを通じ、よりパーソナルな接客へ進化
POCKET PARCO - あなただけのパルコがポケットに(動画)
iOS版POCKET PARCO AppStoreからダウンロード
Android版POCKET PARCO GooglePlayからダウンロード
スマホアプリ開発の背景:スマホによる情報接点創出の必要性
- 今年7月のパルコ各店サイトの スマホによる閲覧率 : 79%
- 1日のスマホ利用時間全体(1日約2時間)のうち、「アプリ利用時間」は「Webブラウザ利用」の2.5倍長い(ニールセン株式会社調べ)
パルコ公式スマートフォンアプリ「POCKET PARCO」
- 新しいパルコ「POCKET PARCO」のオープン
- お客さまにピッタリのおすすめ情報を タイムリーにお届け
- チェックインやクリップなど、お客さまの行動に応じてコインが貯まる!
- パルコ館内のクレジットカード購入金額に応じてコインが貯まる!
- コインを貯めるとランクアップ! 500円分優待券進呈
アプリ登録パルコカード客と未登録カード客の比較(3月-8月)
- 利用頻度 185%
- 1件単価 108%
- 1客単価 201%
パルコカードと未登録カードのお客様を比較すると、1客単価が約2倍でした。
BIG DATAの役割
今まで見えなかったことの「可視化」
(POCKET PARCOユーザーの行動の可視化・分析)
【3C】ユーザーの行動分析
ウェブサイトの分析ではどこのページから入って、どのページに遷移して、どこのページで離脱をしているか、ECコマースの分析では離脱が少なければ少ないほど売上が上がると言われていて、どのページで離脱しているかを分析することでサイトの改善に活かすといった手法が取られます。パルコのようなリアルな店舗でこのような分析ができないかを取り組み始めています。
CLIP(お気に入り)した商品に対して、45%のお客様がCheckIn(来店)して、60%のお客様がお買い上げになります。つまり、CLIPした商品の30%はお買い上げされています。(3月=全国拡大展開初月の数値より)
CLIPユーザーの行動分析
- 記事が10クリップされると、50日以内に当該ショップで1回の買上が発生し。50クリップを越えると、売上数が大幅に増加する
- 個別ユーザーのClip履歴とその後の買上の相関を調べると、例えば仙台店の記事が「クリップ」されると、広島店の当該ショップで買上が発生する。例えば、仙台店の<コーディネイト推し>のブログが広島店の売上のアシスト効果(+59%)があった
「可視化」された事実から
Plan(計画)→ Do(実行)
Check(評価)→ Act(改善)
Tableau活用事例
色々なデータを取得していますが常にモニタリングしているのは、アプリのダウンロード数、OS毎のダウンロードの数、生年台、ランク、店舗ごとにどういう状況かというビューを約100ぐらい運用しています。ウェブマーケティング部でTableauDesktopを使い作成したビューを作成して、TableuServerにパブリッシュ、19店舗の担当者に見ていただいています。
- 「可視化」と実行後の「評価」を店舗担当者と共有
- クリップ数のキャンペーン施策とユーザー数・売上の推移
- プロモーション別実績
- RF(直近購買・購買頻度)
- エリアターゲティングプロモーション
- CheckIn数の遷移
- ショップ別接客サービス評価平均値
クリップ数のキャンペーン施策とユーザー数・売上の推移
クリップのポイントを10倍にするキャンペーンを打つと、店舗ごとに売上に対する効果が可視化できる様になり、どのようなキャンペーン打って、その成果(ユーザー数や売上)がどれくらい出ているかを可視化できるようになりました。
現在、クリップ数が増えると、売上が上がるという相関がわかっているので、年末に向けてキャンペーンを売っています。キャンペーによる成果は以下のように確認することができます。
クリップのポイントを10倍にするキャンペーンを打つとクリップのポイント数が前週比213%となり、同時期に売上が増加していることがわかります。(実際にはキャンペーンを打って50日ぐらい経過しないと成果の判断ができないらしいです。)
プロモーション別実績
以下の様なクーポンを配信した成果をお店の企画ごとに分けて、配布したクーポンに対してどれだけ利用されたのかを一覧化することで、他のお店がどのようなキャンペーンを打って成果を上げたのかを共有する仕組みを作り、良い成果が上がる施策に集約化されていくことができるようになりました。
RF(直近購買・購買頻度)分析
アプリをリリースして最初の1ヶ月のお買い上げの回数と頻度によってどこクラスタを多いかを分析して、更にアプリの利用者が増えることでどういったお客様が増えていくという予想が立てられ様になり、Tableauを利用することでターゲットのクラスタのユーザーのIDを抽出して、IDによってピンポイントでPush通知するなどの施策を打てるようになります。
ショップ別接客サービス評価平均値
★5つで評価、コメント:店舗ごとに可視化してフィードバックできるようになりました。
【3C+S】ユーザーの行動分析
お客様とテナントさんの接点を増やし、そこから得られるお客さまからデータ、お客様の行動を分析して、お客様に正しく評価フィードバックすることで次の接客に活かす。
クリップからサービス後・来店後の評価までお客様一人の情報として捉え、お客様のアプリ上でのパーソナライズ、クーポン配信、その後のサービス評価がどのように上がるのか、というところまでテナントさんと共有しながら接客の質の向上を図ります。
スマホアプリには個人情報(お名前、ご住所等)は一切登録していません。スマホアプリはPush通知を利用することで、お客様の個人情報なしでパーソナライズした情報やキャンペーン情報の提供が可能になりました。
まとめ
お客様ごとデータから、顕在・潜在ニーズを把握。需要予測をしてお客様に来店していただく、もしくは適切な接客ができるようにテナントさんに情報提供することで、テナントとウェブのプラットフォームを使って、売上を上げていただけるように進化(深化)を進めています。
今後、ビックデータの活用で店頭のスタッフさんの接客の質はもっと高められるのではないかと思っています。例えば、クリップ数をお客様に見せるようにしたところ、テナントの皆さんがたくさんクリップされている記事がどういう記事か、自分の記事のクリップが少ない理由を考え改善するようになり、具体的な効果としては投稿される写真の質がグッと上がり、ブログの記事投稿という形で現れました。 接客評価という評価を嘘偽りなくフィードバックすることで、更に接客の質が高まると確信しています。
ビックデータを分析〜可視化して、PDCA(Plan-Do-Check-Act)を実行し続けることがこれからのビジネスにとって大事なことだと思っており、実行し続けるということは結局どれだけ多く打席に立てるかということだと思っています。打席に立てば立つほどヒットを打つ数が増える可能性が拡大します。イチロー選手も一番多くヒットを打っている方ですが、やはり一番多く打席に立っています。ビジネスにおいてもたくさん打席に立ってとにかく振ってみることが大事で、その振り方も可視化されたデータに基づいた予測によって、精度を上げることで、打率も上がってくるでしょう。
最後に
マルチチャネルをオムニチャネル化するには、それぞれのチャネルのフィードバックを相互に共有する仕組みが必要となり、そのプラットフォームが「POCKET PARCO」やバックエンドのビックデータ分析基盤となります。発信情報のフィードバック、お客様の行動分析、施策(キャンペーン、プロモーション)の実施と効果の測定、エリアターゲティング分析など、実際に成果が現れている林さんの言葉には説得力が感じられました。