#awssummit AWS Summit Tokyo 2013 参加レポート Day1 [PD-04]「クラウドファースト企業が実践するAWS活用の実際」

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AWS Summit 2013、初日を締め括る時間帯のセッションの1つに参加して来ました。三者三様の『クラウドファースト』に関する視点・及びディスカッションはなかなかに興味深いものが多かったです。以下やり取りをレポート。(※文中、発言主の部分に関しては敬称略とさせて頂きます)

セッション概要

開催日時:2013/6/5(水) 17:20-18:20

システムを開発・更新する際にクラウド利用を第一に検討する「クラウドファースト」を
実践される企業様にお集まり頂き、クラウドを導入した経緯や導入の利点、
また越えなければいけなかった壁や発生した問題、これからの方向性など、
AWSクラウド利用の実際についてディスカッションして頂きます。

登壇者

  • モデレータ:
    • 中田 敦氏 (株式会社 日経BP 日経コンピュータ編集)
  • ゲストスピーカー:
    • 堀尾 紀昭氏 (株式会社アンデルセンサービス 執行役員 システムサポート部 部長)
    • 長谷川 秀樹氏 (株式会社東急ハンズ ITコマース部長 執行役員 / ハンズラボ株式会社 代表取締役社長)
    • 新井 達也氏 (ケンコーコム株式会社 取締役 IT本部長)

各者自己紹介

中田:
日経コンピュータで『クラウドファーストが常識に』という特集記事を書きました。"クラウドファースト"という言葉は、アメリカ政府に於いて、2010年に政府情報システムを刷新しよう、情報システムを構築する場合はまずパブリッククラウドを検討しよう、というものがあり、そこが発端となっている。アメリカ政府が『パブリッククラウドを第一に検討せよ』と同様に日本の企業もクラウドファーストを目指している部分があるのではないか。

Driving IT Reform: An Update | The White House

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堀尾:
小売だけじゃなく製造業もやっており、その情報システムを構築。形態としては自社汎用機→ハウジング→ホスティングと遷移。AWSはデータホスティングの延長として利用。ただAWSの特徴を出せるような形は考慮している。
新井:
医薬品・健康食品・健康関連グッズを幅広く(20万商品)取り扱う。情報量は多い。データ量に悩んでいた部分がAWSで解決出来た。我々のビジネスがまだまだ拡大出来る、置き換えできるというところの選択肢としてAWSは妥当なのでは。ミッションクリティカルなシステムの多くがAWS上で動いている。
長谷川:
東急ハンズではEC/ITの責任者。AWSについては去年10月頃に使い始めた。サーバ購入を凍結し。わっさわっさ移している状況。古いシステム・またこれから新規で作るものについてはAWS移行を第一に検討。

Q.クラウドを使ってみて、良かった点悪かった点などはどのようなものがあったでしょうか?想定と違ってどうだったか?

新井:
想定通りだった点は、気軽に趣味でサーバ立てる位の感覚で、建てちゃおうで立つ、というところ。新しい言語ツールを試してみたいと思ったらサーバ立ててインストール出来る。垣根の低さが身近に感じられるようになった。実際にはミッションクリティカルを動かすのだが、作るので悩むよりは、構成を模して動かしてみれば良いんじゃないの、位の気持ち。動くという事が分かって、簡単・短期間で分かったことは大きい。とっつきにくいというハードルが低くなる。事前に規模を多めに見積もっていた場合、安定稼働を確認後スケールを縮小するなども気軽に行えた。
想定と違っていた点は、想像以上のスピードでAWSが成長しているんだろうな、という点。良さそうだ、使ってみようかと思ったら新しいサービスが出ていて、(情報のキャッチアップスピード的に)追いつかない。人的リソースの問題もあり、常に新しいものに追いつけない。AWSのスピード感に追いつければいいなあ。というか(AWSの進化スピードが)早過ぎますよ(笑) また、何も障害が無いという事では無く、サービスを使っていて、『あ、(この機能については)こういう事が出来ないのか〜』という点は時々ある。
中田:
その辺りは、言い換えれば『嬉しい悩み』というところですかね。
長谷川:
良かった点は、(サービスの)上げる下げるの簡潔さ。とある件でサービスインした際に、致命的な状況に直面し、首の皮一枚繋がったかなという事を経験したが、オンプレの場合だとこうは行かなかった。コピーは簡単に取れるという点も良い。OS全てのコピーでも。S3に塩漬け出来るという点は嬉しいところ。
異なっていた点は、クラウドベンダーのサポートが無い、薄いのでは?というところ。当初はそういうイメージだったが、実際は全然そんな事無く、ちゃんとやってくれている。ソリューションアーキテクトに聞いても、バンバン答えてくれる。FAQを御覧ください、というスタンスでは無いというところが想定と違っていた点だった。
堀尾:
とある件で請求書が来たのだが、まず額というか、桁が違うのには驚いた。何度かトラブルはあったものの、AWSを使っていて/乗せていて、障害が発生しても1からやり直せば行けるんだ、という事に気付いた。おかげで、ある処理に4時間かかっていたものが、40分に短縮出来た。

Q.クラウドの使いこなしは簡単?難しい?

中田:
クラウドは『ITエンジニアの72%がユーザー企業に所属するアメリカで生まれた、ITの『デリバリーモデル』。日本は土台がそうではない。アメリカとはユーザー企業の体制が全く違う日本で、クラウドを使いこなす事は難しい?使いこなすという点に於いて、皆さんはどういった工夫をして使いこなしているのか?
長谷川:
人材と見あって対応策を考えるのであって、パンか御飯かではない。情報システム側の方針なのではないか?と思う。基幹システムを移すにあたって、クラウドについてはしゃぶり尽くさねばならない、と思っている。しかし限界はある。プロ中のプロに聞いた方が早いと言う事もある。うちは自分たちでやる方向に方針。
新井:
弊社の場合は自前リソースではなく、言ってみればリソースを社内で抱えるか、(プロフェッショナル・知識を)タイムシェアリングするか。人材的なところもクラウド化しつつある。我々はそうしている。自社でまとめてやろう、という方針は無い。専門家が凄い知識を持っており、1つの事象が横展開可能な状態、世界に現在はなっている。そういう人達を我々も使い倒したい、という思いはある。
堀尾:
VPCに関しては『出来た』ものなので、出来たものをどう使うかを考える。開発やパフォーマンスの方により注力したいので、始めの1歩というのは専門家に任せたい。先達に聞いたほうが早い。

Q.情報システム部員、ITベンダーに期待することは?人材像、クラウド前提の人材育成プラン、ITベンダーに期待すること等も含めて。

堀尾:
あと5年経ったら皆クラウドになるだろう、と思っている。クラウドベースで何をやるか、それは考えるしか無い。今ある機会、構成をどのようにするかは考えておく必要がある。
今後も技術機能は増えて行くだろう。逆に増えて行く事を前提に『この機能はどうすべきか』という事を考えていく必要がある。検索系についてはRedshiftへ、『という方針』。他のクラウドを使ってみるか、何が一番適しているか、と言う部分の検討。『方針』を決めてリソース人材に対して準備を促す。勉強する。備える事が必要だと思う。
また、ベンダーロックインは重要なキー。これは非常に怖い。OSSの方に寄せながら、業務的な部分は担保を取って上手く軟着陸させたい。
新井:
クラウド化が進んでいるが、クラウド全体で言うと少し時間が掛かるかも知れない。構成が変わるスピード=文化が変わるスピード。カルチャーが変わらない限り、スピードも早くならない。
弊社の中でどういうスタッフを求めるか。専門家は是非欲しいと思うが難しい。外部のプロフェッショナルに頼る。目利きをして多様なサービスで、どう問題解決するかという『匂い』『感覚』を持てるような人が是非欲しい。この辺りは育成できるのでは無いかと思っている。
クラウドでは、安易にインスタンスを立ち上げられる。トライアンドエラーが出来る、おもしろ好き、楽しいなと思える人が必要。『クラウドを勝手に使って良いよ』と言うと、エンジニアは自ら動き、専門家に聞く。よりクラウドを使うことでエンジニア育成への欲求を促せるのではないか。
長谷川:
一言で言うと、『バーサタイリスト』(Versatailist:多能な人)。専門的なスキルを持つ人が増えているが、今の若い人(長谷川氏曰く『ネット系の人』と称していた)は自分で色々やってしまう事が普通となっている。アプリ開発者にインフラのことを強いると『いやいや…』となるが、それはちゃうやろ!と。ネット系エンジニアであればひょいと飛び越える。業務とIT、二足のわらじは履けます。(ハンズラポさん自体、業務している社員をエンジニアにシフトしている) より現場に近い、現場を知っている人材が求められるのではないか。

まとめ

ディスカッションの終盤で長谷川氏の発言内にあった『バーサタイリスト』という言葉であり意味するところが、個人的には一番印象に残った部分ではありました。クラウドに移行すると言うことはパラダイムシフトやスキルシフトも当然ながら発生し得る訳で、既存の蓄積資産をベースに考える事が出来るところもあれば、全く意味を成さない部分もある。そういう状況に直面し、打開して行くためにはこの『バーサタイリスト』という考え方であり振る舞い方を身に付けて行かないといかんな〜、としみじみ思った次第でした。